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別紙2
ドラグ・ショベル運転業務従事者危険再認識教育
実技教育実施マニュアル
目次
T 実技教育の目的

U 実技教育のための施設等
1 実技教育に使用するドラグ・ショベル
2 実技教育の種類
3 実機の設置場所、走行場所
4 実技教育のコース
5 教育受講者単位と教育時間
6 受講者、講師の服装等
7 危険の防止
8 実技教育の事前確認

V 実技教育の進め方
<Aつり荷旋回実技教育>
1 実技教育の目的
2 実技教育に使用するつり荷及び玉掛用具
3 教育対象者及び教育時間
4 教育手順
5 注意事項
6 雨天時の対応
7 事前準備作業
<B斜面走行実技教育>
1 実技教育の目的
2 教育対象者及び教育時間
3 教育手順
<C斜面旋回実技教育>
1 実技教育の目的
2 教育対象者及び教育時間
3 教育手順
<D死角確認実技教育>
1 実技教育の目的
2 教育対象者及び教育時間
3 教育手順

W 実技教育後の学科教育
1 つり荷旋回について
2 斜面走行について
3 斜面旋回について
4 死角について


T 実技教育の目的
過去のドラグ・ショベル作業での死亡災害を分析して災害の多い作業のうち危険再認識教育の実技教育が可能なものを受講者に体験させることにより、危険事態に至るドラグ・ショベルの動きや周囲の状況を理解させ安全運転の意識向上を図るとともに、実技教育の中で体験することと作業現場で体験したことを結び付け災害要因の関連性を理解させる。
なお、実技教育の実施に際しては、本マニュアルに基づき安全の確保について、十分に配慮して行わねばならない。

U 実技教育のための施設等
1 実技教育に使用するドラグ・ショベル
実技教育に使用するドラグ・ショベル(以下「実機」という。)は、次の要件を満たすものであること。
[1] 実機は、機体重量(注)が5トン以上のものとする。(つり荷施回実技教育の場合は教育効果を考えると運転質量(注)が12トン級のものが望ましい。)
[2] つり荷施回実技教育に使用する実機は、つり荷側のクローラの損傷を避けるため鉄クローラ式とする。
[3] つり荷施回実技教育に使用する実機は、労働安全衛生規則第164条の関連通達(平成4年8月24日付け基発第480号及び平成4年10月1日付け基発第542号)に規定するフックがバケットに付いているものとする。(フックが過荷重を受けた場合でもバケットから外れないよう十分に溶接付けされているもの)
[4] シートベルトが装備されているものとする。
(注)JIS−A8403・1−によれば
運転質量 燃料,潤滑油,作動油及び冷却水を規定量とし,製造業者が指定するキャブ又はキャノピ,FOGS,作業装置などを装備した本体に,乗員1名分(75kg)及び携行工具の質量を加えた質量。
機械総質量 運転質量に最大積載質量を加えた質量。
機械質量 運転質量から乗員の質量を差し引いた質量。
本体質量 機械質量から作業装置を除いた質量。
機体質量 本体質量から燃料,潤滑油,作動油,冷却水,携行工具などの質量を差し引いた本体の乾燥質量。
であり、労働安全衛生法施行例第20条第12号の「機体重量」は上記の機体質量と同じである。

2 実技教育の種類
実技教育は、次の4種類を行うこと。
[1] つり荷施回実技教育
[2] 斜面走行実技教育
[3] 斜面施回実技教育
[4] 死角確認実技教育

3 実機の設置場所、走行場所
[1] つり荷施回実技教育及び死角確認実技教育時の実機の設置場所は平坦で堅固な地盤上とする。
[2] 斜面走行実技教育時の実機の設置場所及び走行場所並びに斜面施回実技教育時の実機の設置場所は極端な凹凸のない堅固な地盤上とする。なお、斜面走行を繰り返し行うことで走行面が荒れることが考えられるため、繰り返しに耐えられる構造とする。

4 実技教育のコース
[1] つり荷施回実技教育のためのコースは、概ね図II−1のとおりとする。また、死角確認実技教育コースを兼用しても良い。(図II−4参照)
つり荷施回実技教育では、つり荷が衝撃着地することがあり、コンクリートやアスファルト盤では損傷する恐れがあるので地盤は土又は砂利が望ましい。
図II−1つり荷施回実技教育コースの例
[2] 斜面走行実技教育及び斜面施回実技教育のためのコースは、両方の教育に兼用出来るものとし、概ね図II−2のとおりとする。(ただし、実機は、360度施回するので敷地の大きさは、図II−3の面積が必要となる)

a=(実機の履帯の長さ)×2
(注:ただし、ストッパー、緩斜面等の転落防止措置がある場合は、a=(実機の履帯の長さ)+1m程度まで短くしても差し支えない。)
b=(実機の履帯の長さ)×2.8
b’=b×0.94
c=助走に十分な長さとする。
c’=実機の最大掘削半径
d=(実機の履帯の長さ)×2.5
e=b×0.342(傾斜角20度の場合)
f=約20度
図II−2斜面コースの例
g=a+b’+c+c’
h= (実機の最大掘削半径)×2.1
図II−3敷地平面図

運転質量12トン級の例(標準アーム)運転質量7トン級の例(標準アーム)
a=約7me=約3.5m a=約6me=約2.8m
b=約10mf=約20度b=約8mf=約20度
c=約9mg=約33mc=約7mg=約28m
d=約9mh=約17md=約7m h=約15m
(b'=約9m,c'=約8m) (b'=約8m,c' =約7m)

上記コースと同等以上の既存の傾斜地がなく、新たに土砂等により造成する場合は、雨天等でも使用できる堅固な地盤とする。
[3] 死角確認実技教育のためのコースは、概ね図II−4のとおりとする。
図II−4死角確認実技教育コースの例

5 教育受講者単位と教育時間
実機1台に対し受講者10名以内を1単位とし、4種類の実技を3時間45分程度で実施する。
なお、教育種類別の教育時間については各項で述べる。

6 受講者、講師の服装等
[1] 保護帽、安全な作業衣(作業に適した服装であること)、安全な履物を着用すること。
[2] 応答は確実にすること。
[3] 運転操作等を含め、常に正しい姿勢をとること。
[4] 節度ある行動をとること。

7 危険の防止
講師は、受講者の安全確保について常に注意を払うとともに、自らの安全を確保するために次の点に配慮する。
[1] 実技教育中は、実機の動き等にたえず注意し、危険を未然に防止すること。
[2] 危険箇所には立ち入らないこと。
[3] 運転席への乗降時に飛び乗り、飛び降りをしないこと。
[4] 待機中の受講者には、指定された安全な場所で観察学習させること。
[5] 講師は、運転席の受講者から視認できる位置で、実機を即時停止できる指示体制をとりながら、受講者を指導すること。
[6] 受講者の技量により操作を運転席内で随時指導することも考慮すること。
[7] 合図者が合図を行うときは、アームの下やつり荷の下に立ち入らないこと。
また、受講者が誤操作をした場合でも、危険のない位置で合図を行うこと。
[8] 強風、降雨、降雪、凍結等、天候・気象の影響により安全に実技教育を行うことができないと判断される場合は、実技教育を中止すること。

8 実技教育の事前確認
本マニュアルに示されている数値(準備品、コース、距離、角度等)は試験的に実施した結果に基づくものであり、周辺条件によっては、数値の調整が必要となる場合が想定されるが、その場合には、実技教育が安全に行えるかどうか現地を事前に確認しておくことが必要である。

III 実技教育の進め方
つり荷施回実技教育
1 実技教育の目的
ドラグ・ショベルのつり荷作業による死亡災害のうち、最も多いのが転倒によるものであり、その原因は、
・法令で定められた質量以上の荷をつった。
・地盤が軟弱だったため、クローラが沈下した。
・急施回させたため遠心力が働いた。
・傾斜地でつり荷作業を行った。
等様々である。
ドラグ・ショベルは、上部施回体が走行体に対して平行な場合と直角の場合では安定性が異なっていることが多い。このため、荷をつり上げたときに安定していても施回したときに転倒する事故が発生している。
水平堅固な地盤上で安定の良い方向で、あえて法令で定められた質量以上の荷をつって安定の悪い方向へ施回させたとき、つり荷と反対側のクローラが浮き上がり転倒しそうになる(実技では、転倒をしないように荷のつり上げ高さを調整している。)危険を体験させることにより、安全な作業を習得させる。

2 実技教育に使用するつり荷及び玉掛用具
(1) つり荷
つり荷は、運転質量が12トン級の実機を使用した場合には、概ね以下のとおりとする。
[1] 材質は鋼材とする。
[2] 形状は長方形又は正方形とし、つり荷が着地したとき荷が転倒しないように安定の良い高さが低い形状のものとする。
(注意)形状を球形にした場合、つり荷施回して荷が着地すると同時に遠心力等で荷が実機より遠くの方へ転がったとき、実機が転倒する恐れがあるため球形の荷は絶対使用しないこと。
[3] 質量は3トンとする。
(注意)安衛則第164条の関連通達(平成4年8月24日付け基発480号及び平成4年10月1日付け基発第542号)の規定でドラグ・ショベルのバケットでつり上げることができる最大荷重はバケット平積容量(?)×1.8(トン)で、かつ、つり荷とつり具の質量の合計(最大荷重)が1トン未満で作業を行うことになっている。しかしながら、実技教育では、アームを延ばさない状態で、実機を13度前後傾斜させるための転倒モーメントを確保するため、つり荷の質量を3トンとしたものである。
[4] 玉掛用具がいったん弛んだ場合でも玉掛けした位置がずれないような処置がされているもの。
[5] つり荷の重心の位置合わせがしやすいように、両側面に幅10cm位の帯状のマークをペイントする。
図III−A−1つり荷の例
(注意)上記は、運転質量12トン級の場合を例として述べたが使用する実機が異なる場合は、上記の各条件を満たすつり荷を準備すること。

(2) 玉掛用具
玉掛用具は、質量3トンのつり荷を使用する場合は、概ね以下のとおりとする。
ワイヤロープでは損傷しやすいのでつりチェーンを使用することとし、使用荷重は衝激荷重を考慮して5トンとする。以下は、あるつりチェーンメーカーの使用荷重5トンに該当するつりチェーンを参考として記載したものである。選定にあたっては使用するつりチェーンメーカの使用荷重に該当するつりチェーンを使用すること。
図III−A−2玉掛用具の例
(注意)つりチェーンの長さは、つり角度を60度以内とし、バケットと荷は接触しないように、また実機が転倒しそうになったときでも、荷にバケットが当たりそれ以上は転倒しない長さに設定すること。

3 教育対象者及び教育時間
[1] 教育対象者は、受講者全員とする。
[2] 1人あたりの教育時間は5分程度とし、オリエンテーション等を含め合計65分程度
の教育時間とする。

4 教育手順
つり荷施回実技教育は、次の第1ステップから第3ステップまでのとおり実施する。
第1ステップ(教育時間:5分)
オリエンテーション
[1] 教育目的、内容、スケジュールの説明
[2] 教育にあたっての諸注意(服装、受講態度、シートベルト着用等)
[3] 操作方法の説明

第2ステップ(教育時間:10分)
次の手順に従って講師による模範演技を行う。
(1) 教育にあたっての実機設定位置等
[1] エンジンは、停止状態
[2] スタータースイッチキーは、差し込んだまま切りの状態
[3] バケットは、地上に接地した状態(図III−A−3の状態)
[4] 安全ロックレバーは、ロックの状態
[5] 排土板のある実機の場合は、排土板を最高の位置に上げた状態
図III−A−3待機姿勢

(2) 講師模範演技手順
[1] 乗車・エンジン始動
図III−A−3において安全な姿勢(手すり、ステップを使用する)で乗車する。
・座席の調整をして、シートベルトを締める。
・各操作レバーの中立を確認し、スタータースイッチキーを“ON”にして警告ラ
ンプが点灯するかをチェックする。異常がなければ警報ブザーを鳴らしてエンジンを始動する。
[2] 玉掛け
・安全ロックレバーを解除する。
・エンジン回転を上げる。
・バケットを地面から約1m上げる。
・左右の安全を確認し、バケットがつり荷の真上にくるまで施回する。
・合図者の合図に従い、荷に玉掛けをする。(図III−A−4の状態)
図III−A−4地切り前の姿勢
[3] 地切り・所定の位置までのつり上げ
・合図者の合図に従い荷を10cm地切りして(イ)を所定の高さに、(ロ)の距離は、
地面に画かれた白線の位置とつり荷のマークを合わせる。(図III−A−5の状態)
(注意)(イ)の高さ及び(ロ)の距離は、「III−A−7事前準備作業」を参照す
ること。
図III−A−5つり荷を所定の位置まで上げた姿勢
[4] 施回・つり荷の着地
・左右の安全を確認し、ゆっくり左へ施回する。
・つり荷が着地したところ(90度施回)で止める。(図III−A−6の状態)
図III−A−6つり荷が着地した姿勢
[5] 荷の引き寄せ・施回
・荷を手前に引き寄せながら浮き上がったクローラを徐々に地面まで下げる。
・浮いていたクローラが完全に着地したら、荷を地面から20cm上げる。
・左右の安全を確認し、ゆっくり右へ90度施回して元の位置に戻る。
(注意1)転倒または浮いたクローラが衝撃着地しないように、荷を手前に引き寄せるときはアームの操作で行い、極力、ブームの操作は、行なわないようにすること。
(注意2)荷の引き寄せを繰り返し行っていくと、地盤が荒れたり、荷が地面にくいこんだりして荷の引き寄せが非常に困難となる。このような場合は鉄板等の敷板を敷くことが望ましいこと。
[6] エンジン停止・下車
・合図者の合図に従い、つり荷を所定の位置に着地させる。
・合図者の合図に従い、玉掛用具を外し右へ少し施回してバケットを着地させる。
(図III−A−3の状態)
・エンジン回転をアイドリングする。
・エンジンを停止する。
・シートベルトを外し、安全ロックレバーをロックする。
・安全な姿勢(手すり、ステップを使用する)で下車する。

第3ステップ(教育時間:50分)
受講者に第2ステップの講師模範演技手順に従って実施させる。

5 注意事項
[1] ドラグ・ショベルは通常35度以上傾かないと転倒しないが、安全性を考慮して、最大でも15度以上傾かないように数値を設定したものである。しかし、つり荷が着地するときの慣性力で実際は瞬間的に15度以上傾斜するので遠心力が働くような速度での施回操作は行わないこと。
[2] つり荷施回のとき施回レバー以外のレバーを誤って操作すると非常に危険である。
このため、操作レバーのパターンの説明を行うとともに、もっとも遅いスピードで施回するとともに他の操作は絶対に行わないよう指導すること。
[3] 機械によっては、図III−A−7のA(タンブラ中心距離)よりB(クローラ全幅)の方が大きいものがある。この場合は、安定方向が逆となるので事前に把握しておく必要があること。
小型の実機はAとBの間に大きな差がない傾向となっているので、つり荷施回実技教育に使用する実機は運転質量が12トン級のものが望ましい。
図III−A−7タンブラ中心距離及びクローラ全幅
[4] 雨天が続いて地盤が軟弱となり、クローラが沈下する恐れがある場所は鉄板を敷く等、クローラが沈下しないよう養生を行うこと。また、つり荷が着地する場所の養生も行うこと。
[5] 堅固な地盤でない場合は、実技教育を繰り返し行うことで転倒支点側のクローラの地盤が沈下する恐れがある。沈下すると転倒モーメントが大きくなるので、地盤の点検を行い沈下している場合は、地盤の養生を行うか、実機の設置場所を沈下していない場所に移動すること。
[6] 安全第一で行うために、玉掛用具の作業開始前の点検を必ず行うこと。

6 雨天時の対応
通常の雨天の場合は、実技教育を行うこととし安全に配慮するとともに(5−[4])で述べたように、場合によっては地盤の養生を行う。

7 事前準備作業
安全な実技教育を行うために、図III−A−6において、つり荷が着地したとき実機を最大でも15度以上は傾斜させないことが必要である。
このため、図III−A−5においてつり荷の地上高さ(イ)及びつり荷時の作業半径(ロ)をあらかじめ設定しておくことが必要であり、以下の手順に従って事前準備作業を行うこと。なお、事前準備の実施については社団法人全国指定教習機関協会作成の「ドラグ・ショベルオペレーターのための実技講習ビデオ教材」が参考になる。)
[1] クローラの設置位置を決め印をつける。
[2] 図III−A−6の状態になる前、すなわち両側のクローラが地面に接地している状態で荷に玉掛けをし、少しずつブームの上げ操作を行いながら同時にアームを伸ばす操作も行い、荷を地面の上にすべられながら移動させカウンタウエイト側のクローラが地面から浮き上がるようにする。
[3] 実機が13度前後傾斜した時点で(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)の寸法を測定する。
[4] 次の式で(イ)の高さと(ロ)の距離をおおよそ算出する。
(イ)≒ (ニ) ×(ヘ)  (ロ)≒(ニ)+ (ホ) −((ト)×0.4)


(ホ) 2
[5] 図III−A−5の姿勢で(イ)と(ロ)の寸法で荷をつって左施回し、図III−A−6において実機が13度前後傾斜していることを確認しなければならない。しかし、(イ)と(ロ)の寸法は概算なので安全性を重視して、最初から(イ)の高さで行わず最初は(イ)/2の高さぐらいから行って、傾斜角度を確認しながら少しずつ高さを上げて数回行い13度前後の角度にする。
[6] 実機が13度前後傾斜した状態で、(イ)の高さと(ロ)の距離を確定する。
[7] 実技教育のとき、図III−A−5において(ロ)の距離をその都度測定しなくても良いように ▼印の(ハ)の位置の地面に白線を描き、つり荷の設定位置を示しておく。

B 斜面走行実技教育
1 実技教育の目的
ドラグ・ショベルが斜面を走行している最中に発生しやすい災害としては、次のようなものがある。
・斜面走行中に一方のクローラが片滑りをし、バランスを崩して転倒
・斜面走行中に岩・切り株・枕木等に乗り上げて転倒
・トレーラー等への積み込み・積み卸し時に転落
斜面では、機体のバランスが平坦な場所と比べ大きく異なるため、わずかなきっかけから災害につながることがある。ここでは、斜面走行時の機体の動きを体験させ、安全運転の意識向上を図る。

2 教育対象者及び教育時間
[1] 教育対象者は、受講者全員とする。
[2] 1人あたりの教育時間は6分程度とし、オリエンテーション等を含め合計75分程度
とする。

3 教育手順
斜面走行実技教育は、次の第1ステップから第3ステップまでのとおり実施する。
第1ステップ(教育時間:5分)
オリエンテーション
[1] 教育目的、内容、スケジュールの説明
[2] 教育にあたっての諸注意(服装、受講態度、シートベルト着用等)
[3] 操作方法の説明

第2ステップ(教育時間:10分)
次の手順に従って講師による模範演技を行う。
(1) 教育にあたっての実機設定位置等
[1] エンジンは、停止状態
[2] スタータースイッチキーは、差し込んだまま切りの状態
[3] バケットは、地上に接地した状態(図III−B−1の状態)
[4] 安全ロックレバーは、ロックの状態
[5] 斜面中心線と実機の中心線が一致している状態

(2) 講師模範演技手順
[1] 乗車・エンジン始動
図III−B−1において安全な姿勢(手すり、ステップを使用する)で乗車する。
・座席の調整をして、シートベルトを締める。
・各操作レバーの中立を確認し、スタータースイッチキーを“ON”にして警告ランプが点灯するかをチェックする。異常がなければ警報ブザーを鳴らしてエンジンを始動する。
・実機の設定位置は、定められたスタート位置
・実機の方向は、走行モーターが後方の状態
・エンジンは、アイドリング状態
図III−B−1待機姿勢
[2] スタート位置からの発進
・安全ロックレバーを解除する。
・エンジン回転を上げて走行速度を低速モードにする。
・実機の向きと走行方向の安全確認をする。
・バケットを地面から約40cm上げて図III−B−2の姿勢にする。
・左右の走行レバーを操作してゆっくりと発進する。
図III−B−2走行姿勢
[3] 斜面の走行・登坂
図III−B−3(イ)の位置で斜面の中心線と実機の中心線が一致しているか再度確認する。
・エンジンの回転を登坂に適する程度に調整する。
・路面状態を確認し、直進で登坂する。
図III−B−3(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の各々の位置でバケットの高さを適宜調整し登り切る。
図III−B−3(ホ)の位置で、左右の安全を確認し上部施回体を180度施回させ、作業装置を谷側へ向ける。
図III−B−3斜面の走行・登坂
[4] 斜面の走行・降坂
図III−B−4(ヘ)の位置で斜面の中心線と実機の中心線が一致するようにする。
・エンジンの回転数を降坂に適する程度に調整する。
・斜面の路面状態を確認する。
・実機の向きと走行方向の安全を確認する。
・左右の走行レバーを操作してゆっくりと発進する。
・重心位置が図III−B−4(ト)地点を通過する際は微速走行とし、重心が斜面に移ってから降坂・走行を行う。
・必要に応じて手すりを使用し身体を支える。
・スタート位置まで走行した後に停止する。
・左右の安全を確認し、180度施回させて作業装置を斜面方向へ向ける。
図III−B−4斜面の走行・降坂
[5] エンジン停止・降車
図III−B−1の状態にしてバケットを着地させる。
・エンジン回転をアイドリングにする。
・エンジンを停止する。
・シートベルトを外し、安全ロックレバーをロックする。
・安全な姿勢(手すり、ステップを使用する)で下車する。

第3ステップ(教育時間:60分)
受講者に、第2ステップの講師模範演技手順に従って実施させる。

C 斜面施回実技教育
1 実技教育の目的
ドラグ・ショベルが急斜面あるいは、法面で作業を行っているときに次のような災害が発生している。
・斜面で掘削作業中に、横すべりして転倒
・斜面で掘削して、バケットを斜面下側(谷側)に施回中に転倒
・斜面でつり荷作業を行い、つり荷を斜面下側(谷側)に施回中に転倒
・斜面で掘削しながら後進したとき斜面上側(山側)のクローラが岩や切り株に乗り上げ転倒
・斜面で掘削中、地盤が崩壊して転倒
・トラックに道板をかけて積み込み中、施回してバランスをくずし転落
急な斜面で施回を体験させることによって、危険性を再認識させ、災害防止のために講じるべき対策を考えさせる材料を提供して、安全運転の意識向上を図る。

2 教育対象者及び教育時間
[1] 教育対象者は、受講者全員とする。
[2] 1人あたりの教育時間は4分程度とし、オリエンテーション等を含め合計50分程度とする。

3 教育手順
斜面施回実技教育は、次の第1ステップから第3ステップまでのとおり実施する。
第1ステップ(教育時間:5分)
オリエンテーション
[1] 教育目的、内容、スケジュールの説明
[2] 教育にあたっての諸注意(服装、受講態度、シートベルト着用等)
[3] 操作方法の説明

第2ステップ(教育時間:5分)
次の手順に従って講師による模範演技を行う。
(1) 教育にあたっての実機設定位置等
[1] エンジンは、停止状態
[2] スタータースイッチキーは、差し込んだまま切りの状態
[3] アームは、地盤に対して垂直、バケットは、地上に接地した状態(図III−C−1の状態、ただし雨天等の場合は前進で登った状態としてよい。)
[4] 安全ロックレバーは、ロックの状態
[5] 排土板のある実機の場合は、排土板を最高の位置に上げた状態

(2) 講師模範演技手順
[1] 乗車・エンジン始動
図III−C−1において安全な姿勢(手すり、ステップを使用する)で乗車する。
・座席の調節をして、シートベルトを締める。
・各操作レバーの中立を確認し、スタータースイッチキーを“ON”にして警告ランプが点灯するかをチェックする。異常がなければ警報ブザーを鳴らしてエンジンを始動する。
図III−C−1待機姿勢
[2] アーム中間伸ばし、施回
・安全ロックレバーを解除する。
・エンジン回転を上げる。
・バケットを地面から上げる。(360度施回させたとき、バケットが地面に接しない程度まで講師の指示する高さに上げる。)
・左右の安全を確認し、左へ360度施回して元の位置で止める。
・左右の安全を確認し、右へ360度施回して元の位置で止める。
[3] エンジン停止・下車
・バケットを元の位置に着地する。(図III−C−1の状態)
・エンジン回転をアイドリングする。
・エンジンを停止する。
・シートベルトを外し、安全ロックレバーをロックする。
・安全な姿勢(手すり、ステップを使用する)で下車する。

第3ステップ(教育時間:40分)
受講者に第2ステップの講師模範演技手順に従って実施させる。

D 死角確認実技教育
1 実技教育の目的
死角が原因で次のような災害が発生している。
・施回中にカウンタウエイトにはさまれ又は激突され
・施回中にバケットにはさまれ又は激突され
・後進時にクローラにひかれ
ドラグ・ショベルを操作するとき、オペレーターが視認できない範囲、即ち「死角」があることを後方のみならず全周にわたって、受講者に再認識させ安全運転の意識向上を図る。

2 教育対象者及び教育時間
[1] 教育対象者は、受講者全員とする。
[2] 教育時間は、オリエンテーションを含め合計35分程度とする。

3 教育手順
死角確認実技教育は、次の第1ステップから第3ステップまでのとおり実施する。
第1ステップ(教育時間:5分)
オリエンテーション
[1] 教育目的、内容、スケジュールの説明
[2] 教育にあたっての諸注意(服装、受講態度、シートベルト着用等)

第2ステップ(教育時間:15分)
次の手順に従って受講者を任意の位置に立たせる。
(1) 教育にあたっての実機設定位置等
[1] エンジンは、停止状態
[2] スタータースイッチキーは、差し込んだまま切りの状態
[3] バケットは、地上に接地した状態(図III−D−1の状態)
[4] 安全ロックレバーは、ロックの状態

(2) 受講者(立会人)全員を任意の位置に立たせる。
[1] 受講者(立会人)全員を任意の位置に立たせる。
・立会人に自分自身の身長の頭部から腰までの部分が、運転席(オペレーターが運転席に居ると仮定して)から見えると思う位置を6方向のラインについて決めさせ、その位置に立たせる。ただし、受講者が少人数の場合は、2方向ずつに分けて実施することも考えられる。なお、この場合、立った状態と座った状態とについて実施するとより効果的である。
[2] 受講者の中の1名が実機に乗車する。
図III−D−1において安全な姿勢(手すり、ステップを使用する)で乗車する。
・座席の調整をして、シートベルトを締め待機する。
図III−D−1待機姿勢

第3ステップ(教育時間:15分)
受講者全員で死角範囲を把握する。
[1] 運転席の受講者に目線で各ライン上に立っている立会人の上半身が見えるか確認し、見えなかった立会人は、ライン上から離れてもらう。
[2] 確認できた立会人は、施回中心からその場所までの距離を実測する。
[3] 実測した距離を全員で再確認する。
[4] 上記[1]でライン上から離れた受講者(死角の中にいた受講者)には、運転席に交互に乗車させ自分の目線で死角の範囲を確認する。(実機への乗り降りは、手すり、ステップを使用する。)

W 実技教育後の学科教育
実技教育の教育効果を向上させるため、実技教育終了後に実技の内容に関連した災害事例等を活用して、安全な作業方法を徹底するための学科教育を行う。
以下の1〜4の災害事例と各作業の注意点について、説明指導すること。
1 つり荷施回について
(1) つり荷施回時に発生している災害
・U字溝をつり上げ施回中、足元が崩れ転倒
・U字溝をつり上げ施回中、荷振れでクランプが外れ落下
・傾斜地で篭をつり上げ施回したところ、転倒

(2) つり上げ作業時の注意点
・荷のつり上げ作業について一定の合図を定めるとともに、合図を行うものを指名して、その者に合図を行わせること。
・平たんな場所で作業を行うこと。
・つり上げた荷と接触等の危険が生じるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない、また、ドラグ・ショベルに接触する危険が生ずるおそれのある箇所には、誘導員を配置する場合を除いて、労働者の立ち入りを禁止すること。
・つり荷の重量とつり具の重量の合計が標準荷重(バケットの表示容量(平積容量m2)×1.8に相当する重量(tf))以下であって、かつ、1トン未満に制限すること。
・玉掛け作業には玉掛け技能講習を修了したもの又は特別教育を修了した者に行わせるとともに、つり上げた荷との接触等による危険を防止するため、荷の振れ止め、荷の位置決めは、荷に控えロープを付ける等による方法により行うこと。
・ドラグ・ショベルの旋回速度は、トラッククレーンの約3〜4倍にもなるため、つり荷中の旋回においては、つり荷が労働者に接触する危険性や遠心力による荷の振れが大きくなり機体が転倒する危険性が高いことから、旋回時にはエンジンの回転速度を低速に調整するとともに、アーム等の起伏及び旋回速度を切り替える装置を有するドラグ・ショベルにあっては、当該装置を低速に切り替えて作業を行うこと。
・つり上げ用の器具等の異常の有無について点検を行い、異常がないことを確認してから作業を行うこと。

2 斜面走行について
(1) 斜面走行時に発生している災害
・斜面走行中に一方のクローラが片滑りをし、バランスを崩して転倒
・斜面走行中に岩・切り株・枕木等に乗り上げて転倒
・トレーラー等への積み込み・積み卸し時に転落

(2) 斜面走行時の注意点
[1] 斜面走行時の基本操作(斜面に対する角度、バケットの位置、走行前の確認事項等)
斜面地を走行する際は、斜面に対しクローラを直角になるよう進行する。走行時はバケットを地面から40p程度の高さに保つよう適宜調整をする。
[2] 斜面走行時の傾斜地の確認
ドラグ・ショベルが登坂及び降坂出来る角度はおよそ35度(勾配70%)以下とされているが、機種により違いがあり、あくまで極めて理想的な条件の下で走行させた場合である。実際の現場では、均一の角度・平坦な傾斜面であることの方が極めてまれであり、現場は日々変化するため、始業前点検(使用する機械の性能確認を含む)とあわせて現場状況を詳しく観察し、安全が確保されていることを確認する必要がある。
[3] 傾斜地での横方向への走行
傾斜地で横方向に走行する(傾斜地に対しクローラを平行になるよう走行する)と、横滑りを起こす危険がある。
傾斜地を走行する際は、斜面に対しクローラが直角になるよう進行する。
[4] 斜面での進路変更
斜面での進路変更・方向転換は、転倒や横滑りの原因となり危険である。進路変更・方向転換は、出来るだけ水平な地盤の堅い場所で行う。
図IV−1斜面での進路変更

3 斜面施回について
(1) 斜面作業時に発生している災害
・斜面で掘削作業中に、横すべりして転倒
・斜面で掘削して、バケットを斜面下側(谷側)に施回中に転倒
・斜面でつり荷作業を行い、つり荷を斜面下側(谷側)に施回中に転倒
・斜面で掘削しながら後進したとき斜面上側(山側)のクローラが岩や切り株に乗り上げ転倒
・斜面で掘削中、地盤が崩壊して転倒
・トラックに道板をかけて積み込み中、施回してバランスをくずし転落

(2) 斜面作業時の注意点
[1] 斜面作業時の基本事項
・斜面での作業は、機械の安定度が大きく変化し、転倒の危険があるので極力行わない。
・斜面で作業するときは、足場を水平にする。(図IV−2参照)
・足場を水平にできない場合は、斜面上側に施回して、掘削物を放土(ダンプ)する。
・斜面下側に施回し掘削物を放土する必要があるときは、下側への旋回を必要最小限にとどめる。
・急操作・急停止は、慣性による転倒の危険があるので操作はゆっくり行う。
図IV−2盛土で足場を水平
[2] 重荷重をかけての横方向施回は禁止
・一般的に機械は、横方向の方が縦方向より転倒しやすい構造になっている。
・斜面でフロントアタッチメントに、重荷重をかけての横方向施回は行わない。
(図IV−3参照)
図IV−3横方向施回の禁止

4 死角について
(1) 死角が原因で発生している災害
・施回中にカウンタウエイトにはさまれ又は激突され
・施回中にバケットにはさまれ又は激突され
・後進時にクローラにひかれ

(2) 死角による接触の防止の注意点
・エンジンが始動するとき及び機械の動きが大きく変化するときは、警報ブザーを鳴らし周囲の人に注意を促してから行う。
・接触による危険の恐れがある箇所には、立入禁止の措置を確実にして、作業員を立ち入らせない。
・周囲に、だれもいないだろう「だろう運転」は、してはならない。誘導者の合図に従うが誘導者がいない場合は、いったん機械から降りて周囲の安全を確認する。
・運転質量7トン級のドラグ・ショベルの死角を実測し、図IV−4及び表IV−1に参考として示した。