安全衛生情報センター
1.CaNa2EDTA等キレート剤の使用による尿中鉛量の測定について (1) 鉛中毒の診断に当り、症例によっては、CaNa2EDTA等キレート剤を使用した後の尿中鉛量の測定 (以下「いわゆる誘発法」という。)を行って、当該労働者の従前の鉛暴露の状態を確認あるいは推定し、 その影響を検討するための参考に資することがある。 もともと、CaNa2EDTAは、鉛その他の重金属中毒の場合に、体内の重金属を置換して体外に排出す ることによって、当該中毒を治療するために用いられるものである。時によると副作用として、ショ ック、一過性の高血圧、腎障害、発疹等をひき起すおそれもあるので、いわゆる健康診断等の一方法 として集団的に行なうことは避け、個々の症例について問題のある次のような場合であって医師が必 要と認めたときに、充分に事前の諸検査(とくに腎機能の検査)をつくして行なわれるものである。 〔症例〕 現在は、鉛業務に従事していないが、過去に鉛業務に従事し、鉛暴露をうけたことのある労働者が、 鉛中毒を強く疑わしめる症状を呈しているに拘わらず、尿中コプロポルフィリン、尿中デルタアミノ レブリン酸、血中鉛、尿中鉛の検査ではさしたる所見は認められない場合。 (2) いわゆる誘発法は、普通はCaNa2EDTAの20mg/kg(体重1kg当り20mg)を5%ブドウ糖250ml/〜500 mlにとかし、1時間以上かけて徐々に点滴静脈注射して、注射開始から24時間の全尿を採尿し尿中鉛 量を測定する方法が行なわれている。 なお、CaNa2EDTA錠の使用は、結果の画一性が期待できないところから原則として避けるべきもの とされている。 2.いわゆる誘発法による場合の認定上の取扱いについて いわゆる誘発法による結果、CaNa2EDTAを注射開始から24時間の全尿について、500マイクログラム 以上の鉛が検出され、かつ、次に該当する場合には、労働基準法施行規則別表第1の2第4号の規定に基 づく労働省告示第36号表中に掲げる鉛及びその化合物による疾病として取扱うこと。 前記1の(1)の〔症例〕に該当する事案であって、鉛の作用を疑わしめる末梢神経障害、腹部の疝痛等 の症状が認められるか、又は血液検査の結果貧血が認められるものであること。