安全衛生情報センター
労働災害については、死亡者数及び休業4日以上の死傷者数ともに長期的に減少しきており、平成21年 における死亡者数は1,075人で、前年比193人減(-15.2%)と初めて1,100人を下回り過去最少となったと ころである。 しかしながら、本年においては、8月公表の速報値(以下問じ。)で死亡者数が574人に達し、前年同期に 比べて66人、13.0%の大幅な増加となっている。同様に死傷者数についても、6月末現在の速報値で29,056 人に達し、前年同期に比べて604人、2.1%の増加となっている。 その内容を見ると、建設業における墜落・転落、陸上貨物運送事業における交通事故、今夏の猛暑によ る熱中症、林業作業中の災害といった特定の死亡災害(以下「特定災害」という。)等の増加が目立ってい る。 このため、このような労働災害の増加傾向に歯止めをかけるべく、下記事項に留意の上、特定災害その 他管内の労働災害発生状況を踏まえ、監督指導、個別指導等の実施、関係事業者団体への要請、労働災害 防止に係る広報を行う等の労働災害防止緊急対策を実施されたい。 なお、別添のとおり関係団体に緊急要請しているので留意されたい。 おって、本年6月18日に閣議決定された新成長戦略においては、「労働災害のない社会を目指しつつ、 労働災害発生件数を2020年度までに30%引き下げる。」との目標が掲げられたこと、本年度に新たに設置 された労働政策審議会点検評価部会において、上記閣議決定に関連して、2010年度の行政目標として労働 災害発生件数(休業4日以上の死傷災害)の3%削減(対前年)を掲げているので、この点にも留意して積極的 に対策を推進されたい。
1 管内状況の把握と対策の推進 管内の労働災害について、業種別、事故の型別、起因物別等の発生状況を分析し、その状況を踏まえ た実効ある対策を講じること。 なお、労働災害の発生件数は、毎年1月から12月で集計していることから、平成22年については残すと ころ3分の1を切っていることを踏まえ、迅速な対応を図ることに留意すること。 2 特定災害への対応 以下により重点的な対策に取り組むこと。 (1) 建設業における墜落・転落災害 建設業については、死亡者数が187人となっており前年同期に比べて11人、6.3%の増加となってい る。事故の型別の内訳を見ると、墜落・転落災害については81人に達し、前年同期に比べて19人、30.6 %の大幅な増加となっている。このため、労働災害が増加傾向にある都道府県労働局にあっては、年 間計画に予定されている建設業に対する監督指導、個別指導等について、対象となる工事の進捗状況 をも念頭に置きつつ、実施時期を早めて実施するなどにより、墜落・転落災害防止対策の徹底等を図 ること。 (2) 陸上貨物運送事業における交通労働災害 陸上貨物運送事業における交通事故による死亡者数は47人と大幅に増加(昨年同期比17人、56.6% 増)しており、とりわけ深夜時間帯(22〜5時)に19人と多発している(昨年同期比10人、111%増)。 このため、陸上貨物運送事業の事業者に対して、運転業務従事者の睡眠時間の確保に配慮した無理 のない適正な運転時間による走行計画の作成、見直しを行うとともに点呼等の実施により運転業務従 事者の睡眠不足等が著しい場合には運転業務に就かせない等睡眠不足や過労運転による交通労働災害 の防止について重点的に指導すること。 また、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」等に係る指導にも留意すること。 (3) 熱中症等 職場における熱中症による死亡者数については、今夏の猛暑の影響を受け、9月1日時点の速報値で 33人(うち建設業13人、製造業5人、運送業2人、警備業2人、農業4人、林業1人、その他6人)となって おり、極めて高水準の発生状況となっている。また、熱中症にり患しない場合であっても、暑さによ る作業中のふらつき、注意カの低下、熱帯夜による疲労の蓄積等が屋外型産業等における様々な労働 災害を発生させていることも懸念される。また、すでに盛夏を過ぎてはいるものの今後も平年に比べ 高温が続くとの気象予報がある。 このような状況を踏まえ、平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防につ いて」に基づき、労働者の休憩場所の整備、作業時間の短縮、水分・塩分の摂取、透湿性及び通気性 の良い服装(クールジャケット等)の着用等の対策の徹底を指導すること。 また、暑さによる作業中のふらつき、注意力の低下、熱帯夜による睡眠不足による疲労の蓄積等が、 高所からの墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ、交通事故等の労働災害を誘発させるおそれがあるこ とを併せて周知し、作業開始前に労働者の健康状態を確認して適正に作業を実施することが困難な状 況と認められる場合は作業転換を行うとともに、作業開始後は、職長等の作業のリーダーが労働者の 作業状況をよく確認する等の対策を講ずるよう指導すること。 なお、指導の際には、別添の自主点検表を活用すること。 (4) 林業 林業については、死亡者数が34人に達し、前年同期に比べて8人、30.8%の大幅な増加となっている が、間伐作業中の災害が4割を占めているほか、不適切な「かかり木」処理や複数の労働者が比較的接 近して作業していたことが原因である災害が発生しており、また、建設業等の他業種からの新規参入 を背景として経験年数が少ない高年齢者が被災する災害が発生している。 林業については、地球温暖化防止対策の観点から平成24年度までの間、集中的に間伐作業が実施さ れることをも踏まえ、今後、秋以降、本格化する間伐作業における労働災害防止のため、リスクアセ スメントの実施、新規就業者等に対する安全衛生教育の徹底について重点的に指導すること。 (5) 警備業 警備業については、死亡者数が18人と、前年同期に比べて7人、63.6%もの大幅な増加となっている が、事故の型別に見ると交通事故が8人(前年同期比3人増)と最も多い他、はさまれ、巻き込まれによ るものが6人(前年同期比6人増)となっており、中でも建設工事現場内で重機等に巻き込まれる災害が 多発している。 このような状況を踏まえ、警備業の事業者に対して警備業務の契約先等と協議の上、事前に安全を 考慮した業務計画を作成し、その業務計画の内容を交通誘導警備業務に従事する労働者に徹底するこ と及びその際には、警備契約書、警備計画書等に基づき行うべき業務の範囲を交通誘導警備業務に従 事する労働者に十分理解させるよう指導すること。自主点検表(PDF:339KB)