(別添)

過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置

1 趣旨
  長時間にわたる過重な労働は疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには、脳・心臓
 疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られている。働くことにより労働者が健康を損なう
 ようなことはあってはならないものであり、当該医学的知見を踏まえると、労働者が疲労を回復するこ
 とができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさせ
 ないようにするため、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重要である。
  このため、厚生労働省においては、平成14年2月から「過重労働による健康障害防止のための総合対
 策」(以下「旧総合対策」という。)及び旧総合対策の廃止に伴い平成18年3月17日付け基発第0317008
 号「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」により新たに策定された「過重労働によ
 る健康障害防止のための総合対策(以下「総合対策」という。)」に基づき所要の対策を推進してきたと
 ころであるが、働き方の多様化が進む一方で、長時間労働に伴う健康障害の増加など労働者の生命や生
 活にかかわる問題が深刻化しており、これに的確に対処するため、長時間労働の是正等の働き方改革の
 推進を目的とした働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)によ
 り、労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「労基法」という。)労働安全衛生法(昭和47年法律第57
 号。以下「安衛法」という。)、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号。以
 下「労働時間等設定改善法」という。)等が改正され、罰則付きの時間外労働の上限規制の導入や長時
 間労働者への医師による面接指導の強化、勤務間インターバル制度の導入の努力義務化などが行われ、
 一部の規定を除き、平成31年4月1日から施行されたところである。
  本措置は、このような背景を踏まえ、過重労働による労働者の健康障害を防止することを目的として、
 以下のとおり、事業者が講ずべき措置を定めたものである。

2 時間外・休日労働時間等の削減
 (1) 時間外労働は本来臨時的な場合に行われるものであり、また、時間外・休日労働時間(休憩時間を
  除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間をいう。以下同じ。)が1月
  当たり45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強まるとの医学的知見
  が得られている。このようなことを踏まえ、事業者は、労基法第36条の規定に基づく協定(以下「36
  協定」という。)の締結に当たっては、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代
  表する者とともにその内容が「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日
  の労働について留意すべき事項等に関する指針」(平成30年厚生労働省告示第323号)に適合したもの
  となるようにするものとする。
   また、労基法第36条第3項に規定する限度時間(以下「限度時間」という。)を超えて時間外・休日
  労働をさせることができる場合をできる限り具体的に定めなければならず、「業務の都合上必要な場
  合」、「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものを定めることは
  認められないことに留意するとともに、限度時間を超え時間外・休日労働させることができる時間を
  限度時間にできる限り近づけるように協定するよう努めなければならないものとする。
   さらに、1月当たり45時間を超えて時間外労働を行わせることが可能である場合であっても、事業
  者は、実際の時間外労働を1月当たり45時間以下とするよう努めるものとする。
   加えて、事業者は、休日労働についても削減に努めるものとする。
 (2) 事業者は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成
  29年1月20日策定)に基づき、労働時間の適正な把握を行うものとする。
 (3) 事業者は、労基法第41条の2第1項の規定により労働する労働者(以下「高度プロフェッショナル制
  度適用者」という。)を除き、裁量労働制の適用者や労基法第41条各号に掲げる労働者(以下「管理監
  督者等」という。)を含む全ての労働者について、安衛法第66条の8の3の規定により労働時間の状況
  を把握し、同法第66条の8第1項又は第66条の8の2第1項に基づく医師による面接指導を実施するなど
  健康確保のための責務があることなどに十分留意し、当該労働者に対し、過重労働とならないよう十
  分な注意喚起を行うなどの措置を講ずるよう努めるものとする。
 (4) 事業者は、高度プロフェッショナル制度適用者に対して、労基法第41条の2第1項第3号に基づく健
  康管理時間の把握、同項第4号に基づく休日確保措置(以下「休日確保措置」という。)、同項第5号に
  基づく選択的措置(以下「選択的措置」という。)及び同項第6号に基づく健康・福祉確保措置(以下
  「健康・福祉確保措置」という。)を実施するものとする。

3 年次有給休暇の取得促進
  事業者は、労基法第39条第7項に基づき、年5日間の年次有給休暇について時季を指定し確実に取得さ
 せるとともに、年次有給休暇を取得しやすい職場環境づくり、同条第6項に基づく年次有給休暇の計画
 的付与制度の活用等により年次有給休暇の取得促進を図るものとする。

4 労働時間等の設定の改善
  労働時間等設定改善法第4条第1項に基づく、労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第108
 号。以下「改善指針」という。)においては、事業主及びその団体が労働時間等の設定の改善(労働時間、
 休日数、年次有給休暇を与える時季、深夜業の回数、終業から始業までの時間その他の労働時間等に関
 する事項について労働者の健康と生活に配慮するとともに多様な働き方に対応したものへと改善するこ
 とをいう。)について適切に対処するために必要な事項を定めている。今般の働き方改革関連を推進す
 るための関係法律の整備に関する法律の施行に伴い、改善指針が改正されたところであり、事業者は、
 過重労働による健康障害を防止する観点から、労働時間等設定改善法及び改善指針に留意しつつ、必要
 な措置を講じるよう努めるものとする。
  特に、労働時間等設定改善法において努力義務として規定された勤務間インターバル制度は、労働者
 の生活時間や睡眠時間を確保するためのものであり、過重労働による健康障害の防止にも資することか
 ら、事業者はその導入に努めるものとする。

5 労働者の健康管理に係る措置の徹底
 (1) 健康管理体制の整備、健康診断の実施等
 ア 健康管理体制の整備
  (ア) 事業者は、安衛法に基づき、産業医、衛生管理者、衛生推進者等を選任し、その者に事業場にお
   ける健康管理に関する職務等を適切に行わせる等健康管理に関する体制を整備するものとする。
    なお、常時使用する労働者が50人未満の事業場の場合には、産業保健総合支援センターの地域
   窓口(以下「地域産業保健センター」という。)の活用を図るものとする。
  (イ) 事業者は、安衛法第13条の規定等に基づき、産業医に対し、以下の情報を提供するものとする。
   なお、労働者数が50人未満の事業場であって、同法第13条の2の規定に基づき、労働者の健康管理
   等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師又は保健師(以下「医師等」という。)を選任し
   た事業者は、以下の情報を医師等に提供するよう努めるものとする。
   a 既に講じた健康診断実施後の措置、長時間労働者若しくは高度プロフェッショナル制度適用者
    に対する面接指導実施後の措置若しくは労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査の結
    果に基づく面接指導実施後の措置又は講じようとする措置の内容に関する情報(これらの措置を
    講じない場合にあっては、その旨及びその理由)
   b 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る当該超え
    た時間に関する情報又は健康管理時間(労基法第41条の2第1項第3号の規定等に基づき、事業場内
    にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間をいう。以下同じ。)が、1週間当た
    り40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1月当たり80時間を超えた高度プロフ
    ェッショナル制度適用者の氏名及び当該適用者に係る当該超えた時間に関する情報
   c a及びbに掲げるもののほか、労働者の作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、深夜
    業等の回数・時間数などの労働者の業務に関する情報のうち、産業医が労働者の健康管理等を適
    切に行うために必要と認める情報
  (ウ) 事業者は、安衛法第13条の規定等に基づき、労働者の健康管理等について産業医から勧告を受け
   たときは、当該勧告を受けた後遅滞なく、当該勧告の内容及び当該勧告を踏まえて講じた措置又は
   講じようとする措置の内容を、措置を講じない場合にあってはその旨及びその理由を衛生委員会又
   は安全衛生委員会(以下「衛生委員会等」という。)に報告しなければならないものとする。
  (エ) 事業者は、安衛法第13条の3の規定等に基づき、産業医等が労働者からの健康相談に応じ、適切
   に対応するために必要な体制の整備を次のとおり実施するものとする。
   a 事業者は、産業医の業務の具体的な内容、産業医に対する健康相談の申出の方法(健康相談の日
     時・場所等を含む。)及び産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法につい
     て労働者に周知するものとする。
   b 医師等を選任した事業者は、医師等の業務の具体的な内容、医師等による健康相談の申出の方
     法(健康相談の日時・場所等を含む。)及び医師等による労働者の心身の状態に関する情報の取
     扱いの方法について労働者に周知するよう努めるものとする。
  (オ) 衛生委員会等における調査審議
    事業者は、安衛法第18条の規定等に基づき、衛生委員会等を毎月1回以上開催するものとする。
    また、衛生委員会等において、以下に掲げる長時間労働者等に対する面接指導及び労働者のメン
   タルヘルス対策に関する事項等について、調査審議するものとする。
    なお、常時使用する労働者が50人未満の事業者においては、関係労働者の意見を聴くための機会
   を設ける等労働者の意見が反映されるよう努めるものとする。
   <長時間労働者等に対する面接指導等(医師による面接指導及び面接指導に準ずる措置をいう。以
    下同じ。)に係る事項>
     (高度プロフェッショナル制度適用者以外について)
    a 裁量労働制の適用者や管理監督者等を含む全ての労働者の労働時間の状況の把握に関すること
    b 面接指導等の実施方法及び実施体制に関すること
    c 面接指導等の申出が適切に行われるための環境整備に関すること
    d 面接指導等の申出を行ったことにより当該労働者に対して不利益な取扱いが行われることが
     ないようにするための対策に関すること
    e 面接指導等を実施する場合における「事業場で定める必要な措置の実施に関する基準」の策
     定に関すること
    f 事業場における長時間労働による健康障害防止対策の労働者への周知に関すること
     (高度プロフェッショナル制度適用者について(ただし、労基法第41条の2第1項に規定する委員
      会(以下「労使委員会」という。)において、調査審議が行われている場合はこの限りでないも
      のとする。))
    g 健康管理時間の把握に関すること
    h 面接指導の実施方法及び実施体制に関すること
    i 面接指導の申出が適切に行われるための環境整備に関すること
    j 面接指導の申出を行ったことにより当該適用者に対して不利益な取扱いが行われることがな
     いようにするための対策に関すること
    k 休日確保措置、選択的措置及び健康・福祉確保措置に関すること
   <メンタルヘルス対策に係る事項>
    a 労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成27年健康保持増進のための指針公示第6号。
     以下「メンタルヘルス指針」という。)において、衛生委員会等で調査審議することとされて
     いる以下の事項等
    (a) 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
    (b) 心の健康づくり計画の策定に係る事項
    (c) 心の健康づくりの体制の整備に関すること
    (d) 事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
    (e) メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
    (f) 労働者の健康情報の保護に関すること
    (g) 心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
    (h) その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること
    b 心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき
     事業者が講ずべき措置に関する指針(平成30年8月22日心理的な負担の程度を把握するための検
     査等指針公示第3号。以下「ストレスチェック指針」という。)において、衛生委員会等で調査
     審議することとされている以下の事項等
    (a) ストレスチェック制度の目的に係る周知方法
    (b) ストレスチェック制度の実施体制
    (c) ストレスチェック制度の実施方法
    (d) ストレスチェック結果に基づく集団ごとの集計・分析の方法
    (e) ストレスチェックの受検の有無の情報の取扱い
    (f) ストレスチェック結果の記録の保存方法
    (g) ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析の結果の利用目的及び利用方法
    (h) ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の開示、訂正、追加
      及び削除の方法
    (i) ストレスチェック、面接指導及び集団ごとの集計・分析に関する情報の取扱いに関する苦
      情の処理方法
    (j) 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること
    (k) 労働者に対する不利益な取扱いの防止
   <その他の事項>
    a 労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指
     針(平成30年9月7日労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱指針公示第1号。以下「健康
     情報の適正な取扱い指針」という。)において、事業場ごとに定める心身の健康情報の取扱規
     程に関する事項で、衛生委員会等で調査審議することとされている以下の事項等
    (a) 心身の状態の情報を取り扱う目的及び取扱方法
    (b) 心身の状態の情報を取り扱う者及びその権限並びに取り扱う心身の状態の情報の範囲
    (c) 心身の状態の情報を取り扱う目的等の通知方法及び本人同意の取得方法
    (d) 心身の状態の情報の適性管理の方法
    (e) 心身の状態の情報の開示、訂正等(追加及び削除を含む。)及び使用停止等(消去及び第三者
      への提供の停止を含む。)の方法
    (f) 心身の状態の情報の第三者提供の方法
    (g) 事業継承及び組織変更に伴う心身の状態の情報の引継ぎに関する事項
    (h) 心身の状態の情報の取扱いに関する苦情の処理
    (i) 取扱規程の労働者への周知方法
 イ 健康診断の実施
  (ア) 健康診断の実施
    事業者は、安衛法第66条から第66条の7までに基づき、健康診断、健康診断結果についての医師
   からの意見聴取、健康診断実施後の措置、保健指導等を確実に実施するものとする。特に、深夜業
   を含む業務に常時従事する労働者に対しては、6月以内ごとに1回の健康診断を実施しなければなら
   ないことに留意するものとする。なお、医師からの意見聴取の際には、事業者は労働時間等に関す
   る情報を提供することが適当であること。
  (イ) 自発的健康診断制度の活用等
    事業者は、安衛法第66条の2に基づく深夜業に従事する労働者を対象とした自発的健康診断制度
   や、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第26条に基づく血圧等一定の健康診断項目に異常
   の所見がある労働者を対象とした二次健康診断等給付制度の活用について、労働者への周知に努め
   るものとするとともに、労働者からこれらの制度を活用した健康診断の結果の提出があったときに
   は、安衛法第66条の5に基づく事後措置についても講ずる必要があることについて留意するものと
   する。
 ウ 健康教育等
   事業者は、安衛法第69条に基づき、労働者の健康保持増進を図るための措置を継続的かつ計画的に
  実施するものとする。
 (2) 長時間にわたる時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導等(高度プロフェッショナル制
  度適用者を除く。)
 ア 労働時間の状況の把握
   事業者は、安衛法第66条の8の3の規定等に基づき、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュ
  ーター等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録等の客観的な方法その
  他の適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握するものとする。
 イ 産業医及び労働者への労働時間に関する情報の通知
   事業者は、産業医に対し、時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名及び当
  該労働者に係る当該超えた時間に関する情報を提供するものとし、加えて、当該労働者本人に対し、
  当該超えた時間に関する情報を通知するものとする。
   なお、労働者が自らの労働時間に関する情報を把握し、健康管理を行う動機付けとする観点から、
  時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えない労働者から、労働時間に関する情報について開
  示を求められた場合には、これに応じることが望ましいものとする。
 ウ 面接指導等の実施等
  (ア) 事業者は、安衛法第66条の8又は第66条の9の規定等に基づき、労働者の時間外・休日労働時間に
   応じた面接指導等を次のとおり実施するものとする。
   a 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超える労働者であって、申出を行ったものについて
    は、医師による面接指導を確実に実施するものとする。
   b 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超える労働者(aに該当する労働者を除く。)につい
    ては、申出がない場合であっても面接指導等を実施するよう努めるものとする。
   c 時間外・休日労働時間が1月当たり45時間を超える労働者で、健康への配慮が必要と認めた者に
    ついては、面接指導等の措置を講ずることが望ましいものとする。
  (イ) 事業者は、労基法第36条第11項に規定する業務に従事する労働者(以下「研究開発業務従事者」
   という。)に対して安衛法第66条の8安衛法第66条の8の2又は第66条の9の規定等に基づき、労働
   者の時間外・休日労働時間に応じた面接指導等を次のとおり実施するものとする。
   a 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える研究開発業務従事者については、当該研究
    開発業務従事者の申出なしに、医師による面接指導を確実に実施するものとする。
   b 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え100時間を超えない研究開発業務従事者であっ
    て、申出を行ったものについては、医師による面接指導を確実に実施するものとする。
   c 時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超え100時間を超えない研究開発業務従事者(bに該
    当する研究開発業務従事者を除く。)については、申出がない場合であっても面接指導等を実施
    するよう努めるものとする。
   d 時間外・休日労働時間が1月当たり45時間を超える研究開発業務従事者で、健康への配慮が必要
    と認めた者については、面接指導等の措置を講ずることが望ましいものとする。
  (ウ) 事業者は、安衛法第66条の8第1項第66条の8の2第1項又は第66条の9の規定等に基づき、面接
   指導等の実施後の措置等を次のとおり実施するものとする。
   a 上記(ア)のa並びに、(イ)のa又はbの医師による面接指導を実施した場合は、その結果に基づき、
    労働者の健康を保持するために必要な措置について、遅滞なく医師から意見聴取するものとする。
    また、その意見を勘案し、必要があると認めるときは、適切な事後措置を講ずるものとする。そ
    の際、適切な事後措置とは以下のとおりである。
     上記(ア)のa又は上記(イ)のbの場合:就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業
           の回数の減少等
     上記(イ)のaの場合:就業場所の変更、職務内容の変更、年次有給休暇の付与、労働時間の短縮、」
           深夜業の回数の減少等
     なお、医師からの意見聴取の際には、事業者は労働時間等に関する情報を提供するものとする
    (上記5の(1)のアの(イ)参照)。
   b 上記(ア)のb又はc及び上記(イ)のc又はdの面接指導等を実施した場合は、上記(ウ)のaの「上記
    (ア)のa又は上記(イ)のbの場合」に準じた措置の実施に努めるものとする。
   c 面接指導等により労働者のメンタルヘルス不調が把握された場合は、面接指導を行った医師、
    産業医等の助言を得ながら必要に応じ精神科医等と連携を図りつつ対応するものとする。
 エ 面接指導等を実施するための手続等の整備
  (ア) 事業者は、上記ウの面接指導等を適切に実施するために、衛生委員会等において、上記5の(1)の
   (オ)の<長時間労働者等に対する面接指導等に係る事項>のaからfまでの事項について調査審議を行
   うものとする。また、この結果に基づく必要な措置を講ずるものとする。
  (イ) 事業者は、上記ウの(ア)のa又は(イ)のbの面接指導を実施するに当たっては、その実施方法及び
   実施体制に関する事項に、
   a 申出を行う際の様式の作成
   b 申出を行う窓口の設定
   等を含め必要な措置を講じるとともに、労働者が申出を行いやすくする観点から、その周知徹底を
   図るものとする。
 オ 常時使用する労働者が50人未満の事業者の対応
   常時使用する労働者が50人未満の事業者においても、上記(2)のアからエまでの措置を実施する必
  要があるが、ウについては、近隣に専門的知識を有する医師がいない等の理由により、事業者自ら医
  師を選任し、面接指導を実施することが困難な場合には、地域産業保健センターの活用を図るものと
  する。
   また、当該事業場においてエの手続等の整備を行う場合には、事業者は、労働安全衛生規則(昭和
  47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第23条の2に基づき設けた関係労働者の意見を聴くた
  めの機会を利用するように努めるものとする。
   なお、地域産業保健センターで実施する面接指導を、事業者の指示等により対象者が受ける場合に
  は、安衛法第66条の8第2項(同法第66条の8の2第2項において準用する場合を含む。)に規定する事業
  者が指定した医師が行う面接指導に該当することとなるが、この場合、事業者は、対象となる労働者
  の勤務の状況(例えば直近1ヶ月の総労働時間、時間外・休日労働時間、業務内容等)を記した書面を
  当該医師に提出するとともに、安衛則第52条の6に基づき当該面接指導の結果を記録し保存しておく
  ものとする。
 (3) 高度プロフェッショナル制度適用者に対する面接指導等
 ア 健康管理時間の把握
   事業者は、高度プロフェッショナル制度適用者について、タイムカードによる記録、パーソナルコ
  ンピューター等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法により、健康管理時間を把握するも
  のとする。
 イ 産業医への健康管理時間に関する情報提供及び高度プロフェッショナル制度適用者への健康管理時
  間の開示
   事業者は、産業医に対し、1週間当たりの健康管理時間が、40時間を超えた場合におけるその超え
  た時間について1月当たり80時間を超えた高度プロフェッショナル制度適用者の氏名及び当該適用者
  に係る当該超えた時間に関する情報を提供するものとする。
   また、事業者は高度プロフェッショナル制度適用者について、当該適用者の健康管理時間の記録に
  ついて開示を求められた場合には、当該適用者に開示するものとする。
 ウ 面接指導の実施等
  (ア) 事業者は、安衛法第66条の8の4第1項又は第66条の9の規定等に基づき、高度プロフェッショナル
   制度適用者の健康管理時間に応じた面接指導を次のとおり実施するものとする。
   a 1週間当たりの健康管理時間が、40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1月当
    たり100時間を超える高度プロフェッショナル制度適用者については、医師による面接指導を確
    実に実施するものとする。
   b 1週間当たりの健康管理時間が、40時間を超えた場合におけるその超えた時間について、1月当
    たり100時間を超えない高度プロフェッショナル制度適用者であって、申出を行った者について
    は、医師による面接指導を実施するよう努めるものとする。
  (イ) 事業者は、安衛法第66条の8の4第1項又は第66条の9の規定等に基づき、面接指導等の実施後の措
   置等を次のとおり実施するものとする。
   a 上記(ア)のaの医師による面接指導を実施した場合は、その結果に基づき、高度プロフェッショ
    ナル制度適用者の健康を保持するために必要な措置について、遅滞なく医師から意見聴取するも
    のとする。また、その意見を勘案し、必要があると認めるときは、職務内容の変更、有給休暇の
    付与、健康管理時間が短縮されるための配慮等適切な事後措置を講ずるものとする。
   b 上記(ア)のbの面接指導を実施した場合は、上記(ア)のaに準じた措置の実施に努めるものとする。
   c 面接指導により高度プロフェッショナル制度適用者のメンタルヘルス不調が把握された場合は、
    面接指導を行った医師、産業医等の助言を得ながら必要に応じ精神科医等と連携を図りつつ対応
    するものとする。
 エ 面接指導を実施するための手続等の整備
  (ア) 事業者は、上記ウの面接指導を適切に実施するために、衛生委員会等において、上記5の(1)の(オ)
   の<長時間労働者等に対する面接指導等に係る事項>のgからkまでの事項について調査審議を行うも
   のとする(ただし、労使委員会において、調査審議が行われている場合はこの限りでないものとす
   る。)。また、この結果に基づく必要な措置を講ずるものとする。
  (イ) 事業者は、上記ウの(ア)のbの面接指導を実施するに当たっては、その実施方法及び実施体制に
   関する事項に、
   a 申出を行う際の様式の作成
   b 申出を行う窓口の設定
   等を含め必要な措置を講じるとともに、高度プロフェッショナル制度適用者が申出を行いやすくす
   る観点に立ってその周知徹底を図るものとする。
 オ 常時使用する労働者が50人未満の事業者の対応
   常時使用する労働者が50人未満の事業者は、上記アからエの措置を実施する必要があるが、上記ウ
  については、事業者が選任した医師による面接指導の実施が困難な場合には、地域産業保健センター
  の活用を図るものとする。
   また、当該事業場において上記エの手続等の整備を行う場合には、事業者は、安衛則第23条の2に
  基づき設けた関係労働者の意見を聴くための機会を利用するように努めるものとする(ただし、労使
  委員会において調査審議が行われている場合はこの限りでないものとする。)。
   なお、地域産業保健センターで実施する面接指導を、事業者の指示等により高度プロフェッショナ
  ル制度適用者が受ける場合には、安衛法第66条の8の4第2項において準用する同法第66条の8第2項に
  規定する事業者が指定した医師が行う面接指導に該当することとなるが、この場合、事業者は、対象
  となる高度プロフェッショナル制度適用者の勤務の状況(例えば直近1月の健康管理時間、1週間当た
  りの健康管理時間が40時間を超えた場合における1月当たりのその超えた時間又は業務内容等)を記し
  た書面を当該医師に提出するとともに、安衛則第52条の7の4において準用する同則第52条の6の規定
  に基づき当該面接指導の結果を記録し保存しておくものとする。
 カ 選択的措置及び健康・福祉確保措置
   事業者は、高度プロフェッショナル制度適用者に対する休日確保措置、選択的措置及び健康・福祉
  確保措置について、労使委員会で決議した内容に基づき実施するものとする。
 (4) メンタルヘルス対策の実施
 ア メンタルヘルス対策の実施
   「メンタルヘルス指針」に基づき、衛生委員会等における調査審議を通じて策定した「心の健康づ
  くり計画」に基づき、事業者は、心の健康問題の特性を考慮しつつ、健康情報を含む労働者の個人情
  報の保護及び労働者の意思の尊重に留意しながら、労働者の心の健康の保持増進のための措置を実施
  するものとする。
   具体的には、ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じてメンタルヘルス不調を未然
  に防止する一次予防、メンタルヘルス不調を早期に発見し適切な措置を行う二次予防、メンタルヘル
  ス不調となった労働者の職場復帰支援を行う三次予防に取り組むものとする。
   また、教育研修、情報提供並びに「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健ス
  タッフ等によるケア」及び「事業場外資源によるケア」の4つのメンタルヘルスケアが継続的かつ計
  画的に行われるようにするものとする。
 イ ストレスチェックの実施
   安衛法第66条の10により、事業者は、常時使用する労働者に対して1年以内ごとに1回、ストレスチ
  ェックを実施し、申出のあった高ストレス者に対して医師による面接指導を行うとともに、就業上の
  措置について医師の意見を聴き、その意見を勘案して必要な措置を講じること(以上をまとめて「ス
  トレスチェック制度」という。)が義務付けられている(常時使用する労働者が50人未満の事業者にお
  いては、努力義務)。
   このため、事業者は、「ストレスチェック指針」に基づき、ストレスチェック制度を適切に実施す
  る必要がある。
   なお、ストレスチェックの実施によって、過重労働が原因となったメンタルヘルス不調が認められ、
  就業上の措置が必要となる場合があり得る。このため、事業者は、上記(2)又は(3)の長時間労働者等
  を対象とした面接指導等の対応だけでなく、高ストレス者に対する面接指導の結果及び当該結果に基
  づく就業上の措置に係る医師の意見も活用して、過重労働による健康障害防止対策に取り組むこと。
 (5) 過重労働による業務上の疾病を発生させた場合の措置
   事業者は、過重労働による業務上の疾病を発生させた場合には、産業医等の助言を受け、又は必要
  に応じて労働衛生コンサルタントの活用を図りながら、次により原因の究明及び再発防止の徹底を図
  るものとする。
 ア 原因の究明
   労働時間の適正管理、労働時間及び勤務の不規則性、拘束時間の状況、出張業務の状況、交替制勤
  務・深夜勤務の状況、作業環境の状況、精神的緊張を伴う勤務の状況、健康診断及び面接指導等の結
  果等について、多角的に原因の究明を行うこと。
 イ 再発防止
   上記アの結果に基づき、衛生委員会等の調査審議を踏まえ、上記2から5の(3)までの措置に則った
  再発防止対策を樹立し、その対策を適切に実施すること。
 (6) 労働者の心身の状態に関する情報の取扱い
   安衛法第104条第3項の規定に基づく、健康情報の適正な取扱い指針により、事業者は、事業場にお
  ける取扱規程を策定することによって、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するものとす
  る。



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