安全衛生情報センター
石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)は本年2月24日に公布され、 同年7月1日より施行されることとなった。その内容については、平成17年3月18日付け基発第0318003号 「石綿障害予防規則の施行について」により指示したところであるが、関係事業者等に十分周知を図り、 円滑な施行に向けて万全を期す必要がある。 ついては、下記事項に留意のうえ、関係事業者等に対する石綿則の周知に遺憾なきを期されたい。 なお、関係事業者団体等に対し、別添のとおり周知について要請したので了知されたい。
1 石綿則の周知に当たっての基本的な考え方 (1) 基本的な対応 石綿則の周知に当たっては、次の事項を踏まえ、実施すること。 ア 石綿による肺がん・中皮腫の労災認定者数は増加傾向にあること。また、石綿へのばく露からこ れらの疾病が発症するまでの期間は、相当長い場合が多いこと。 イ 石綿則の制定により、[1]石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業における対策、[2]石 綿等が吹き付けられている建築物の管理等について充実強化されたところであるが、その対象とな る建築物等の解体等の作業は、建築物等の老朽化に伴い、今後増加する見込みであること。 ウ このため、石綿則の遵守を徹底するためには、その規制の内容及び対象に即した的確な周知を図 る必要があること。この場合、[1]については、建築物等の解体等の作業を行う建設事業者、当該 作業を行う仕事の発注者等を中心とした規制であるが、この解体等の作業は、必ずしも解体を専門 に行う工事業者のみが行うものではなく、建築物の改修を行う事業者も対象になるなど広範囲の建 設事業者が対象になること。また、発注者については、公共工事発注機関のほか、宅地の開発等を 行う不動産事業者等も対象になること。[2]については、労働者が就業するすべての建築物が対象 になり特定の業種に限定できないことから、広範に周知する必要があること。 エ 建築物等の解体等の作業は、当該作業自体が一時的、非定常的であること、石綿含有製品が使用 されているか否かの判別が外見上では困難な場合が多いこと、及び解体等の作業に従事する労働者 は一般的に石綿の有害性に対する認識が必ずしも高くないと考えられることから、石綿が使用され ていないとして石綿則に基づく措置を適正に行わない場合が生じることも考えられる。このため、 当該事業者に事前調査、作業計画、作業の届出等の実施を遵守させるためには、関係者に対する徹 底した周知が必要であること。 (2) 計画的な周知 周知に当たっては、周知手法や周知対象となる事業者団体等の状況に応じて、都道府県労働局(以下 「局」という。)及び労働基準監督署(以下「署」という。)の役割分担、実施時期等を明確化した上で、 計画的かつ効率的な周知に努めること。 2 周知に当たって留意すべき事項 (1) 周知の対象 周知の対象である事業者等については、次に示す事項に留意し、正確な理解が得られるよう十分に 説明すること。 ア 建築物等の解体等の作業を行う事業者 建築物等の解体等の作業を行う事業者には、建築物等の解体の専門工事業者に限らず、解体工事 を請け負う土工工事、とび工事等を専門とする事業者のほか、建築物の改修を行う事業者も含まれ ることから、建設事業者全般を対象とする必要があること。 なお、解体工事業を営もうとする者は、建設業法(昭和24年法律第100号)に基づく土木工事業、 建築工事業又はとび・土工工事業に係る建設業の許可を受けた者を除き、建設工事に係る資材の再 資源化等に関する法律(平成12年法律第104号。以下「建設リサイクル法」という。)の規定により、 解体工事の規模や額にかかわらず、都道府県知事の登録を受けなければならないこととされている こと。 また、これらの事業者は、中小事業者が多く、団体等に加入していない事業者も多いことから、 きめの細かい周知活動が必要であること。 これらの事業者に対する周知に当たっては、建設業労働災害防止協会都道府県支部との連携を図 るとともに、(社)全国解体工事業団体連合会都道府県支部等の関係事業者団体との連携を図るほか、 建設リサイクル法に基づく都道府県への登録事業者に対しては都道府県との連携を通じて行うこと が、効率的であること。 イ 建築物等の解体等の作業を行う仕事の発注者 建築物等の解体等の作業を行う仕事の発注者に対する周知に当たっては、(社)日本ビルヂング協 会連合会を構成する地方協会、(社)全日本不動産協会の地方本部等の発注者団体の会員事業場への 周知のほか、発注者連絡会議等の機会を通じて行うこと。 ウ 石綿等が吹き付けられている建築物の管理を行う事業者 吹付け石綿は、耐火・準耐火建築物である鉄骨造の工場建屋、倉庫、大型店舗等の駐車場等の建 築物に施工されている割合が高いので、製造業、倉庫業、大規模小売業、ビル賃貸業等の事業者に 対し重点的に、かつ広範に周知を行うこと。 (2) 周知の重点事項 建築物等の解体等の作業に係る周知に当たっては、次の項目に重点を置いて説明を行うよう留意す ること。 ア 解体等の作業における事前調査の実施(第3条) イ 作業計画の作成、作業の届出(第4条、第5条) ウ 石綿等の除去作業における隔離、立入禁止及び湿潤化(第6条、第7条、第13条) エ 保護具等の使用及び管理(第14条、第7章) オ 石綿作業主任者の選任(第19条) カ 特別教育の実施(第27条) 3 具体的な取組 各局に別途送付する周知用のパンフレット等を活用し、以下により積極的に改正内容の周知に努める こと。 (1) 広報活動 広報活動については、石綿則の施行を所掌する部署と広報担当部署との連携により、創意工夫を凝 らした効果的な取組を行うこと。 具体的には、以下のような取組が考えられること。 なお、本省より国土交通省及び環境省に対し、地方自治体建築部局、産業廃棄物処理事業者等への 石綿則の周知等について協力を依頼しているところであるので、局署においても必要に応じ、当該部 局との連携、協力を図ること。 ア 都道府県労働基準協会(連合会も含む。)、労働災害防止団体地方支部、事業主団体等が発行する 機関紙等を通じた広報 イ 地方公共団体、建設工事発注機関等における広報紙等を通じた広報、窓口でのパンフレットの配布 ウ 地元報道機関を通じた広報 エ ホームページを活用した広報 (2) 集団指導、説明会等の実施 集団指導、説明会等の実施に当たっては、建設業労働災害防止協会都道府県支部、関係事業者団体 等との連携を図り、効率的に実施すること。なお、労働災害防止団体等が独自に会員事業場等に対す る研修会を実施するときは、可能な限り必要な協力をすること。 また、他の事項について実施する集団指導や事業主団体等の会議、会合の場など、多数の事業者が 参集する機会を積極的に活用し、効率的に実施すること。 さらに、労働安全衛生コンサルタント、社会保険労務士、労災防止指導員等の事業場を指導する者 に対し改正内容を周知し、これらの者による関係事業場への周知、指導等が可能となるようにするこ とにも配意すること。 (3) 監督指導・個別指導時における対応 建設事業者に対する監督指導・個別指導時においては、パンフレット等を活用し、石綿則の規定の 周知を図ること。 また、監督指導・個別指導時においては、建屋等に吹付け材が見られる場合には、石綿則違反がな いときにおいても、パンフレット等を活用し石綿則の規定を説明し、当該吹付け材に石綿が含まれ、 損傷、劣化等がある場合には、除去等の措置を講ずる必要があることを教示すること。 (4) 窓口における対応 ア 局及び署においては、パンフレットを窓口の見やすい場所に備えておくこと。 イ 労働安全衛生法第88条第4項に基づく計画届の受付時等において、必要に応じ、パンフレット等 を活用して石綿則の周知に努めること。 ウ 石綿則に関する事業者等からの相談があった場合には、パンフレット等を活用し、十分な説明を 行うこと。