建設工事におけるつり上げ機械を用いた重量物のつり上げ、
つり降ろし作業を行う際の労働災害防止対策の徹底について |
改正履歴
基発第707号
平成10年12月24日
労働災害の防止については、従来から行政の最重点課題として各種の対策を推進してきたところであり
ますが、去る6月10日、愛媛県の来島大橋建設工事において、架設桁が落下し、7名が死亡、1名が負傷
するという重大災害が発生したことは、誠に遺憾に堪えないところであります。
労働省では、本災害の重大性にかんがみ、来島大橋架設桁落下災害調査委員会(座長前郁夫社団法人仮
設工業会会長)を設置し、現地調査をはじめとして災害原因の究明と同種災害の防止対策の検討を行って
まいりましたが、今般、この調査結果(概要は別添<略>参照)が取りまとめられたところです。
今回の災害は、ワイヤロープ等を締め付ける等により保持し、重量物のつり上げ、つり下げ作業を行う
機械(以下「つり上げ機械」という。)を用いた架設桁の解体作業中に発生したものですが、同種の機械
を用いた作業は橋梁架設工事のみならず、様々な建設工事において行われており、同種災害の発生が懸念
されるところです。
このため、同調査委員会において同種災害防止のための対策を検討した結果、下記の対策が有効である
との提言をいただいたところです。
つきましては、貴協会におかれましても、つり上げ機械を用いた重量物のつり上げ、つり降ろし作業を
行う場合には、下記に留意し、労働災害の防止について万全を期するよう、会員事業場に対し周知徹底さ
れたく要請いたします。
記
1 つり上げ機械について
(1) ワイヤロープ等の保持機構の同時開放を防ぐインターロック機能等誤作動、故障等が発生した場合
にも事故につながらない機能を有するつり上げ機械を使用すること。
(2) ワイヤロープ等保持機構が開放している場合に、操作盤の表示ランプの点滅等によりその旨をオペ
レーターに確実に認識させる機能を有するつり上げ機械を使用すること。
(3) つり上げ機械とそれを搭載する架台を確実に固定すること。
(4) 架台については、十分な剛性及び強度を確保し、確実に据え付けること。
2 作業方法等について
(1) つり上げ機械の操作については、遠隔操作で行う等によりオペレーターが安全な位置において操作
できるようにすること。
(2) ワイヤロープ等の保持機構の開閉操作等については、可能な限り操作の自動化を進めること。
(3) シーブを設置する等により、可能な限り、つり上げ機械へのワイヤロープ等の供給等の介添えを労
働者が安全な位置で行えるようにすること。
(4) つり上げ機械につり荷の荷重が全て移った際に、つり上げ機械、架台及びつり荷の挙動を確認する
こと。また、つり上げ及びつり降ろし作業中は、つり荷が傾斜すること等を防止するため、つり荷の
高さ、水平度、荷重等を適切に計測・表示すること。
3 施工計画・安全管理体制について
(1) 施工計画段階から、施工中の危険性を詳細に評価し、その評価に応じた対策を検討し、その結果を
施工計画に盛り込むこと。
(2) 施工に関して十分に知識と経験のある者を作業の指揮者に指名し、この者に作業方法及び労働者の
配置を決定させ、作業を直接指揮させること。
4 安全教育について
(1) 作業を指揮する者及び労働者に対する安全教育を的確に実施すること。特に、つり上げ機械を操作
する者に対しては、その操作方法や事故防止対策について十分な教育及び訓練を行うこと。
(2) 施工計画策定段階での安全対策の検討の的確な実施を図るため、工事計画の策定を担当する者に対
して研修を行うなど、その資質の向上を図ること。