安全衛生情報センター
平素より労働安全行政の推進に御理解と御協力を賜り厚く御礼申し上げます。 さて、厚生労働省では、平成28年度の労働安全対策の推進に当たり、下記の事項に重点を置いた取組を 進めることとしています。 つきましては、了知の上、別紙一覧に記載された関係通達等に御配意いただき、会員への周知等に特段 の御配慮を賜りますよう御協力をよろしくお願いいたします。
1 足場等からの墜落・転落防止対策 (1) 平成27年7月に施行された改正労働安全衛生規則(以下「安衛則」という。)で規定された足場等か らの墜落防止措置について周知徹底を図るとともに、足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要 綱(以下「推進要綱」という。)に基づく対策の実施を指導する。 (2) 足場の組立て等作業に従事する労働者に対する特別教育については、改正安衛則の施行の際に現に 従事していた労働者に係る経過措置は平成29年6月30日までとされていることから、事業者、関係団 体等に対しては、計画的な教育の実施を指導する。また、屋内作業等で使用する高さ2メートル以下 の内部足場の組立等作業に従事する労働者に対しても、特別教育の実施を指導する。 (3) 足場の組立て等作業主任者の選任及び職務の徹底等安衛則の遵守の徹底を図る。 (4) 十分な敷地を確保できる場合は一側足場ではなく本足場を設置するよう指導する。 (5) 足場の組立て等に当たっては、手すり先行工法の積極的な採用を促進する。 2 その他の墜落・転落災害防止対策 (1) ハーネス型安全帯の普及促進のためのパンフレットを活用して、ハーネス型安全帯の普及促進を図 る。 (2) 屋根改修工事や太陽光パネル取付工事等において足場の設置が困難な場合には、適切な安全帯取付 設備を設置して安全帯の使用を徹底するよう指導する。 (3) また、屋根上での改修等の作業では、安全帯取付設備の位置が低いため、墜落時の衝撃が大きくな ることから、ショックアブソーバー付きハーネス型安全帯の使用を勧奨する。 (4) 休業4日以上の墜落・転落災害においては、「はしご等」を起因物とするものが約3割を占めている ことから、はしご等からの墜落・転落災害の防止に関するパンフレットを作成し、はしご等からの墜 落・転落災害の防止について周知、指導を行う。 3 建設工事関係者連絡会議の運営 建設工事関係者連絡会議の運営に当たっては、「建設工事関係者連絡会議の設置について」(平成26 年4月11日付け基安発0411第1号)に基づき、安全衛生に配慮した発注の促進、統括安全衛生管理の徹底 のための相互パトロールの実施、新規参入者教育、建設工事に従事する労働者に対する安全衛生教育 (建設従事者教育)等の促進について協議し、実行する。 4 建設業労働安全衛生マネジメントシステムの普及 建設事業者の的確な安全衛生管理活動を推進するため、建設業労働安全衛生マネジメントシステムの 普及促進を図る。普及に当たっては、上記3の建設工事関係者連絡会議等の機会を捉え、活用を図る。 5 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会対策 (1) 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて、競技施設の建設や首都圏を中 心としたインフラ整備、再開発等の建設投資が増大することが見込まれるが、これらに対し、現場の 作業に習熟した労働者、現場管理者が不足する等により、労働災害が増加することも懸念される。こ のため、建設需要の動向や建設業関連職種の有効求人倍率の状況も勘案し、個別指導及び集団指導等 を実施する。 (2) 平成28年度の委託事業において、首都圏を対象にした新規入職者等に対する安全衛生教育及び建設 現場に対する専門家の技術指導を実施する。 (3) 加えて、新国立競技場等の大会施設工事の安全衛生対策については、関係省庁、発注機関及び建設 業団体で構成する「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会大会施設工事安全衛生対策協 議会」を平成28年1月に立ち上げたところであり、大会施設工事が今後の快適で安全な建設工事のモ デルとなるように安全衛生対策を徹底する。 6 建設工事における安全衛生経費の確保対策 (1) 建設工事における安全衛生経費の確保について、昨年6月に厚生労働省と国土交通省の連名で作成 したパンフレットを活用し、経費の積算に当たっては労働災害防止のために必要な経費を盛り込むこ とについて、建設事業者及び発注者に対して、建設工事関係者連絡会議等の場を活用し、周知、要請 する。 (2) 平成28年度において委託事業により、建設工事における安全経費の確保に係る実態調査を行い、今 後、適切な安全衛生経費の確保のための施策を一層推進する。 7 転倒災害防止対策(「STOP!転倒災害プロジェクト」) 平成27年度に引き続き転倒災害の防止を図るため、「今後の転倒災害防止対策の推進について」(平 成28年1月13日付け基安発0113第5号)に基づき、「STOP!転倒災害プロジェクト」に沿って転倒災害防 止ための周知、指導を行うとともに、転倒災害を発生させた事業場に対して自主点検の実施及び報告書 の提出を求めることにより、再発防止に係る意識づけ及び改善措置の実施を促進する。 8 交通労働災害防止対策 建設業の死亡災害に占める交通事故の割合は近年増加しており、特に現場と事務所間の往復における 死亡者数が過半数を占めていることから、「交通労働災害防止のためのガイドライン」(平成20年4月3 日基発第0403001号)」、「交通の方法に関する教則(国家公安委員会告示)」等の周知徹底を図る。 9 熱中症対策 平成27年の職場における熱中症の死亡者数は、特に建設業及び建設現場に付随する警備業において急 増し、猛暑であった平成22年と同程度となる見込みである。このため、「平成28年の職場における熱中 症予防対策の重点的な実施について」(平成28年2月29日基安発0229第1号)に基づき、建設事業者等に対 して、特に屋外作業における留意事項、作業を管理する者や労働者に対する労働衛生教育の実施等につ いて周知、指導する。 10 じん肺予防対策 平成25から29年度を期間とする「第8次粉じん障害防止総合対策」の重点事項として、①アーク溶接 作業と岩石等の裁断等作業に係る粉じん障害防止対策、②ずい道等建設工事における粉じん障害防止対 策、③離職後の健康管理を掲げており、引き続きこれらの対策を推進する。 11 外国人建設就労者等の労働災害防止対策 (1) 外国人労働者(外国人建設就労者受入事業及び外国人技能実習制度による受入れ外国人を含む。)を 雇用する事業場に対し、「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための 指針」に示す安全衛生教育の実施、労働災害防止のための日本語教育等の実施、労働災害防止に関す る標識・掲示等について周知、指導する。 (2) 外国人建設就労者については、昨年12月に厚生労働省と国土交通省の連名で作成したパンフレット 「外国人建設労働者の労働災害の防止のために」を活用して周知徹底を図る。なお、外国人建設就労 者については、平成28年度委託事業において、外国人建設就労者及びその使用者を対象とした安全衛 生に係る研修会を開催する予定であり、その活用を図る。 12 石綿健康障害予防対策 (1) 石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業の発注者は、当該作業の請負人に対し、当該建築 物等における石綿等の使用状況等の通知を行う。 (2) また、当該建築物等における石綿等の使用状況等を把握していない場合には、石綿障害予防規則 (平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)第3条に基づく事前調査を請負人に着実に 実施させる。 (3) (1)の発注者等は、石綿等の使用の有無の調査、解体等の作業の方法、費用又は工期等について、 石綿則等の規定の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮する。 13 職長等指導力向上教育の活用 委託事業により、建設業の職長等を対象に指導力向上教育研修会を開催する予定であるので、同事業 の周知を図る。また、建設工事関係者連絡会議において、発注者等にも周知し、関係者の参加を勧奨す る。 14 建設工事従事者教育の徹底 「建設工事に従事する労働者に対する安全衛生教育について」(平成15年3月25日付け基安発第0325001 号)に基づき、建設現場で働く労働者が守らなければならない労働安全衛生法令の遵守事項等の基本的 事項についての教育の推進を図る。また、建設工事関係者連絡会議において、発注者等にも周知し、関 係者の参加を勧奨する。 15 各種ガイドライン等の周知徹底等 (1) ずい道等建設工事における災害防止については、「シールドトンネル施工に当たっての留意事項に ついて」(平成24年8月6日付け基安安発0806第1号)に加え、新たに防止対策を検討し、その結果に基 づいて指導を行う。 (2) 「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」(平成27年6月29日付け基安安発0629 第1号)等に基づき、掘削工事現場を指導するとともに、建設工事関係者連絡会議等の機会を捉えて発 注者等に対しても周知徹底を図る。また、「斜面の点検者に対する安全教育実施要領」(平成27年6月 29日付け基安安発0629第4号)に基づく教育を受けた者が点検者となるよう、併せて指導する。 (3) 「山岳トンネル工事の切羽における労働災害防止対策に係るガイドライン」を通達する予定である ので、山岳トンネル工事関係者及び公共工事発注者等に対し、周知徹底を図る。 (4) のり面保護工事等を行う事業者に対する集団指導や個別指導等の機会を捉え、昨年改正された安衛 則に基づくロープ高所作業における危険の防止措置について周知、指導を行う。 16 建設工事の現場等における荷役災害防止対策 建設工事の現場等において、荷役作業に従事する陸上貨物運送事業の労働者が死亡する労働災害が多 発していることから、荷主、配送先及び元請事業者等(以下「荷主等」という。)に対し、荷役ガイドラ インに基づく荷主等としての取組の必要性を説明するとともに、「荷役作業場所のチェックリスト」(平 成27年8月27日付け基安安発0827第8号の別添)を活用した荷役作業場所の確認等の取組を荷主等が参集 する機会を捉え要請する。 17 東日本大震災に関連する安全衛生対策 (1) 復興庁は平成27年度に集中復興期間が終了し、平成28年度から復興・創生期間に移行することとし ていることを踏まえ、これまでの除染工事、生活基盤の復旧工事、建築物等の解体工事等が減少し、 住宅建築工事等の建築工事が本格化することが予想される。こうした状況にあることを踏まえ、引き 続き地方自治体及び国の出先機関の発注情報により復旧・復興工事の情報を把握し、工事の進捗状況 に応じて、住宅建築工事、除染工事、生活基盤の復旧工事、建築物等の解体工事等について、集団指 導、パトロール、個別指導等を組み合わせることにより引き続き効果的・効率的な指導を実施する。 (2) 建築工事については、建築確認申請を受け付ける市町村、委託事業により設置される東日本大震災 復旧復興工事労災防止支援センター、木造家屋等低層住宅建築工事安全対策協議会等と連携を図りつ つ、必要な指導等を行う。 (3) 木造家屋建築工事に対する指導に当たっては、「木造家屋等低層住宅建築工事における労働災害防 止対策の推進について」(平成8年11月11日付け基発第660号の2)に基づき、足場先行工法等による工 事の実施、安全衛生管理体制の整備等について指導する。墜落・転落災害防止対策については、1及び 2を踏まえ実施する。 (4) 鉄骨・鉄筋コンクリート造家屋建築工事については、墜落・転落災害防止対策に重点を置くととも に、クレーン等作業、土工事、杭工事等の安全対策の徹底を図る。 (5) 除染工事や生活基盤の復旧工事等に対する指導に当たっては、特に、重機による災害、墜落・転落 災害、土砂崩壊災害等重篤な災害につながりやすい労働災害の防止を図る。このうち道路復旧工事等 では、「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」で定められた各種措置の実施に ついて、建設工事関係者連絡会議や「東日本大震災復旧・復興工事関係者連絡会議」等の場を活用し、 関係発注機関等の取組を促進すること。 (6) 復旧・復興工事等における上下水道やガス、電気等のインフラ整備に伴う小規模な溝掘削工事にお いては、土砂崩壊災害を防止するため、引き続き、関係発注機関等に対して「土止め先行工法」の更 なる普及に努めるよう働きかける。 (7) 「東日本大震災復旧・復興工事関係者連絡会議及び工事エリア別協議組織の設置について」(平成23 年10月21日付け基安発1021第2号)に基づき、エリア別協議組織の円滑な運営に資するよう、復旧・復 興工事の進捗状況に応じ、適切な時期に県単位の連絡会議を開催する。 (8) 復旧・復興工事には、建設業に初めて就業する者が多い状況が引き続き見込まれること、他地域か らの技能労働者等が被災地域に集まっていること等から、新規参入者に対する安全衛生教育が確実に 実施されるよう指導するとともに、委託事業において実施する新規参入者等、専門工事業者の安全衛 生管理担当の責任者等、中小総合工事業者の管理監督者等に対する安全衛生教育の活用を図る。また、 委託事業で実施する建設業の職長等に対する指導力向上教育研修会への参加を積極的に勧奨する。