平成6年度及び平成7年度に中央労働災害防止協会大阪労働衛生総合センターが行った和歌山県漆器商工業共同組合の労働衛生調査により、同組合員である漆器産業において有機溶剤曝露があり、労働衛生管理上の問題が見出だされた。本報告書は平成8年度に、同じ研究グループが同じ組合を対象として、有機溶剤取扱い作業に関する労働衛生管理の評価を行うためのチェックリストを作成し、事業場の調査結果の評価と問題点の提起を行った報告である。
チェックリストは「安全衛生診断マニュアル」と「自主点検・評価のためのチェックリスト」から成る。「安全衛生診断マニュアル」は事業場の形態や有機溶剤取扱い作業の実態、作業環境測定や健康診断の実施、塗装作業場の安全衛生診断及び職場改善調査票から成る。「自主点検・評価のためのチェックリスト」は作業準備、作業方法、作業後の点検、教育管理・体制に関する36項目から成る。
このチェックリストを用いて安全衛生実態調査を行った結果、事業場の従業員数は平均6.3人、塗装作業場には全て塗装ブースがあり、1事業場当たり塗装ブース台数は平均2.3台であったが、ブースの定期点検や環境改善は行っていない作業場が多かった。作業標準書の作成は少なく、有機溶剤の保管や取扱いの管理に問題が見いだされた。一般健康診断と有機溶剤健康診断を定期的に行っている事業場は半数以下であり、衛生管理者または衛生推進者の選任は25事業場のうち 3事業場のみで見られた。有機溶剤作業主任者の選任は25%の事業場であった。
多項目に亘る調査結果から、日常的または定期的に行う必要がある安全衛生管理項目を抜き出し、今後の作業及び作業環境の改善と快適化の方向を示している。
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