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高気圧作業安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について

改正履歴
基発第251号
平成13年3月30日
都道府県労働局長 殿

厚生労働省労働基準局長




高気圧作業安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について


 高気圧作業安全衛生規則の一部を改正する省令(平成13年厚生労働省令第94号。以下「改正省令」という。)については、本日公布・施行されたところである。
 今回の改正は、近年、潜水作業者のヘルメット内に空気が連続して送気される方式(以下「ヘルメット式潜水」という。)に加え、潜水作業者に圧力調整器(レギュレーター)を使用させ潜水作業者が息を吸い込んだ時のみ送気される方式(以下「フーカー式潜水」という。)が普及していることを踏まえ、フーカー式潜水に対応した送気量等の基準を設けるとともに、潜水作業者が携行するボンベの空気を呼吸する方法(以下「スキューバ式潜水」という。)で作業を行う場合に救命胴衣に代えて浮力調整具を使用することができるようにするなど、近年の潜水業務の実施形態の変化に対応するためのものである。
 ついては、下記に示す今回の改正の趣旨を十分に理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺漏なきを期されたい。



第1 改正の要点
1 フーカー式潜水の場合の予備空気槽の内容積の下限値を定めたこと。(第8条第2項関係)
2 潜水作業者に予備空気槽の基準と同等の基準に適合した予備ボンベを携行させるときは、予備空気槽を設けることを要しないこととしたこと。(第8条第3項関係)
3 フーカー式潜水の場合については、送気圧を計るための圧力計を設けなければならないこととしたこと。(第9条関係)
4 フーカー式潜水の場合について、送気を行う空気圧縮機の送気量の能力及び送気圧を定めたこと。(第28条関係)
5 フーカー式潜水の場合について、圧力調整器の事前点検、修理等を行わなければならないこととしたこと。(第34条関係)
6 スキューバ式潜水の場合について、救命胴衣に代えて浮力調整具を着用することができることとしたこと。(第37条関係)

第2 細部事項
1 第8条関係
(1) 第2項第2号イの「潜水作業者に圧力調整器を使用させる場合」とは、一般に 「フーカー式潜水」と呼ばれ、送気ホースの先にスキューバ式潜水で用いられている圧力調整器(レギュレーター)が取り付けられており、作業者は、その圧力調整器に取り付けられたマウスピースを口にくわえて呼吸する方式の潜水を行う場合をいうこと。
(2) 送気ホースの先にマスクが取り付けられており、マスクの口元の部分に圧力調整器が取り付けられているものを使用して作業を行う潜水方式があるが、これについても第2項第2号イに規定する「潜水作業者に圧力調整器を使用させる場合」に該当するものであること。
(3) 第2項第2号イの予備空気槽の内容積の式については、フーカー式潜水の場合 は、下記3において述べるとおり、第28条第2項において、送気量の基準として「その水深の圧力下において毎分40リットル以上の送気を行うことができる空気圧縮機を使用」しなければならないこととしたので、改正省令による改正前の高気圧作業安全衛生規則(昭和47年労働省令第40号。以下「旧高圧則」という。)第8条第2項第2号に規定されていたヘルメット式潜水の場合の予備空気槽の内容積の式を基に、当該内容積の式中「60」(旧高圧則第28条に規定されていたヘルメット式潜水の場合の毎分送気量の基準に相当する値)を「40」に改めた式で計算される値を、フーカー式潜水の場合の予備空気槽の内容積の下限値としたこと。
(4) 第3項については、船上等に設置される予備空気槽に係る第2項各号の基準と同等の基準に適合する予備ボンベを潜水作業者に携行させるときは、事故の場合に当該予備ボンベを使用することが可能であり、当該予備ボンベは予備空気槽と同等の役割を果たすことができるものと評価できることから、予備空気槽を設けることを要しないこととしたこと。
(5) 予備ボンベを携行させる場合については、空気圧縮機が故障して送気できなくなった場合に、混乱がなく速やかに予備ボンベに切り替えることができるよう、潜水作業者に十分な教育訓練を実施するよう指導すること。
2 第9条関係
本条については、下記3において述べるとおり、フーカー式潜水により潜水作業を行う場合には、第28条に送気圧の基準として「送気圧をその水深の圧力に0.7メガパスカルを加えた値以上」としなければならないこととしたので、送気圧が当該基準に合致していることを確認するため、圧力計の設置を義務付けることとしたこと。
なお、高気圧作業安全衛生規則第8条第1項の送気を調節するための空気槽に圧力計が設けられている場合には、当該圧力計をもって第9条の圧力計とみなして差し支えないこと。
3 第28条関係
フーカー式潜水については、必要な送気量(呼吸量)が個人や作業内容によって大きく異なるとともに、潜水作業者が息を吸うときにのみ送気されるという送気のシステムになっている。このため、第2項においては、潜水作業中における送気量の基準として一律な値を示すのではなく、潜水作業者の要求に応じて常に適量の空気を送ることができるよう、空気圧縮機の能力としての送気量の基準を定めることとし、その値を「その水深の圧力下において毎分40リットル以上」としたこと。
また、フーカー式潜水では、一般にヘルメット式潜水に比べて送気ホースが細いために送気抵抗が大きくなるが、作業負荷が大きい作業等でも何ら抵抗なくスムーズに圧力調整器の弁が開いて十分な量を吸入することができるようにする必要がある。このため、潜水作業中において一定の「送気圧」の確保が必要となるが、当該送気について「その水深の圧力(大気圧を除く。)に0.7メガパスカルを加えた値以上」とすることとしたこと。
4 第34条関係
フーカー式潜水では圧力調整器を使用することから、第1項第1号において、潜水作業開始前に点検すべき潜水器具として「圧力調整器」を加えることとしたこと。なお、ヘルメット式潜水による場合には、圧力調整器を使用しないことから、当然に点検することを要しないこと。
5 第37条関係
「浮力調整具」は、スキューバ式潜水を行う場合に着用するもので、潜水中に、ボンベに接続された空気袋の空気を出し入れすることによって浮力を調整するものであるが、非常の場合には救命胴衣としても使用することができるものであることから、今回、救命胴衣に代えて浮力調整具を着用することができることとしたこと。

第3 経過措置
改正省令の施行の際、現にフーカー式潜水を行っている事業者(その使用する空気圧縮機が、改正省令の第28条第2項に規定する基準を満たさない者であって、当該空気圧縮機を引き続き使用するものに限る。)については、改正省令の当該規定にかかわらず、平成15年3月29日までの間は、なお従前の例によることとしたこと。