安全衛生情報センター
労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(平成25年政令第234号。以下「改正政令」という。)及び 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(平成25年厚生労働省令第96号。以下「改正省令」という。)が 平成25年8月13日に公布され、平成25年10月1日から施行することとされたところであるが、その改正の趣 旨、内容等については、下記のとおりであるので、その施行に遺漏なきを期されたい。 併せて、本通達については、別添のとおり、別紙関係事業者等団体の長あて傘下会員事業者への周知等 を依頼したので了知されたい。
第1 労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令 1 改正の趣旨 大阪の印刷事業場で印刷機の洗浄又は払拭の作業を行っていた労働者が胆管がんを発症したのは業 務によるものであるとして平成24年3月以降に労災請求がなされた事案は、「印刷事業場で発生した胆 管がんの業務上外に関する検討会」報告書(平成25年3月14日)において、使用していた洗浄剤に含有す る1,2−ジクロロプロパンの長期間にわたる高濃度ばく露が胆管がん発症の原因となった蓋然性が 高いとされた。改正政令は、専門家による検討結果を踏まえ、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第 318号。以下「施行令」という。)第18条に規定する名称等を表示すべき危険物及び有害物、施行令第 22条に規定する健康診断を行うべき有害な業務並びに施行令別表第3に規定する特定化学物質の範囲等 を拡大するため、施行令について所要の改正を行ったものである。 2 改正の内容及び留意事項 (1) 施行令の一部改正(改正政令本則関係) ア 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第57条第1項の表示(以下単に「表 示」という。)をしなければならない物(以下「表示対象物質」という。)として、1,2−ジクロ ロプロパン及びこれを含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの(当該厚生労働省令 として、改正省令による改正後の労働安全衛生規則第30条及び別表第2において1,2−ジクロロ プロパンの含有量が重量の0.1%以上の製剤その他の物を規定。)を規定したこと。(施行令第18条 関係) イ 1,2−ジクロロプロパン及びこれを含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの (改正省令による改正後の特定化学物質障害予防規則第39条第4項及び別表第5においてこれらの含 有量が重量の1%を超える製剤その他の物を規定。)を製造し、又は取り扱う業務を法第66条第2項 後段の健康診断(以下同項前段の健康診断と併せて「特殊健康診断」という。)の対象業務として 規定したこと。(施行令第22条第2項関係) ウ 特定化学物質の第2類物質に1,2−ジクロロプロパン及びこれを含有する製剤その他の物で、 厚生労働省令で定めるもの(改正省令による改正後の特定化学物質障害予防規則第2条第2項及び別 表第1において1,2−ジクロロプロパンの含有量が重量の1%を超える製剤その他の物並びにそ れ以外の物で、1,2−ジクロロプロパン及び施行令別表第6の2の有機溶剤(以下単に「有機溶剤」 という。)の含有量が重量の5%を超える製剤その他の物を規定。以下「1,2−ジクロロプロパ ン等」という。)を追加したこと。(施行令別表第3関係) これにより、1,2−ジクロロプロパン等を製造し、又は取り扱う場合は、作業主任者の選任、 作業環境測定及び特殊健康診断(以下「作業主任者の選任等」という。)を行わなければならない こととなること。 エ 1,2−ジクロロプロパン等を製造し、又は取り扱う作業等のうち、厚生労働省令で定める一 部の作業等については、作業主任者の選任等の規定の適用を除外することとしたこと。(施行令第 6条、第21条、第22条関係) オ 健康管理手帳を交付する業務に、1,2−ジクロロプロパン(これをその重量の1パーセントを 超えて含有する製剤その他の物を含む。)を取り扱う業務(厚生労働省令で定める場所における印 刷機その他の設備の清掃の業務に限る。)」を追加したこと。なお、「清掃の業務」とは、「洗浄 又は払拭の業務」と同義であること。(施行令第23条関係) (2) 施行期日(改正政令附則第1項関係) 改正政令は、平成25年10月1日から施行することとしたこと。 (3) 経過措置(改正政令附則第2項から第4項まで関係) ア 1,2−ジクロロプロパン等を製造し、又は取り扱う作業については、平成26年9月30日まで の間は作業主任者の選任を要しないこととしたこと。(改正政令附則第2項関係) イ (1)のアの表示をしなければならない物であって、改正政令の施行の日(平成25年10月1日)にお いて現に存するものについては、平成26年3月31日までの間は、表示の規定は適用しないこととし たこと。(改正政令附則第3項関係) ウ 1,2−ジクロロプロパン等を製造し、又は取り扱う屋内作業場については、平成26年9月30日 までの間は、作業環境測定を行うことを要しないこととしたこと。(改正政令附則第4項関係) 第2 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令 1 改正の趣旨 改正省令は、改正政令の施行に伴い、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」 という。)、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)について 所要の改正を行ったものである。 2 改正の内容及び留意事項 (1) 安衛則の一部改正(改正省令第1条関係) ア 健康管理手帳交付対象の屋内作業場(安衛則第52条の9関係) 健康管理手帳交付対象となっている第1の2(1)オの業務を行う場所を、屋内作業場等(屋内作業 場及び有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」という。)第1条第2項各 号に掲げる場所)としたこと。 イ 健康管理手帳交付要件(安衛則第53条関係) 健康管理手帳を交付する要件として、第1の2(1)オの業務に3年以上従事した経験を有すること と規定したこと。 ウ 表示対象物質の追加(安衛則別表第2関係) 改正政令による施行令第18条の改正により、表示対象物質として、1,2−ジクロロプロパン 及びこれを含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるものが規定されたことに伴い、こ れらの物質に係る裾切値(当該物質の含有量がその値未満の場合、規制の対象としないこととする 場合の当該値をいう。以下同じ。)を0.1%と規定したこと。 エ 計画の届出をすべき機械等の追加(安衛則別表第7関係) 特化則第38条の8において準用する有機則第5条又は第6条に基づき設置される1,2−ジクロロ プロパン等の蒸気の発散源を密閉する装置、局所排気装置等について、これらを設置し、若しく は移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとする場合の安衛則第86条第1項及び法第88条 第2項において準用する同条第1項の規定に基づく届出の対象とすることとしたこと。 また、特化則第2条の2に規定する適用除外業務のみに係る発散抑制の設備については、届出の 対象としないこととしたこと。 (2) 特化則の一部改正(改正省令第2条関係) ア 1,2−ジクロロプロパンの「エチルベンゼン等」への追加(特化則第2条、別表第1関係) 1,2−ジクロロプロパンについては、国内で長期間にわたる高濃度のばく露があった労働者 に胆管がんを発症した事例により、ヒトに胆管がんを発症する可能性が明らかになったことに加 え、国が専門家を参集して行った化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価(以下 「リスク評価」という。)において、洗浄又は払拭の業務に従する労働者に高濃度のばく露が生ず るリスクが高く、健康障害のリスクが高いとされたことから、今般の改正により特定化学物質に 追加したものであること。また、この物質は、有機溶剤と同様に溶剤として使用される実態があ り、それに応じた健康障害防止措置を規定する必要があることから、「エチルベンゼン等」とし て規定したこと。(特化則第2条関係) また、有機溶剤と同様に作用し、蒸気による中毒を発生させるおそれがあるため、その予防の 観点から、1,2−ジクロロプロパン及びこれを重量の1%を超えて含有する製剤その他の物(別 表第1第19号の2)に加えて、1,2−ジクロロプロパンの含有量が重量の1%以下であって、1, 2−ジクロロプロパン及び有機溶剤の含有量の合計が重量の5%を超える製剤その他の物(別表第1 第37号)を「エチルベンゼン等」として規定したこと。 イ 1,2−ジクロロプロパン等に係る特化則の規定の適用等(特化則第2条、第12条の2、第24条、 第36条の5、第38条の8、第41条の2関係) (ア) 「1,2−ジクロロプロパン等」のうち、1,2−ジクロロプロパン及びこれを重量の1% を超えて含有する製剤その他の物については、特化則第2章に規定する措置のほかは特定化学 物質及び第2類物質に係る措置の対象とすることとし、1,2−ジクロロプロパンの含有量が 重量の1%以下の製剤その他の物については、1,2−ジクロロプロパンによる慢性障害のリ スクが低いことから、通常の作業時の健康障害防止措置を定める規定は、原則として適用し ないこととしたこと。 ただし、1,2−ジクロロプロパンの含有量が重量の1%以下の製剤その他の物についても、 特化則第25条第1項及び第4項の規定等、有機則において同様の措置が規定されているなど、 蒸気による中毒の予防の観点から必要な措置を定める規定については適用することとしたこ と。(特化則第2条、第12条の2、第24条関係) (イ) 1,2−ジクロロプロパン及び有機溶剤の含有量の合計が重量の5%を超える製剤その他の 物に係る作業環境測定及び特殊健康診断については、1,2−ジクロロプロパンが有機溶剤 と同様に作用し、蒸気による中毒を発生させるおそれがあることから、1,2−ジクロロプ ロパンと併せて有機溶剤の空気中の濃度の測定の実施及び有機溶剤に係る特殊健康診断の項 目についての特殊健康診断の実施を義務付けることとしたこと。(特化則第36条の5、第41条 の2関係) (ウ) 1,2−ジクロロプロパン等を製造し、又は取り扱う業務のうち、屋内作業場等において 行う印刷機等の洗浄又は払拭の業務(以下「1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務」とい う。)について、1,2−ジクロロプロパンが溶剤として使用されている実態があり、その実 態に応じた健康障害防止措置を規定する必要があることから、特化則第5条の規定及びその関 連規定の対象とせず、有機則第1章から第3章まで、第4章(第19条及び第19条の2を除く。)及 び第7章の規定を準用することとしたこと。(特化則第38条の8関係) (エ) 1,2−ジクロロプロパン等に係る特化則の適用については別紙1を、1,2−ジクロロプ ロパン等について準用する有機則の規定については、別紙2を参照すること。 ウ 1,2−ジクロロプロパン等に係る適用除外(特化則第2条の2関係) (ア) リスク評価の結果、1,2−ジクロロプロパン等の労働者へのばく露の程度が低く、労働 者の健康障害のおそれが低いと判断されたため、次の業務については作業主任者の選任等の 規定及び特化則の規定の適用を除外したこと。1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務以 外の1,2−ジクロロプロパン等を製造し、又は取り扱う業務 (イ) 1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務には、金属製品等の洗浄等の業務(例えば機械又 は工具の洗浄、金属部品又は製品の脱脂等)が含まれること。 (ウ) 1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務以外の1,2−ジクロロプロパン等を製造し、 又は取り扱う業務には、例えば、1,2−ジクロロプロパンを原料として製剤等を製造する 業務、他の有機化合物を製造する過程で生成する1,2−ジクロロプロパンを取り扱う業務、 洗浄用溶剤を製造する工程における1,2−ジクロロプロパンのろ過、混合、撹拌、加熱又 は容器若しくは設備への注入の業務等が含まれること。 (エ) 特化則第2条の2に規定される業務は、(ア)のとおり労働者の健康障害のおそれは低いと判 断されたものであるが、1,2−ジクロロプロパンは、長期間にわたる高濃度ばく露により 胆管がんを発症し得ると医学的に推定されるなど、その有害性が認められる物質であること から、これらの業務については、「労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づく健康障害を防 止するための指針に関する公示(平成24年10月10日 健康障害を防止するための指針公示第23 号)」(がん原性指針)により、ばく露を低減するための措置、作業環境測定、労働衛生教育、 労働者の把握、危険有害性等の作業場への掲示等必要な措置を講ずること。 エ 1,2−ジクロロプロパン等の貯蔵場所に設置する設備(特化則第25条関係) (ア) 特化則第25条第5項第1号の「設備」とは、施錠、縄による区画等をいうこと。 (イ) 特化則第25条第5項第2号の「設備」とは、窓、排気管等をいい、必ずしも動力により1, 2−ジクロロプロパン等の蒸気を排出することを要しないこと。 オ 1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務に係る作業主任者(特化則第27条、第28条関係) (ア) 1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務に係る作業主任者については、1,2−ジクロ ロプロパンが溶剤として使用される実態に応じた適切な作業の管理を行わせるため、有機溶 剤作業主任者技能講習を修了した者のうちから選任しなければならないこととしたこと。こ のため、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習を修了した者のうちから選任 することはできないことに留意すること。 (イ) 特化則第38条の8において準用する有機則第2条又は第3条の規定により、1,2−ジクロロ プロパン等の消費量が許容消費量を超えないことにつき労働基準監督署長の認定を受けた場 合等には、1,2−ジクロロプロパンの含有量が重量の1%以下の製剤その他の物に係る洗浄 又は払拭の業務に限り、作業主任者の選任を要しないこととしたこと。 カ 1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務に係る作業環境測定(特化則第36条、第36条の5関係) (ア) 事業者は、1,2−ジクロロプロパン又はこれを重量の1%を超えて含有する製剤その他の 物を用いて印刷機等の洗浄又は払拭の業務を行う作業場について、1,2−ジクロロプロパ ンの空気中の濃度を測定しなければならないこととしたこと。 (イ) (ア)の測定のほか、事業者は、1,2−ジクロロプロパンが有機溶剤と同様に作用し、蒸 気による中毒を発生させるおそれがあることから、1,2−ジクロロプロパン及び有機溶剤 の含有量の合計が重量の5%を超える製剤その他の物(以下「1,2−ジクロロプロパン有機 溶剤混合物」という。)を用いて屋内作業場で印刷機等の洗浄又は払拭の業務を行う場合には、 1,2−ジクロロプロパン及び施行令別表第6の2第1号から第47号までに掲げる有機溶剤の空 気中の濃度を測定しなければならないこととしたこと。 (ウ) 特化則第38条の8において準用する有機則第3条の規定により、1,2−ジクロロプロパン 等の消費量が許容消費量を超えないことにつき労働基準監督署長の認定を受けた場合には、 (イ)の測定の実施を要しないこととしたこと。 (エ) 従来は、令別表第三第二号3の3に掲げる物及び有機溶剤を含有する製剤その他の物(令別表 第三第二号3の3に掲げる物及び有機溶剤の含有量が重量の五パーセント以下のものを除く。) については、「エチルベンゼン有機溶剤混合物」としていたところであるが、今般、「エチ ルベンゼン等」に1,2−ジクロロプロパンが追加されたことにより、「特定有機溶剤混合 物」と名称を変更したこと。(第41条の2において同じ。) キ 作業環境測定の実施及びその結果の評価並びにこれらの結果の記録の保存(特化則第36条の2、 第36条の5関係) (ア) 1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務(1,2−ジクロロプロパン及びこれを重量の1 %を超えて含有する製剤その他の物を用いて行う業務に限る。)を行う屋内作業場について、 作業環境測定及びその結果の評価を行い、これらの結果の記録を30年間保存しなければなら ないこととしたこと。 (イ) カの(イ)の測定の結果及びその評価の結果の記録については、3年間保存しなければならな いとしたこと。 ク 洗浄設備(特化則第38条関係) 特化則第38条における洗たくのための設備の設置には、労働者の使用した作業衣等の洗濯を同 一事業者の他の事業場で行う場合や他の事業者と契約して事業場外で行う場合を含むこと。 ケ 特別管理物質の追加(特化則第38条の3関係) 1,2−ジクロロプロパン等(1,2−ジクロロプロパンを重量の1%を超えて含有する製剤そ の他の物に限る。)を特別管理物質に追加したこと。 これに伴い、1,2−ジクロロプロパンは、特化則第38条の3の作業場内掲示、特化則第38条の 4の作業記録の保存、特化則第40条第2項の特殊健康診断の結果の記録の30年間保存及び特化則第5 3条の記録の提出の対象となることに留意すること。 コ 1,2−ジクロロプロパン等に係る措置(特化則第38条の8関係) (ア) 1,2−ジクロロプロパン等については、その含有する有機溶剤の有無、種類及び量によ って有機則第1条第1項第3号の「第1種有機溶剤等」、同項第4号の「第2種有機溶剤等」又は 同項第5号の「第3種有機溶剤等」に相当する場合があり、それに応じて、準用する有機則の 規定が区別されるものであること。 1,2−ジクロロプロパンを勘案しない場合に「第3種有機溶剤等」に区分される物につい て、特化則第38条の8において準用する有機則第1条第1項の規定により「第2種有機溶剤等」 に相当することとなる場合、有機則第25条の適用に際し、「第2種有機溶剤等」として取り扱 うこと。 (イ) 特化則第38条の8において準用する有機則第24条の規定に基づく掲示は、「有機溶剤中毒予 防規則第24条第1項の規定により掲示すべき事項の内容及び掲示方法」(昭和47年労働省告示 第123号)により行うこと。 (ウ) 特化則第38条の8において準用する有機則第24条の掲示事項と、特化則第38条の3の掲示事 項をまとめて掲示して差し支えないこと。この場合、共通の事項について重ねて掲示する必 要はないこと。 サ 1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務に係る特殊健康診断(特化則第39条、第41条の2関係) (ア) 事業者は、1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務(1,2−ジクロロプロパン及びこれ を重量の1%を超えて含有する製剤その他の物を用いて行う業務に限る。)に常時従事する労 働者に対し、特化則第39条の特殊健康診断を実施しなければならないこととしたこと。(特化 則第39条関係) (イ) 1,2−ジクロロプロパンは、有機溶剤と同様に作用し、蒸気による中毒を発生させるお それがあることから、1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務(1,2−ジクロロプロパン 有機溶剤混合物を用いて行う業務に限る。)を行う場合には、有機則第29条第2項及び第5項に 規定する項目について特殊健康診断を実施しなければならないこととしたこと。(特化則第41 条の2関係) (ウ) 第38条の8の規定において準用する有機則第3条の規定により、1,2−ジクロロプロパン 等の消費量が許容消費量を超えないことにつき労働基準監督署長の認定を受けた場合には、 (イ)の特殊健康診断の実施を要しないこととしたこと。(特化則第41条の2関係) シ 特殊健康診断の結果の記録及びその保存並びに報告(特化則第40条、第41条、第41条の2関係) (ア) 1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務(1,2−ジクロロプロパン及びこれを重量の1 %を超えて含有する製剤その他の物を用いて行う業務に限る。)に常時従事する労働者に対し て実施した特殊健康診断の結果の記録(特化則第39条の特殊健康診断に係るものに限る。)に ついて、30年間保存しなければならないこととしたこと。(特化則第40条関係) (イ) サの(イ)の特殊健康診断の結果の記録については、5年間保存しなければならないこととし たこと。(特化則第41条の2関係) (ウ) サの(イ)の特殊健康診断を行ったときは、特化則第41条の2において準用する有機則第30条 の3の規定に基づき、有機溶剤等健康診断結果報告書を労働基準監督署長に提出しなければな らないこととしたこと。(特化則第41条の2関係) ス エチルベンゼン及びこれを重量の1%を超えて含有する製剤その他のもの、並びに1,2−ジク ロロプロパン等に係る特殊健康診断の項目(特化則別表第3、別表第4関係) (ア) エチルベンゼン及びこれを重量の1%を超えて含有する製剤その他のものに係る特殊健康診 断の項目について エチルベンゼン及びこれを重量の1%を超えて含有する製剤その他の物に係 る特殊健康診断の項目のうち、尿中のマンデル酸の量の測定については、尿中マンデル酸の 半減期を踏まえ、当該業務に常時従事する労働者に対して行う健康診断におけるものに限る こととしたこと。(別表第3関係) (イ) 1,2−ジクロロプロパン等に係る特殊健康診断の項目について 1,2−ジクロロプロパンについては、ヒトに対する発がん性のおそれや肝機能障害、皮 膚粘膜の刺激症状、溶血性貧血等を引き起こす可能性が指摘されたことを踏まえ、1,2− ジクロロプロパン洗浄・払拭業務(1,2−ジクロロプロパン及びこれを重量の1%を超えて 含有する製剤その他の物を用いて行う業務に限る。)に常時従事する労働者等に対する特殊健 康診断の項目の趣旨等については、次のとおりとすること。 ① 「業務の経歴の調査」は、当該業務に常時従事する労働者に対して行う健康診断におけ るものに限るものであること。なお、本項目については、当該業務に常時従事する労働者 以外のものは対象とならないが、当該業務に常時従事させたことがあり、かつ、現に使用 している労働者のうち、過去に「業務の経歴の調査」を受けていないものに対しても、当 該労働者の次回の健康診断において「業務の経歴の調査」を行うことが望ましいこと。 ② 「作業条件の簡易な調査」は、労働者の当該物質へのばく露状況の概要を把握するため、 前回の特殊健康診断以降の作業条件の変化、環境中の1,2−ジクロロプロパンの濃度に 関する情報、作業時間、ばく露の頻度、1,2−ジクロロプロパンの蒸気の発散源からの 距離、呼吸用保護具の使用状況等について、医師が主に当該労働者から聴取することによ り調査するものであること。このうち、環境中の1,2−ジクロロプロパンの濃度に関す る情報の収集については、当該労働者から聴取する方法のほか、衛生管理者等からあらか じめ聴取する方法があること。なお、本項目については、当該業務に常時従事する労働者 以外のものは対象とならないが、当該業務に常時従事させたことがあり、かつ、現に使用 している労働者で、過去に「作業条件の簡易な調査」を実施していないものに対しても、 当該労働者の次回の健康診断において「作業条件の簡易な調査」を行うことが望ましいこと。 ③ 「眼の痛み、発赤、せき、咽頭痛、鼻腔刺激症状、皮膚炎、悪心、嘔吐、黄疸、体重減 少、上腹部痛等の他覚症状又は自覚症状の有無の検査」は、1,2−ジクロロプロパンに より生じるこれらの症状の検査をいうこと。発赤とは、眼の発赤をいうこと。なお、「眼 の痛み、発赤、せき、咽頭痛、鼻腔刺激症状、皮膚炎、悪心、嘔吐等の急性の疾患に係る 症状」については、当該業務に常時従事する労働者に対して行う健康診断におけるものに 限るものであること。 ④ 「血清総ビリルビン、血清グルタミツクオキサロアセチツクトランスアミナーゼ(GOT)、 血清グルタミツクピルビツクトランスアミナーゼ(GPT)、ガンマ―グルタミルトランスペプ チダーゼ(γ―GTP)及びアルカリホスフアターゼの検査」は、1,2−ジクロロプロパンに よる肝・胆道系の障害を評価するための検査であること。 ⑤ 「作業条件の調査」は、労働者の当該物質へのばく露状況の詳細について、当該労働者、 衛生管理者、作業主任者等の関係者から聴取することにより調査するものであること。 なお、「作業条件の調査」は、当該業務に常時従事する労働者に対して行う健康診断にお けるものに限るものであること。 ⑥ 「腹部の超音波による検査等の画像検査」は、肝・胆道系の異常を評価するための検査 で、腹部の超音波検査、磁気共鳴画像検査、CT(コンピューター断層撮影)による検査等を いうこと。 ⑦ 「CA19-9等の血液中の腫瘍マーカーの検査」は、胆管がん等が存在する可能性や病勢等 について評価するための検査であること。 ⑧ 「赤血球数等の赤血球系の血液検査又は血清間接ビリルビンの検査」は、1,2−ジク ロロプロパンによる溶血性貧血等の血液学的異常を評価するための検査であること。 なお、「赤血球系の血液検査及び血清間接ビリルビンの検査」は、当該業務に常時従事 する労働者に対して行う健康診断におけるものに限るものであること。 ⑨ 1,2−ジクロロプロパン洗浄・払拭業務(1,2−ジクロロプロパン有機溶剤混合物を 用いて行う業務に限る。)に常時従事する労働者に対し、特化則第41条の2において準用す る有機則第29条の特殊健康診断と特化則第39条の特殊健康診断とを併せて行う場合には、 共通の項目については重ねて実施する必要はないこと。 ただし、当該項目についての結果の記録については、特化則及び有機則それぞれの規定 に基づき作成し、保存しなければならないこと。 セ 法第66条第2項後段の特殊健康診断の対象物に係る裾切値(特化則別表第5関係) 改正政令による施行令第22条第2項の改正により、法第66条第2項後段の特殊健康診断の対象業 務として、1,2−ジクロロプロパン又はこれを含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定 めるものを用いて屋内作業場において行う印刷機等の洗浄又は払拭の業務が規定されたことに伴 い、これらの物に係る裾切値を1%としたこと。 ソ 1,2−ジクロロプロパン洗浄払拭業務を特殊健康診断の対象業務として規定したことに伴い、 特化則様式第3号について所要の改正を行ったこと。(特化則様式第3号(裏面)関係) (3) 施行期日(改正省令附則第1条関係) 改正省令は、平成25年10月1日から施行することとしたこと。 (4) 経過措置(改正省令附則第2条から第6条まで関係) ア 改正省令の施行の日(平成25年10月1日)において現に提出されている改正省令による改正前の安衛 則の様式による申請書は、改正省令による改正後の相当様式による申請書とみなすこととしたこと。 また、改正省令の施行の際、現に存する改正省令による改正前の様式による申請書等の用紙は、当 分の間、必要な改訂をした上、使用することができることとしたこと。(改正省令附則第3条、第4条 関係) イ 特化則第38条の8において準用する有機則第5条若しくは第6条の規定に規定する1,2−ジクロロ プロパン等に係る局所排気装置等の設置若しくは移転又は主要構造部分の変更を平成26年1月1日前 に行う場合には、安衛則第86条第1項及び法第88条第2項において準用する同条第1項の規定に基づく 計画の届出を要しないこととしたこと。(改正省令附則第2条関係) ウ 1,2−ジクロロプロパン等を製造し、又は取り扱う設備で、改正省令の施行の日(平成25年10月 1日)において現に存するものについては、平成26年9月30日までの間は、特化則第38条の8において 準用する有機則第5条及び第6条の規定は、適用しないこととしたこと。(改正省令附則第5条関係) ※ 本通達において、特定化学物質の類型の一つとしてのエチルベンゼン等については、「エチルベンゼ ン等」と表記していること。別紙1(PDF:147KB)