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労働安全衛生規則及び
電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行について

改正履歴
基発第744号
平成11年12月28日
都道府県労働基準局長  殿

労働省労働基準局長


労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令の施行について

 労働安全衛生規則及び電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令(平成11年労働省令第46号。以下「改正省令」という。)は、本年11月30日に公布され、平成12年1月30日から施行されることとなった。
 今回の改正は、本年9月30日に発生した茨城県東海村の核燃料加工施設の臨界事故の発生原因として、労働者が臨界に関する知識を有していなかったこと、適切な作業方法により作業を行わなかったことが指摘されていることを踏まえ、同種災害の再発防止を図るため、労働者の知識の不足又は不適切な作業方法により労働者が相当程度の放射線に被ばくするおそれのある原子力施設における核燃料物質等の取扱業務について、所要の規定の整備を図ることとしたものである。
 ついては、今回の改正の趣旨を十分に理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、特に下記の事項に留意して、その運用に遺漏のないようにされたい。
 なお、昭和59年6月26日付け基発第328号「原子力発電所における放射線業務に係る労働衛生教育の推進要領について」は、改正省令の施行の日(平成12年1月30日)をもって廃止する。



第1 改正の要点
T 労働安全衛生規則の一部改正関係
 核燃料物質の加工施設、使用済燃料の再処理施設若しくは一定規模以上の核燃料物質の使用施設等(以下「加工施設等」という。)又は原子炉施設の管理区域内において、核燃料物質若しくは使用済燃料又はこれらによって汚染された物(以下「核燃料物質等」という。)を取り扱う業務について、労働安全衛生法(以下『安衛法」という。)第59条第3項に基づく特別、教育の対象としたこと(第36条第28号の2、同条第28号の3関係)。

U 電離放射線障害防止規則の一部改正関係
1 加工施設等又は原子炉施設の管理区域内において核燃料物質等を取り扱う作業を行うときは、労働者の放射線による障害を防止するため必要な事項について作業規程を定め、これにより作業を行わなけれぱならないこととするとともに、当該規程について関係労働者に周知させなければならないこととしたこと(第41条の3、第41条の4関係)。
2 加工施設等又は原子炉施設の管理区域内において核燃料物質等を取り扱う業務に従事する労働者に対する特別教育の科目について定めたこと(第52条の6、第52条の7関係)。

第2 細部事項
T 適用等
1 「加工」とは、核燃料物質を原子炉に燃料として使用できる形状又は組成とするために、これを物理的又は化学的方法により処理することをいい(核原料物質、核燃料物質及び原子 炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)第2条第7項)、「加工施設」とは、加工設傭及びその附属施設をいうものであること(原子炉等規制法第13条第2項第2号)。
2 「再処理」とは、使用済燃料から核燃料物質その他の有用物質を分離するために、使用済燃料を化学的方法により処理することをいい(原子炉等規制法第2条第8項)、「再処理施設」とは、再処理設備及ぴその附属施設をいうものであること(原子炉等規制法第44条第2項第2号)。
3 「使用」とは、製錬事業者が核燃料物質を製錬の事業の用に供する場合、加工事業者が核燃料物質を加工の事業の用に供する場合、原子炉設置者及び外国原子力船運航者が核燃料物質を原子炉に燃料として使用する揚合並びに再処理事業者が核燃料物質又は使用済燃料を再処理の事業の用に供する場合以外で、核燃料物質又は使用済燃料を使用することをいうものであること(原子炉等規制法第52条第1項)。また、「使用施設等」とは、核燃料物質若しくは使用済燃料の使用施設若しくは貯蔵施設又は放射性廃棄物(核燃料物質等で廃棄しようとするものをいう。以下同じ。)の廃棄施設をいうものであること(原子炉等規制法第53条第3号)。なお、「製錬」とは、核原料物質又は核燃料物質に含まれるウラン又はトリウムの比率を高めるために、核原料物質又は核燃料物質を化学的方法により処理することをいうものであること(原子炉等規制法第2条第6項)。
4 「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令第16条の2に規定する核燃料物質の使用施設等」とは、原子炉等規制法第55条の2第1項に基づく施設検査の対象となるとともに、同法第56条の3に基づき保安規定を定める必要のある使用施設等をいうものであること。
5 「核燃料物質」とは、ウラン、トリウム若しくはプルトニウム若しくはこれらの化合物又はこれらを含む物質をいい(原子力基本法第3条第2号及び核燃料物質、核原料物質、原子炉及び放射線の定義に関する政令(以下「定義政令」という。)第1条)、電離放射線障害防止規則(以下「電離則」という。)第2条第2項に規定する「放射性物質」に含まれること。
6 「使用済燃料」とは、原子炉に燃料として使用した核燃料物質その他原子核分裂をさせた核燃料物質をいい(原子炉等規制法第2条第8項)、電離則第2条第2項に規定する「放射性物質」に含まれること。
7 「核燃料物質又は使用済燃料によって汚染された物」には、放射化(中性子線の照射によって金属等の物質が放射能を持つようになること)された物が含まれること。
8 「原子炉」とは、核燃料物質を燃料として使用する装置であって、原子核分裂の連鎖反応を制御することができ、かつ、その反応の平衡状態を中性子源を用いることなく持続することができ、又は持統するおそれのあるものをいい(原子力基本法第3条第4号及び定義政令第3条)、「原子炉施設」とは、原子炉及びその附属施設をいうものであること(原子炉等規制法第23条第2項第5号)。また、原子炉施設には、原子力発電所のみならず、大学、研究所等の試験研究炉及びその附属施設が含まれること。
9 国が設置する加工施設等又は原子炉施設であっても、安衛法第2条第2項に規定する労働者が当該施設の管理区域内において核燃料物質等を取り扱う業務に従事する場合は、安衛法が適用されることから、今回の改正規定も当然に適用されるものであること。

U 労働安全衛生規則の一部改正関係
今回の加工施設における臨界事故の発生原因として、労働者が臨界に関する知識を有していなかったことが指摘されていることを踏まえ、このような放射線被ぱくによる重篤な災害の再発防止を図るため、労働者の知識の不足によって労働者が相当程度の放射線に被ばくするおそれのある加工施設等又は原子炉施設の管理区域内において核燃料物質等を取り扱う業務について、特別教育を義務付けたものであること。
1 加工施設等において核燃料物質等を取り扱う業務に係る特別の教育(第36条第28号の2関係)
本号に掲げる業務には、核燃料物質等の加工、再処理、使用、運搬、貯蔵、廃棄等の業務、核燃料物質又は使用済燃料によって汚染された設備の保守及び点検の業務並びに汚染の除去の業務が含まれること。また、これらの業務には、機械設備を介して核燃料物質等を取り扱う場合が含まれること。
2 原子炉施設において核燃料物質等を取り扱う業務に係る特別の教育(第36条第28号の3関係)
本号に掲げる業務には、核燃料物質等の運搬、貯蔵、廃棄等の業務、核燃料物質又は使用済燃料によって汚染された設備の保守及び点検の業務並びに汚染の除去の業務が含まれること。また、これらの業務には、機械設備を介して核燃料物質等を取り扱う場合が含まれるが、労働安全衛生法施行令別表第2第5号及び第6号の区分により、「原子炉の運転の業務」は含まれないこと。

V 電離放射線障害防止規則の一部改正関係
1 加工施設等における作業規程(第41条の3関係)
(1) 本条は、今回の加工施設における臨界事故の発生原因として、適切な作業方法により作業を行わなかったことが指摘されていることを踏まえ、同種災害の再発防止を図るため、不適切な作業方法により労働者が相当程度の放射線に被ばくするおそれのある加工施設等の管理区域内において核燃料物質等を取り扱う作業について作業規程を定め、これにより作業を行うことを義務付けるとともに、当該規程について関係労働者に周知させることを義務付けた屯のであること。
(2) 作業規程については、関係労働者の意見を取り入れる等により、実効のあるものを作成させること。
(3) 第1号は、各設備の操作に関し、操作の時期、手順及び運転状態の適正保持等に必要な事項について定めるものであること。
(4) 第1号でいう「加工施設に係る設備」には、加工設備、放射性廃棄物の廃棄設備等が含まれること。
(5) 第1号でいう「再処理施設に係る設備」には、再処理設備、放射性廃棄物の廃棄設備等が含まれること。
(6) 第1号でいう「使用施設等に係る設備」には、放射線遮へいのための設備、気密設備、放射性廃棄物の廃棄設備等が含まれること。
(7) 第2号は、安全装置及び自動警報装置の調整に関し、調整の時期、作動テスト等について定めるものであること。
(8) 第2号でいう「安全装置」には、臨界防止のためのタンク内液位制限装置又は質量制限装置、タンクの破裂防止のための内圧制限装置、作業室の出入口のインターロック等が含まれること。
(9) 第2号でいう「自動警報装置」には、核燃料物質の量が臨界量に近づいたこと又は臨界が発生したことを知らせる臨界警報装置、作業室内の放射線量が一定量以上になったことを知らせる放射線量警報装置、作業室内の負圧に異常が生じたことを知らせる負圧警報装置等が含まれること。
(10) 第3号は、臨界防止に関し、核燃料物質等の取扱方法、使用すべき設備等について定めるものであること。
(11) 第3号でいう「偶発的な臨界」とは、本来臨界を予定していない作業や設備において何らかの原因により臨界に至ること、いわゆる臨界事故をいうものであること。
(12) 第4号は、管理区域への立入り及び退去の手順、核燃料物質等の加工、再処理、使用、運搬、貯蔵、廃棄等の作業の方法及び順序、核燃料物質又は使用済燃料によって汚染された設備の保守及び点検の作業の方法及び順序、必要な保護衣又は保護具、放射線の遮へい、遠隔操作等の被ばく防止の方法、被ばく線量の推定方法等について定めるものであること。
(13) 第5号は、外部放射線による線量当量率の測定及び空気中の放射性物質の濃度の測定の方法、頻度及び体制、これらの測定結果が電離則に定める限度を超えている場合の措置等について定めるものであること。
(14) 第6号は、天井、床、壁、設備等の表面の汚染の状態の検査の方法、頻度及び体制、これらの検査結果が電離則に定める限度を超えている場合の汚染の除去の方法及び順序等について定めるものであること。
(15) 第7号は、異常時の措置に関し、緊急復旧又は緊急停止等を行う場合における原材料等の供給装置、電源装置、動力装置等の運転操作の方法及び順序、関連部署への緊急連絡、安全を保持するための要員の配置、必要な設備の使用方法、応急の作業の方法及び順序等について定めるものであること。
(16) 第7号でいう「異常な事態」とは、電離則第42条第1項各号に定める事故をいうものであること。
(17) 第8号は、関連設備相互間の連絡調整その他必要な事項について定めるものであること。
2 原子炉施設における作業規程(第41条の4関係)
(1) 本条は、定期検査等原子炉施設の管理区域内において核燃料物質等を取り扱う作業において、不適切な作業方法により労働者が相当程度の放射線に被ばくするおそれがあることから、当該作業について作業規程を定め、これにより作業を行うことを義務付けるとともに、当該規程について関係労働者に周知させることを義務付けたものであること。
(2) 本条に基づく作業規程には、原子力発電所にあっては、昭和56年9月5日付け基発第573号原子力発電所における被ばく管理対策の強化について」の記の2に定める「放射線作業管理計画」が含まれること。
(3) 作業規程については、関係労働者の意見を取り入れる等により、実効のあるものを作成させること。
(4) 第1号は、管理区域への立入り及び退去の手順、核燃料物質等の運搬、貯蔵、廃棄等の作業の方法及び順序、核燃料物質又は使用済燃料によって汚染された設備の保守及び点検の作業の方法及び順序、必要な保護衣又は保護具、放射線の遮へい、遠隔操作等の被ばく防止の方法、被ばく線量の推定方法等について定めるものであること。
(5) 第2号は、外部放射線による線量当量率の測定及び空気中の放射性物質の濃度の測定の方法、頻度及び体制、これらの測定結果が電離則に定める限度を超えている場合の措置等について定めるものであること。
(6) 第3号は、天井、床、壁、設備等の表面の汚染の状態の検査の方法、頻度及び体制、これらの検査結果が電離則に定める限度を超えている場合の汚染の除去の方法及び順序等について定めるものであること。
(7) 第4号は、異常時の措置に関し、関連部署への緊急連絡、安全を保持するための要員の配置、必要な設備の使用方法、応急の作業の方法及び順序等について定めるものであること。
(8) 第4号でいう「異常な事態」とは、電離則第42条第1項各号に定める事故をいうものであること。
3 加工施設等において核燃料物質等を取り扱う業務に係る特別の教育(第52条の6関係)
(1) 本条は、労働安全衛生規則(以下「安衛則」という。)第36条第28号の2において特別教育を必要とする業務とされた加工施設等の管理区域内において核燃料物質等を取り扱う業務に従事する労働者に対する特別教育の科目等について規定したものであること。
(2) 第1項第工号から第5号までが学科教育、同項第6号が実技教育であること。
(3) 第1項における学科の科目は、今回の加工施設における臨界事故を踏まえ、核燃料物質等に関する知識の不足並びに不適切な作業方法及び設備の取扱いによる労働者の放射線による相当程度の被ばくを防止するために必要なものについて規定したものであること。
(4) 第1項第3号は、本来使用すべき臨界が起きないように設計された設備を使用せず別の設備を使用すること等の不適切な作業を防止するため、労働者に当該設備の形状の意味や使用目的等に関する知識を付与することが必要であるため規定したものであること。
(5) 第1項第6号は、加工施設等における作業及び設備の複雑さ、危険性等にかんがみ、作業の方法及び設備の取扱いについて学科教育による知識の付与のみでは不十分であることから、当該学科教育に対応した実技教育として規定したものであること。
(6) 第1項第6号については、特に労働者が大量の放射線に被ばくする危険性の伴う作業については、実物大模型(モックアップ)を使用する等できるだけ実際の作業に即した教育を行うことが望ましいこと。また、労働者の放射線による被ばくが比較的低いと予想される作業の場合には、必要に応じて0JTにより行って差し支えないこと。
(7) 本条第1項の科目の範囲及び時間については、別途皆示で定めることとしたこと。
4 原子炉施設において核燃料物質等を取り扱う業務に係る特別の教育(第52条の7関係)
(1) 本条は、安衛則第36条第28号の3において特別教育を必要とする業務とされた原子炉施設の管理区域内において核燃料物質等を取り扱う業務に従事する労働者に対する特別教育の科目等について規定したものであること。
(2) 第1項第1号から第5号までが学科教育、同項第6号が実技教育であること。
(3) 第1項における学科の科目は、核燃料物質等に関する知識の不足並びに不適切な作業方法及び設備の取扱いによる労働者の放射線による相当程度の被ばくを防止するため必要なものについて規定したものであること。
(4) 第1項第6号は、原子炉施設における作業及び設備の複雑さ、危険性等にかんがみ、作業の方法及び設備の取扱いについて学科教育による知識の付与のみでは不十分であることから、当該学科教育に対応した実技教育として規定したものであること。
(5) 第1項第6号については、原子炉施設においては、特に外部放射線による線量当量率又は空気中の放射性物質の濃度若しくは汚染密度が高い場所があることから、そのような場所における作業に当たっては、労働者の放射線による被ばくを低減するため、実物大模型(モックアップ)を使用する等できるだけ実際の作業に即した教育を行うことが必要であること。また、労働者の放射線による被ばくが比較的低いと予想される作業の場合には、必要に応じてOJTにより行って差し支えないこと。
(6) 本条第1項の科目の範囲及び時間については、別途告示で定めることとしたこと。