(別紙1) 振動障害総合対策要綱 第1 振動障害予防対策の推進について 1 基本的な考え方 振動障害予防対策については、これまで、振動の周波数、振動の強さに関わりなく、振動工具の操 作時間を原則として1日2時間以下とすること等の措置を講じてきたが、国際標準化機構(ISO)等の動 向を踏まえて、周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値及び振動ばく露時間で規定される1日8時間の 等価振動加速度実効値(日振動ばく露量A(8))の考え方等に基づく振動障害予防対策の普及等を図る ことが必要である。 各労働局においては、以下に示す事項に留意しつつ、各労働局の実情等を考慮し、重点対策の絞り 込みや行政手法に工夫を凝らすなど、効果的な振動障害予防対策を推進すること。 2 振動障害予防推進計画の策定 各労働局においては、振動工具の製造事業者、輸入事業者等に対して、平成21年7月10日付け基発0 710第3号「振動工具の「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」の測定、表示等について」に基づ き、振動工具への周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値の表示等を指導するとともに、振動工具の 使用事業者等に対して、平成21年7月10日付け基発0710第1号により改正された昭和50年10月20日付け 基発第610号「チエンソー取扱い業務に係る健康管理の推進について」の別添2「チェーンソー取扱い 作業指針」及び平成21年7月10日付け基発0710第2号「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係 る振動障害予防対策指針について」の別紙「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障 害予防対策指針」に基づき、新たな対策の普及等を図ることを最重点事項として、管内の状況に応じ た振動障害予防推進計画を策定し、計画的に、振動工具の製造事業者、輸入事業者及び使用事業者等 に対して指導を行うこと。 3 指導に当たっての重点事項 事業場に対する指導に当たっては、次に掲げる事項を中心に、効果的な指導に努めること。 (1)予防対策指針等の普及徹底 「チェーンソー取扱い作業指針」及び「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障 害予防対策指針」に掲げる作業管理、健康管理等について周知、徹底を図ること。 指導に当たっては、周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値及び振動ばく露時間で規定される日 振動ばく露量A(8)の考え方に基づく対策を最重点に行うこと。 また、振動工具の点検・整備の状況によっては振動レベルが大きく変動することから、当該工具 の点検・整備の実施に係る指導並びに健康診断及びその結果に基づく措置が重要な役割を担ってい ること等から、昭和50年10月20日付け基発第609号「振動工具の取扱い業務に係る特殊健康診断の実 施手技について」に基づく特殊健康診断の実施等に係る指導も重点的に行うこと。 なお、振動工具の使用事業場における実施状況の把握等においては、別紙2及び別紙3の自主点検 表を活用すること。 (2)振動工具管理責任者の選任及び振動工具の点検・整備の励行 振動工具の状況等について定期的に点検等を行い、振動工具を良好な状態で管理することを職務 とする「振動工具管理責任者」を、次により、各事業場ごとに選任し、当該職務の徹底を図らせる こと。 ア 振動工具を使用する事業場については、「振動工具管理責任者」を選任すること。特に、振動 工具を5台以上有する事業場に対しては重点的に指導すること。 イ 「振動工具管理責任者」は振動工具の取扱い、構造等に習熟した者の中から選任すること。 ウ 「振動工具管理責任者」は振動工具台帳を作成し、i)振動工具の購入年月日、ii振動工具 の周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値、iii)毎日の点検結果等を記載すること。 エ 「振動工具管理責任者」の氏名及びその職務を事業場の見やすい箇所に掲示し周知すること。 (3)安全衛生推進者等の選任及び職務の徹底 衛生管理者、安全衛生推進者等の選任及び職務の徹底を図らせること。 (4)健康管理の充実 ア 事業者が、振動工具の取扱い業務に係る特殊健康診断を実施するよう指導すること。この場合、 定期の特殊健康診断のみならず雇入れ時又は配置換えの際の特殊健康診断も実施されるよう留意 すること。 イ 特殊健康診断の結果に基づく事後措置の徹底を図るよう指導すること。特に、健康診断の結果 が、昭和50年10月20日付け基発第610号「チエンソー取扱い業務に係る健康管理の推進について」 の別添「チエンソー取扱い業務に係る健康管理指針」等に基づく健康管理区分「管理B」である労 働者については、振動へのばく露を少なくするよう低振動の振動工具の使用、振動ばく露時間の 短縮等に配慮すること。 (5)振動工具取扱作業者等に対する安全衛生教育の徹底 ア 日振動ばく露量A(8)の考え方に基づく対策も含めて、チェーンソー取扱い作業者に対する労働 安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づく特別の教育及び平成4年4月23日付け基発第260号 「チェーンソーを用いて行う伐木等の業務(労働安全衛生規則第36条第8号の業務のうちチェーン ソーを用いて行うもの及び同条第8号の2の業務)従業者安全衛生教育について」に基づく教育の 実施を徹底させること。 イ チェーンソー以外の振動工具取扱作業者に対して、日振動ばく露量A(8)の考え方に基づく対策 も含めて、昭和58年5月20日付け基発第258号「チェーンソー以外の振動工具取扱作業者に対する 安全衛生教育の推進について」に基づく教育を行うよう指導すること。 ウ 建設業において、関係請負人が労働者に対し、いわゆる新規入場者教育を行う場合には、日振 動ばく露量A(8)の考え方に基づく対策も含めた振動障害予防に係る教育も併せて行うよう指導す ること。 4 対策の推進に当たっての留意事項 振動障害予防対策の円滑な推進を図るため、次の事項に留意すること。 (1)対象事業場の把握及び好事例の収集等資料の整備 対象事業場及び作業実態等の把握に努め、好事例等の資料の整備を図ること。 (2)事業場に対する指導 指導においては、振動障害予防に係るパンフレットを活用するなど、その効果的な実施を図ること。 (3)労働災害防止団体等に対する指導・援助 労働災害防止団体及び事業者団体に対し、引き続き本要綱に基づく振動障害予防対策の推進につ いて指導するとともに、適宜、振動障害予防に関する講習会、研究会の開催等について指導・援助 を行うこと。 (4)製造事業者団体等に対する指導 本省においては、振動工具の製造事業者団体等に対し、製造事業者等による振動工具への表示等 について指導するものとすること。 また、これらの振動工具の製造事業者及び輸入事業者等に対しても、同様の指導を行うものとす ること。 (5)行政施策の活用等 ア 林業巡回特殊健康診断は、健康診断実施の定着化を図る上で有効な手段であることに留意し、 この効果的な活用を図ること。 イ 林業については、林業チェーンソー取扱労働者健診促進システムを活用し、特殊健康診断未受 診者及びその事業者に対する受診勧奨の徹底を図ること。 ウ 特別教育に加えて、チェーンソーを用いて行う伐木等の業務に従事している者に対しては、 「危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針の公示について」 に基づき教育を行うこと。 エ 林業については、改正された「チェーンソー取扱い作業指針」の普及等に資するため、平成元 年10月27日付け基発第582号「チェーンソー取扱作業指導員について」に基づくチェーンソー取扱 作業指導員に対し、周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値及び振動ばく露時間で規定される 1日8時間の等価振動加速度実効値(日振動ばく露量A(8))の考え方等に基づく対策等を研修の上、 当該指導員の効果的な活用を図ること。 (6)関係行政機関との連携 ア 林業については、日振動ばく露量A(8)の考え方に基づく振動障害予防対策の推進のための協力 要請を行うなど、農林水産省林野庁森林管理局・森林管理署と連携を図ること。 イ 建設業については、発注機関連絡会議等の効果的な活用により、日振動ばく露量A(8)の考え方 に基づく振動障害予防対策の推進について理解と協力を求めること。 ウ 本省においては、農林水産省、国土交通省、経済産業省に対して日振動ばく露量A(8)の考え方 に基づく振動障害予防対策の推進のための協力要請を行うなど、関係省庁との連携を図るものと すること。 第2 補償対策について 1 業務上外の認定 振動障害の業務上外の認定については、迅速かつ適正な認定に努めること。 このため、昭和52年5月28日付け基発第307号「振動障害の認定基準について」によるほか、特に次 の点に留意すること。 (1)保険給付の請求に係る労働者等の既往歴、作業従事歴等を十分把握すること。 また、必要に応 じ、主治医その他専門医の意見を十分聴くこと。 (2)既往歴に振動障害の類似疾患が認められる場合、振動業務への従事期間が前記通達の基準に満た ない場合及び振動業務を離脱した後相当期間を経過して発症した場合等については、必要に応じ鑑 別診断を受けさせること。 2 療養 振動障害の療養については、「振動障害の治療指針」(昭和61年10月9日付け基発第585号)を活用 し、振動障害療養者がより適切な治療を受けることができるよう努めること。 3 保険給付 振動障害に係る保険給付については、平成8年1月25日付け基発第35号「振動障害に係る保険給付の 適正化について」等に基づき、個々の振動障害療養者の症状を的確に把握する等により、適正な給付 に努めること。 なお、就労の機会の有無と休業補償給付の支給要件とは別個の事柄であって、労働者災害補償保険 法(昭和22年法律第50号)上、就労の機会が確保されていないことを理由として、療養上休業の必要 性がなくなった者について休業補償給付を継続して支給することはできないことについて、主治医等 に対して十分周知し、給付の適正を期すること。 第3 社会復帰対策の推進について 振動障害者の社会復帰については、「被災労働者の社会復帰対策要綱」(平成5年3月22日付け基発 第172号「被災労働者の社会復帰対策の推進について」)及び平成8年5月11日付け基発第311号「振動 障害者に係る社会復帰援護制度の拡充等について」に基づき次の対策を推進すること。 1 社会復帰指導の実施 振動障害者のうち、療養を継続しながら就労することが可能と医師が認める者であって、社会復帰 を希望するものに対し、的確な社会復帰指導を計画的に実施すること。 2 社会復帰援護制度の積極的な周知及び活用 振動障害者に対する社会復帰援護制度に係る各種援護金等の支給については、平成8年に制度拡充 等が行われたことを踏まえ、引き続き個別の社会復帰指導時における説明、その他広報等により、 振動障害者社会復帰援護金等の各種社会復帰援護制度について積極的な周知及び活用の促進に努める こと。 3 関係行政機関等との連携 地方被災労働者社会復帰促進連絡会議の活用等により、振動障害者の社会復帰について職業安定機 関及び職業能力開発機関の一層の理解と協力が得られるよう努めること。特に、林業における振動障 害者の社会復帰に関しては、林業振動障害者職業復帰対策協議会及び同地区協議会の活用を図ること。 別紙2(PDF:152K) 別紙3(PDF:60K)