事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について
基発第0621004号
平成16年6月21日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長
事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について
事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成16年厚生労働省令第70号。以下
「改正省令」という。)については、平成16年3月30日に公布され、一部を除き公布日から施行されたとこ
ろである。
今回の改正は、事務所におけるホルムアルデヒドによる労働者の健康リスクの低減等の課題に対応する
ため、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)に係る法令の改正との整合性
を図る観点からなされたものである。
ついては、下記の事項に留意の上、今回の改正の趣旨を十分に理解するとともに、関係者への周知を図
り、その運用に遺漏のないよう期されたい。
記
第1 改正の要点
1 事務所衛生基準規則(昭和47年労衝省令第43号)の一部改正
(1) 空気環境の調整を行わなければならない空気調和設備及び機械換気設備について、中央管理方
式のものに限定しないこととしたこと。
(2) 労働者を常時就業させる室(以下「室」という。)のホルムアルデヒドの濃度の基準及び建築等
を行った室のホルムアルデヒドの濃度の測定に係る規定を新たに追加したこと。
(3) 事務所において2月以内ごとに1回行う作業環境測定の頻度について、一定の要件を満たす場合
には緩和することとしたこと。
(4) 空気調和設備の冷却塔、加湿装置等について、定期的に点検、清掃等を実施しなければならな
いこととしたこと。
(5) ねずみ、昆虫等の防除のための調査等を定期的に行わなければならないこととするとともに、
殺そ剤又は殺虫剤は、医薬品又は医薬部外品を用いなければならないこととしたこと。
2 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)の一部改正
1の(5)と同様の規定を整備することとした。
第2 細部事項
1 事務所衛生基準規則の一部改正
(1) 第5条関係
近年の技術改良等により、中央管理方式(各居室に供給する空気を中央管理室等で一元的に制御
する方式)以外の空気調和設備等が、比較的規模の大きな建築物においても導入されるようになっ
てきているところ、中央管理方式以外の空気調和設備等を設けている建築物については、換気量が
十分に確保されず、室内空気の汚染が懸念される等の問題が指摘されていることから、空気環境の
調整を行わなければならない空気調和設備及び機械換気設備について、中央管理方式のものに限定
しないこととしたこと。
また、近年、住宅等の気密性の向上、化学物質を放散する多様な建築材料等の普及等に伴い、ホ
ルムアルデヒド等の化学物質による室内空気の汚染と、それによる健康影響の問題が指摘されてい
ることから、室のホルムアルデヒドの濃度の基準を定めることとしたこと。
なお、空気調和設備及び機械換気設備の定義における「空気を浄化し」とは、外気を導入して浄
化することをいうものであること。
(2) 第7条関係
主な変動要因が季節変動である気温及び湿度については、春及び秋については概ね同様の温湿度条
件にあると考えられることから、作業環境測定の頻度について、室の気温及び相対湿度が、過去1年
間、基準を満たし、かつ、今後1年間もその状況が継続しないおそれがない場合には、室温及び外気
温並びに相対湿度について、現行の2か月以内ごとに1回行わなければならない測定を春(3月から5月)
又は秋(9月から11月)、夏(6月から8月)及び冬(12月から2月)における各1回の測定とすることができ
ることとしたこと。
なお、「当該状況が継続しないおそれがない場合」とは、当該室に係る空気調和設備の変更を行
わない場合、室のレイアウトの大幅な変更が予定されていない場合等であって、室の気温及び相対
湿度に係る基準を満たすことが想定される場合をいうこと。
(3) 第7条の2関係
建築物の竣工及び使用開始後の一時的な期間、化学物質濃度が高くなり、健康への影響が生じる
おそれがあることから、室の建築(建築基準法第2条第13号に規定する建築をいう。)、大規模の修繕
(同条第14号に規定する大規模の修繕をいう。)又は大規模の模様替(同条第15号に規定する大規模の
模様替をいう。)を行った場合、当該室のホルムアルデヒドの濃度を測定しなければならないことと
したこと。
(4) 第8条関係
イ ホルムアルデヒドの量を測定する測定器において、「これと同等以上の性能を有する測定器」と
しては、平成14年3月15日付け基発第0315002号「職域における屋内空気中のホルムアルデヒド濃度
低減のためのガイドラインについて」(以下「ガイドライン通達」という。)中の別添1の3の[3]に
掲げる測定方法等で使用する「検知管」、「デジタル計測器」等がこれに該当するものであること。
ロ ホルムアルデヒドの量の測定方法等については、ガイドライン通達中の別添1の3の[3]に掲げる
測定方法等により実施するものであること。
(5) 第9条の2関係
イ 加湿器等の水質の問題として、レジオネラ属菌類等の病原体によって室の内部の空気が汚染され
ることを防止するため、空気調和設備の冷却塔、加湿装置等について、定期に点検、清掃等を実施
しなければならないこととしたこと。
ロ 第2号から第4号までに規定する「点検」は、目視等により行うことで足りるものであること。
ハ 第5号の規定は、日常的な維持管理の如何に関わらず、1年以内ごとに1回、冷却水の完全換水を
実施するものであること。
(6) 第15条関係
今回の改正は、ねずみ、昆虫等の生息の有無に関わらず防除を行うのではなく、その生息状況等を
調査した上で、その結果に基づき、適切な防除を実施する等合理的な防除を行うことができることを
明確にしたものであり、従来の考え方を変更したものではないこと。
また、防除のため、殺そ剤又は殺虫剤を使用する場合には、薬事法(昭和35年法律第145号)上の承認
を受けた医薬品又は医薬部外品を用いなければならないことについても併せて明確にしたものである
こと。
(7) その他
「炭酸ガス」を「二酸化炭素」に改める等の用語の整理を行ったこと。
2 労働安全衛生規則関係の一部改正
事務所衛生基準規則の改正に伴い、上記1の(6)と同様の規定の整備を行ったこと。
第3 附則関係
1 施行日
改正省令は、公布日から施行するものであること。ただし、事務所衛生基準規則第5条、第7条の2、
第8条、第9条の2の各改正規定については、公布の日から起算して3月を経過した日(平成16年6月30日)
から施行されること。
2 経過措置
改正省令の施行の際現に中央管理方式以外の空気調和設備又は機械換気設備を設けている室について
は、当分の間は、改正後の事務所衛生基準規則第5条第1項第1号の規定(浮遊粉じん量の基準)は適用し
ないこと。
この場合において、「中央管理方式」の意義は施行前と変更はなく、各室に供給する空気を中央管理
室等で一元的に制御することができる方式をいい、空気調和設備の場合でいえば、中央機械室からダク
トにより各室に空気を供給する方式(ダクト方式)のほか、中央機械室において浄化、減湿・与湿等の処
理をした空気を送出し、さらにこれを各階、各室等に設けた二次空気調和装置により冷却等の処理をし
て各室に供給する方式(各階ユニット方式、ファンコイルユニット方式等)がある。
第4 関係通達の改正等
1 関係通達の改正
(1) 平成16年6月30日をもって、昭和46年8月23日付け基発第597号「事務所衛生基準規則の施行につい
て」の記のIIの5(1)及び同(2)中「で中央管理方式のもの」を削り、同通達の記のIIの5(3)を
「(3) 削除」に改める。
また、同通達中の「炭酸ガス」を「二酸化炭素」に改める。
(2) 昭和48年6月11日付け基発第326号「建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令の一部
を改正する政令の制定について」の記の第2の1を「1 削除」に、同通達の記の第2の3中「特定建築
物維持管理義務者および特定建築物所有者等」を「特定建築物の所有者、占有者その他の物で当該特
定建築物の維持管理について権原を有するものおよび当該特定建築物の所有者(所有者以外に当該特定
建築物の全部の管理について権原を有する者があるときは、当該権原を有する者)(以下「特定建築物
所有者等」という。)」に改める。
2 その他
1の(2)の通達については、次の事項に留意すること。
イ 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令第1条の特定建築物のうち、専ら事務所の
用途に供される特定建築物については、建築物における衛生的環境の確保に関する法律第11条に
基づき、都道府県労働局長から要請があった場合に、都道府県知事による立入検査等の権限行使
ができるとされていたところであるが、建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則が
改正され(平成15年4月1日施行)、都道府県知事が必要と認める場合には、都道府県知事による立入
検査等の権限行使ができることとされたこと。
ロ 建築物所有者等と当該建築物の使用者が一致しないような場合(いわゆる雑居ビルの場合)につい
ては、記の第2の3において「各室を占有しているすべての事業者が事務所則の義務主体とされ」て
いること。
(参考)
○ 事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令 新旧対照表