別添
基発0906第1号
平成22年9月6日
業界団体の長
労働災害防止団体の長 殿
厚生労働省労働基準局長

死亡災害の増加に対応した労働災害防止対策の徹底について(緊急要請)

 労働災害については、死亡者数及び休業4日以上の死傷者数ともに長期的に減少しきており、平成21年
における死亡者数は1,075人で、前年比193人減(-15.2%)と初めて1,100人を下回り過去最少となりました。
 しかしながら、本年においては、8月公表の速報値(以下同じ。)において、死亡者数については574人で
前年同期と比べて66人、13.0%もの大幅増加となっており、死傷者数についても29,056人と、604人、2.1
%の増加となっています。
 その内容を見ると、建設業における墜落・転落、陸上貨物運送事業における交通事故、今夏の猛暑によ
る熱中症、林業作業中の災害といった特定の死亡災害(以下「特定災害」という。)の増加が目立っていま
す。
 このため、厚生労働省では、このような労働災害の増加傾向に歯止めをかけるべく、特定災害その他の
労働災害の発生状況を踏まえ、関係事業者に対する指導、関係事業者団体への要請、労働災害防止に係る
広報を行う等の緊急対策を実施することといたしました。
 このような状況を御理解いただき、貴団体におかれましでも、下記事項に御留意の上、労働災害防止対
策の強化を図るよう、支部、会員事業者等に対する周知啓発、指導等をお願いします。
1 各業種に共通する事項
  経営トップ自らが先頭に立ち、生産量、業務量の増加等に十分に対応した安全衛生管理体制となって
 いるか、十分な安全衛生活動が行われているかなどを重点に点検するとともに、墜落・転落災害対策、
 機械設備等に係る対策の徹底、リスクアセスメント及びこれに基づく措置の実施、労働者への雇入れ時
 等の安全衛生教育を徹底すること。

2 特定災害の防止対策
 (1) 建設業における墜落・転落災害の防止対策
   建設業については、死亡者数が187人となっており前年同期に比べて11人、6.3%の増加となってい
  る。 事故の型別の内訳を見ると、墜落・転落災害については81人に達し、前年同期に比べて19人、
  30.6%の大幅な増加となっている。
   このため、高さ2メートル以上の箇所で作業を行う場合には、足場を設置する等の方法により作業床
  を設置することにより、墜落・転落災害防止措置の徹底を図ること。
   また、足場を設置する場合には、改正労働安全衛生規則及び関係通達に基づく墜落防止措置を徹底
  し、足場の組立て及び解体作業に当たっては、作業手順書に基づく足場の組立・解体作業はもとより、
  安全帯の使用等を徹底することにより、足場からの墜落・転落災害防止対策の徹底を図ること。

 (2) 陸上貨物運送事業における交通労働災害の防止対策
   陸上貨物運送事業における交通事故による死亡者数は47人と大幅に増加(昨年同期比17人、56.6%増)
  しており、とりわけ深夜時間帯(22〜5時)に19人と多発している(昨年同期比10人、111%増)。
   このような状況を踏まえ、運転業務従事者に対して、睡眠時間の確保に配慮し、無理のない適正な
  運転時聞による走行計画作成、見直しを行うとともに点呼等の実施により、睡眠不足等が著しい場合
  には、運転業務に就かせないなどの措置について、一層の徹底を図ること。

 (3) 熱中症等の防止対策
   職場における熱中症による死亡者数については、今夏の猛暑の影響を受け、9月1日時点の速報値で
  33人(うち建設業13人、製造業5人、運送業2人、警備業2人、農業4人、林業1人、その他6人)となって
  おり、極めて高水準の発生状況となっている。また、熱中症にり患しない場合であっても、暑さによ
  る作業中のふらつき、注意力の低下、熱帯夜による疲労の蓄積等が屋外型産業等における様々な労働
  災害を発生させていることも懸念される。さらに、すでに盛夏を過ぎてはいるものの、今後も平年に
  比べ高温が続くとの気象予報がある。
   このような状況を踏まえ、平成21年6月19日付け基発第0619001号「職場における熱中症の予防につ
  いて」に基づき、労働者の休憩場所の整備、作業時間の短縮、水分・塩分の摂取、透湿性及び通気性
  の良い服装(クールジャケット等)の着用等の対策について、一層の徹底を図ること。
   また、暑さによる作業中のふらつき、注意力の低下、熱帯夜による睡眠不足による疲労の蓄積等が、
  高所からの墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ、交通事故等の労働災害を誘発させるおそれがあるこ
  とを併せて周知し、作業開始前に労働者の健康状態を確認して適正に作業を実施することが困難な状
  況と認められる場合は作業転換を行うとともに、作業開始後は、職長等の作業のリーダーが労働者の
  作業状況をよく確認する等の対策を講ずること。
   なお、この際には、別添の自主点検表により会員事業場等への周知、啓発等を図ること。

 (4) 林業における労働災害防止対策
   林業については、死亡者数が34人に達し、前年同期に比べて8人、30.8%の大幅な増加となっている
  が、間伐作業中の災害が4割を占めているほか、不適切な「かかり木」処理や複数の労働者が比較的接
  近して作業していたことが原因である災害が発生しており、また、建設業等の他業種からの新規参入
  を背景として経験年数が少ない高年齢者が被災する災害が発生している。
   林業については、地球温暖化防止対策の観点から平成24年度までの間、集中的に間伐作業が実施さ
  れることをも踏まえ、今後、秋以降、本格化する間伐作業における労働災害防止のため、リスクアセ
  スメントの実施、新規就業者等に対する安全衛生教育の徹底を図ること。

 (5) 警備業における労働災害防止対策
   警備業については、死亡者数が18人と、前年同期に比べて7人、63.6%もの大幅な増加となっている
  が、事故の型別に見ると交通事故が8人(前年同期比3人増)と最も多い他、はさまれ、巻き込まれによ
  るものが6人(前年同期比6人増)となっており、中でも建設工事現場内で重機等に巻き込まれる災害が
  多発している。
   このような状況を踏まえ、警備業務の契約先等と協議の上、事前に安全を考慮した業務計画を作成
  し、その業務計画の内容を交通誘導警備業務に従事する労働者に徹底すること。
   その際には、警備契約書、警備計画書等に基づき行うべき業務の範囲を交通誘導警備業務に従事す
  る労働者に十分理解させること。


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