安全衛生情報センター
石綿の種類には、アクチノライト、アモサイト、アンソフィライト、クリソタイル、クロシドライト及 びトレモライトがあることとされ、すべての種類の石綿及びこれをその重量の0.1%を超えて含有するも のを石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)等に基づく規制の対象と しているところである。 標記に関連する日本工業規格として、平成26年3月28日付け官報に新たにJIS A 1481-1(建材製品中の アスベスト含有率測定方法−第1部:市販バルク材からの試料採取及び定性的判定方法)、JIS A 1481-2 (建材製品中のアスベスト含有率測定方法−第2部:試料採取及びアスベスト含有の有無を判定するための 定性分析方法)及びJIS A 1481-3(建材製品中のアスベスト含有率測定方法−第3部:アスベスト含有率の X線回折定量分析方法)(以下「JIS法」という。)が公示され、近日JIS A 1481の廃止が公示される予定で ある。 建材中の石綿含有率の分析方法等に係る留意事項については、平成18年8月21日付け基安化発第0821001 号及び平成20年7月17日付け基安化発第0717003号で示していたところであるが、上記日本工業規格の改 廃等を踏まえ、今般、改めて整理の上、下記のとおりとしたので、貴局管内の作業環境測定機関等の分析 機関並びに建築物等の解体等の作業を行う事業者及び関係事業者団体に対し周知を図り、当該分析の的確 な実施に遺漏なきを期されたい。 また、関係事業者団体等に対して、別添2のとおり周知したので了知されたい。
1 既に廃止前のJIS A 1481により石綿等の使用の有無の分析を行ったものについては、新設後のJIS法 により改めて分析調査を行う必要はないこと。 2 JIS法と同等以上の精度を有する分析方法としては、平成18年8月21日付け基発第0821002号「建材中 の石綿含有率の分析方法について」(以下「局長通達」という。)の記の2の(3)の「その他別途示す分析 方法」として、廃止前の平成17年6月22日付け基安化発第0622001号「建材中の石綿含有率の分析方法に ついて」(以下「0622001号通達」という。)の別紙「建材中の石綿含有率の分析方法」の2の(3)の①の イの「位相差顕微鏡を使用した分散染色分析法による定性分析」があること。ただし、当該方法は、JI S A1481-2の8.2の「位相差・分散顕微鏡による分散染色法」による定性分析方法に相当するものである ことから、その取扱いについては、局長通達の記の2の(1)と同様であること。 3 JIS法を実施するに当たっては、厚生労働省HP(本通達記の7参照)に公開されている石綿含有建材分析 マニュアル(以下「マニュアル」という。)に記載された事項に留意して実施すること。特に、JIS A 1 481-1において石綿不検出であることを判定する場合は、マニュアルの内容に留意して判定すること。 なお、マニュアルの内容は今後、最新の知見等を踏まえ改訂することがあるので常に最新版を参照す ること。 4 JIS A 1481-1は、偏光顕微鏡法に習熟した顕微鏡使用者向けに作成されており、基礎的な分析技法 は記載されていない。分析機関等においてISO法を実施するに当たっては、分析者の習熟度に応じ、例 えば、測定関係団体の実施する講習を受講することや自社で研修を実施する等JIS A 1481-1が求める 程度の技能に習熟している必要があることに留意すること。 5 JIS A 1481-2による定性分析においては石綿を含有していると判定されたにもかかわらず、JIS A 1481-3の定量分析において石綿回折線のピークが確認できない場合の取扱いについては、次の通りで あること。 (1) 定量のための二次分析試料又は三次分析試料を作製し、JIS A 1481-3の6「基底標準吸収補正法に よるX線回折定量分析方法」により定量分析を行う場合において、石綿回折線のピークが確認できない ことがあり得るが、その場合においては、一般にJIS A 1481-3で定める定量下限(以下「定量下限」と いう。)以下とされていることから、定量下限が0.1%以下であるときには、石綿がその重量の0.1%を 超えて含有しないものとして取り扱うものとすること。 (2) 同じく石綿回折線のピークが確認できない場合において、定量下限が0.1%を超える場合、又は不 純物による影響等のため石綿回折線のピークの有無の判断が困難な場合については、石綿がその重量の 0.1%を超えて含有しているものとして取り扱うものとすること。 6 石綿が0.1%を超えて含有するか否かを判断する定量分析については、JIS A 1481-3又は平成18年8 月28日基安化発第0828001号「天然鉱物中の石綿含有率の分析方法について」により行う必要があるが、 事業者が石綿が0.1%を超えて含有しているものとして関係法令に規定する措置を講ずるときは、この 限りではないこと。 したがって、例えば、次のような分析を行って、0.1%を超えて含有しているとして必要な措置を講 ずるときは、改めてJIS A 1481-3等による分析の必要はないこと。 なお、平成17年3月18日付け基発第0318003号「石綿障害予防規則の施行について」の記の第3の2(1) オに基づき、吹き付け材の除去作業等発じんが多い作業については、できるだけ石綿等の含有率につい ても分析し、ばく露防止対策を講ずる参考とすることが望ましいこと。 (1) JIS A 1481-1により分析を行った結果、石綿の繊維が確認され、石綿を含有していると判定され た場合 (2) JIS A 1481-2の7.に掲げる「二次分析試料によるX線回折分析方法による定性分析方法」又は廃止 前の0622001号通達の別紙の2の(3)の「定性分析」により分析を行った結果、石綿を含有していると 判定された場合。なお、これにはJIS A 1481-3による定量分析を行わず、左記の結果により、事業者 が石綿がその重量の0.1%を超えて含有しているものとして関係法令に規定する措置を講ずる場合が 含まれること (3) 局長通達の記の2の(1)の分析方法(廃止前の平成8年3月29日付け基発第188号「建築物の耐火等吹 付け材の石綿含有率の判定方法について」(以下「188号通達」という。)の別紙の第3の3の「位相差 顕微鏡を使用した分散染色法による分散色の確認」による定性分析の方法)により分析を行った結果、 石綿の種類に応じた分散色が確認された場合 (4) 廃止前の188号通達の別紙の第4の「石綿の含有率の判定方法」又は廃止前の0622001号通達の別紙 の2の(4)の「エックス線回折分析法(基底標準吸収補正法)による定量分析」により分析を行った結果、 石綿が0.1%を超えて含有していると判定された場合 7 厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou /roudoukijun/sekimen/jigyo/mortar/index.html)において、マニュアルや建材中の石綿含有率の分 析方法に関する最新の知見を踏まえ作成した資料を公表しているので、分析機関に対する指導に当たっ ては、これらも活用すること。 8 分析調査については、平成20年2月6日付け基安化発第0206003号「石綿障害予防規則第3条第2項の規 定による石綿等の使用の有無の分析調査の徹底等について」(以下「分析調査徹底通達」という。)に基 づき、引き続き、的確な実施に遺漏なきを期されたい。 なお、過去に行った分析調査において、アモサイト、クリソタイル及びクロシドライト(以下「クリ ソタイル等」という。)がその重量の0.1%を超えて含有しないと判断されたものについて、分析調査徹 底通達の記の2の(1)又は(2)に基づき、アクチノライト、アンソフィライト及びトレモライトを対象と してJIS法による分析調査を行った際に、定性分析を行う過程において、クリソタイル等の含有の可能 性があると判断されるときは、分析機関はその旨を分析依頼者に報告し、適切に対処すること。 9 吹付け材として使用されているバーミキュライトの分析に当たっては、平成21年12月28日付け基安化 発1228第1号「バーミキュライトが吹き付けられた建築物等の解体等の作業に当たっての留意事項につ いて」に留意して行うこと。 10 JIS A 1481-3の解説に記載された海外の標準試料の輸入・使用に当たっては、労働安全衛生法第55 条ただし書きに基づく都道府県労働局長の許可が必要となること。また、輸入後の譲渡は認められない ため、当該試料を使用する予定の分析機関が直接輸入する必要があることに留意すること。ただし、輸 入に係る輸出元の事業者との調整等諸事務を輸入業者に代行させることについては、輸入業者が輸入行 為それ自体を行うものではないため、認められること。また、これら海外の標準試料を用いた場合のJI S A 1481-3の6.1に定める検量線の作成に当たっては、公益社団法人日本作業環境測定協会の標準試料 による作製された検量線と比較し、補正を行う必要があること。 11 関係通達を次のとおり改正する。 平成18年8月28日基安化発第0828001号「天然鉱物中の石綿含有率の分析方法」、分析調査徹底通達、平 成21年12月28日基安化発1228第1号「バーミキュライトが吹き付けられた建築物等の解体等の作業に当 たっての留意事項について」中の「JIS A 1481(建材中の石綿含有率の分析方法について)(以下「JIS 法」という。)」を「JIS A 1481-1(建材製品中のアスベスト含有率測定方法−第1部:市販バルク材か らの試料採取及び定性的判定方法)、JIS A 1481-2(建材製品中のアスベスト含有率測定方法−第2部: 試料採取及びアスベスト含有の有無を判定するための定性分析方法)及びJIS A 1481-3(建材製品中の アスベスト含有率測定方法−第3部:アスベスト含有率のX線回折定量分析方法)(以下「JIS法」という)」 に改めることとする。 また、平成21年12月28日基安化発1228第1号「バーミキュライトが吹き付けられた建築物等の解体等 の作業に当たっての留意事項について」本文中「JIS法によりウィンチャイト等」を「JIS法中JIS A 1 481-2又はJIS A 1481-3によりウィンチャイト等」、記の2及び記の3中「JIS法」を「JIS法中JIS A 1 481-2又はJIS A 1481-3」に改めることとする。 平成18年8月21日基安化発第0821001号及び平成20年7月17日基安化発第0717003号は、本通達をもっ て廃止する。