鉄鋼業
電動機のオーバーホールに伴う分解および組立工程において、従来の方法では、
- ① カップリング抜き作業(図5)では、クレーンでつった油圧プーラーを使用するので、その落下、または心金と肩当てとよぶ治具の飛来、指先の圧傷等の危険性があった。
- ② 回転子の抜き・入れ作業(図6)では、軸に差し込む継ぎ足し用パイプの外れによる回転子の落下等の危険性があった。
そこで、上記の作業における安全面の改善および能率の向上を目的として、電動機オーバーホール作業の機械化を図ることとした。
「電動機オーバーホールマシン」とよぶ装置を開発した。この装置は電動機の分解と組み立ての作業、すなわちカップリング、ベアリングおよび回転子の脱着を、全工程2人操作による1台の装置で、しかも極めて安全に作業できるように機械化したものである。その構造は、図7に示すように、次の4部分で構成されている。
固定台:カップリングとベアリングを抜くそれぞれのプーラーおよび回転子片軸を固定するチャックを備え、それらを使い分けるための旋回機能をもつ。
カップリング、回転子受け台車:抜き取ったカップリングと回転子を受けるもので、昇降機能と走行機能をもつ。
固定子台車:電動機を載せ、その上下左右を一定位置に合わせることを目的とするもので、昇降機能、横行機能、走行機能および旋回機能をもつ。
心押し台車:回転子片軸を固定するための心押し軸とローリングセンターを備え、軸の出入機構と走行機能をもつ。
カップリング抜き作業の手順(図8)
- ① 電動機を固定子台車に載せ、走行、横行、昇降の各機能を操作し、電動機軸とマシンのセンターを合わせる。
- ② 操作盤の押しボタンで、エアモーターを作動させてプーラー爪を閉じ、カップリングにセットする。
- ③ 操作盤の押しボタンで、電動油圧ポンプを作動させてシリンダーを押し出し、電動機軸端に圧力をかける。
- ④ ガスバーナーでカップリングを加熱する。
- ⑤ 油圧ポンプの圧力を徐々に増し、カップリングを抜き取る。
- ⑥ カップリング受け台車を走行させ、ジャッキを操作してカップリングを受ける(写真3)。
- ⑦ プーラー爪を開放し、クレーンでカップリングをつりだす。
回転子抜き作業の手順(図9)
固定子台車上の電動機のブラケットとベアリングを取り外したのち、
- ① 固定台を旋回してチャックを振り向け、で回転子片軸を固定する。
- ② 心押し台車を走行させ、他方の回転子片軸を固定する。
- ③ 固定子台車を微動で下降させ、回転子と固定子のすき間を確保する。
- ④ 固定子台車を走行させ、回転子を抜き出す(写真4)。
- ⑤ 回転子受け台車を走行させ、ジャッキを操作して回転子を受ける。
- ⑥ 心押し台車を走行させて開放する。
- ⑦ クレーンで固定子と回転子をつりだす。
なお、組立作業は分解作業と逆工程で実施する。
- カップリング抜き作業では、心金がネジ込み着脱式となり、また肩当て治具も不要となったため、それらの飛来の危険性が全くなくなった。
- 回転子の抜き・入れ作業では、両軸端の支持がチャックと心押し台車による固定のため、回転子落下の危険性が全くなくなるとともに、落下等による回転子の損傷も予防できる。
- 一連の作業の機械化によって、作業者の大幅な疲労軽減、および省力化による作業能率の向上ができた。
昭和62年7月〜12月
機材購入費約300万円(グループ員による手作り)
有り