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労働安全衛生法等の一部を改正する法律について

改正履歴
                                       基発第1102002号 
                                       平成17年11月2日


都道府県労働局長 殿


                                   厚生労働省労働基準局長


          労働安全衛生法等の一部を改正する法律について


 労働安全衛生法等の一部を改正する法律(平成17年法律第108号)については、本年9月30日に第163回
国会に提出され、10月26日に原案どおり可決成立し、本日公布されたところである。この法律は、一部
を除き、平成18年4月1日から施行することとしている。
 この法律は、就業形態の多様化の進展等社会経済情勢の変化の中で、労働者の安全と健康の一層の確
保等を図るため、製造業等における労働災害を防止するための措置及び長時間労働者等の健康を保持す
るための措置を充実強化するとともに、労働者災害補償保険における通勤災害に係る通勤の範囲の拡大
及び有期事業に係る確定保険料の特例の改正を行うほか、事業主等による労働時間等の設定の改善に向
けた自主的な努力を促進するため特別の措置を講ずることとする等、労働安全衛生法(昭和47年法律第5
7号)、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和
44年法律第84号)及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(平成4年法律第90号)の4法について改
正を行うものであり、その主たる内容は下記のとおりである。
 この法律の施行のために必要な関係政省令等については、今後、労働政策審議会に諮り、その答申を
得て、制定することとしている。ついては、この法律の円滑な施行に万全を期すため、以上のことを十
分御理解の上、所要の準備に努められたく、通達する。


                       記


第1 労働安全衛生法の一部改正
 1 事業者の行うべき調査等
 (1) 事業者は、建設物、設備、作業等の危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて必要な措
  置を講ずるように努めなければならないものとしたこと。ただし、危険性又は有害性等のある化学
  物質等に係る調査以外の調査については、製造業等の業種に属する事業者に限るものとしたこと。
  (第28条の2第1項関係)
 (2) 厚生労働大臣は、(1)の措置に関して、必要な指針を公表するものとしたこと。(第28条の2第2項
  関係)
 (3) 厚生労働大臣は、(2)の指針に従い、事業者に指導、援助等を行うことができるものとしたこと。
  (第28条の2第3項関係)
 2 製造業等の元方事業者等の講ずべき措置
 (1) 製造業等の事業の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所におい
  て行われることによって生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整その他必要な措置
  を講じなければならないものとしたこと。(第30条の2第1項関係)
 (2) 分割発注のため(1)の措置を講ずべき者が2以上あるときは、発注者等は、(1)の措置を講ずべき
  者として1人を指名しなければならないものとしたこと。(第30条の2第2項関係)
 3 化学物質等を製造し、又は取り扱う設備の改造等の仕事の注文者の講ずべき措置
   化学物質等を製造し、又は取り扱う設備で政令で定めるものの改造その他の厚生労働省令で定める
  作業に係る仕事の注文者は、当該物について労働災害を防止するため必要な措置を講じなければな
  らないものとしたこと。(第31条の2関係)
 4 化学物質等に係る表示及び文書交付制度の改善
 (1) 危険を生ずるおそれのある物で政令で定めるものを、その譲渡又は提供に際して容器又は包装に
  名称等を表示しなければならない物に追加するとともに、容器又は包装に表示しなければならない
  ものとして、当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるものを
  追加等したこと。(第57条第1項関係)
 (2) 危険を生ずるおそれのある物で政令で定めるものを、その譲渡又は提供に際して相手方にその名
  称等を文書の交付等の方法により通知しなければならない物に追加したこと。(第57条の2第1項関係)
 5 健康診断実施後の措置等
 (1) 労働安全衛生法第66条の4の規定による医師又は歯科医師の意見の衛生委員会等への報告を健康
  診断の実施後に講ずべき措置として明記したこと。(第66条の5第1項関係)
 (2) 特殊健康診断を受けた労働者に対するその結果の通知について、一般健康診断の結果の通知と同
  様にこれを行わなければならないものとしたこと。(第66条の6関係)
 6 面接指導等
 (1) 事業者は、その労働時間の状況等が厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労
  働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならないものとしたこと。
  (第66条の8第1項関係)
 (2) 労働者は、(1)の面接指導を受けなければならないものとしたこと。ただし、事業者の指定した
  医師以外の医師が行う(1)の面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を事業者に提出したとき
  は、この限りでないものとしたこと。(第66条の8第2項関係)
 (3) 事業者は、面接指導の結果の記録、面接指導の結果に基づく必要な措置についての医師の意見の
  聴取、その必要があると認める場合の作業等の変更、医師の意見の衛生委員会等への報告等の措置
  を講じなければならないものとしたこと。(第66条の8第3項から第5項まで関係)
 (4) 面接指導の実施に従事した者は、知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないものとしたこと。
  (第104条関係)
 (5) 事業者は、(1)の面接指導を行う労働者以外の労働者で健康への配慮が必要なものについて、必
  要な措置を講ずるように努めなければならないものとしたこと。(第66条の9関係)
 7 計画の届出の免除
   1の(1)に定める措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、労働基準監督署
  長が認定した事業者について、労働安全衛生法第88条第1項又は第2項の規定による建設物又は機械等
  の設置等の計画の届出義務を免除したこと。(第88条第1項及び第2項関係)
 8 教習及び技能講習制度の見直し
   「地山の掘削作業主任者技能講習」と「土止め支保工作業主任者技能講習」との統合、「ボイラー
  据付け工事作業主任者技能講習」の廃止、「特定化学物質等作業主任者技能講習」から「石綿作業主
  任者技能講習」の分離等の見直しを行ったこと。(別表第17及び第18関係)
 9 その他
 (1) 罰則に関し所要の改正を行ったこと。
 (2) その他所要の規定の整備を行ったこと。

第2 労働者災害補償保険法の一部改正
 1 通勤災害保護制度における通勤の範囲の見直し
   就業の場所から他の就業の場所への移動及び住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続
  する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)を通勤災害保護制度にお
  ける通勤に含めるものとしたこと。(第7条第2項及び第3項関係)

第3 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正
1 有期事業に係るメリット制(事業場ごとの災害率による保険料の調整)の見直し
 事業場ごとの災害率による保険料の調整幅の最高限度を、有期事業について40パーセント(現行35パー
 セント)に拡大したこと。(第20条第1項関係)

第4 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正
 1 題名
   題名を「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」に改めたこと。(題名関係)
 2 目的
   法の目的を「我が国における労働時間等の現状及び動向にかんがみ、労働時間等設定改善指針
  を策定するとともに、事業主等による労働時間等の設定の改善に向けた自主的な努力を促進する
  めの特別の措置を講ずることにより、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるよ
  うにし、もって労働者の健康で充実した生活の実現と国民経済の健全な発展に資すること」に改
  めたこと。(第1条関係)
 3 定義
   この法律において、「労働時間等」とは労働時間、休日及び年次有給休暇その他の休暇をいい、
   「労働時間等の設定」は労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関
   する事項を定めることをいうものとしたこと。(第1条の2関係)
 4 事業主等の責務
   1及び2の改正に伴い、事業主等の責務を次のように改めたこと。
 (1) 事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働
  者の始業及び終業の時刻の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講
  ずるように努めなければならないものとすること。(第2条第1項関係)
 (2) 事業主は、労働時間等の設定に当たっては、労働時間等に関する実情等に照らして、健康の保持
  に努める必要があると認められる労働者に対して、休暇の付与等に努めるほか、子の養育又は家族
  の介護を行う労働者、単身赴任者、自ら職業に関する教育訓練を受ける労働者等の特に配慮を必要
  とする労働者について、その事情を考慮する等その改善に努めなければならないこと等とすること。
  (第2条第2項関係)
 (3) 事業主の団体は、その構成員である事業主の雇用する労働者の労働時間等の設定の改善に関し、
  必要な助言、協力その他の援助を行うように努めなければならないものとすること。(第2条第3項
  関係)
 5 労働時間等設定改善指針
 (1) 国が策定するものとされていた労働時間短縮推進計画に代えて、厚生労働大臣が、4に定める事
  項に関し、事業主等が適切に対処するための指針(以下「労働時間等設定改善指針」という。)を
  定めるものとしたこと。(第4条第1項関係)
 (2) 厚生労働大臣は、従前の労働時間短縮推進計画を策定する場合と同様に、労働時間等設定改善指
  針を定める場合には、関係行政機関の長と協議し、都道府県知事の意見を求めるとともに、労働政
  策審議会の意見を聴かなければならないものとしたこと。(第4条第2項関係)
 6 労働時間等の設定の改善の実施体制の整備
   事業主は、労働時間短縮の実施体制の整備に代えて、労働時間等の設定の改善に 関する事項を
  調査審議し、事業主に意見を述べることを目的とする委員会を設置する等必要な体制の整備に努め
  なければならないものとしたこと。(第6条関係)
 7 労働時間等設定改善委員会の決議に係る労働基準法の適用の特例等
 (1) 「労働時間短縮推進委員会」を「労働時間等設定改善委員会」に改め、労働時間等設定改善委員
  会における決議について、従前の労働時間短縮推進委員会における決議と同様に労使協定に代える
  ことができること等としたこと。(第7条第1項関係)
 (2) 労働時間等設定改善委員会が設置されていない事業場において、事業主が労働者の過半数で組織
  する労働組合等との書面協定に基づき、一定の要件に適合する労働安全衛生法に規定する衛生委員
  会(同法に規定する安全衛生委員会を含む。以下同じ。)に、事業場における労働時間等の設定の
  改善に関する事項を調査審議させ、事業主に意見を述べさせることとしたときは、当該衛生委員会
  を労働時間等設定改善委員会とみなして、その決議を労使協定に代えることができること等とした
  こと。(第7条第2項関係)
 8 労働時間等設定改善実施計画
   「労働時間短縮実施計画」を「労働時間等設定改善実施計画」に改め、従前の労働時間短縮実施
  計画と同様に、同一の業種に属する二以上の事業主は、共同して、労働時間等設定改善実施計画を
  作成し、厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣の承認を受けることができること
  等としたこと。(第8条から第11条まで関係)
 9 労働時間短縮支援センターの廃止
   指定法人である労働時間短縮支援センターを廃止したこと。(現行第5章及び第6章関係)
 10 法の廃止期限の削除
   法を平成18年3月31日までに廃止するものとする規定を削除したこと。(現行附則第2条関係)

第5 その他
 1 施行期日
   この法律は、平成18年4月1日から施行するものとしたこと。ただし、第1の4は平成18年12月1日か
  ら、第4の10は公布の日から施行するものとしたこと。(附則第1条関係)
 2 経過措置
 (1) 平成20年3月31日までの間における第1の6の適用については、労働安全衛生法第13条第1項の政令
  で定める規模の事業場(常時50人以上の労働者を使用する事業場)に限るものとしたこと。(附則第
  2条関係)
 (2) (1)に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置を定めたこと。(附則第3条から
  第12条まで関係)
 3 関係法律の整備
   その他関係法律について、所要の規定の整備を行ったこと。(附則第14条及び第15条関係)