チェーンソーの規格の施行について
基発第636号
昭和52年11月25日
都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長
チェーンソーの規格の施行について
チェーンソーの規格(昭和52年労働省告示第85号。以下「規格」という。)は、昭和52年9月29日に公示
され、昭和52年10月1日以降に製造又は輸入されたものを対象として一部の規定を除き、昭和52年10月1日
から施行されたところである。
この規格は、労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(昭和52年政令第1号)により労働大臣が定め
る規格又は安全装置を具備すべき機械等として同施行令第13条第41号に掲げるチェーンソーが追加された
ことに伴い所要の規定を定めたものである。
ついては、この規格の制定の趣旨を十分理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、下記の事項に留
意して、その運用に遺憾のないようにされたい。
記
1 第1条関係
(1) 本条は、振動障害の防止を目的として振動加速度の最大値を29.4m/S2以下としたものであるが、本
条でいう振動加速度とはその実効値をいうこと。
なお、これをもってチェーンソー取扱作業指針等、従来から示している振動障害予防通達を変更す
るものではないこと。
(2) 29.4m/S2とは、いわゆる3Gをいうものであること。
(注)「G」とは重力の加速度を表わし9.8m/S2である。
2 第2条関係
ソーチェーンの切断等には、「ソーチェーンがパーからはずれること」を含むものであること。
3 第3条関係
(1) キックバック現象とは、主としてチェーンソーの先端部が枝、立木、その他の障害物に触れた瞬間
にチェーンソーがはね上げる現象をいうものであり、特に突込み切りや枝払い作業を行う場合に起こ
りやすい。
(2) 「キックバックを防止するための装置又はキックバックに伴うソーチェーンによる危険を防止する
ための装置」には「チェーンブレーキ」等があること。
なお、このチェーンブレーキに「セーフティータイプチェーン」、「バーの先端覆い」を併用す
ることが望ましい。
(注1)チェーンブレーキとは、キックバックによりチェーンソーがはね上がった場合、前ハンドル
を握っている手が、前のハンドルの前方のレバーに触れ、ソーチェーンの回転を急停止させる装置を
いう。
(注2)セーフティータイプチェーンとは、キックバックの発生を減少させることを目的として改良
されたソーチェーンをいう。
4 第4条関係
(1) 「のこ部」とは、ソーチェーン及びバーをいうものである。
(2) 振動加速度は、メートル毎秒毎秒(m/S2)で表示すること。
(3) 騒音レベルは、デシベル(dB)で表示すること。
5 別表第l関係
(1) 「標準装備」とは、通常使用する状態で取り付けられるべきハンドガード、チェーンブレーキ等の
部品が装備された状態をいうものであること。
(2) 「測定を前ハンドル及び後ハンドルの上下、左右及び前後の方向について行う」とは、振動加速度
ピックアップを前ハンドル及び後ハンドルの以下に示す互いに垂直な三方向に取り付けて測定するこ
とをいうものであること。
前ハンドル
上下方向:バーの平面に平行で、かつソーチェーンに垂直な方向
左右方向:バーの平面に垂直な方向
前後方向:バーの平面に平行で、かつ、ソーチェーンに平行な方向
後ハンドル
ハンドルの形状により測定方向は異なるが、できるだけ前ハンドルに準ずる。
(3) 「きょ断幅」とは、試験材の幅を指すものであること。
(4) 「バーの有効長」とは、図に示すごとくバーの先端からチェーンソー本体に取り付けられているス
パイクの先端(スパイクの取り付けられていない場合はチェーンソー本体)までの間の長さをいい、実
際にきょ断し得る部分の長さをいうものであること。
6 別表第2関係
(1) マイクロホンの取付け位置はチェーンソーのクランク軸とマイクロホンとの距離を概ね76cmとする
こと。
7 リモコンチェーンソー等の取扱について
林野庁を中心として、チェーンソーの振動に労働者が直接ばく露することのない伐木、造材装置とし
て、リモコンチェーンソー、玉切装置の実用化が進んでいる。
リモコンチェーンソーとは、チェーンソーを載せた架台を立木に取り付け、ワイヤ等により数メート
ル離れた位置において操作する伐倒装置である。
また、玉切装置とは、コンベア等で材を送り、チェーンソーを遠隔操作し、玉切りを行う造材装置で
ある。
これらの装置に組み込まれるチェーンソーは、使用目的に応じて一部改造することがあるが、これら
の装置を使用する労働者は、チェーンソーを直接手で持つことがないため、振動に直接ばく露されるこ
とはなく、また、キックバック等による危険もないものである。したがって、専らこれらの装置の一部
として使用されるチェーンソーについては、労働安全衛生規則第27条の適用はないものとして差支えな
いこと。