制御機能付き光線式安全装置に対するプレス機械又はシヤーの安全装置 構造規格及び動力プレス機械構造規格の適用の特例について |
改正履歴
基発第130号
平成10年3月26日
プレス機の安全装置又は動力プレス機械については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第42条の
規定により労働大臣が定める規格(プレス機械又はシヤーの安全装置構造規格(昭和53年労働省告示第102
号)又は動力プレス機械構造規格(昭和53年労働省告示第116号)を具備しなければ、譲渡、貸与、設置が
禁止されているところである。
近年における技術の進歩等により、手等の身体の一部で光線を遮ったときに自動的にスライドを停止
させ、光線を遮らなくなったときに自動的にスライドを起動させる機能を併せ持った制御機能付き光線
式安全装置(Presence Sensing Device Initiation。以下「PSDI」という。)が、実用化され、産業現場
に導入されつつある。
PSDIは、起動ボタンを押す必要がないことから、作業量の軽減に資する反面、労働者の意思に関わら
ずスライドが起動することから、災害に結びつくおそれが高いものであり、PSDIの導入に当たっては、
従前のプレス機械に対する安全対策に加えて、安全囲いの確実な設置等PSDIに即した安全対策を講じる
必要がある。
このような状況を踏まえ、PSDIをプレス機械の安全装置として導入する際の安全基準等を下記のとお
り取りまとめたので、関係事業場等に対して周知徹底を図るとともに、その適正な取扱いに遺憾なきを
期されたい。
なお、プレス機械の安全装置及び動力プレス機械の型式検定代行機関及び製造者団体に対しては、そ
れぞれ別添1及び2のとおり通知したので、了知されたい。
第1 プレス機械の安全装置
1 基本的事項
次の2の安全基準を満たすときは、プレス機械の安全装置についてはプレス機械又はシヤーの安全
装置構造規格(昭和53年労働省告示第102号。以下「安全装置構造規格」という。)第30条の規定に
基づき、同規格に適合する光線式安全装置と同等以上の性能があると認め、同規格第1条及び第29条
並びに第4章の規定を適用しないこととすること。
2 PSDIをプレス機械に適用する場合の安全基準
(1) PSDIが適用できるプレス機械の範囲
PSDIが適用できるプレス機械は、プレス機械構造規格に適合する機械のうち、急停止機構及
び再起動防止機構を備え、光線式安全装置が適用できるものであって、次に掲げる条件を満たす
ものとすること。
イ ボルスター面の高さが床面から750mm以上であること(プレス機械に安全囲いを設け、かつ、
開口部の最下端が床面から750mm以上の高さにあるものを除く。)。
ロ ボルスターの奥行きが1000mm以下であること。
ハ ストローク長さが600mm以下であること(プレス機械に安全囲いを設け、かつ、開口部の最下
端と最上端の寸法差が600mm以下であるものを除く。)。
ニ 機械式プレスにあっては、オーバーラン監視装置の設定角度が15度以内であること。
(2) 定義
イ 防護範囲の定義
PSDIを適用するプレス機械のスライドによる危険からの防護すべき範囲(以下「防護範囲」
という。)は、スライドの下面をその最上位置からボルスターの上面まで作動方向に移動してで
きる空間領域とする。
ロ 安全距離
次の式により算出した値(S)をいうこと。
S =1.6(T1 +Ts)+C (単位mm)
この式において、T1 、Ts及びCは、それぞれ次の値を表すものとすること。
T1 : 手が光線をしゃ断した時から急停止機構が作動を開始する時までの時間
Ts: 急停止機構が作動を開始した時からスライドが停止する時までの時間
C: 存在検出装置の光軸を遮光したときに、手等の身体の一部が既に存在検出装置の光軸と光軸
の間に侵入しているために付加しなければならない追加距離であり、当該存在検出装置の検出
能力(連続遮光幅の値又はPSDIの存在検出装置の検出範囲の下端と安全囲いとの透き間の
値のうち、大きい方の値を採るものとする。)に応じて次表で定まる値 (表)
(3) PSDIの構造、取付け等に関する要件
PSDIは、防護範囲に労働者の手等の身体の一部が進入するおそれのある箇所(材料又は製品
を出し入れするために必要な箇所で、PSDIの存在検出装置によって防護されている箇所を除く。)
は、次に掲げる要件を満たす安全囲いを備えたものであること。
ただし、安全囲いに代えて光線式安全装置を用いる場合にあっては、当該安全装置を防護範囲か
ら安全距離以上離して設けなければならないこと。
イ 安全囲いの構造及び取付け
安全囲い及び安全囲いとプレス機械の取付部は、労働者の手等の身体の一部が防護範囲に進入
することを防止するため十分な強度を有するものであること。
ロ 安全囲いの種類
安全囲いは、次のいずれかの要件を満たすものであること。
(イ) 固定ガード
固定ガードにあっては、プレス機械本体に溶接等により固定して取り付けられ、容易に取
り外せない構造であること。
(ロ) 可動ガード等
全体若しくは一部がヒンジ等により可動し、開放できる構造又は全体若しくは一部分が着
脱でき、開放できる構造の安全囲い(以下「可動ガード等」という。)にあっては、次の要
件を満たすインターロックを備えていること。
a 可動ガード等を開き又は取り外したときには、インターロックが作動して、スライドを作
動できないようにすること。
b インターロック用のリミットスイッチ等には、労働者による不意の接触や意図的な無効化
ができないように、覆い等が設けられたものであること。
c インターロック用のリミットスイッチ等は、その回路を二重化し、一方の回路に故障が生
じたときにあってもスライドが作動できないようにすること。
ハ 側面に設ける安全囲い
プレス機械の側面に設ける安全囲いに格子状の部材を用いる場合にあっては、部材間の距離は
30mm以下とし、防護範囲と安全囲いの間の距離を、次表に定める値以上とすること。
ニ 下部に設ける安全囲い
労働者の手等の身体の一部が、PSDIの存在検出装置の検出範囲の下端とボルスター上面の
間を通って防護範囲に進入するおそれがある場合に、PSDIの存在検出装置の検出範囲の下端
と安全囲いとの透き間は、30mm以下とすること。
ホ PSDIの外箱
PSDIの存在検出装置、起動装置等には、十分な強度を有する外箱を設けること。
ヘ 検出感度の固定
検出感度を調節できる機能を有するPSDIの存在検出装置(自動的に検出感度の調節が行わ
れるものを除く。)にあっては、製造者等により適切な感度に調節してプレス機械に取り付けら
れた後に、プレス機械を使用する事業者が容易に調節できない構造であること。
ト PSDIの存在検出装置の取付け
PSDIの存在検出装置は、安全囲いのフレームに確実に固定する等プレス機械を使用する事
業者が容易に位置を変更し、又は容易に取り外すことができないように取り付けるものであるこ
と。
チ 安全距離
PSDIの存在検出装置は防護範囲から安全距離以上離して設けなければならないこと。
(4) PSDIの機能等に関する要件
PSDIをプレス機械の光線式安全装置として使用するときは、安全装置構造規格第2条から第
12条までの規定を満たすとともに、次に掲げる要件を満たすものであること。
(4)―1 PSDIの存在検出装置
イ 外来光線等に対する感応性
PSDIの存在検出装置の受光器は、投光器から照射される光線以外の光線に感応して、又
は受光器の各受光ユニットは、対応する投光器の投光ユニットからの光線以外の光線に感応し
て、それぞれ、スライドが作動しない構造のものであること。
ロ 連続遮光幅
PSDIの存在検出装置の連続遮光幅は、30mm以下であること。
ハ 状態表示
PSDIの存在検出装置は、労働者が次に示す状態を容易に確認できる表示ランプ等を備え
たものであること。
(イ) 電源の状態
(ロ) 光線の通光又は遮光
(ハ) 機能の有効又は無効(有効又は無効の切替えスイッチを備える場合に限る。)
(ニ) 装置の異常の有無
ニ 検出範囲の表示
PSDIの存在検出装置は、当該措置の検出範囲を外箱等の容易に確認できる位置に表示す
るものであること。
(4)―2 PSDIの起動装置
イ PSDIのモードの選択
PSDIのモードの選択は、行程の切替スイッチ、操作の切替スイッチ等を使用しなければ
行うことができない構造のものであること。
ロ PSDIのセットアップ操作
PSDIのセットアップは、スライドが上死点又は上限に停止している状態において、運転
準備のためのスイッチ操作をしなければ行うことができない構造のものであること。
ハ PSDIによる起動のための遮光回数(ブレーク数)
PSDIによってスライドを起動させるときの光線の遮光回数(ブレーク数)は、1回又は
2回とし、遮光回数の切替は、キースイッチにより行う構造のものであること。
ニ 急停止機構が作動した後の再起動操作
スライドの作動中に存在検出装置が機能してスライドが急停止した場合は、PSDI以外の
手動操作によってスライドを上死点又は上限に戻し、かつ、セットアップ操作を行わなければ、
再びPSDIによる起動を行えない構造のものであること。
ホ PSDIのタイマー
PSDIには、次の要件を満たすタイマーを備えること。
(イ) 設定時間内にPSDIによる起動を行わない場合は、PSDIによる起動ができなくな
り、かつ、再びセットアップ操作しなければ、PSDIによる起動ができないものである
こと。
(ロ) タイマーの設定時間は、30秒以内であること。
ヘ PSDIモードの選択及びセットアップ用のスイッチ
PSDIには、PSDIモードを選択するためのキースイッチ及びセットアップ用のスイッ
チを備えるものであること。
PSDIのセットアップスイッチは、その数が1つであり、かつ、労働者が危険の及ばない
場所からプレス機械のスライドの作動範囲を確認し、操作できる位置に設置されていること。
ト PSDIモード等の状態の表示
PSDIには、PSDIモードを選択した状態について労働者が容易に確認できる表示がな
されているとともに、PSDIが可能になった状態について労働者が容易に確認できる表示装
置を備えていること。
(4)―3 PSDIの電気回路
イ 停電、停電後の通電、電圧降下、回路故障、誤操作等の対策
PSDIの存在検出装置、起動装置等の電気回路は、停電、停電後の通電、電圧降下、回路
の故障、誤操作等の際にスライドによる危険を防止することができるものであること。
ロ 作動性
PSDIは、作動時における応答時間の安定化、チャタリングの防止の対策が施され、円滑
な作動ができる構造のものであること。
(5) 表示
安全装置には、次の事項が表示されているものであること。
イ 製造番号
ロ 製造者名
ハ 製造年月
ニ 安全装置としてPSDIを採用していること
ホ 使用できるプレス機械の種類、圧力能力、ストローク長さ及び金型の大きさの範囲
ヘ 存在検出装置の連続遮光幅(単位 ミリメートル)
ト 存在検出装置の検出する有効高さ(単位 ミリメートル)
チ 存在検出装置の検出する有効距離(単位 ミリメートル)
リ 存在検出装置の遅動時間(単位 ミリセカンド)
ヌ 存在検出装置の安全距離(単位 ミリメートル)
第2 安全プレス
1 基本的事項
次の2の安全基準を満たすときは、危険防止機能としてPSDIを用いる安全プレスについては動
力プレス構造規格(昭和52年労働省告示第116号。)第52条の規定に基づき、同規格に適合する安
全プレスと同等以上の性能があると認め、同規格第51条及び第4章の規定を適用しないこととする
こと。
2 危険防止機構としてPSDIを用いることができる安全プレスの安全基準
(1) PSDIを用いることができるプレス機械の範囲
PSDIを用いることができるプレス機械は、急停止機構及び再起動防止機構を備え、第1の2
の(1)のイからニまでの条件を満たすものとすること。
(2) 定義
イ 防護範囲の定義
第1の(2)のイの防護範囲をいうものであること。
ロ 安全距離
第1の(2)のロの安全距離をいうものであること。
(3) PSDIの構造、取付け等に関する要件
PSDIは、防護範囲に労働者の手等の身体の一部が進入するおそれのある箇所(材料又は製品
を出し入れするために必要な箇所で、PSDIの存在検出装置によって防護されている箇所を除く。)
は、第1の2の(3)のイからニまでに掲げる要件を満たす安全囲いを備えたものであること。
ただし、安全囲いに代えて光線式安全装置を用いる場合にあっては、当該安全装置を防護範囲か
ら安全距離以上離して設けなければならないこと。
また、PSDIの存在検出装置等の取付け等については、第1の2の(3)のホからチまでに掲げる
要件を満たさなければならないこと。
(4) PSDIの機能等に関する要件
PSDIを安全プレスの危険防止機構として使用するときは、動力プレス機械構造規格の規定
(第4章の規定を除く。)を満たすとともに、第1の2の(4)の(4)―1から(4)―3に掲げる要件を
満たすものであること。
(5) 表示
安全プレスには、動力プレス機械構造規格第51条各号の表示項目のほか、次の事項が表示されて
いるものであること。
イ 危険防止機構としてのPSDIを採用していること
ロ 使用できる金型の大きさの範囲
ハ 存在検出装置の連続遮光幅(単位 ミリメートル)
ニ 存在検出装置の検出する有効高さ(単位 ミリメートル)
ホ 存在検出装置の検出する有効距離(単位 ミリメートル)
ヘ 存在検出装置の遅動時間(単位 ミリセカンド)
ト 存在検出装置の安全距離(単位 ミリメートル)
別添1
基発第130号の2
平成10年3月26日
(社)産業安全技術協会会長 殿
労働省労働基準局長
制御機能付き光線式安全装置に対するプレス機械又はシヤーの安全装置構造規格及び
動力プレス機械構造規格の適用の特例について
労働災害の防止をはじめとする労働基準行政の推進につきましては、平素から御支援と御協力を賜り厚
く御礼申し上げます。
また、プレス機械の安全装置及び安全プレスの型式検定につきましては、型式検定代行機関としてその
適正な実施に御尽力いただきまして併せて感謝申し上げます。
さて、近年における技術の進歩等により、手等で光線を遮ったときに自動的にスライドを停止させ、光
線を遮らなくなったときに自動的にスライドを起動させる機能を併せ持った制御機能付き光線式安全装置
(Presence Sensing Device Initiation。以下「PSDI」という。)が、実用化され、産業現場に導入
されつつあります。
PSDIは、起動ボタンを押す必要がなく、作業量の軽減に資する反面、労働者の意思に関わらずスライド
が起動することにより、災害の発生に結びつくおそれが高いことから、PSDIの導入に当たっては、従前の
プレス機械に対する安全対策に加えて、安全囲いの確実な設置等PSDIに即した安全対策を講じる必要があ
ります。
このような状況を踏まえ、PSDIをプレス機械の安全装置として導入する際の安全基準等を下記のと
おり取りまとめましたので、型式検定代行機関におかれては、当該安全基準等に基づき、安全装置として
のPSDI及びPSDIを組み込んだ安全プレスに係る型式検定の適正な実施に万全を期されるようお願
い申し上げます。
また、適切な機会をとらえ、本件の内容の関係事業者等への周知に御協力いただきますよう併せてお願
い申し上げます。
別添2
基発第130号の3
平成10年3月26日
(社)日本金属プレス工業協会会長
(社)日本鍛圧機械工業会会長
日本プレス安全装置工業会会長 殿
労働省労働基準局長
制御機能付き光線式安全装置に対するプレス機械又はシヤーの安全装置構造規格及び
動力プレス機械構造規格の適用の特例について
労働災害の防止をはじめとする労働基準行政の推進につきましては、平素から御支援と御協力を賜り厚
く御礼申し上げます。
さて、近年における技術の進歩等により、手等で光線を遮ったときに自動的にスライドを停止させ、光
線を遮らなくなったときに自動的にスライドを起動させる機能を併せ持った制御機能付き光線式安全装置
(Presence Sensing Device Initiation。以下「PSDI」という。)が、実用化され、産業現場に導入
されつつあります。
PSDIは、起動ボタンを押す必要がなく、作業量の軽減に資する反面、労働者の意思に関わらずスラ
イドが起動することにより、災害の発生に結びつくおそれが高いことから、PSDIの導入に当たっては、
従前のプレス機械に対する安全対策に加えて、安全囲いの確実な設置等PSDIに即した安全対策を講じ
る必要があります。
このような状況を踏まえ、PSDIをプレス機械の安全装置として導入する際の安全基準等を下記のと
おり取りまとめましたので、貴会の傘下会員事業場に当該内容を周知いただくとともに、その適正かつ円
滑な実施に御協力いただきますようお願い申し上げます。