安全衛生情報センター
職場における熱中症予防対策については、平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症 の予防について」(以下、「基本対策」という。)により示しているところであるが、平成22年は記録的な 猛暑により、職場における熱中症による死亡者数が熱中症と分類して統計を取り始めた平成9年以降最も 多い47人となった。 一方、平成23年については、5月25日の「全般3か月予報」(気象庁)によれば、6月から8月までの平均気 温について、「東・西日本で平年並みまたは高い確率ともに40%、沖縄・奄美で高い確率50%」とされた ほか、東日本大震災に起因する夏期電力需給対策において、事業所等における節電が求められている。 これらのことを踏まえ、平成23年の職場における熱中症予防対策については、熱中症多発業種である建 設業等及び製造業において、基本対策のうち、特に下記の事項を重点的に実施することとするので、関係 事業場等に対する的確な指導等に遺漏なきを期されたい。 なお、平成22年の職場における熱中症による死亡災害の発生状況について、別紙1のとおり取りまとめ たので、業務の参考とされたい。 おって、関係団体に対しては別添のとおり要請を行ったので、了知されたい。
1 建設業等における熱中症予防対策について (1) 建設業等における熱中症発生状況等 建設業や、建設現場に付随して行う警備業(以下、「建設業等」という。)は、業態として日中、炎 天下の高温多湿場所で作業することが避けられず、WBGT値(暑さ指数)の低減対策が困難であることが 多い。 また、平成22年には、建設業において17名、警備業において2名の死亡災害が発生したところであ るが、熱への順化期間が設定されていなかった事案及び自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を摂取 させていなかった事案がそれぞれ約8割に及んでいること等を踏まえ、建設業等における熱中症予防 対策については、次の(2)を重点事項として、(3)のその他の具体的な実施事項と併せて取り組むこと。 (2) 建設業等における熱中症予防対策の重点事項 次の3項目を重点事項として、熱中症予防対策に取り組むこと。 [1] 管理・監督者が頻繁に巡視を行い確認する、水分・塩分の摂取確認表を作成する又は朝礼等の際 に注意喚起を行う等により、作業者に、自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を定期的に摂取させ ること。 [2] WBGT値について、随時計測を行うほか、予報値等にも留意し、その値がWBGT基準値(熱に順化し ている作業者が身体作業強度が中程度である作業に従事する場合、28℃)を超えるおそれがある場 合には、必要に応じ作業計画の見直し等を行うこと。 [3] 高温多湿作業場所で初めて作業する作業者については、徐々に熱に慣れさせる期間(順化期間)を 設ける等配慮すること。 (3) 建設業等におけるその他の具体的な実施事項 [1] 作業環境管理 ア 直射日光や照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設ける等、作業場所のWBGT値の低減化 を図ること。 イ 作業場所又はその近隣に、臥床することができる日陰等の涼しい休憩場所を確保すること。 [2] 作業管理 ア 休憩時間をこまめに設けて連続作業時間を短縮するほか、WBGT値が最も高くなり熱中症の発症 が多くなり始める午後2時から4時前後に長目の休憩時間を設ける等、作業者が高温多湿環境から 受ける負担を軽減すること。 イ 透湿性・通気性の良い服装(クールジャケット等)を着用させること。また、直射日光下では通 気性の良い帽子やヘルメット(クールヘルメット等)を着用させるほか、後部に日避けのたれ布を 取り付けて輻射熱を遮ること。 ウ 作業中は、作業者の健康状態に異常がないかどうかを確認するため、頻繁に巡視を行うほか、 複数の作業者がいる場合には、作業者同士で声を掛け合う等、相互の健康状態に留意させること。 [3] 健康管理 ア 労働安全衛生法第66条の4及び第66条の5に基づき、健康診断で異常所見があると診断された場 合には、医師等の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。 イ 作業者が糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患等の 疾患を有する場合、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業の可否や作業時の 留意事項等について、産業医・主治医の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換 等を行うこと。 ウ 作業者が睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取、発熱、下痢等の場合、熱中症の発 症に影響を与えるおそれがあることから、作業者に対して日常の健康管理について指導するほか、 その状態が顕著にみられる作業者については、作業場所の変更や作業転換等を検討すること。 [4] 労働衛生教育 作業を管理する者や作業者に対して、熱中症の症状や熱中症の予防方法、緊急時の救急処置等に ついて、労働衛生教育を繰り返し行うこと。また、当該教育内容の実践について、日々の注意喚起 を図ること。 2 製造業における熱中症予防対策について (1) 製造業における熱中症発生状況等 製造業は、工場等屋内作業場での作業が多く、輻射に曝されることは少ないが、今夏の節電の影響 により、WBGT値の低減対策が困難となる場合があることが予想される。 また、平成22年には、製造業において9名の死亡災害が発生したところであるが、その全ての事案 で自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を摂取させていないこと、この点に関する教育が必要である こと等を踏まえ、製造業における熱中症予防対策については、次の(2)を重点事項として、(3)のその 他の具体的な実施事項と併せて取り組むこと。 (2) 製造業における熱中症予防対策の重点事項 次の4項目を重点事項として、熱中症予防対策に取り組むこと。 [1] 管理・監督者が頻繁に巡視を行い確認する、水分・塩分の摂取確認表を作成する又は朝礼等の際 に注意喚起を行う等により、作業者に、自覚症状の有無に関わらず水分・塩分を定期的に摂取させ ること。 [2] 製造業が熱中症多発業種であることを念頭に置いて、作業を管理する者や作業者に対して、特に 次の点を重点とした労働衛生教育を繰り返し行うこと。また、当該教育内容の実践について、日々 の注意喚起を図ること。 ・ 熱中症が疑われる症状 ・ 自覚症状に関わらず水分・塩分を摂取すること ・ 日常の健康管理 ・ 救急処置の方法及び連絡方法 [3] WBGT値について、随時計測を行うほか、予報値等にも留意し、その値がWBGT基準値(熱に順化し ている作業者が身体作業強度が中程度である作業に従事する場合、28℃)を超えるおそれがある場 合には、必要に応じ作業計画の見直し等を行うこと。 [4] 作業場所又はその近隣に、臥床することができる風通しの良い等の涼しい休憩場所を確保するこ と。 (3) 製造業におけるその他の具体的な実施事項 [1] 作業環境管理 熱源がある場合には熱を遮る遮蔽物を設ける等、作業場所のWBGT値の低減化を図ること。 [2] 作業管理 ア 休憩時間をこまめに設けて連続作業時間を短縮するほか、WBGT値が最も高くなり、熱中症の発 症が多くなり始める午後2時から4時前後に長目の休憩時間を設ける等、作業者が高温多湿環境か ら受ける負担を軽減すること。 イ 高温多湿作業場所で初めて作業する作業者については、徐々に熱に慣れさせる期間(順化期間) を設ける等配慮すること。 ウ 透湿性・通気性の良い服装(クールジャケット等)を着用させること。 エ 作業中は、作業者の健康状態に異常がないかどうかを確認するため、頻繁に巡視を行うほか、 複数の作業者がいる場合には、作業者同士で声を掛け合う等、相互の健康状態に留意させること。 [3] 健康管理 ア 労働安全衛生法第66条の4及び第66条の5に基づき、健康診断で異常所見があると診断された場 合には、医師等の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。 イ 作業者が糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患等の 疾患を有する場合、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、作業の可否や作業時の 留意事項等について、産業医・主治医の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換 等を行うこと。 ウ 作業者が睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取、発熱、下痢等の場合、熱中症の発 症に影響を与えるおそれがあることから、作業者に対して日常の健康管理について指導するほか、 その状態が顕著にみられる作業者については、作業場所の変更や作業転換等を検討すること。 3 その他 (1) 事務所における熱中症予防対策について 事務所においては、平成23年5月20日付け基発0520第6号「夏期の電力需給対策を受けた事務所の室 内温度等の取扱いについて」の記の2に留意して、基本対策を講ずること。 (2) WBGT値の予測値・実況値等について 環境省において、平成23年6月1日から9月30日までの間、次のウェブサイト上にてWBGT値の予測値 や実況値等について掲載することとしているので、これらの予測値・実況値等を活用すること。 PCサイト:http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/index.html 携帯サイト:http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/kt/index.html また、WBGT値については、別紙2の「WBGT値と気温、相対湿度との関係」(日本生気象学会「日常生 活における熱中症予防指針」Ver.1 2008.4)も参考とすること。 (3) 順化期間については、7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くすることを目安とすること。 (4) 水分・塩分の摂取量と頻度は、0.1%〜0.2%の食塩水又はナトリウム40〜80mg/100mlのスポーツドリ ンク等を、20〜30分ごとにカップ1〜2杯を目安とすること。別紙1(PDF:98KB)