安全衛生情報センター
1 趣旨 第三次産業における労働災害の占める割合が年々増加する中、第12次労働災害防止計画において、小 売業、社会福祉施設及び飲食店の平成29年の休業4日以上の労働災害件数を平成24年に比してそれぞれ 20%、10%、20%以上減少させることを目標としているが、平成28年11月末速報値を見ると、それぞれ 2.0%、24.6%、10.0%の増加となっており、目標の達成は今後相当の努力をしなければ極めて困難な 状況となっている。 労働災害が増加している要因としては、人手不足や労働者の高齢化などの要因のほか、転倒災害、腰 痛災害など行動災害によるものが多く、事業場の取組が進んでいないこと、店舗・施設の安全衛生の体 制をみると安全衛生担当者がいないなど店舗・施設単位での安全衛生活動が低調である中で、店舗・施 設の活動をサポートすべき本社・本部の取組が不十分であることも指摘されており、店舗・施設のみな らず企業・法人全体での労働災害防止の取組を進める必要がある。 本運動は、経営トップの参画の下、本社・本部における労働災害防止のための取組を促進し、本社・ 本部と店舗・施設の役割に応じた全社的な安全衛生活動を展開することにより、職場の危険箇所の除去、 作業方法等の改善、労働者の危険に対する感受性・注意力の向上等を図ることにより、小売業、社会福 祉施設及び飲食店における労働災害を減少させることを目的とするものである。 2 期間 平成29年1月1日から12月31日まで 3 主唱者 厚生労働省、中央労働災害防止協会 4 実施者 小売業及び飲食店の多店舗展開企業の本社及び店舗、多くの社会福祉施設を展開する法人の本部及び 施設 5 主唱者の実施事項 (1) 厚生労働省の実施事項 ア 売業、社会福祉施設及び飲食店の労働災害防止に係る周知啓発資料等の作成、配布 イ 小売業、社会福祉施設及び飲食店の労働災害防止対策に活用できるコンテンツを集めた特設サイ トの開設 (ア) 災害事例、効果的な対策、好事例の紹介(チェックリストを含む) (イ) 小売業、社会福祉施設及び飲食店の労働災害防止対策に資するセミナー等の開催、案内 ウ 本運動を効果的に推進するための各種団体等への協力要請 エ 都道府県労働局、労働基準監督署による企業・法人、事業場への啓発・指導 (2) 中央労働災害防止協会の実施事項 ア 安全推進運動の周知啓発 イ 事業場の安全衛生対策への指導援助 ウ KY訓練、転倒災害防止、腰痛予防対策に資する研修等の開催、教育支援 エ 教育用テキスト、周知啓発資料等の提供 オ 転倒防止のための防滑靴、切創防止手袋、火傷予防手袋等の有効な保護具の普及促進 6 実施者の実施事項 (1) 本社・本部の実施事項 小売業及び飲食店の多店舗展開企業本社並びに多くの社会福祉施設を展開する法人本部は、次の実 施事項のうち、企業・法人の労働災害の発生状況等に応じて、必要となる取組を実施すること。 ア 企業・法人傘下の店舗・施設全体の労働災害の発生状況の把握、分析 イ 経営トップの意向を踏まえた安全衛生方針の作成、周知 ウ 安全に配慮した作業マニュアルの作成と店舗・施設への周知 エ (2)に示す事項を含め、店舗・施設で実施すべき安全衛生活動を定め、店舗・施設での取組を展 開するとともに、必要な資料の提供、教育の実施等の支援を行うこと オ 店舗・施設における安全衛生担当者(衛生管理者、衛生推進者、安全推進者等)の配置状況の確認 カ 店舗・施設の安全衛生担当者に対する教育の実施 キ 本社・本部安全担当者、エリアマネージャー等による店舗・施設に対する危険箇所や安全衛生活 動の取組状況の点検、災害防止指導の実施 ク 安全対策の取組や注意喚起を分かりやすく従業員へ周知するための掲示や小冊子の配布 ケ 店舗・施設のリスクアセスメントの実施及びその結果に基づく対策の実施 コ 店舗・施設におけるメンタルヘルス対策に係る指導及び実施状況の把握 サ 店舗・施設における健康診断及び事後措置、長時間労働者への面接指導等健康確保措置の実施状 況の把握 (2) 店舗・施設の実施事項 店舗・施設においては、次の事項のうちから、(1)のエにおける本社・本部の指示に基づく事項の ほか、店舗・施設の独自の取組も可能な限り含め実施すること。 ア 4S(整理、整頓、清掃、清潔)の徹底による転倒災害等の防止 ※ 床面の水濡れ、油汚れ等の小まめな清掃、台車等の障害物の除去、安全に介護等の作業がで きる作業スペース、通路等の確保など イ 作業マニュアルの店舗・施設の従業員への周知・教育 ウ KY(危険予知)活動による危険予知能力、注意力の向上 エ ヒヤリハット活動による危険箇所の共有、除去 オ 危険箇所の表示による危険の「見える化」 カ 店長・施設長、安全衛生担当者による定期的な職場点検の実施 キ 朝礼時等での安全意識の啓発 ク 防滑靴、切創防止手袋等の着用、介護機器・用具等の導入、使用の推進、熱中症予防のための透 湿性・通気性の良い服装の活用 ケ 腰痛予防対策指針に基づく健康診断の実施 コ 腰痛・転倒予防体操の励行 サ 熱中症予防のための休憩場所・時間の確保 7 留意事項 (1) 本社・本部と店舗・施設の役割分担を明らかにして、それぞれの取組の実施を図ること。 (2) 全ての事項の取組を求めるものではなく、店舗・施設の実態等に即して、可能なものから取組の実 施を図ること。 (3) 「STOP!転倒災害プロジェクト」に基づく取組をしている事業場においては、当該プロジェクトに 基づき実施している転倒災害防止のための取組を、「働く人に安全で安心な店舗・施設づくり推進運 動」に基づく取組事項に組み込むなど、当該プロジェクトも踏まえた取組にすることが有効であるこ と。