安全衛生情報センター
高気圧作業安全衛生規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成30年厚生労働省令第14号。 以下「改正省令」という。)及び高圧室内作業主任者免許試験及び潜水士免許試験規程及び高気圧作業安 全衛生規則第八条第二項等の規定に基づく厚生労働大臣が定める方法等の一部を改正する告示(平成30年 厚生労働省告示第24号。以下「改正告示」という。)が、本日公布及び告示され、施行及び適用されたと ころである。 ついては、下記に示す改正の趣旨等を十分に理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、その施行及 び適用に遺漏なきを期されたい。 併せて、本通達については、別添1及び別添2のとおり、関係事業者等団体の長宛て傘下会員事業者への 周知等を依頼したので了知されたい。
第1 改正の趣旨 本改正は、「海底配管建設技術に係る安全衛生対策のあり方に関する検討会報告書」(平成29年12月1 日公表)を踏まえ、潜函(かん)、潜鐘、圧気シールド等の内部において溶接等の作業を行うこと等がで きる要件を見直すとともに、高圧室内作業主任者免許及び潜水士免許を受けることができる者の範囲 を見直すため、必要な改正を行うこととしたものである。 第2 改正の要点 1 改正省令関係 (1) 高気圧作業安全衛生規則(昭和47年労働省令第40号。以下「高圧則」という。)の一部改正関係 ア 高圧則第25条の2第2項ただし書の規定により、潜函(かん)、潜鐘、圧気シールド等(以下「潜 函(かん)等」という。)の内部において溶接、溶断その他の火気又はアークを使用する作業(以下 「溶接等の作業」という。)を行うことができる場合として、厚生労働大臣が定める場所におい て溶接等の作業を行うときを追加するとともに同条第3項ただし書の規定により、溶接等の作業 に必要な火気又はマッチ、ライターその他発火のおそれのある物を潜函(かん)等の内部に持ち込 むことができる場合として、当該厚生労働大臣が定める場所において溶接等の作業を行うときを 追加することとしたこと。(高圧則第25条の2第2項及び第3項関係) イ 高圧則第47条に規定する高圧室内作業主任者免許を受けることができる者及び高圧則第52条に 規定する潜水士免許を受けることができる者について、それぞれ厚生労働大臣が定める者を追加 することとしたこと。(高圧則第47条及び第52条関係) (2) 労働安全衛生規則の一部改正関係 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)別表第4に掲げる高圧室 内作業主任者免許及び潜水士免許を受けることができる者について、(1)イの者を追加することと したこと。(安衛則別表第4関係) 2 改正告示関係 (1) 高圧室内作業主任者免許試験及び潜水士免許試験規程(昭和47年労働省告示第130号。以下「免許 告示」という。)の一部改正関係 ア 1(1)イの高圧室内作業主任者免許を受けることができる厚生労働大臣が定める者は、外国にお いて、高圧室内作業主任者免許を受けた者に相当する資格を有し、かつ、高圧室内作業主任者免 許を受けた者と同等以上の能力を有する者と認められる者(高圧室内業務の安全及び衛生上支障 がないと認められる場合に限る。)とすることとしたこと。(免許告示第1条関係) イ 1(1)イの潜水士免許を受けることができる厚生労働大臣が定める者は、外国において、潜水士 免許を受けた者に相当する資格を有し、かつ、潜水士免許を受けた者と同等以上の能力を有する 者と認められる者(潜水業務の安全及び衛生上支障がないと認められる場合に限る。)とすること としたこと。(免許告示第2条関係) ウ ア及びイの改正に伴い、免許告示の題名を「高圧室内作業主任者及び潜水士免許規程」と変更 したこと。 (2) 高気圧作業安全衛生規則第八条第二項等の規定に基づく厚生労働大臣が定める方法等(平成26年 厚生労働省告示第457号。以下「計算方法告示」という。)の一部改正関係 1 (1)アの厚生労働大臣が定める場所は、次のア及びイのいずれの条件も満たす場所とする旨を定める。 (計算方法告示第5条関係) ア 酸素分圧が次の範囲に収まる場所であること。 ○ 0 < P ≦ 0.8 の場合 PO2 < 120×P+21 ○ 0.8 < P の場合 PO2 < 117 (P:ゲージ圧力(単位:メガパスカル)、PO2:酸素分圧(単位:キロパスカル)) イ 内部の気体が酸素、窒素又はヘリウムである場所であること。 第3 細部事項 1 高圧則第25条の2関係 (1) 本条は、従来大気中の空気を圧縮した場所における溶接等の作業を原則として禁止し、圧気シー ルド工法においては、支保工の補強等のため溶接等の作業を行う必要がある場合があるので、作業 の性質上やむを得ない場合であってゲージ圧力0.1メガパスカル未満の気圧下の場所で行うときに 限り、溶接等の作業を認めてきたものであるが、本改正では、加圧下であっても酸素分圧を調整す ること等により可燃物の発火点、燃焼速度、燃焼火炎の伝ぱなどを抑えることができることから、 新たに厚生労働大臣が定める場所において溶接等の作業を行うときについても認めることとしたも のであること。 (2) 新たに厚生労働大臣が定める場所において溶接等の作業を行うに当たっては、ドライチャンバー 工法(水中の潜函(かん)等の内部を混合気体で満たし、ドライ環境を構築した上で酸素分圧を調整 しつつ溶接等の作業を伴う圧気工法をいう。以下同じ。)による海底パイプライン、ケーブル等の 敷設、補修、修復等の場合のように、高圧室内での溶接等の作業を伴わない他の工法が困難で、 潜函(かん)等の内部での溶接等の作業を行う工法が他の工法に比べてより安全に作業を遂行するこ とが期待できる場合に行うことが望ましいこと。 (3) 厚生労働大臣が定める場所において溶接等の作業を行う場合においては、労働者の火傷等による 危険を防止するため、高圧則第25条の2第1項に定める措置を講ずることに加え、次の点に留意する こと。 ア 事前調査及び作業計画等の作成等 溶接等の作業を安全に行うため、次の事項について事前調査を実施するとともに、当該調査で 把握した事実を踏まえ、作業計画及び作業手順を事前に策定すること。 (ア) 潜函(かん)等の周辺環境の状況 (イ) メタンガス等可燃性ガスの潜函(かん)等の内部への浸透・滞留のおそれ (ウ) パイプライン等からの可燃性ガス等の流入又は発生のおそれ (エ) 溶接等の作業に伴い発生する火花が飛散する範囲 (オ) その他溶接等の作業を安全に行うために必要な事項 イ 作業計画及び作業手順の徹底 作業者に作業計画及び作業手順の周知を徹底すること。 ウ 不燃性の衣服等の着用等 溶接等の作業を行う場合には、溶接等の作業に伴い発生する火花が飛散する範囲等を特定し、 着火しやすい衣服等の可燃物をその範囲外に配置又は隔離し、溶接等の作業に適した不燃性の衣 服、手袋等を着用すること。 エ パイプライン等の清掃等 パイプライン等について溶接等の作業を行う場合には、パイプライン等からの危険物の流入を 防止するため、事前に当該パイプライン等の内部の危険物を除去し、当該パイプライン等の清掃 等を実施すること。 オ メタンガス等の可燃性ガスの濃度測定等 海底等の堆積物等から発生するメタンガスやアーク溶接、漏電等により水が電気分解されて発 生する水素などの可燃性ガスの滞留による危険を防止するため、潜函(かん)等の内部の換気を十 分に行うとともに、ガスの濃度測定及びその他の必要な措置を講ずること。 カ 非常事態に対する措置 潜函(かん)等の内部における火災等の非常事態に対する連絡方法・対策等を検討し、作業者の 退避等の対応措置をあらかじめ定めること。また、非常事態を想定した訓練を実施することが望 ましいこと。 キ 救護に関する措置のための機械等の備付け 潜函(かん)等の内部において火災等が発生した場合に備え、作業者の救護に関する措置を行う ために必要な機械等を備え付けること。 ク 消火器の設置等 消火器を設置する等作業者の火傷等による危険を防止するための必要な措置を講ずること。 ケ 連絡設備等 作業者を監視できる設備及び潜函(かん)等の内部と外部の連絡設備を設けること。また、連絡 設備については、独立した2系統以上の設備を確保すること。 コ 研磨等により生じる火花による火傷等防止対策 潜函(かん)等の内部においてグラインダーによる研磨等火花を発生させるおそれのある作業を 行う場合についても、溶接等の作業と同様アからケの措置を講ずること。 2 免許告示第1条関係 (1) 「同等以上の能力を有する」と認められるか否かについては、外国において高圧室内作業主任者 免許に相当する資格を取得するために必要な学科に係る要件を確認し、我が国の高圧室内作業主任 者免許の付与条件と同等以上であるかについて審査した上で、同等以上と認められる場合に限り、 当該免許を付与するものであること。 なお、学科に係る要件が同等以上と認められる場合であっても、我が国の高圧室内業務に係る労 働安全衛生関係法令について教育を受けている必要があること。当該教育については、高気圧業務 特別教育規程(昭和47年労働省告示第129号。以下「特別教育告示」という。)第6条の表中の関係法 令の科目に示された範囲及び時間に適合する内容について、当該関係法令に関して十分な知識を有 する者が行うものであること。 (2) 「高圧室内業務の安全及び衛生上支障がないと認められる場合」とは、当該者が通常使用する言 語を理解する者と共同でこれらの作業を行うことにより、作業者間の意思疎通を図るための手段が 確立しており、かつ、労働災害が発生した場合等の緊急時に日本語で外部機関と連絡が取れる体制 が整備されている場合等が該当すること。 3 免許告示第2条関係 (1) 「同等以上の能力を有する」と認められるか否かについては、外国において潜水士免許に相当す る資格を取得するために必要な学科に係る要件を確認し、我が国の潜水士免許の付与条件と同等以 上であるかについて審査した上で、同等以上と認められる場合に限り、当該免許を付与するもので あること。 なお、学科に係る要件が同等以上と認められる場合であっても、我が国の潜水業務に係る労働安 全衛生関係法令について教育を受けている必要があること。当該教育については、特別教育告示第 6条の表中の関係法令の科目に示された範囲及び時間に適合する内容について、当該関係法令に関 して十分な知識を有する者が行うものであること。 (2) 「潜水業務の安全及び衛生上支障がないと認められる場合」とは、当該者が通常使用する言語を 理解する者と共同でこれらの作業を行うことにより、作業者間の意思疎通を図るための手段が確立 しており、かつ、労働災害が発生した場合等の緊急時に日本語で外部機関と連絡が取れる体制が整 備されている場合等が該当すること。 4 計算方法告示第5条関係 (1) 本条は、「海底配管建設技術に係る安全衛生対策のあり方に関する検討会」に際し、独立行政法 人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所において行われた実証実験(以下単に「実証実験」 という。)の結果に基づき、高圧室内における物質の燃焼速度等が不活性ガスの種類、高圧室内の ゲージ圧力及び酸素分圧によって決まることが確認されたことを踏まえ、規定したものであること。 (2) 実証実験において使用し実験結果が得られた不活性ガスは窒素及びヘリウムのみであることから、 これら以外の不活性ガスを使用した場合については、本条の要件を満たさないこと。 (3) 大気中の空気を単に圧縮した気体を使用した場合については、本条の要件を満たさないこと。 第4 ドライチャンバー工法に伴う安全衛生対策 ドライチャンバー工法については、圧気工法に含まれることから、当該工法による作業を行う仕事 は、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第88条の計画の届出の対象となるこ と。 また、ドライチャンバー工法の計画及び施工に当たっては、上記第3において述べた事項のほか、 高圧室内作業者の健康障害を防止するため、高圧則第15条及び第16条の規定を遵守すること。 なお、次の点についても留意すること。 1 飽和潜水業務に係る安全衛生対策 飽和潜水業務に係る作業に当たっては、関係法令に定める基準を遵守するほか、関係業界団体や企 業等が策定しているマニュアル等を参照し、安全衛生上必要な措置を講ずること。また、飽和潜水業 務において使用する装置については、各船級規格や関係業界団体の基準に準じたものとすること。 2 酸素欠乏症防止対策 潜函(かん)等の内部における酸素分圧を一定以下とする場合には、作業者の酸素欠乏症を防止する ための措置を講ずること。 3 酸素中毒、窒素酔い等の健康障害防止対策 (1) 長時間の高圧室内業務を長期間にわたり反復して行う場合には、無菌性骨壊死(圧不良性骨壊死) 等の慢性障害の発生が懸念されることから、当該業務の実施に際しては適切な加減圧方法を用いる とともに、作業者の健康管理を行うこと。また、高圧室内業務に従事する労働者に対しては高圧則 第38条第1項の健康診断を行うとともに、医師が必要と認める場合には、肺換気機能検査、関節部 のエックス線直接撮影による検査等高圧則第38条第2項に定める項目について、医師による健康診 断を行わなければならないこと。なお、作業者の状況によっては、必要に応じてMRI検査を行うこ とが望ましいこと。 (2) 呼吸ガスと潜函(かん)等の内部の環境ガスが異なる場合には、人体に対するガス溶解度の差異に よって生ずる等圧逆拡散(isobaric counter diffusion)等による減圧症リスクを考慮して、必要 な措置を講ずること。 4 その他の安全衛生対策 (1) パイプライン等について溶接等の作業を行う場合には、事前に当該パイプライン等からの有害ガ スの発生を防止するための清掃等を実施すること。 (2) 溶接等の作業に伴い発生するヒュームなどの粉じんへのばく露を減少させるため、換気等の措置 や防じんマスク等の呼吸用保護具の使用等必要な措置を講ずること。 (3) アーク溶接作業等に伴って発生する一酸化炭素による中毒を防止するため必要な措置を講ずるこ と。 第5 免許申請に係る手続き 1 免許告示第1条又は第2条の規定に基づき高圧室内作業主任者免許又は潜水士免許の交付を受けよう とする者については、必要な要件を満たしているか否かを確認するため、免許申請書(安衛則様式第 12号)に、次の(1)から(3)までの書面及び(4)から(9)までの事項を記載した書面(当該免許を受けよう とする者が行う業務を実施しようとする事業者が作成したものに限る。)を添えて、当該業務を行お うとする事業場を管轄する都道府県労働局長(以下「所轄都道府県労働局長」という。)に提出する必 要があること。 なお、外国語の資料がある場合には和訳を添えて提出させること。 (1) 申請者が有する外国における高圧室内作業主任者免許又は潜水士免許に相当する資格証の写し及 び当該資格証を発行した機関等が当該写しが原本の写しであることを証した書面 (2) 申請者が有する外国における高圧室内作業主任者免許又は潜水士免許に相当する資格の取得要件 が示された資料(相当することを示す資料を含む。) (3) 申請者が高圧室内業務に2年以上従事していることを証した書面(高圧室内作業主任者免許の場合 に限る。) (4) 申請者が受講した我が国の高圧室内業務又は潜水業務に係る労働安全衛生関係法令についての教 育の時間、テキスト及び講師の略歴 (5) 免許申請に係る高圧室内業務又は潜水業務の内容の詳細及び作業を実施する期間 (6) 本件作業において使用する言語 (7) 本件作業において作業者間の意思疎通を図るための手段 (8) 労働災害が発生した場合等の緊急時の体制 (9) その他、本件免許を交付するに当たり参考となる事項 2 所轄都道府県労働局長は、業務計画書の内容を審査し、第3の2(1)及び(2)又は3(1)及び(2)の免許 付与の要件に合致し、免許を交付することが適当と認められる場合には、あらかじめ本省に照会の上、 免許を交付すること。 3 免許告示第1条又は第2条の規定に基づく免許の交付に当たっては、法第110条第1項の規定に基づき、 業務計画書に示された作業について、当該作業が終了するまでの期間に限定して免許を付与すること。 第6 関係通達の整備 昭和47年11月15日付け基発第727号「衛生管理者規程ならびに労働衛生関係の免許試験規程および 各種技能講習規程の運用について」を別添3のとおり改正する。別添3(PDF:100KB)