硬質ウレタンフォームの吹付けによる断熱工事における酸素欠乏症の防止について |
改正履歴
基安発第25号の4
平成10年10月12日
床下、天井裏その他の通風が不十分な場所においてフロンを発泡剤として使用する場合の酸素欠乏症の
防止対策については、昭和60年10月3日付け基発第567号「フロンによる酸素欠乏災害等の防止について」
により指示されているところであるが、昨年フロン及び代替フロンを発泡剤として用いた硬質ウレタンフ
ォームの吹付けによる木造家屋の断熱工事において、床下部分の施工中に作業者2名が酸素欠乏症により
死亡する災害が発生した。また、これ以外にも同種災害が過去に発生している(別添1参照)。
このような状況にかんがみ、別添2から4のとおり、日本ウレタン断熱協会、ウレタンフォーム工業会
及び建設業労働災害防止協会に対して、標記災害の防止について要請したので、各局においても、関係事
業者等の指導に際してはこれらの要請事項に留意の上、同種災害の防止に努められたい。
別添2
基安発第25号
平成10年10月12日
日本ウレタン断熱協会
会長 岡本常義 殿
労働省労働基準局
安全衛生部長 下田智久
硬質ウレタンフォームの吹付けによる断熱工事における酸素欠乏症の防止について
安全衛生行政の推進につきましては、平素から格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、貴会におかれましては、硬質ウレタンフォームの吹付けによる断熱工事に係る安全衛生管理につ
いて、かねてより十分に御配意いただいていることと存じますが、昨年9月に北海道において、木造家屋
の床下部分について標記の断熱工事を施工中に発泡剤として使用していたフロンガス及び代替フロンガス
が空気と置換することにより酸素欠乏状態となり、2名の労働者が死亡する災害が発生いたしました。ま
た、それ以前にも2件の同種災害が発生しております(別添参照)。
つきましては、同種の災害の再発防止を図るため、床下、天井裏その他の通風が不十分な場所において
標記の断熱工事を行う場合には、下記の措置を講じるよう会員事業場に対して徹底していただくとともに、
平成8年1月29日付け基発第42号の2「建設現場における発泡プラスチック系断熱材による火災災害の防
止の徹底について」により労働省労働基準局長より要請いたしました火災災害の防止対策と併せて標記工
事における労働災害の防止に努めていただくようお願い申し上げます。
なお、本件につきましては、建設業労働災害防止協会及びウレタンフォーム工業会に対しても、同趣旨
の要請を行っていますので申し添えます。
記
1 作業指揮者の選任
酸素欠乏症の防止について必要な知識を有する者のうちから作業指揮者を選任し、その者に作業を直
接指揮させること。
2 換気の実施
作業場所の酸素濃度を18%以上に保つよう換気を行うこと。ただし、ウレタンフォームの急速な燃焼
性にかんがみ、換気には純酸素を使用してはならないことに特に留意すること。
3 送気マスク等の使用
作業の性質上、上記2の換気を行うことが困難な場合には、当該作業に従事する労働者に送気マスク
等を使用させること。
4 安全衛生教育の実施
当該作業に従事する労働者に対し、酸素欠乏症の危険性、安全な作業方法、事故発生時の措置等につ
いて安全衛生教育を行うこと。
5 立入禁止等
作業場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示するこ
と。
6 人員の点検等
作業場所への入退場に際して、人員の点検を行うこと。
また、異常発生時に、直ちに作業場所と外部との連絡が取れるような措置を講じること。
7 緊急時の措置
酸素欠乏による事故が発生した場合、救出作業に従事する労働者には、送気マスク等を使用させるこ
と。
別添3
基安発第25号の2
平成10年10月12日
ウレタンフォーム工業会
会長 大堀晏敬 殿
労働省労働基準局
安全衛生部長 下田智久
硬質ウレタンフォームの吹付けによる断熱工事における酸素欠乏症の防止について
安全衛生行政の推進につきましては、平素から格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、貴会におかれましては、ウレタンフォームの取扱い等に係る安全衛生管理について、かねてより
十分に御配意いただいていることと存じますが、昨年9月に北海道において、標記の作業中に発泡剤とし
て使用していたフロンガス及び代替フロンガスが空気と置換することにより酸素欠乏状態となり、2名の
労働者が死亡する災害が発生いたしました。また、それ以前にも2件の同種災害が発生しております(別
添参照)。
つきましては、標記の工事を行う事業場における、同種の災害の再発防止を図るため、会員事業場にお
いて作成される硬質ウレタンフォーム原料の取扱い説明書、パンフレット等に、平成8年1月29日付け基
発第42号の2「建設現場における発泡プラスチック系断熱材による火災災害の防止の徹底について」によ
り労働省労働基準局長より要請いたしました火災災害防止対策に関する注意事項と併せて、下記の注意事
項が明記されるよう、会員事業場に対して周知徹底していただきたくお願い申し上げます。
なお、下記2の施工上の注意事項につきましては、日本ウレタン断熱協会及び建設業労働災害防止協会
に対しても、同趣旨の要請を行っていますので申し添えます。
記
1 酸素欠乏の危険性
発泡剤としてフロンガス又は代替フロンガスが含まれているため、床下、天井裏その他の通風が不十
分な場所で作業を行うとこれらのガスが空気と置換することにより酸素欠乏症にかかるおそれがあるこ
と。
2 通風が不十分な場所において施工する場合に講ずべき措置
床下、天井裏その他の通風が不十分な場所において作業を行う場合には、次に掲げる措置を講じるこ
と。
(1) 作業指揮者の選任
酸素欠乏症の防止について必要な知識を有する者のうちから作業指揮者を選任し、その者に作業を
直接指揮させること。
(2) 換気の実施
作業場所の酸素濃度を18%以上に保つよう換気を行うこと。ただし、ウレタンフォームの急速な燃
焼性にかんがみ、換気には純酸素を使用してはならないことに特に留意すること。
(3) 送気マスク等の使用
作業の性質上、上記2の換気を行うことが困難な場合には、当該作業に従事する労働者に送気マス
ク等を使用させること。
(4) 安全衛生教育の実施
当該作業に従事する労働者に対し、酸素欠乏症の危険性、安全な作業方法、事故発生時の措置等に
ついて安全衛生教育を行うこと。
(5) 立入禁止等
作業場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示する
こと。
(6) 人員の点検等
作業場所への入退場に際して、人員の点検を行うこと。
また、異常発生時に、直ちに作業場所と外部との連絡が取れるような措置を講じること。
(7) 緊急時の措置
酸素欠乏による事故が発生した場合、救出作業に従事する労働者には、送気マスク等を使用させる
こと。
別添4
基安発第25号の3
平成10年10月12日
建設業労働災害防止協会
会長 佐藤嘉剛 殿
労働省労働基準局
安全衛生部長 下田智久
硬質ウレタンフォームの吹付けによる断熱工事における酸素欠乏症の防止について
安全衛生行政の推進につきましては、平素から格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、標記の断熱材を使用する工事につきましては、その原料中に発泡剤としてフロン又は代替フロン
を含有することから、通風が不十分な場所において施工する場合の酸素欠乏症の防止について、かねてよ
り指導してきたところですが、昨年9月に北海道において、木造家屋の床下部分について標記の断熱工事
を施工中に発泡剤として使用していたフロンガス及び代替フロンガスが空気と置換することにより酸素欠
乏状態となり、2名の労働者が死亡する災害が発生いたしました。また、それ以前にも2件の同種災害が
発生しております(別添参照)。
つきましては、同種の災害の再発防止を図るため、床下、天井裏その他の通風が不十分な場所において
標記の断熱工事を実施する場合には、下記の措置を講じるよう会員事業場に対して徹底していただくとと
もに、平成8年1月29日付け基発第42号の2「建設現場における発泡プラスチック系断熱材による火災災
害の防止の徹底について」により労働省労働基準局長より要請いたしました火災災害の防止対策と併せて、
標記工事における労働災害の防止に努めていただくようお願い申し上げます。
なお、本件につきましては、日本ウレタン断熱協会及びウレタンフォーム工業会に対しても、同趣旨の
要請を行っていますので申し添えます。
記
1 作業指揮者の選任
酸素欠乏症の防止について必要な知識を有する者のうちから作業指揮者を選任し、その者に作業を直
接指揮させること。
2 換気の実施
作業場所の酸素濃度を18%以上に保つよう換気を行うこと。ただし、ウレタンフォームの急速な燃焼
性にかんがみ、換気には純酸素を使用してはならないことに特に留意すること。
3 送気マスク等の使用
作業の性質上、上記2の換気を行うことが困難な場合には、当該作業に従事する労働者に送気マスク
等を使用させること。
4 安全衛生教育の実施
当該作業に従事する労働者に対し、酸素欠乏症の危険性、安全な作業方法、事故発生時の措置等につ
いて安全衛生教育を行うこと。
5 立入禁止等
作業場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示するこ
と。
6 人員の点検等
作業場所への入退場に際して、人員の点検を行うこと。
また、異常発生時に、直ちに作業場所と外部との連絡が取れるような措置を講じること。
7 緊急時の措置
酸素欠乏による事故が発生した場合、救出作業に従事する労働者には、送気マスク等を使用させるこ
と。
(参考)
硬質ウレタンフォームの吹付けによる断熱工事について
1.概要
吹付け硬質ウレタンフォームは、シームレスの断熱層が形成できること、断熱性能が優れていること
等から、近年断熱材の市場で3割以上のシェアを占め、今後も増加の傾向を示している。
硬質ウレタンフォームの吹付けによる断熱工事は、現場において原料を化学反応させてウレタンフォ
ームを生成するもので、吹付けに使用するミキシングガン(スプレーガン)に2種類の原料を送り込み、
当該ミキシングガン内部で混合して吹き付けると、吹き付けられた対象物上で化学反応と発泡が進行し、
硬質ウレタンフォームが形成される。また、発泡中に対象物と接着し、発泡終了後は強力な接着力を発揮
する。
発泡剤には、フロン又は代替フロン(以下「フロン等」という。)が用いられているため、床下、天井
裏その他の通風が不十分な場所において施工すると、フロン等が空気と置換して、酸素欠乏状態になるお
それがある。
2.原料
硬質ウレタンフォームの原料は次のとおりである。これらの原料のうち、(3)から(7)までは、あらかじめ
(1)と混合して販売されるのが一般的である。
(1) ポリオール(ポリイソシアネートと反応してウレタン樹脂の骨格を形成する。)
R[(CH2―CHCH3O)n―CH2―CHCH3―OH]m
(2) ポリイソシアネート
OCN―C6H4―(CH2―C6H3―NCO)n―CH2―C6H4―NCO 99%以上
(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)
(3) 発泡剤(ウレタン反応の発熱によりウレタン中で蒸発しフォームを形成する。)
CH3CCl2F(ジクロロフルオロエタン、通称:HCFCC―141b)
(4) 整泡剤(泡を細かく、均一にする。)
シリコン系界面活性剤
(5) 難燃剤(ウレタンに難燃性を付与する。)
(6) 触媒
(7) その他(必要に応じて加える。)
着色剤、充てん剤、架橋剤等
3.硬質ウレタンフォームの生成 現場における硬質ウレタンフォームの生成フローを次に示す。原料は、
それぞれホースを通してミキ シングガンまで送られ、そこで初めて混合される。作業者はミキシング
ガンを操作して、混合された原料を対象物に吹き付ける。(図)