安全衛生情報センター
労働安全衛生行政の推進につきましては、日頃から格別の御支援、御協力をいただき厚くお礼申しあげ ます。 さて、「化学物質のリスク評価検討会」において、アンチモン及びその化合物等9物質についてリスク 評価を行い、今般その報告書が取りまとめられました。 本報告書を踏まえ、物質のリスクの程度に応じ下記のとおり労働者の健康障害防止対策について取りま とめましたので、貴団体の傘下事業場に対し、周知くださいますようお願い申し上げます。 また、検討会報告書の概要を別添として添付するとともに、報告書全文(本文及び別冊)を厚生労働省の ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002grzr.html)に掲載していますのでお 知らせします。
1 初期リスク評価を行った物質について (1) 高いリスクが認められたため、さらに詳細なリスク評価が必要とされた物質について 三酸化二アンチモンについては、リスク評価の結果、一部の事業場の作業工程において労働者に健 康障害を発生させるリスク(以下単に「リスク」という。)が高いことが確認されたため、平成24年度 において、引き続き詳細なリスク評価のためのばく露実態調査を行い、その結果によりリスクの高い 作業工程を明らかにするとともに、当該作業工程に係るリスク低減措置について検討することとして いるが、この物質は、有害性の高い物質であり、かつ、事業場において高いばく露が生じる可能性が あることから、今後実施する詳細なリスク評価の結果を待たず、速やかに労働安全衛生法(昭和47年法 律第57号。以下「法」という。)第28条の2第1項の規定に基づき、当該物質に関し有害性等の調査を行 い、その結果に基づいて労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第576 条、第577条、第593条、第594条等の規定に基づく措置を講ずることにより、リスクの低減に取り組む こと。 (2) 引き続き適切な管理を行うべき物質について 次の4物質については、リスク評価の結果、事業場において高いリスクは確認されなかった。ただし、 これらは有害性の高い物質であることから、必要に応じて安衛則第576条、第577条、第593条、第594 条等に基づく措置を講ずるほか、事業者による自主的な管理を推進すること。 [1] 2-アミノエタノール [2] キシリジン [3] ニトロベンゼン [4] アンチモン及びその化合物(三酸化二アンチモンを除く。) (3) 予防的措置として呼吸用保護具の使用等を指導すべき物質について メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート(以下「MDI」という。)は、リスク評価の結果、 事業場において高いリスクは確認されなかった。ただし、MDIは呼吸器感作性を有する物質であり、単 回ばく露によっても労働者の健康障害が懸念されることから、リスク評価の過程において、予防的対 策の必要性が指摘された。また、今回実施したばく露実態調査においては、リスク評価の評価値を上 回るような労働者のばく露は見られなかったが、MDIを製造する事業場における廃液処理と分析の作業、 及び製品に充填するポリウレタンの原料としてMDIを使用する事業場でMDIを製品に注入する作業にお いて、比較的高い気中濃度が見られた。このため、これらの作業については、防じん機能付き有機ガ ス用防毒マスクの使用等適切な健康障害防止措置を講ずること。 2 詳細リスク評価を行った物質について (1) 今回の報告で中間とりまとめとされた物質 酸化チタン(W)については、当該物質のナノ粒子サイズのものについてリスク評価を予定している ことから、今回の報告では中間とりまとめとし、ナノ粒子に関するリスク評価結果を待って、最終的 な評価を行うこととされた。ただし、これは有害性の高い物質であり、かつ、粉体塗装を実施する事 業場においては高いばく露が生じる可能性があることから、今後実施する最終的な評価の結果を待た ず、速やかに法第28条の2第1項の規定に基づき、当該物質に関し有害性等の調査を行い、その結果に 基づいて安衛則第576条、第577条、第593条、第594条等に基づく措置を講ずることにより、リスクの 低減に取り組むこと。 (2) 一部の事業場で高いリスクが認められたものの作業工程に共通とは認められず事業場での適切な管 理が必要とされた物質について 次の3物質については、リスク評価の結果、一部の事業場の作業工程においてリスクが高いことが認 められたものの、ばく露要因を解析したところ、当該物質を製造し又は取り扱う事業場の作業工程に 共通のリスクとは認められなかった。しかしながら、これらの物質は有害性の高い物質であり、かつ、 事業場において適切な管理がなされていない場合にはリスクが高くなる可能性があることから、法第 28条の2第1項の規定に基づき、当該物質に関し有害性等の調査を行い、その結果に基づいて安衛則第 576条、第577条、第593条、第594条等の規定に基づく措置を講ずることにより、自主的なリスクの低 減に取り組むこと。 なお、1,3-ジクロロプロペンは、平成24年7月23日付基安発0723第1号において、指導対象としてい る「脂肪族塩素化合物」に該当する化学構造式を持つものであるが、1,3-ジクロロプロペンは、主に 土壌くん蒸用の農薬として使用されるものであり、洗浄用有機溶剤として使用されることは一般的で ないと考えられる。仮に洗浄の用途に使用される場合には、当該基安発0723第1号通達に基づき対策を 講ずること。 [1] 1,3-ジクロロプロペン [2] パラ-ジクロロベンゼン [3] 4-ビニル-1-シクロヘキセン (別紙 省略)