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シールド工事に係るセーフティ・アセスメントについて

改正履歴


                                                                           基発第94号の2
                                                                          平成7年2月24日
																																					
  建設業における労働災害を防止するためには、施工中の安全衛生対策の充実を図ることはもとより、こ
れに先んじて仕事の工程、機械、設備等についての危険性を事業者自らが事前に評価し、その安全衛生対
策を施工前に検討しておくことが肝要である。
  このため、従来から、設計、計画段階における事前評価の実施促進を図るため、工事の種類ごとに、順
次、セーフティ・アセスメントに関する指針を公表してきたところであるが、今般、別添1のとおり「シ
ールド工事に係るセーフティ・アセスメント指針」をとりまとめた。
  ついては、関係事業者において本指針の趣旨が理解され、実効あるセーフティ・アセスメントが実施さ
れるよう適切な指導を行うとともに、労働安全衛生法第88条第4項に基づく計画の届出について審査を行
う際等にこれを活用されたい。
  なお、下記の関係各団体に対し、別添2(略)のとおり本指針の普及徹底を図るよう要請したので了知
されたい。

記
建設業労働災害防止協会
(社)全国建設業協会
(社)日本建設業団体連合会
(社)日本道路建設業協会
(社)日本土木工業協会
(社)日本鉄道建設業協会
全国圧気工業会
(社)日本トンネル技術協会

別添1

シールド工事に係るセーフティ・アセスメント指針

1.序文
  近年、トンネル工事においては、圧気工法を併用しないシールド機械による施工(以下「シールド工事」
という。)が数多く行われている。しかしながらシールド工事においては、ガス爆発等による重篤な災害
が発生しており、これらの中には、施工計画の段階における事前評価が不十分であったため必要な安全衛
生対策が十分講じられなかったことが原因となって発生したとみられるものが少なくない。
  このため、調査・設計段階、施工計画の段階等、施工開始前における安全衛生対策の充実を図ることが
必要であり、その手法の1つとしてセーフティ・アセスメントの実施が挙げられる。
  本指針は、シールド工事に係るセーフティ・アセスメントについての基本的な考え方を明らかにすると
ともに、同工事を施工する事業者が施工計画段階のみならず、施工中における安全衛生の確保を図る上で
参考となるような手法を具体的に示したものである。
  なお、本指針は泥水式シールド、泥土圧式シールド等の切羽部分が密閉型のシールド工事を主要な対象
とし、切羽部分が開放型のシールド工事については、各項目において、必要と考えられる主な留意点に触
れるにとどめた。
2.基本的な考え方
  シールド工事に係るセーフティ・アセスメントを行う意義は、施工計画の段階等において、その施工中
における労働災害の危険性を事業者自らが評価し、事前にこれに対し必要となる対策をその量・質の要素
をも含めて検討することにより、施工中の安全性をより高めることにある。
  このようなことから、セーフティ・アセスメントは、以下の考え方により進めることが必要である。
  (1)  まず、安全性等を評価するための基礎資料の収集を十分に行う。
  (2)  次に、これらの資料から得られた情報をもとに以下の手順により安全衛生対策の検討を行う。
      [1]  シールド工事の施工における安全衛生を確保する上で必要不可欠ともいえる基本的事項につ
          いて適切な対策が講じられているか、又は講じられることになっているかを確認する。
      [2]  次に、当該シールド工事に特有な災害で、重篤な又は頻発する可能性の高いもの(ガス爆発
          (可燃性天然ガス、都市ガス等)、坑内火災、酸素欠乏空気、有害ガス中毒及び異常出水  以
          下特有災害」という)について、その施工中における発生の危険性を評価する。また、これら
          の危険性の評価については、これを定量化して、評価する。
      [3]  さらに、特有災害については、[2]で評価を行った個々の災害に係る危険性の程度に見合った
          安全衛生対策を検討し、これが施工計画書に十分考慮されているかどうかを確認する。また、
          当該特有災害において、上記[2]の危険性の評価の段階で、特に危険性が高いとの結論を得た
          ものについては、上記[1]の段階で検討した基本的事項の対策についても再度検討する。
  (3)  現場条件が確定しない等により工事着手前の施工計画段階では具体的対策を策定することが困難
      な事項については、工事の進捗に応じて得られたデータ等を活用しながら、その都度、事業者が自
      主的に評価を行うこととした。
        なお、この指針は、以上の基本的な考え方に基づき、その手法、手順等を示しているが、セーフ
      ティ・アセスメントを行うに当たっては、特に、次の点に留意する必要がある。
      イ.基本的対策については、施工の際に安全衛生を確保する観点から、必要な対策を網羅的に掲げ
        ており、その中には施工中において具体的に検討したうえ実行に移され得るような対策及び工事
        の条件によっては必要とされない対策も含まれている。
          したがって、これらのものについては、施工計画の作成段階で、いつ、どのように実行される
        か等について検討し、その時期に、施工中の安全衛生確保のための評価を行うこと。
          このように、基本的な対策として掲げられているものについては、単に施工計画の作成段階に
        とどまらず、施工中の安全衛生確保のためのチエックリストとしても十分活用しうるものである
        こと。
      ロ.特有災害の危険性の評価方法については、種々の方法が考えられるが、ここでは、過去の災害
        事例及び利用の簡便さを考慮し、地質、断面、延長、たて坑深さ、地下埋設物等の要素を用い、
        マクロな観点からの評価方法を考えることとしたこと。
      ハ.特有災害の危険度の度合に見合った安全衛生対策の検討については、各特有災害ごとに検討項
        目を示し、その危険度のランク別安全衛生対策を例示したこと。
3.セーフティ・アセスメントの具体的手法
  (1)  適用範囲等
        この指針は、シールド工事について適用し、工事開始前にシールド工事を施工する事業者がセー
      フティ・アセスメントを実施するために用い、かつ、施工中の安全衛生の確保のための評価及びチ
      ェックリストとして用いることとする。
  (2)  事前評価の具体的進め方
        このアセスメントの評価は、次の4段階により行う。
      第1段階―――基礎資料の収集
      第2段階―――基本的事項の安全衛生対策の検討
      第3段階―――特有災害の危険度のランク付け
      第4段階―――特有災害の危険度に見合った安全衛生対策の検討
        各段階ごとの具体的進め方は、次のとおりである。
      [1]  第1段階  基礎資料の収集
            この段階では、シールド工事の安全性等を評価するために必要な基礎資料を収集し、整理を
            行う。この代表的な資料としては、以下のようなものがある。
          イ.地形図、地質図、環境調査書、気象調査書等の各種調査資料
          ロ.設計図書等請負契約書に関する資料
          ハ.現場付近の工事及び類似シールド工事における工事記録
          ニ.シールド工事における災害情報
          ホ.労働安全衛生法等関係法令
          ヘ.各種安全衛生技術指針
      [2]  第2段階  基本事項の安全衛生対策の検討
            この段階では、基本的事項について安全衛生が講じられているか又は講じられることとなっ
          ているかを、別紙1「基本的事項に関する安全衛生対策評価表」の評価内容に記された観点か
          らチェックし、必要があれば、施工計画を変更する等の措置を講じる。
      [3]  第3段階  特有災害の危険度のランク付け
            この段階では、施工中の特有災害についての危険性を評価する。
            特有災害としては、以下の災害をとりあげる。なお、これらの特有災害は、シールド工事に
          おいて一般的な工法である泥水式シールド等の切羽部分が密閉型のシールド工法を考慮してと
          りあげた。
          ガス爆発(可燃性天然ガス、都市ガス)
          坑内火災
          酸素欠乏空気・有害ガス中毒
          異常出水
            特有災害の危険性については、特有災害の種類に応じ、以下に示す要素を考慮してI〜IVの
          ランク(坑内火災のみT〜V)に分類する。ただし、特有災害によっては無関係となる要素も
          ある。
          地質
          断面
          延長
          立坑深さ
          地下埋設物
          地形
          土被り
          工法
            なお、危険度のランク付けの方法は、別紙2「特有災害の危険度のランク付け」に示す。
      [4]  第4段階  特有災害の危険度に見合った安全衛生対策の検討
            この段階では、前段階で評価を行った特有災害に関する危険性に対応する安全衛生対策を検
          討し、これが施工計画に考慮されているかを評価、検討する。
            なお、安全衛生対策の検討方法は、別紙3「特有災害の危険度に見合った安全衛生対策の検
          討」に示す。
  (3)  事前評価後の措置
        事前評価の結果、是正を要する項目については、その実施時期、実施方法及びその確認方法等処
      理経過を明らかにする書面等を作成し、確実な実行を図るとともに、現場条件等が確立していない
      こと等により、具体的な計画を策定することが困難な項目については、現場条件等が確立し次第評
      価が行えるよう、事前評価後の措置に準じ、処理経過を明らかにする書面等を作成し、確実な実行
      を図ることが必要である。

別紙1  基本的事項に関する安全衛生対策評価表
目次
1  施工管理体制  (表)
  (1)  施工管理組織
      [1]  現場代理人、主任技術者、監理技術者
      [2]  管理組織規程
      [3]  関係請負人の選定
  (2)  安全衛生管理
      [1]  安全衛生管理体制
      [2]  安全衛生教育
      [3]  作業主任者
      [4]  就業制限
      [5]  健康管理
      [6]  構内外の交通安全対策
2  調査  (表)
  (1)  地形
  (2)  地質
  (3)  地下水
  (4)  酸素欠乏空気・有害ガス
  (5)  気象
  (6)  河象・海象
  (7)  障害物
  (8)  環境
  (9)  交通
  (10)  用水、電力
3  坑外設備  (表)
  (1)  ストックヤード
  (2)  泥水処理設備
      [1]  計画
      [2]  構造
      [3]  組立て・解体
  (3)  作泥プラント設備
      [1]  計画
      [2]  構造
      [3]  組立て・解体
  (4)  泥土固化設備
      [1]  計画
      [2]  構造
      [3]  組立て・解体
  (5)  裏込注入設備
      [1]  計画
      [2]  構造
      [3]  組立て・解体
  (6)  坑外設備使用管理
  (7)  坑外設備保守・点検
4  たて坑設備  (表)
  (1)  材料搬出入設備
      [1]  計画
      [2]  構造
      [3]  組立て・解体
  (2)  ずり搬出設備
      [1]  計画
      [2]  構造
      [3]  組立て・解体
  (3)  通路・昇降設備
      [1]  計画
      [2]  構造
      [3]  組立て・解体
  (4)  防護設備
      [1]  墜落防護
      [2]  飛来・落下防護
      [3]  坑内出水防護
      [4]  雨水流入防止
  (5)  たて坑設備使用管理
  (6)  たて坑設備保守・点検
5  掘削機械  (表)
  (1)  計画
  (2)  構造
  (3)  組立て・解体
  (4)  使用管理
  (5)  保守・点検
6  坑内運搬設備  (表)
  (1)  泥水輸送設備
      [1]  運転制御設備
      [2]  送・排泥設備
      [3]  送・排泥管
  (2)  土砂圧送設備
      [1]  運転制御設備
      [2]  圧送設備
      [3]  圧送管
  (3)  レール方式
      [1]  坑内運行規定
      [2]  軌道設備計画
      [3]  接触防止
      [4]  動力車
      [5]  台車
      [6]  充電設備
      [7]  信号
      [8]  動力車・台車及び軌道の保守・点検
  (4)  コンベヤー
      [1]  構造
      [2]  使用管理
      [3]  保守・点検
7  電力設備  (表)
  (1)  計画
  (2)  受変電設備
  (3)  配電等
  (4)  照明
  (5)  停電対策
  (6)  非常用照明(非常灯)
  (7)  感電防止
  (8)  保守・点検
8  給・排水設備  (表)
  (1)  給水設備
  (2)  排水設備
  (3)  使用管理
  (4)  保守・点検
9  換気設備  (表)
  (1)  換気設備
  (2)  保守・点検
10  施工  (表)
  (1)  計画・工程
  (2)  たて坑
      [1]  規模
      [2]  埋設物の防護
      [3]  土止め壁
      [4]  覆工
      [5]  掘削
      [6]  運搬
      [7]  土止め支保工
      [8]  たて坑構築(鉄筋工、コンクリート工)
      [9]  たて坑保守・点検
  (3)  トンネル
      [1]  初期掘進
          イ、支圧壁
          ロ、発進台
          ハ、仮壁壊し
          ニ、発進
      [2]  本掘進
      [3]  到達
      [4]  セグメント
          イ、計画
          ロ、取扱い、組立て
          ハ、止水
      [5]  裏込め注入
          イ、設計
          ロ、裏込め注入作業
      [6]  二次覆工
          イ、計画
          ロ、型わく及び型わく支保工
          ハ、コンクリート打設
      [7]  特殊施工の施工計画
          イ、地中接合
          ロ、急曲線施工
          ハ、長距離施工
          ニ、地中切拡げ
          ホ、近接施工
          ヘ、双設トンネル
          ト、補助工法・地盤強化工法
          イ  薬液注入工法
          ロ  噴射注入工法
          ハ  凍結工法
          チ、地下水位低下工法
          イ  ウエルポイント
          ロ  ディープウエル
  (4)  施工中の調査、測定
11  作業環境  (表)
  (1)  坑内環境
      [1]  温度・炭酸ガス濃度
      [2]  視界・照明
  (2)  換気
  (3)  粉じん対策
  (4)  酸欠・有害ガス対策
      [1]  酸欠・有害ガス対策
      [2]  可燃性ガス対策
  (5)  振動・騒音対策
      [1]  振動
      [2]  騒音
  (6)  その他
12  緊急時連絡設備、避難通路等  (表)
  (1)  連絡設備
      [1]  通話設備
      [2]  警報設備
  (2)  連絡体制
  (3)  避難通路
  (4)  避難用設備電源
  (5)  避難用器具
  (6)  消火・防火設備
      [1]  火気管理
      [2]  可燃物管理
      [3]  消火・防火設備
  (7)  避難等の訓練
13  救護体制  (表)
  (1)  救護組織
  (2)  救護設備
  (3)  救護訓練
  (4)  医療及び応急手当
14  その他  (表)


別紙2  特有災害の危険度のランク付け

1.ガス爆発(可燃性天然ガス)
    (表)
    (表)

2.ガス爆発(都市ガス)
    (表)
    (表)

3.坑内火災
    (表)
    (表)

4.酸素欠乏・有害ガス中毒
    (表)
    (表)

5.異常出水
    (表)
    (表)

別紙3    特有災害の危険度に見合った安全衛生対策の検討
1  ガス爆発に関する対策(可燃性天然ガス)  (表)

2.ガス爆発に関する対策(都市ガス)  (表)

3.坑内火災に関する対策  (表)

4.酸素欠乏空気、有害ガス中毒に関する対策  (表)

5.異常出水に関する対策  (表)


別添2  <略>