除染等業務、特定線量下業務及び事故由来廃棄物等処分業務における安全衛生対策の推進について

基発1020第2号
平成26年10月20日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

除染等業務、特定線量下業務及び事故由来廃棄物等処分業務における安全衛生対策の推進について

 標記については、平成24年3月2日付け基発0302第2号「除染等業務における安全衛生対策の推進につい
て」(以下「0302号通達」という。)により推進を図っているところであるが、「東日本大震災により生じ
た放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則」(平成23
年厚生労働省令第152号。以下「除染電離則」という。)及び「電離放射線障害防止規則」(昭和47年労働
省令第41号。以下「電離則」という。)等が改正され、その施行については、平成24年6月15日付け基発06
15第7号「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る
電離放射線障害防止規則等の一部を改正する省令の施行について」及び平成25年4月12日付け基発0412第1
号「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行等について」により指示しているところである。
 また、これら除染電離則等の改正に伴い、「除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガ
イドライン」(平成23年12月22日付け基発1222第6号。以下「除染ガイドライン」という。)が改正される
とともに、「特定線量下業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(平成24年6月15
日付け基発0615第6号。以下「特定線量下ガイドライン」という。)、「事故由来廃棄物等処分業務に従事
する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン」(平成25年4月12日付け基発0412第2号。以下「廃棄
物処分ガイドライン」という。)が新たに策定されたところである。さらに、「除染等業務従事者等被ばく
線量登録管理制度」(以下「線量登録管理制度」という。)への参加の促進を図るため、平成25年12月26日
付け基発1226第17号「除染等業務従事者等被ばく線量登録管理制度について」及び平成25年12月26日付け
基発1226第21号「除染等業務に従事する労働者の放射線障害防止のためのガイドライン等の改正について」
により除染ガイドライン等の改正等を行ったところである。
 事業者が、これらガイドラインと相まって除染電離則等に規定された措置を的確に実施するためには、
現場の実態に即した放射線障害防止対策及び労働災害防止対策が講じられることが重要である。
 ついては、今後の除染等業務、特定線量下業務及び事故由来廃棄物等処分業務(以下「除染関連業務」
という。)における安全衛生対策を下記により推進することとしたので、その実施に遺漏なきを期された
い。
 なお、本通達をもって、0302号通達を廃止する。
1 基本的な考え方
  「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出さ
 れた放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号。以下「特措法」
 という。)が平成24年1月1日に全面施行され、除染等業務が本格化した。さらに、平成24年4月以降順次
 実施された避難区域の区分の見直しに伴い、特措法第25条第1項に規定する除染特別地域又は同法第32
 条第1項に規定する汚染状況重点調査地域(以下これらの地域をまとめて「除染特別地域等」という。)
 において、除染等業務以外の生活基盤の復旧、復興作業等が開始された。加えて、平成25年夏以降、除
 染の進展に伴い、事故由来廃棄物等の処分の業務が本格的に開始されることとなった。
  また、法令に規定された線量管理をより適切に実施するため、除染関連業務に従事する労働者の過去
 の累積被ばく線量の適切な把握、被ばく線量記録等の散逸の防止を目的とした線量登録管理制度が事業
 者団体により自発的に発足したところである。
  厚生労働省では、これらの事態の進展に対応するため、除染電離則を改正し、平成24年7月から施行
 するとともに、電離則を改正し、平成25年7月から施行した。さらに、線量登録管理制度への参加を促
 進するため、除染ガイドライン等を平成25年12月に改正したところである。
  今後、除染関連業務が幅広く実施されることに伴い、業務の業態に応じた放射線障害防止対策及び労
 働災害対策の徹底を図る必要がある。
  このため、特に、除染特別地域等に指定された地域を管轄する都道府県労働局においては、次の点に
 留意の上、除染関連業務における安全衛生対策を重点対策として取り組むこととする。
 (1) 共通事項
  ア 業務の種類に応じて除染ガイドライン等に定める事項の実施について指導を行うこと。
  イ 元方事業者に対しては、労働安全衛生関係法令や除染ガイドライン等に基づき、安全衛生管理体
   制を確立させるとともに、関係請負人の労働者の被ばく管理も含めた一元管理を実施させること。
  ウ 放射線障害防止のため、防じんマスク等の呼吸用保護具及び保護衣等を着用して行う必要がある
   が、これによる熱中症の発生が懸念されるため、平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場にお
   ける熱中症の予防について」に定める必要な事項を実施させること。
  エ 放射線障害のみならず、各種の作業に伴う墜落・転落災害や建設機械関係災害が発生しているた
   め、別紙の「除染関連業務における主な安全確保措置について」に基づき、作業形態や作業に使用
   する機械等に応じた安全確保措置を実施させること。
  オ 除染電離則等及び除染ガイドライン等について、管内状況に応じて、除染関連業務を行う事業者
   や関係事業者団体等に対して周知等を実施すること。
  カ 事業者団体による線量登録管理制度については、除染電離則等に定める被ばく管理を円滑かつ確
   実に実施するために有益であると考えられることから、元方事業者に対し本制度への参加を促すこ
   と。また、本制度の普及のためには、発注上の配慮が重要であることから、適宜発注者に対し協力
   要請を行うこと。
  キ 東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業に従事した労働者を除染関連業務に従事させる
   事業者に対し、電離則第59条の2に基づく被ばく線量等の記録等の提出について周知等を行うこと。
 (2) 除染等業務について
  ア 除染等業務における放射線障害防止対策については、除染電離則の規定及び除染ガイドラインに
   規定された事項について指導すること。
  イ 過去の監督指導又は個別指導(以下「監督指導等」という。)の結果を踏まえ、これらの業務の発
   注者と十分な連携を図り、発注者としても事業者に対し、関係法令の遵守を指導するよう要請する
   こと。
  ウ 除染等業務においては、労働基準関係法令の違反事例も多く見られることから、発注機関である
   環境省や地方公共団体と連携し、効果的かつ総合的な監督指導を実施すること。
 (3) 特定線量下業務について
  ア 特定線量下業務における放射線障害防止対策については、除染電離則の規定及び特定線量下ガイ
   ドラインに規定された事項について指導すること。
  イ 国又は地方公共団体が発注する特定線量下業務は、調査業務等、業務の実施期間が短期間である
   ことが多いことから、関係省庁や地方公共団体との連携を図り、作業現場の把握に努めるとともに、
   発注者としても事業者に対し、関係法令及び特定線量下ガイドラインの遵守を指導するよう要請す
   ること。
  ウ 電力会社等の公益企業が発注する特定線量下業務や、地元企業の事業再開に伴う特定線量下業務
   については、業務の実施期間が長期にわたる可能性があるため、作業場所周辺の空間線量率低減を
   指導し、可能な限り、特定線量下業務に該当しない形での事業を実施するよう指導すること。やむ
   を得ず特定線量下業務を行う場合は、定期的に監督指導等を実施し、空間線量率の低減を継続的に
   指導すること。
 (4) 事故由来廃棄物等処分業務について
  ア 事故由来廃棄物等処分業務における放射線障害防止対策については、電離則の規定及び廃棄物処
   分ガイドラインに規定された事項を指導すること。
  イ 廃棄物処分施設は、規模が大きく、機械等による労働災害の発生が懸念され、また、労働災害が
   発生した場合、放射性物質に汚染された施設内部での救助、災害調査等が困難となることから、電
   離則のみならず、平成5年3月2日付け基発第123号「清掃事業における労働災害防止について」に示
   すところにより、労働災害防止対策の徹底を指導すること。
  ウ 廃棄物等処分施設のうち、焼却施設を有するものについては、「廃棄物焼却施設関連作業におけ
   るダイオキシン類ばく露防止対策要綱」(平成13年4月25日付け基発第401号の2、改正平成26年1月
   10日付け基発第0110第1号。)に示すところにより、ダイオキシン類によるばく露防止措置の実施を
   指導すること。
  エ 事故由来廃棄物等処分業務に伴い、石綿等を含有する廃棄物を容器から取り出す等、石綿等を取
   り扱う作業がある場合は、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」とい
   う。)に規定された措置の実施を指導すること。

2 作業現場の把握等
  除染電離則等に基づく放射線障害防止等の措置の履行確保を図るため、次の点に留意の上、作業現場
 の確実な把握に取り組むこと。
 (1) 除染等業務
  ア 除染特別地域内における土壌等の除染等の措置は、環境大臣が特別除染実施計画を策定し、工事
   の発注者となるが、特定汚染土壌等取扱業務については、国又は地方公共団体の公共工事発注部局
   のほか、公益企業等が発注者となる場合もあることに留意すること。また、除染電離則第10条に基
   づく作業の届出(以下「除染作業届」という。)の対象となる作業現場は、概ね除染特別地域内にあ
   ることから、除染作業届の懈怠を防止する観点にも立ち、環境省の地方支分部局、国若しくは地方
   公共団体の公共工事発注部局又は公益企業等との連携を図ることにより、作業現場の把握に努める
   こと。
  イ 汚染状況重点調査地域内における土壌等の除染等の措置は、市町村が除染実施計画を策定し、工
   事の発注者となるので、その発注担当部局との連携を図ることにより、作業現場の把握に努めるこ
   と。また、除染がすでに終了している市町村もあるため、市町村の発注部局に発注状況を適宜確認
   すること。
  ウ 投書等による情報又は関係行政機関からの情報により、除染作業届の対象であるにもかかわらず
   提出がなされていない作業現場を把握した場合には、局・署間において情報共有を図ること。
 (2) 特定線量下業務
   特定線量下業務は、環境省発注の測量等の事業のほか、居住制限区域において市町村の許可を受け
  て事業を再開する事業場、電力会社等の公益企業が発注する事業等、多様であることから、環境省の
  地方支分部局、地方公共団体、公益企業等との連携を図り、作業場所の把握に努めること。
 (3) 事故由来廃棄物等処分業務
  ア 除染特別地域においては、特措法第13条に規定する対策地域内廃棄物の処理施設、特措法第19条
   に規定する指定廃棄物の処理施設のほか、東日本大震災により生じた廃棄物(災害廃棄物)の代行処
   理を行う焼却炉があり、すでに完成し、運転している施設、建設中の施設、計画中の施設があるこ
   と。さらに、平成27年1月より、除去土壌又は汚染廃棄物の中間貯蔵施設が業務を開始する予定とな
   っていること。いずれの場合も環境省が発注者となっていることから、環境省の地方支分部局と連
   携を図り、施設の設置場所を把握すること。
  イ 除染特別地域外においては、用地の選定作業を実施中であることから、環境省の地方支分部局、
   市町村の廃棄物部局と連携を図り、焼却施設等の建設状況を把握すること。
  ウ 運転している施設については、電離則第41条の14の規定に基づく作業の届出により、設備の保守
   点検等の作業を把握すること。

3 監督指導等の実施
 (1) 除染等業務に係る監督指導等
  ア 上記2の(1)ウにより把握した作業届の提出がなされていない作業現場のほか、作業届の内容や各
   種情報から除染電離則等違反のおそれがある作業現場等については、監督指導等を実施すること。
  イ 上記2の(1)ウにより把握した作業届を提出していないなどの事業者の店社についても、監督指導
   等を実施すること。
  ウ 監督指導等の実施に当たっては、①事前調査、②被ばく線量管理、③被ばく低減のための措置、
   ④汚染の防止、⑤特別の教育、特殊健康診断等、⑥安全衛生管理体制等、⑦安全の確保、⑧熱中症
   の予防を重点的に確認すること。特に特別の教育については規定時間数を満たしているか、特殊健
   康診断については定期に適切に実施しているか等について、記録の確認等により確実に把握するこ
   と。
  エ 除染現場においては、死亡災害等の重篤な災害が発生していることを踏まえ、別紙の安全確保措
   置に係る規定についても確認すること。
  オ 賃金不払等、労働基準関係法令の確認を含めた監督指導を実施すること。
 (2) 特定線量下業務に係る監督指導等
  ア 環境省が発注する測量調査等の事業については、作業実施期間が短期間であることに留意するこ
   と。
  イ 居住制限区域における事業再開や、公益企業等発注による業務については、除染等を実施するこ
   とで、可能な限り特定線量下業務に該当せずに事業を実施できるように、継続的に指導するととも
   に、帰還困難区域又は居住制限区域において継続的に業務を実施する事業者に対しては、定期的な
   監督指導等を実施すること。
  ウ 監督指導等の実施に当たっては、①被ばく線量管理、②特別の教育を重点的に確認すること。
 (3) 事故由来廃棄物等処分施設に係る監督指導等
  ア 可能な限り、本格的な運転開始前に監督指導等を実施することとし、その後は、施設の規模に応
   じ、適切な頻度で監督指導等を実施すること。
  イ 監督指導等の実施に当たっては、①管理区域並びに線量限度及び測定、②施設等における線量の
   限度、③汚染の拡大防止、④事故由来廃棄物等の処分のための施設等が満たすべき要件等、⑤作業
   の管理等、⑥特別の教育、特殊健康診断等、⑦安全衛生管理体制、⑧除染特別地域等における特例
   を重点的に確認すること。
  ウ 監督指導等にあたっては、電離則のみならず、別紙の安全確保措置に係る規定、ダイオキシン類
   関係の規定の遵守状況についても確認すること。また、石綿等を取り扱う作業がある場合は、石綿
   則に規定された措置についても確認すること。
 (4) その他の事項
  ア 線量登録管理制度については、元方事業者に対する安全衛生管理に係る監督指導等において、除
   染ガイドライン等に基づき、線量登録管理制度への参加を促すこと。
  イ 監督指導等を実施した結果、労働安全衛生関係法令等違反その他指導すべき事項が認められた場
   合には、所要の措置を講ずること。

4 発注者に対する要請等
  除染電離則等に基づく放射線障害防止等の措置の履行を図るためには、発注仕様書にそれらの措置の
 実施を盛り込む等、発注者から受注者への指導が必要不可欠である。このため、(1)に掲げる発注機関
 に対し、(2)に掲げる事項の実施を要請すること。
 (1) 要請の対象
  ア 除染等業務については、環境省の地方支分部局及び市町村の除染工事発注部局に対し、要請を行
   うこと。なお、特定汚染土壌等取扱業務については、公共工事連絡協議会等の場を活用し、公共工
   事発注機関に対して要請を行うこと。
  イ 特定線量下業務については、環境省の地方支分部局及び公益企業等に対して要請を行うこと。
  ウ 事故由来廃棄物等処分業務については、環境省の地方支分部局及び処分施設を管理する市町村に
   対して要請を行うこと。
 (2) 要請の内容
  ア 除染電離則等に基づく放射線障害防止等の措置の確実な履行について仕様書に盛り込む等により、
   発注者として受注者を指導すること。
  イ 除染等業務従事者に対し、除染電離則第19条に基づく特別の教育を実施しているかを確認した上
   で発注を行うこと。
  ウ 汚染検査場所の設置及び汚染検査の適切な実施について、発注者として除染等事業者に対して必
   要な指導援助を行うこと。
  エ 発注仕様書において元方事業者に対して線量登録管理制度に参加することを求めるとともに、制
   度参加に要する経費について、発注上配慮いただくこと。





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