ナノマテリアル製造・取扱い作業現場における当面のばく露防止のための
予防的対応について(平成21年3月31日基発第0331013号により廃止)
基発第0207004号
平成20年2月7日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長
ナノマテリアル製造・取扱い作業現場における当面のばく露防止のための
予防的対応について(平成21年3月31日基発第0331013号により廃止)
近年、研究開発が進みつつあるナノマテリアルについては、工業用材料としての利用が拡大しつつある。
このため、今後、ナノマテリアルの利用の拡大に伴って製造又は取扱いに従事する労働者数も急速に増加
するものと考えられる。
ナノマテリアルについては、組成単位がごく小さくなることで、もとの状態のときと異なる性状を示す
ことがあり、一部の学術論文においては一定の条件下でマウス等に影響を与えることを示唆する報告がな
されている一方で、逆に有意な影響を与えない等の報告もなされていることから、生体影響について動物
実験等の研究を含め、我が国を含めた各国の研究機関及びOECD等の国際機関がその解明に取り組んでいる
ところである。
今後、人体への影響については更なる知見の集積が必要であり、現在独立行政法人労働安全衛生総合研
究所においてばく露防止対策等の研究を進めている。また、近々医薬食品局と連携の上、専門家による検
討会を開催し安全対策等についての検討を進めることとしているところであるが、予防的観点から、ナノ
マテリアルに対する当面のばく露防止のための予防的対応を下記のとおり取りまとめ、関係団体に対し
別紙により要請したので、ナノマテリアルを製造し、又は取扱う事業場の把握に努めるとともに、関係事
業場において本通知が広く周知されるよう徹底を図られたい。
記
1 対象とするナノマテリアル
対象となるナノマテリアルは、元素等を原材料として製造された固体状の材料であって、大きさを
示す3次元のうち少なくとも一つの次元が100nmよりも小さいナノ粒子(nano-objects)及びナノ構造体
(nanostructured material)(内部にナノスケールの構造を持つ物体、ナノ粒子の凝集したものを含む)
であること
2 対象とする労働者
1の物の製造又は取扱い(修理、点検等を含む。また、研究目的で製造等をする場合も含む。)に従事
する労働者(監督者を含む。)を対象とすること
3 ばく露防止のための予防的対応について
(1)製造設備について
製造装置は原則として密閉構造とすること。ただし、これが困難な場合においては局所排気装置を
設置すること。なお、局所排気装置の屋外への排気口には高性能フィルターを設け、局所排気装置を
設置した後は、定期的な保守点検を行うこと
(2)その他の作業工程におけるナノマテリアルの取扱いについて
労働者がナノマテリアルを直接取扱うような原材料の荷受け、原材料や製品の秤量、製造・加工
装置への投入、製造・加工装置からの回収、容器等への移し替え、製造・加工装置の清掃・点検・
補修や容器の清掃等の(1)を除くすべてについて、以下のばく露防止措置を講ずること。
ア 密閉化・無人化・自動化によって、労働者がナノマテリアルにばく露しないことが望ましいが、
困難な場合には局所排気装置を設置すること。また、局所排気装置の屋外への排気口には高性能
フィルターを設けること。
イ 局所排気装置を設置した後は、定期的な保守点検を行うこと。
ウ ナノマテリアルを直接取り扱う労働者は適切な保護具や作業衣を着用すること(「(4)保護具
について」を参照のこと)。
(3)作業管理等について
ア ナノマテリアルの取扱いに関する作業規程を作成し、労働者がナノマテリアルにばく露しない
ようにすること。
イ 作業場の床や作業台等の清掃については、ナノマテリアルを拡散させないよう、高性能フィル
ターを備えた掃除機による吸引や湿った布による拭き取りによって行うこと。なお、使用した布
については袋に封入し適切に廃棄すること。
ウ 労働者にナノマテリアルへの性状やばく露防止のための教育訓練を行うこと。
エ ナノマテリアルを製造・加工する施設や取り扱う施設と外部と区画し、その間には除染区域を
設ける等により、付着したナノマテリアルを外部に持ち出さないように適切に処理すること。
オ ナノマテリアルを製造・加工する施設や取り扱う施設には関係者以外の立ち入りを制限すること。
(4)保護具について
ア ナノマテリアルの吸入を防止する適切な呼吸用保護具を、必要な数量備え、有効かつ清潔に保持
すること。呼吸用保護具は防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)に基づく国家検定に
合格したもので、粒子捕集効率が99.9%以上のもの又はそれと同等以上のものを使用するのが望ま
しい。
イ 保護手袋はナノマテリアルの皮膚への付着を防止する適切な材質のものを使用すること。保護手袋
は有効かつ清潔な状態を保持するために、使い捨てとすることが望ましい。なお、使用した保護手袋
を廃棄する場合は袋に封入し適切に廃棄すること。
ウ ゴーグル型保護眼鏡を、必要な数量備え、有効かつ清潔に保持すること。
エ 作業衣からのナノマテリアルのばく露を防止するために、ナノマテリアルを取扱う作業では専用の
保護衣を着用すること。保護衣は、その材質は不織布のものが望ましく、有効かつ清潔な状態を保持
すること。なお、ナノマテリアルの付着した保護衣は、事業場外に持ち出さないこと。
4 その他の関係情報の入手先
今後、独立行政法人労働安全衛生総合研究所のホームページに特設のページを設け、当該研究所の
研究成果や各国の研究機関のガイドライン等情報発信を行う予定である。