労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針の改正について
基発第0317007号
平成18年3月17日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長
労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針の改正について
労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(平成11年労働省告示第53号。以下「指針」という。)
は、平成18年3月10日付け厚生労働省告示第113号により改正され、本年4月1日から適用することとされた
ところである。
ついては、下記事項に留意の上、労働安全衛生マネジメントシステムの普及に遺漏のないようにされた
い。
なお、平成11年4月30日付け基発第293号は本通達をもって廃止する。
記
第1 指針改正の趣旨
労働災害のさらなる減少を図るためには、個人の経験と能力のみに依存せず、危険性又は有害性を特
定し、リスクの見積り及びリスクを低減させる措置を組織的かつ体系的に実施することが重要であり、
このような取組を推進する仕組みである労働安全衛生マネジメントシステム(以下「システム」という。)
の普及を図る必要がある。
指針は、平成11年に制定され、自主的な安全衛生活動の促進に大きな役割を果たしてきたところであ
るが、労働安全衛生法等の一部を改正する法律(平成17年法律第108号)による労働安全衛生法(昭和47
年法律第57号。以下「法」という。)の改正を踏まえ、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」
(平成18年3月10日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号)と相まって、システムに
従って行う措置の適切な実施を促進するために改正されたものである。
第2 細部事項
1 第2条関係
指針は、事業者が講ずべき機械、設備、化学物質等についての具体的な措置を定めるものではなく、
安全衛生管理に関する仕組みを示すものであること。
2 第4条(適用)関係
(1)指針は、事業場を一の単位として実施することを基本とするが、建設業にあっては、有期事業の
事業場ではシステムに従って行う措置を継続的に実施し、安全衛生水準を段階的に向上させること
が困難であることから、店社及び当該店社が締結した契約の仕事を行う事業場を単位として実施す
ることを基本としたこと。
(2)事業者は、指針を踏まえ、業種、業態、規模等に応じたシステムを定めることができること。
3 第5条(安全衛生方針の表明)関係
(1)労働災害防止のためには、事業者自らの安全衛生に対する姿勢を明確にすることが必要であるこ
とから、事業者が安全衛生方針を表明し、労働者及び関係請負人その他の関係者に周知させること
を規定したものであること。第2項各号は、安全衛生方針に盛り込むことが必要な事項を定めたも
のであること。
(2)「労働者」には、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関す
る法律(昭和60年法律第88号)第45条各項の規定により事業者が使用する労働者とみなされる派遣
中の労働者(建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和51年法律第33号)第44条の規定により
派遣労働者とみなされる送出労働者を含む。)を含むものであること。
(3)「周知」の方法には、例えば、次に掲げるものがあること。
ア 安全衛生方針を口頭、文書、電子メール等により伝達すること。
イ 文書の掲示若しくは備付け又は事業場内コンピュータネットワークでの掲示等により、安全衛
生方針をいつでも閲覧可能な状態にしておくこと。
4 第6条(労働者の意見の反映)関係
「安全衛生委員会等の活用等」の「等」には、安全衛生委員会等の設置が義務付けられていない事
業場における労働者の意見を聴くための場を設けることが含まれること。
5 第7条(体制の整備)関係
(1)第3号の「人材」については、事業場内に必要な知識又は技能を有する者が不足する場合には、外
部のコンサルタント等の助力を得ることも差し支えないこと。
(2)第4号の「教育」は、システムの構築のための業務を行う者、危険性又は有害性等の調査を行う者、
安全衛生計画の作成を行う者、システム監査を行う者等事業場の実情に応じ必要な者に対して実施
すること。また、内容としては、システムの意義、システムを運用する上での遵守事項や留意事項、
システム各級管理者の役割等があること。
なお、教育の対象者、内容、実施時期、実施体制、講師等についてあらかじめ定めておくことが
望ましいこと。
(3)事業者は、その関係請負人が労働者に対しシステムに関する教育を行う場合は、必要な指導及び
援助を行うことが望ましいこと。
6 第8条(明文化)関係
(1)本条は、システムに関係する労働者等への理解を深めるとともに、システムに関する知識を共有
化することにより、システムに従った措置が組織的かつ継続的に実施されることを確保するため、
安全衛生方針等を明文化することが必要であることから規定されたものであること。
(2)第1項第5号の「手順」とは、いつ、誰が、何を、どのようにするか等について定めるものである
こと。
(3)第2項の「文書を管理する」とは、文書を保管、改訂、廃棄等することをいうものであること。
(4)管理の対象となる「文書」は、電子媒体の形式でも差し支えないこと。
7 第9条(記録)関係
(1)「安全衛生計画の実施状況、システム監査の結果等」の「等」には、特定された危険性又は有害
性等の調査結果、教育の実施状況、労働災害、事故等の発生状況等があること。
(2)「記録」は、電子媒体の形式でも差し支えないこと。
(3)「記録」は、保管の期間をあらかじめ定めておくこと。
8 第10条(危険性又は有害性等の調査及び実施事項の決定)関係
第1項の「危険性又は有害性等の手順」の策定及び第2項の「労働者の危険又は健康障害を防止する
ために必要な措置」の決定に当たっては、法第28条の2第2項の規定に基づく「危険性又は有害性等の
調査等に関する指針」(平成18年3月10日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号)
及び別途定められる予定である「化学物質等による労働者の危険及び健康障害を防止するため必要な
措置に関する指針」並びに「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成13年6月1日付け基発第501
号)に従うこと。
9 第11条(安全衛生目標の設定)関係
「安全衛生目標」は、事業場としての目標を設定するほか、これを基にした関係部署ごとの目標も
設定することが望ましいこと。また、目標は達成の度合いを客観的に評価できるよう、可能な限り数
値で設定することが望ましいこと。
10 第12条(安全衛生計画の作成)関係
(1)第1項の「結果等」の「等」には、過去における安全衛生計画の実施状況、安全衛生目標の達成状
況、第15条の日常的な点検の結果、第16条の労働災害、事故等の原因の調査結果、第17条のシステ
ム監査の結果があること。また、実施事項の担当部署、必要な予算等も含めて作成することが望ま
しいこと。
(2)第2項第2号の「日常的な安全衛生活動」には、危険予知活動(KYT)、4S活動、ヒヤリ・ハット事
例の収集及びこれに係る対策の実施、安全衛生改善提案活動、健康づくり活動等があること。
(3)第2項第3号の「安全衛生教育」には、各種教育の実施時期及び各種教育のカリキュラムを規定す
ること。さらに、関係部署ごとの計画を作成することが望ましいこと。
(4)第2項第4号は、元方事業者にあっては、関係請負人に対する措置に関する事項を安全衛生計画に
含めることを規定したものであること。
(5)第2項第5号の「期間」は、1年とするのが基本であるが、これに限るものでないこと。
(6)第2項第6号の「安全衛生計画の見直し」については、機械、設備、化学物質等を新規に導入する
場合等にあっては、危険性又は有害性等の調査の結果を踏まえ、必要に応じ見直しを行うことを定
めるものであること。
11 第13条(安全衛生計画の実施等)関係
第1項の「手順」に定める事項には、安全衛生計画に基づく活動等を実施するに当たっての具体的
内容の決定方法、経費の執行方法等があること。
12 第14条(緊急事態への対応)関係
「緊急事態が発生した場合に労働災害を防止するための措置」には、被害を最小限に食い止め、か
つ、拡大を防止するための措置、各部署の役割及び指揮命令系統の設定、避難訓練の実施等が含まれ
ること。
13 第15条(日常的な点検、改善等)関係
第1項の「安全衛生計画の実施状況等の日常的な点検」とは、安全衛生計画が着実に実施されてい
るかどうか、安全衛生目標は着実に達成されつつあるかどうか等について点検を行うことをいい、点
検により問題点が発見された場合は、その原因を調査する必要があること。なお、「日常的な点検」
は、必ずしも毎日実施する必要はなく、計画期間中の節目節目で実施することとして差し支えないこ
と。
14 第16条(労働災害発生原因の調査等)関係
(1)「労働災害、事故等」の「等」には、ヒヤリ・ハット事例のうち必要なものがあること。
(2)「これらの原因の調査並びに問題点の把握」を実施するに当たっては、当該労働災害、事故等の
直接の原因の解明にとどまることなく、当該事象を引き起こすに至った背景要因を総合的に勘案す
る必要があること。
15 第17条(システム監査)関係
(1)「システム監査」は、システムに従って行う措置が適切に実施されているかどうかについて、文
書、記録等の調査、システム各級管理者との面談、作業場等の視察等により評価するものである
こと。
(2)「システム監査」の実施者は、必要な能力を有し、監査の対象となる部署に所属していない等、
システム監査の実施に当たって公平かつ客観的な立場にある者であること。その限りにおいて、企
業内部の者、企業外部の者のいずれが実施しても差し支えないこと。
(3)「システム監査」は、少なくとも1年に1回、定期的に実施すること。また、安全衛生計画の期間
中に少なくとも1回は実施すること。
(4)第2項の「必要があると認めるとき」とは、システム監査結果報告に、改善の必要がある旨の記載
がある場合をいうものであること。
16 第18条(労働安全衛生マネジメントシステムの見直し)関係
「労働安全衛生マネジメントシステムの全般的な見直し」とは、事業場の安全衛生水準の向上の状
況、社会情勢の変化等を考慮して、事業者自らがシステムの妥当性及び有効性を評価し、その結果を
踏まえて必要な改善を実施することをいうものであること。
(参考) |
労働安全衛生マネジメントシステムの概要(流れ図) |
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