「石綿及び繊維状物質等の有害性に関する調査」委員会は石綿及び石綿代替繊維に係る国際機関、主要国の規制動向を文献的に把握することを目的としている。特に、石綿は重度の健康障害を誘発することが、科学的に明らかであることから、規制が強化される動向が認められる。我が国においては特化則の対象物質として作業環境測定が義務づけられ、2f/ccで作業環境の管理が義務づけられている。また社会的にも石綿問題が顕在化しており、労働環境においても今後どのような労働衛生対策を、より一層推進するかが、重要な化学物質管理対策の1つの課題と考える。
本委員会は石綿に焦点を絞り、国際機関(WHO、EU)、主要国(イギリス、フランス、アメリカ)のばく露限界値の設定の根拠及び法規制の動向について文献的に調査を実施し、今後の労働衛生対策の基礎資料とすることを目的として調査を実施した成果を取りまとめたものである。
日本産業衛生学会(産衛学会)は2000年4月に発表した「許容濃度等の勧告(2000)」において、新たな石綿の「過剰発ガン生涯リスクレベルに対応する評価暫定値」を提案した。
本報告書が検討する石綿の「ばく露限界値」に対応するわが国の学会の示す値は、この産衛学会の「評価値」は諸外国にも例を見ない概念であるが、産衛学会の許容濃度決定における原則的な立場と、発がん作用についての基本的理解の体系から導き出されたものであり、そのことについて説明している。そして、産衛学会の評価値を定めた基本の考え方は、科学的な知見の制度への適応において、非常に原則的で厳格な立場であり、産業現場の許容濃度の決め方としては世界でも最も進んだ考え方といっても差し支えない。そこで、この考え方を物差しに、国際機関、主要国の石綿のばく露限界値の根拠を検討している。
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