鉄鋼業
ベルトコンベヤーの運転では、種々の条件によってベルトに蛇行や片寄りが起こり、そのためにベルト自身およびベルトカバー、ローラー用ブラケット、シュート等に損傷を生ずる場合が多い。正転と逆転が可能なリバースコンベヤーでは、特にこの傾向が著しい。このようなベルトの蛇行、片寄りを修正するために、従来からガイドローラー型、テーパーローラー型等の調整装置が使用されている。
しかし、これらの装置では、ベルトの片寄り状況を見ながら、作業者が人力で調整用ローラー部を押したり、引いたり(写真32)、またロープや番線で引いたりしながら(写真33)調整作業を行うために、はさまれ、巻き込まれ等の災害の危険性が大きかった。そこで、無動力で、自動的にベルトの片寄りを調整できる装置の開発を図ることとした。
この装置の構成は図30に示す。コンベヤー架台の両側に設けた回転式縦軸に、ガイドローラーと2本のレバーが付属し、これらのレバーには調整用連結棒と調整用ワイヤが取り付けられ、さらにこのワイヤは既設の調芯器に連結されている。その作動の原理は、ベルト端(耳)に接触したガイドローラーがベルトの片寄りを検知して、回転式縦軸に旋回運動を与え、この作用がレバーと調整用ワイヤを通じて、調芯器の角度を自動的に変えることにより、ベルトの片寄りを修正するものである。特に、運搬物をシュートから落下させるときに、ベルトが片寄っていると、荷も片寄って載ることになり、このような場合のベルト位置の修正は従来困難であったが、本装置の採用によって、この問題も解決された。その作動例を図31に示す。
図31−(A)のコンベヤー乗継部のシュート内に運搬物が付着して滞留すると、ベルト上で片荷状態となって、荷重でベルトが右側に片寄る。この片寄ったベルト端(耳)が図31−(B)、(C)のように、右側のガイドローラーを押して回転式縦軸を旋回させると、その作用がレバーを通じて右側の調整用ワイヤを自動的に作動させる(ベルト進行方へベルトの片寄りに応じた分だけ引っ張る)。その結果、片寄り是正の方向へ調芯器を旋回させ、片寄って落ちる荷の中心にベルト中央部を合わせることによって、ベルトの片寄りを解消させる。
なお、ベルトが左側に片寄った場合は、上記と反対に作動し、また、ベルトが逆方向の運転の場合には、この調整装置1式を逆向きに取り付ける。
- 安全性の向上:従来、人力で強制的に行っていたベルトの片寄調整作業を自動化したため、はさまれ、巻き込まれ等の危険性が解消した。
- 操業の安定:ベルトの片寄りによるコンベヤーの突発的停止が減少した。
- 環境保全:運搬物の落下が防止できたため、構内の清潔保持に効果があり、掃除の労力も減少した。
- 設備損傷の減少:ベルトの過度の片寄りによる設備の損傷が減少したため、補修費が低減できた。
昭和62年2月〜11月
なし(すべて遊休品、廃材を利用)
有り