自動車・同付属品製造業
この職場では、プレス型を乾式でNC加工している。プレス型には8〜10mm程度の切削余肉があり、自動運転加工後には大量の切粉が発生する。
従って、次の加工を行う前にテーブル上に溜まった切粉を掃除しなければならない。従来は作業者が直接テーブル上に乗り、長柄ほうきを使って手作業で切粉を取り除いていた(図1)。しかし、その作業には以下のような問題点があった。
- ① テーブル上に溜まった大量の切粉の上を歩くことは滑りやすく、転倒の危険がある。
- ② 切粉が靴の中に入り刺さる、あるいはズボン等に付着し更衣室までまき散らす。
- ③ テーブル上には16本のTナット溝があり、中に詰まった切粉を取り除くためにほうきの柄の部分を使って押し出している。しかし、この作業には押し出す力が約29kg必要であり、上腕部等の負担が大きい。
- ④ 前かがみの姿勢による長時間連続作業で、腰部や上腕部に負担がかかり、作業後の疲労が大きい。
これらの負担から作業者を解放するため、NC加工機そのものを利用して、切粉掃除作業を自動化するように改善を行った。
従来使用していた掃除道具を改造して、NC加工機の主軸に取り付け、自動運転で切粉を掃除する方法を考案し、作業者による掃除を廃止した。
4種類の掃除道具をATC(オートツールチェンジャー)のポット内にセットし(図2)、①テーブル上の切粉荒掃き(写真1)、②溝の切粉荒掃き、③テーブル上仕上げ、④Tナット溝の仕上げ(写真2)の4行程で、用途に応じて自動連続運転により掃除道具を交換して、テーブル上を縦横方向に動かし、切粉がほとんど除去できるNCプログラムを作成した。
掃除道具がテーブル上を移動する運転速度は10m/分程度で主軸を回転させていないので運転中に切粉が周囲に飛散するおそれはない。
安全上の措置として、主軸に取り付けた掃除道具に多大な過負荷が生じた場合、掃除道具の柄の部分が折れるように切欠きを施した。約100kgの負荷で切欠き の部分が折れるが、テーブル上に倒れるのみであり、折れた掃除道具が跳ねて飛ぶ等の危険はない。これは主軸を傷めないための措置でもある。
この改善により、作業者は上腕部、腰部への負担の大きい作業、切粉による切傷等の負傷の危険、転倒の危険から解放され、快適な職場づくりのための一助となった。
また、掃除作業の自動運転の間に、完成した型の品質チェックや、次の加工品のプログラム作成等の段取りができるようになり、約30分の時間短縮が図られた。
平成10年1月〜3月
10,000円
無し