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別添
ダイオキシン対策推進基本指針

第1 基本的考え方
I ダイオキシン問題は、将来にわたって、国民の健康を守り環境を保全するために、内閣を挙げて取組みを一層強化しなければならない課題である。

II 今後4年以内に全国のダイオキシン類の排出総量を平成9年に比べ約9割削減する。

III 埼玉県所沢市を中心とする野莱及び茶については、政府が実施したダイオキシン類の実態調査により安全性が確認されたところであるが、健康及び環境への影響を未然に防止することを更に徹底する観点から、関係省庁が一体となり、対策をより一層充実し、強化するとともに、ダイオキシン類に関する正確な情報が公開されることにより、国民の不安が解消されることが必要である。

IV このような認識の下、今後の国の総合的かつ計画的なダイオキシシ対策の具体的な指針を策定する。国は、本指針に従い、地方公共団体、事業者及び国民と連携して、次の施策を強力に推進する。
1 耐容1日摂取量(TDI)の見直しを始め各種基準等作り
2 ダイオキシン類の排出削減対策等の推進
3 ダイオキシン類に関する検査体制の改善
4 健康及び環境への影響の実態把握
5 調査研究及び技術開発の推進
6 廃棄物処理及びリサイクル対策の推進
7 国民への的確な情報提供と情報公開
8 国際貢献

V 本指針及びこれに基づく対策の進捗状況について、1年以内に点検を行うとともに、必要に応じ対策を見直す。

VI 以上の取組みを通じて得られるダイオキシン対策や廃棄物対策に関する我が国の経験や技術を海外移転することにより、世界に貢献する。

VII さらに、廃棄物対策に万全を期した上で、循環型社会の構築に政府一体となって取り組む。

第2 緊急に構ずべきダイオキシン対策
1 耐容1日摂取量の見直しを始め各種基準等作り
(1) ダイオキシン対策の基礎となる我が国の耐容1日摂取量(TDI)については、世界保健機関(WHO)専門家会合の結論を踏まえ、環境庁及び厚生省の共同作業の下、見直しを行い、3か月以内に結論を得る。また、この結論について国民に分かり易い形で情報を公開する。
(2) ダイオキシン類の人体への摂取経路、食物連鎖を通じた生物濃縮等に関する科学的知見の一層の充実を図る。このため、平成11年度には、発生源周辺地域等における精密暴露評価や環境中挙動に関する実測調査等を実施するほか、各年で計画的な調査を行う。
また、ダイオキシン類の人体への取り込み量を推定するため、食品中のダイオキシン調査を拡充するとともに、その結果をとりまとめる都度、国民に分かり易い形で情報公開する。さらに、大気、土壌等からの暴露実態もあわせ、人への健康影響を総合的に評価する。
(3) 以上を踏まえ、環境媒体についての目標となる基準の設定を行う。大気については、TDIの見直し後、6か月程度を目途に大気環境指針の見直しを行うとともに、さらに科学的知見の充実を図り、環境基準の設定を行う。水質については、科学的知見の充実を図り、環境基準又は指針の設定の検討を行い、また、これに合わせ、底質の除去基準についても設定を検討する。土壌についても、科学的知見の充実を踏まえ、環境基準の設定を検討する。

2 ダイオキシン類の排出削減対策等の推進
(1) 廃棄物焼却施設等の各発生源別のダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)を本年6月までに整備する。
(2) 今日の我が国におけるダイオキシン類の主たる発生源である廃棄物焼却施設等に対する規制措置を徹底し、各年ごとに確実にダイオキシンの発生削減を行い、その結果を毎年公表するとともに、平成14年規制を達成する。
(3) その他の未規制の発生源についても、排出に関する最新の知見や排出実態調査の結果等を踏まえ、排出削減対策を推進する。
(4) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び大気汚染防止法に基づく監視措置の徹底等により、不法な廃棄物焼却の取り締まりを一層強化する。
(5) 廃棄物焼却施設の集中地域等における新規立地の際の判断基準を明確化する。
(6) 排水中に含まれるダイオキシン類についても、排出実態調査の緒果や最新の科学的知見の集積を踏まえ、排出削減対策を推進する。
(7) 地方公共団体が設置する一般廃棄物焼却施設について、財政的、技術的支援を拡充するとともに、広域的な観点からの整備を一層推進する。
また、現在作成中の地域戦略プランの積極的活用を図る。
さらに、産業廃棄物焼却施設について、政府系金融機関の融資制度の活用等により、設備の高度化を図り、処理に万全を期す。
(8) 排出削減対策の円滑な実施のため、排出削減対策を行う者に対して、その要した設備投資に対する金融上及び税制上の支援措置を引き続き講じる。
(9) ダイオキシン類による汚染土壌については、対策基準の策定を図るとともに、さらに、汚染経路、環境中での挙動、汚染の蓄積過程等の科学的知見の集積を行い、原因者負担の原則を踏まえた対策の仕組みを検討する。
(10) 労働者の暴露防止を図るため、労働衛生管理体制の整備並びに、作業環境の測定、作業環境の改善、適切な保護具の使用等の対策を推進する。

3 ダイオキシン類に関する検査体制の整備
(1) 適切な対策の実施に不可欠なダイオキシン類の検査体制の整備を図る。このため、ダイオキシン類の検査の信頼性を確保するため、国際的動向を踏まえ、排ガス及び排水中の標準的な測定・分析方法について、本年9月までに前倒しでJIS規格を制定し、それ以外の分野についても標準的な測定・検査法を示し、その普及に努める。
また、標準として参照できる環境標準試料の供給を行う。さらに、外部機関や海外施設に検査を委託する場合の信頼性確保の在り方について早急に検討を行い、平成12年度中に結論を得る。
(2) 地方公共団体の検査機関におけるダイオキシン類の測定分析体制の整備については、平成11年度予算で更に推進する。また、精度管理事業の充実強化を図りつつ、ダイオキシン類分析の的確な精度管理を実現するための指針を作成すること等により、ダイオキシン類の測定・分析が可能な公的検査機関及び民間検査機関を育成・拡充する。

(3) 分析技術の向上を図るため、地方公共団体の公的検査機関の技術者に対する研修を平成11年度より計画的に行う。

4 健康及び環境への影響の実態把握
(1) 環境、生物、人体、労働環境、廃棄物焼却施設、産業分野等各方面におけるダイオキシン類について、関係省庁の連携の下で毎年度計画的かつ継続的に実態を把握するとともに、統一的な単位を使用することや単位の意味を説明すること等により、国民に分かり易い形で公表する。
[1] 環境庁は、大気、降下ばいじん、土壌、水質、底質、生物など環境媒体や発生源について実態を把握する。
[2] 厚生省は、廃棄物焼却施設からの排出量、食品、血液及び母乳などの人の暴露状況の健康影響について実態を把握する。
[3] 農林水産省は、農作物、魚介類等の実態を把握する。
[4] 労働省は、労働者の健康状況及び労働環境の実態を把握する。
[5] 通商産業省は、産業分野における発生の実態を把握する。
(2) 廃棄物焼却施設の周辺等の地域についても、関係省庁は協力して分担し、実態を把握す為。
(3) 地方公共団体が行う実態調査についても、財政的、技術的支援を行う。

5 調査研究及び技術開発の推進
(1) 関係省庁は、協力してダイオキシン対策に必要な技術開発・調査研究を推進し、また、その成果の導入、普及を促進するために、1年以内に関係省庁が連携をとった総合的計画を策定する。
(2) 中でも、平成11年度においては、特に廃棄物の適正な焼却技術、土壌汚染浄化技術、ダイオキシン無害化・分解技術、精度管理、簡易測定分析などに関する技術開発及び毒性評価、環境中挙動、人への暴露評価、生物への影響などに関する調査研究に重点的に取り組む。

6 廃棄物処理及びリサイクル対策の推進
(1) 現在、主として民間事業者に委ねられている産業廃棄物処理施設の整備について、排出事業者責任の原則を堅持しながら、国又は地方公共団体も処理施設の整備や運営に関与するなど、安全で適正な処理施設の整備を円滑に推進することとし、そのため新たな制度を速やかに構築する。その際、PFI手法なども活用する。
(2) 主要な発生源である廃棄物焼却施設からのダイオキシン類の排出を削減するため、既に措置された廃棄物対策を着実に推進するとともに、国民がより一層安心できる今後の廃棄物処理の在り方について検討に着手する。さらに、廃棄物の減量化の目標量を半年以内に設定する等政府全体として一体的、計画的な廃棄物対策を推進する。
(3) また、使い捨て製品の製造・販売や過剰包装の自粛、製品の長寿命化等を図るなど製品の開発・製造段階、流通段階での配慮の促進、国民の生活様式の見直し等により、廃棄物の発生抑制に努めるとともに、使用済製品の再使用(リユース)や廃棄物の再生利用、再生資源の回収利用やリサイクルを推進する。こうした取組みの一つとして、容器包装リサイクル法に基づく施策等を推進する。
(4) また、建築解体廃莱物の適正な分別・リサイクルを推進するため、次期通常国会を目途に必要な法制度化について検討する。さらに、「建設リサイクル推進計画’97」を強力に進めるとともに、リサイクル率80%の目標値を早期に達成する。特に、公共工事におけるリサイクルの徹底、建築物解体に伴う廃棄物の分別・リサイクル等を推進する。また、建築活動におけるリサイクル技術等の開発・活用等を推進する。
(5) 産業廃棄物管理票(マニフェスト)制度により排出事業者自らが産業廃棄物処理の流れを確実に把握するなど、排出事業者責任に基づく産業廃棄物の適正処理を徹底する。
(6) 官庁施設から発生する廃棄物について、その抑制と適正処理を徹底する。
(7) 幼児から高齢者までの各々の年齢層に対して、廃棄物リサイクル問題を始めとする幅広い環境教育・環境学習を充実強化する。
(8) 学校においては、原則としてごみ焼却炉を廃止したため、今後は適切なごみ処理やごみの減量化等を推進することが重要であり、これに資するための参考資料を作成し、今月中に全国の学校等に配布する。

7 国民への的確な情報提供と情報公開
(1) 健康や環境への影響の実態、技術開発・研究調査の成果、諸外国の動向等について、様々な数値が持つ意味を含め、正確な情報を迅速かつ分かり易い形で公開する。
(2) 国民に対して、ダイオキシン問題についての理解と協力を得るため、関係省庁共通のパンフレットや廃棄物問題の現状や課題を総合的に明らかにした廃棄物白書の作成、講演会の開催等統一的かつ討画的な広報活動を充実する。
(3) また、各省庁においても、国民生活センター、各地の消費生活センターにおける情報提供や、機関紙、インターネット、マスメディア等を通じた、ダイオキシン類に関する正確な惰報の提供に努める。その際、食品、母乳等のダイオキシン汚染に対する不安を払拭するよう努める。
(4) さらに、あらゆる機会を捉え、国民が自らの価値観やライフスタイルのあり方そのものを見直し、廃棄物の発生の少ない生活様式へ転換することを促す。

8 国際貢献
(1) 国際協力分野において、開発途上国からの要請に基づき、我が国のダイオキシン対策や廃葉物対策の経験や技術を海外に移転することにより、国際社会において、我が国にふさわしい役割を果たす。
(2) ダイオキシン類を合む残留性有機汚染物質について、国際的に取り組むための条約作成政府間交渉が、国際連合環境計画(UNE声)の下で進められており、我が国としてもこの作成交渉に積極的に貢献していく。