電離放射線障害防止規則第3条第1項の規定による管理区域の設定の基準について
(平成13年3月30日基発第253号により廃止) |
改正履歴
電離放射線による障害を防止するためには電離放射線障害防止規則(以下「電離則」という。)第3条
第1項の規定による管理区域(以下「管理区域」という。)を適正に設定することが基本であり、そのた
めには放射線の測定を正しく行うことが必要である。
これらについては、昭和64年1月1日付け基発第1号「電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令
の施行について」において別途示すこととされていたところであるが、今般、別添のとおり管理区域設定
基準を定めたので、今後、各事業場において管理区域を設定する場合には、これにより行われるよう指導
されたい。
なお、管理区域設定後に電離則第54条等に基づき行う線量当量率の測定については、作業環境測定基準
(昭和51年4月22日労働省告示第46号)に基づいて行うべきものであるので念のため申し添える。
別添
管理区域設定基準
本基準は、管理区域の設定及び設定のための放射線の測定について、標準となる方法を定めたものであ
る。
第1 外部放射線の測定方法について
1 外部放射線による実効線量当量について
(1) 測定器の測定
外部放射線の測定器には、現在種々の形式のものがあるので、その選択に当たっては線量当量
率等が測定できるもの(表示の単位がSv/h(シーベルト毎時)又はSv(シーベルト)を用い、
次の要件に留意の上適切な測定器を選ぶこと。
なお、照射線量率等を測定するものでレントゲン表示のもの等を使用して測定を行った場合及
び中性子についてrem/hにより表示される直読式中性子線量当量率計を使用して測定を行った場
合については、平成元年3月6日付け基安発第5号「電離放射線障害防止規則の改正に伴う線量
当量の換算及び中性子線による線量当量について」に定める方法により照射線量率等を線量当量
率等に換算すること。
イ 方向依存性が少ないこと等
(イ) 測定器の種類は、使用する検出器によって、電離箱式、GM計数管式、シンチレーション
式及び半導体式に大別されるが、測定器は方向依存性(放射線の入射線の入射方向による感
度が異なること)が少なく、また、測定する放射線の種類がエックス線又はガンマ線である
場合は、測定器のエネルギー特性が1cm線量当量に合致する性能を有しているものが望ま
しい。
電離箱式の測定器には、これらの特徴を備えているものがあるので、管理区域を設定する
ための測定には原則としてこの方式のものを用いること。
(ロ) わずかな線量を測定する場合や、放射線が漏れているかどうかを調べる場合には、GM計
数管式及びシンチレーション式の方が、電離箱式に比べ、特に感度が優れているので、この
方式のものの使用が適当であること。
ロ 中性子線による線量当量率の測定については、直読式中性子線量当量率計を使用すること。
ハ 測定範囲及び最小目盛の大きさが適当なものであること。
測定器の感度を最も高くした場合に測定しうる限度及び最小の一目盛の大きさが、測定しよう
とする実効線量当量率又は実効線量当量より著しく大きい場合には、読み取りが困難となるので、
これが適当なものを選ぶこと。
ニ 零点移動が少ないこと
測定し得る状態において、測定器の指針を零点に合わせて放置した場合に指針がずれないもの
及び測定しうる範囲を切り替えた場合に零点に合わせた指針のずれ(零点移動)が少ないものを
選ぶこと。
ホ シフトが少ないこと
測定中に指針が漂動すること(シフト)が少ないものを選ぶこと。
ヘ その他
測定器は、以上のほか日本工業規格「X線及びγ線用線量当量率サーベイメータ(JISZ4333)」
又は「X線及びγ線用サーベイメータ(JISZ4328)」に適合しているものを使用すること。
(2) 測定箇所
測定箇所については、次に掲げる点を考慮して選定すること。
[1]作業者が立ち入る区域で線源に最も近い箇所又は遮へいの薄い箇所等線量当量率が最大となる
と予測される箇所を含むこと。
[2]作業者が常に作業している箇所、壁等の構造物によって区切られた境界の近辺の箇所を含むこ
と。
[3]線量当量率が位置的に変化の大きいと予測される場合には、測定点を密にとること。
[4]中性子線が混在する場合には、それによる線量当量率が最大となると予測される箇所を含むこ
と。
[5]空気中の放射性物質による実効線量当量と外部放射線による実効線量当量との合計が必要な場
合には、低線量当量率の箇所まで測定すること。
[6]測定点の高さは、作業床面上約1mの位置とすること。
(3) 測定回数
外部放射線による線量当量率等が時間等により変動する場合にあっては、線量当量率が最も大
きくなると想定される場合を含み複数回測定を行うこと。
(4) 測定上の注意
イ 準備
測定を効果的かつ安全に行うため、測定に先立ち、測定しようとする区域の線量当量率の分布
の状況を計算によってあらかじめ確認しておくこと。また、必要に応じ同種同能力の他の装置等
についての測定結果を調査しておくこと。
ロ 測定器の点検調整
測定器は、使用前に汚染されていないことを確認すること。また、放射線の影響の少ない場所
において、電池の消耗状況の点検、零点の調整、校正用線源による作動状況の点検等を行い、正
常に作動することを確認し、校正定数を求めておくこと。
ハ エックス線装置又はガンマ線照射装置を使用する場合の測定方法
(イ) 同一条件によって極めて短時間の照射を繰り返すエックス線装置に係る管理区域を設定す
る場合には、照射を行って線量当量を測定し、これを照射回数で除して一回当たりの線量当
量を求め、これに1時間あたりの照射回数を乗じ、線量当量率を求めること。
(ロ) 一の作業中に、エックス線装置の焦点を移動させ、又はガンマ線照射装置の放射線源を移
動させる等線量当量率が変動する使用条件において管理区域を設定する場合には、作業が一
サイクルする時間等適当な時間にわたって照射を行って線量当量を測定し、これを当該時間
で除して線量当量率を求めることが必要であること。
(ハ) エックス線装置又はガンマ線照射装置に係る管理区域を設定する場合は、通常の作業状態
で測定を行うことを原則とするが、種々の制約によって実際の条件と同じ条件で測定を行う
ことが困難な場合には、別添の照射条件一覧表に基づいて照射を行い測定すること。
ニ 測定の順序
測定は、あらかじめ計算により求めた線量当量率の低い箇所から逐次高い箇所へと測定してい
くこと。
ホ 測定中の被ばく管理
測定中は、必ず被ばく線量測定用具を装着し、かつ、保護衣等必要な保護具を使用すること。
(5) 記録の整備
測定を行ったときは、測定日時、測定方法、測定箇所、測定者氏名、測定器の種類、型式及び
性能、測定結果、測定時の状況(線源がエックス線装置にあっては定格出力等装置の種類・型式・
性能、ガンマ線照射装置にあっては装備されている放射性物質の核種及び数量等装置の種類・型
式・性能、又は放射性物質を取り扱う場合にあっては取り扱う放射性物質の核種及び核種ごとの
数量等)及び別添の照射条件一覧表に掲げる事項について記録すること。
2 空気中の放射性物質による実効線量当量について
管理区域を設定するための測定は、測定対象作業場が電離則第53条第2号に該当する場合にあっ
ては、第一種作業環境測定士に行わせることが望ましいこと。
(1) 試料採取方法
空気中の放射性物質には、繊維系ろ紙で捕集される粒子状のもの、蒸気及び化学的に不活性な
希ガス等ガス状のものがある。
これらについては、放射性物質の状態に応じた試料採取方法を選択する必要があるが、その選
択については、主な放射性核種及びその性状により、次の表を参考にして決定すること。
(表)
(2) 採取時期及び箇所
イ 試料の採取は、通常の作業状態において、最も高濃度の空気汚染が発生すると考えられる時間
帯に行うこと。
ロ 試料の採取は、労働者の作業中の行動範囲、放射性物質の分布の状況等に基づき、次の点に留
意して行うこと。なお、この場合、空気汚染密度の分布の把握と空気汚染の検出を正確に行うた
め、事前に作業室内の空気の流れを把握しておくこと。
[1]単位作業場所につき1箇所以上とすること。
[2]測定を行うべき場所が広い場合には、その広さに応じた採取箇所の数とすること。
[3]空気汚染の状況を的確に検出しうるような箇所とし、例えば、空気汚染が発生するおそれの
ある作業箇所の気流の風下等とすること。
ハ 試料採取点の高さは、作業床面上0.5m以上〜1.5m以下の範囲とする。
(3) 分析方法
採取試料の分析は、作業環境測定基準(昭和51年4月22日労働省告示第46号)第9条第1項第
2号に掲げる分析方法により行うこと。
(4) 実効線量当量への換算
実効線量当量への換算は、試料採取及び分析の結果得られた値(単位 Bq/cm3)を用い、電
離則第3条第3項の規定に基づいて行うこと。
ただし、試料採取時の放射性物質等の使用量が最高使用量(「放射性同位元素等による放射線
障害防止に関する法律」(昭和32年6月10日法律第167号)第3条に基づく放射性同位元素の
使用許可における1日最大使用数量をいう。以下同じ。)より少ない場合には、前記により得た
値に、最高使用量の測定時使用量に対する比を乗じて実効線量当量を求めること。
(5) 記録の整備
測定を行ったときは、測定日時、測定箇所、測定者氏名、測定時使用していた放射性物質の核
種及び核種ごとの数量、試料採取の方法、分析の方法及びこれらに用いた装置、機器の型式、測
定結果等について記録すること。
第2 管理区域の設定の基準について
管理区域の設定については、第1による測定結果に基づき、以下のとおり判断して決定すること。
なお、場の線量当量率等に応じ、事業者が1週間における実効線量当量を0.3mSv以下となるように
当該区域内における作業時間を制限する等の方法は認められないので留意すること。
1 外部放射線による実効線量当量のみが考えられる作業場
第1の1により測定した測定値(単位 mSv/h)と1週間における労働時間(労働時間が週によ
り異なるときは最も長い週の労働時間、単位h)との積が0.3mSvを超える区域を管理区域とするこ
と。
管理区域の範囲については、屋内作業場であって構造的に区画された一の部屋等の内部に管理区域
相当の境界が生じる場合には、当該境界を管理区域の境界として適切に管理できる場合を除き、当該
室等の全域を管理区域とすること。
ただし、エックス線装置又はガンマ線照射装置を使用する作業場において決定する場合については、
被照射体を置いて照射した場合の測定によって得られた線量当量率(単位 mSv/h)と当該装置に
ついて1週間につき予想される最長の延べ使用時間(移動して使用する装置であって、同一場所にお
けるその使用期間が1週間に満たないものについてはその間の延べ使用時間、単位 h)との積又は
照射1回当たりの線量当量(単位 mSv)と当該装置について1週間につき予想される最多照射回数
(移動して使用する装置であって同一場所におけるその使用回数が1週間に満たないものについては
その間の延べ使用回数)との積により1週間の線量当量を求めること。一の装置について異なる使用
方法を有する場合には、それぞれについて上記の計算を行って得られた値の和とすること。また、二
以上の装置が近接して設置されている場合には、それぞれの装置について測定した値を合計すること。
2 空気中の放射性物質による実効線量当量のみが考えられる作業場
第1の2により測定し、計算した結果が0.3mSvを超えるおそれがある場合を管理区域とすること。
空気中の放射性物質については、構造的に区画されていないかぎり汚染の広がるおそれがあること
から、一の構造的に区画された室等の内部の全域を管理区域とすること。
3 上記1及び2の両方による実効線量当量が考えられる作業場
上記1及び2で得た値を合計し、その値が0.3mSvを超える区域を管理区域とする。
空気中の放射性物質による実効線量当量のみで既に0.3mSvを超える場合には、一の構造的に区画
された室等の内部の全域を管理区域とすること。また、空気中の放射性物質による実効線量当量のみ
では0.3mSvを超えず、外部放射線による実効線量当量との合計が0.3mSvを超える区域との境界が、
構造的に区画された一の部屋等の内部に生じる場合には、当該室等の内部における作業が境界外、境
界内に明確に区別できる場合を除き、当該室等の全域を管理区域とすること。