コーヒー液の抽出工程等における一酸化炭素中毒等の防止について
基安発第0624003号
平成16年6月24日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局安全衛生部長
コーヒー液の抽出工程等における一酸化炭素中毒等の防止について
一酸化炭素中毒は、化学物質による業務上疾病の中でも最も多く発生しているものであり、また死亡災
害にも直結しやすいことから、第10次の労働災害防止計画においてもその撲滅を図ることが計画の目標の
一つに盛り込まれる等、その防止対策は安全衛生行政の中でも重点的に推進してきたところである。
しかしながら、平成14年11月、焙煎されたコーヒー豆(以下「焙煎豆」という。)からコーヒー液の抽出
を行っている事業場において労働者6名が一酸化炭素中毒に罹患し、うち1名が死亡するというこれまでに
ほとんど発生例の見られない重大災害が発生したところである。
この災害の概要は別紙1のとおりであり、発生機序は、[1]コーヒー豆の焙煎の過程で一酸化炭素が発生
したこと、[2]この一酸化炭素が多孔質の焙煎豆の中に吸着されていたこと、[3]焙煎豆に吸着されていた
一酸化炭素がコーヒー液の抽出過程で温水に追い出されてタンク内に発散したこと、[4]発散した一酸化炭
素を当該タンク内に入った労働者が吸入し、救助に当たった同僚労働者も同様に被災したことであるが、
その原因としては、焙煎豆に一酸化炭素が含まれており、これがコーヒー液の抽出により発散することが
周知されていなかったことが挙げられる。なお、別紙2のとおり、平成6年にも1件同種災害が発生している。
このような状況にかんがみ、別添1(略)及び別添2(略)のとおり、関係事業者団体に対して標記災害防止
について要請したので、各局においても、関係事業者等に対して下記事項に留意し指導に努められたい。
なお、コーヒー豆の焙煎設備、焙煎豆の貯留設備、焙煎豆からコーヒー液を抽出する容器(以下「抽出容
器」という。)又は抽出したコーヒー液を一時貯留する槽(以下「貯留槽」という。)等は、特定化学物質等
(一酸化炭素)を発生させる物を入れたタンク等に該当することから、その改造、修理、清掃等で、これら
の設備の内部に立ち入る作業を行う際には、特定化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)第22
条の規定が適用となることについても、関係事業者等に対して指導に努められたい。
記
1 焙煎豆の販売関係
(1)容器への表示
フレキシブルコンテナ等の事業用焙煎豆の運搬容器の外部に、コーヒー豆に一酸化炭素が含まれてい
ると及びこれが抽出工程で抽出容器内に発散することに関する注意喚起表示をすること。
(2)作業を安全に行うための注意事項を記載した文書の交付
事業用焙煎豆の納入先に対して、上記(1)の事項及び下記3の抽出工程での一酸化炭素中毒防止対策を
記載した文書を交付すること。
2 焙煎豆の製造関係
(1)作業の安全確保のための指揮管理等
[1] 一酸化炭素中毒予防対策を追加した作業標準を定め、これに従い作業を行うこと。
[2] 特定化学物質等作業主任者等、一酸化炭素中毒予防対策に関する知識を有する者の指揮管理下で
作業を行うこと。
(2)焙煎設備の内部に立ち入るときの措置等
[1] 点検、清掃等のために焙煎設備又は焙煎豆の貯留設備の内部に立ち入る際には、あらかじめ換気
を行うとともに、その内部の空気中の一酸化炭素濃度が50ppm以下であることを一酸化炭素濃度測定
器により確認すること。
[2] 焙煎設備、焙煎豆の粉砕設備、貯留設備及び運搬容器への充填設備(以下「焙煎設備等」という。)
の近傍の労働者が作業のために立ち入る場所については、空気中の一酸化炭素濃度が50ppm以下にな
るように換気を行うこと。この場合、必要に応じ一酸化炭素濃度測定器により濃度の確認を行うこと。
(3)労働者に対する教育
関係労働者に対し設備内での一酸化炭素の発生及びその有害性並びに作業上の注意事項に関する教
育を実施すること。
(4)機器の装備等
[1] 焙煎時に発生するガス及び焙煎設備内の冷却時の排ガスは屋外に排出すること。
[2] 必要な測定器(一酸化炭素濃度測定器)及び呼吸用保護具(空気呼吸器又は送気マスク)を備え付ける
こと。
[3] 焙煎設備等の近傍には、一酸化炭素の漏えいを検知するための自動警報装置の設置が望ましいこと。
(5)緊急時の措置
一酸化炭素中毒が発生したときは、事故処理、被災者救出作業には空気呼吸器又は送気マスクを使用す
ること。
3 コーヒー液の抽出関係
(1)作業の安全確保のための指揮管理等
[1] コーヒー液の抽出工程については、一酸化炭素中毒予防対策を加えた作業標準を定め、これに従い
作業を行わせること。
[2] 特定化学物質等作業主任者等、一酸化炭素中毒予防対策に関する知識を有する者の指揮管理下で作
業を行わせること。
(2)タンク等の内部に立ち入るときの措置等
[1] 抽出容器や貯留槽の内部は原則立入禁止とすること。
[2] 必要により抽出容器や貯留槽の内部に立ち入るときは、あらかじめその内部の空気中の一酸化炭素
濃度が50ppm以下になるまで換気を行うこと。なお、この場合、一酸化炭素濃度測定器により濃度の確
認を行うこと。
(3)抽出容器を開放して行う作業の際の措置
焙煎豆の投入、コーヒー豆かすの排出、コーヒー液のサンプリング等のために、抽出容器を開放して作
業を行う場合には、局所排気装置等により発散する一酸化炭素を屋外へ排出すること。
(4)労働者に対する教育等
[1] 関係労働者に対しコーヒー液の抽出工程での一酸化炭素の発生及びその有害性、作業上の注意事項
等に関する教育を実施すること。
[2] 抽出容器や貯留槽の近傍に、内部への立入りの原則禁止と必要により立ち入る場合の注意事項を掲
示すること。
(5)機器の装備等
[1] 必要な測定器(一酸化炭素濃度測定器)及び呼吸用保護具(空気呼吸器又は送気マスク)を備え付ける
こと。
[2] 槽内への立入作業を避けるため、抽出容器や貯留槽の洗浄には自動洗浄装置の導入が望ましいこと。
[3] 抽出容器や貯留槽の近傍には、一酸化炭素の漏えいを検知するための自動警報装置の設置が望まし
いこと。
(6)緊急時の措置
一酸化炭素中毒又は一酸化炭素の漏えい事故が発生したときは、事故処理及び被災者救出作業には、空
気呼吸器又は送気マスクを使用すること。
別紙1
別紙2