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改正履歴
基安発第21号
平成10年8月31日
放射線障害の防止については、職業性疾病予防対策の中の最重点項目の一つとして、従来から電離放射
線障害防止規則等に基づく防止対策の定着化を図ってきたところであり、その結果、放射線による被ばく
事故は近年大幅に減少している。
ところが、昨年、動力炉・核燃料開発事業団の事業場において、被ばくや汚染等の事故・トラブルが続
発したほか、一般の放射線装置・放射性物質取扱事業場においても、昨年12月から本年6月にかけて労
働安全衛生法の適用外の事例も含めて4件の放射線被ばく事故が発生しており、そのうち最近発生した1
件では放射線被ばくによる障害(皮膚障害)も生じている(別紙<略>参照)。また、これらの事故原因
をみると、基本的な対策の欠如が認められ、きわめて遺憾である。
ついては、各局においては、下記に留意の上、関係事業場等の指導に努め、放射線による被ばく事故防
止の徹底を図られたい。
なお、別紙に掲げる事故のうち放射線による障害を生じた事例に関しては、その重篤性にかんがみ、関
係事業者団体である(社)非破壊検査振興協会に対し別添のとおり要請したので了承されたい。
記
1 作業主任者その他の管理監督者による放射線に係る安全衛生管理の充実
エックス線又はガンマ線透過写真撮影作業主任者の職務の励行及びその他の管理監督者による放射線
業務の安全衛生管理の徹底を図らせること。
2 非定常作業を含めた安全な作業標準の整備とその徹底
放射線業務を安全に実施するための作業標準を整備させるとともに、関係労働者に対してこれを周知
させること。
また、放射線源の交換や事故・トラブルに伴う復旧等の非定常作業についても、想定される範囲で作
業標準を作成させ、関係労働者に周知させること。
3 放射線装置の点検等の励行
透過写真撮影用ガンマ線照射装置について定期自主検査を実施させるとともに、その他の放射線装置
についても作業環境測定の機会を活用する等により遮蔽{へい}能力の確認等のため随時点検を実施させ
ること。
4 労働衛生教育の実施
関係労働者に対して、放射線業務に就いた際の安全衛生教育又は特別教育に加え、放射線の安全取扱
いに対する労働者の認識を高めるため、必要に応じ、事故・トラブルの事例等を交えながら放射線の安
全取扱いに関する教育を実施させること。
なお、別紙の事例にみられるように、放射線源と他の物との誤認による接触事故が発生しているので、
このような事故が生じないように、放射線源の形状等についても教育させること。
また、事故・トラブル時の復旧作業については、作業時間の短縮による被ばく線量の低減を図るため、
上記2の作業標準を用いて訓練を実施させること。
5 被ばく線量の測定・評価の徹底
放射線業務従事者の被ばく線量の測定・評価を的確に実施させ、被ばく線量の高い業務に従事する者
については管理区域外の業務とのローテーションにより被ばく線量の低減化を図る等により、被ばく限
度を超えることのないようにさせること。特に、手指等に局部的な高被ばく線量が予測される場合には、
組織線量当量の測定・評価も的確に実施させること。
また、実効線量当量限度又は組織線当量限度を超えて被ばくした労働者については、医師の診察又は
処置(以下「診察等」という。)を受けさせること。
6 異常時の措置の徹底
事故・トラブル等の異常事態が発生した場合には、管理監督者の指揮の下に作業標準に従って復旧作
業を行わせること。
なお、事故・トラブル時の復旧作業に際しては、サーベイメーターにより放射線源の位置を確認し、
遮蔽(へい)物の設置、鉗(かん)子の使用等により作業者の被ばくを極力低減させる方法で実施させ
るとともに、作業者には直読式個人線量計を携行させ、作業終了後に作業中の被ばく線量を確認し記録
させること。
また、電離放射線障害防止規則第42条第1項の事故が発生した場合であって、当該事故によって受
ける実効線量当量が15ミリシーベルトを超えるおそれのある区域が生じたときには、当該区域から緊
急作業に従事させる者以外の労働者を退避させるとともに、当該区域(以下「事故区域」という。)に
いた労働者に診察等を受けさせること。
7 事故報告の徹底
6の事故区域が生じたとき及び5又は6のまた書きの診察等を受けさせた結果、放射線による障害が
生じており、若しくはその疑いがあり、又はその生じるおそれがある者が認められたときは、速やかに
その旨を所轄労働基準監督署長に報告させること。
別紙
最近における被ばく事故例 <略>
別添
基安発第21号の2
平成10年8月31日
(社)非破壊検査振興協会
理事長 中村武 殿
労働省労働基準局 安全衛生部長
放射線による被ばく事故防止の徹底について
安全衛生行政の推進につきましては、平素より格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、貴会におかれましては、非破壊検査における放射線の使用に係る安全管理につきましてはかねて
より十分にご配意いただいていることと存じますが、今般、非破壊検査業の事業場において別紙のよう
な放射線被ばく事故が発生し、しかも被災者に放射線による皮膚障害が生じましたことは、きわめて遺憾
なところであります。
つきましては、このような事故の再発防止を図るため、下記事項につきまして会員事業場に対して徹底
していただきたくお願いいたします。
記
1 作業主任者の職務の励行
エックス線装置又は透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用する作業については、エックス線作業主
任者又はガンマ線透過写真撮影作業主任者を管理区域ごとに選任し、放射線業務従事者の被ばく線量が
少なくなるように作業の指揮管理を行わせること。
2 定期自主検査の励行等
透過写真撮影用ガンマ線照射装置については、定期的に自主検査を行い、その結果異常が認められた
場合には、必要に応じメーカーからの支援を受ける等により補修等の措置を講じること。
なお、エックス線装置についてもこれに準じて点検を実施すること。
3 作業標準の作成等
エックス線装置又は透過写真撮影用ガンマ線照射装置を使用する作業について、作業標準を作成し、
関係労働者に周知すること。
また、放射線源の交換や事故・トラブルに伴う復旧等の非定常作業についても、想定される範囲で作
業標準を作成し、関係労働者に周知すること。
4 労働衛生教育の実施等
関係労働者に対しては、就業時の特別教育の実施に加え、必要に応じ、事故・トラブルの事例等を交
えながら放射線の安全取扱いに関する教育を実施すること。
なお、別紙の事故は放射線源と他の物とを誤認して接触したことにより発生したことにかんがみ、こ
のようなことがないように放射線源の形状等についても教育すること。
また、事故・トラブル時の復旧作業については、作業時間の短縮を図るため、上記の作業標準を用い
て適宜訓練を行うこと。
5 線源脱落等の事故時の措置
線源容器から放射線源が脱落した場合又は放射線源送出し装置等の故障により放射線源を線源容器に
収納できなくなった場合に、放射線源の線源容器等への収納作業を行うときは、ガンマ線透過写真撮影
作業主任者の指揮の下に、遮蔽(へい)物の設置、鉗(かん)子の使用等により作業者の被ばくを極力
低減させる方法で実施すること。なお、復旧が困難な場合には、メーカー等からの支援を受けること。
また、事故・トラブル時の復旧作業に際しては、サーベイメーターにより放射線源の位置を確認する
とともに、作業者には直読式個人線量計を携行させ、作業終了後に作業中の被ばく線量を確認し記録す
ること。
なお、放射線源の脱落等の事故が発生した場合であって、当該事故によって受ける実効線量当量が15
ミリシーベルトを超えるおそれのある区域が生じたときには、当該区域から緊急作業に従事させる者以
外の労働者を退避させるとともに、当該区域にいた労働者に医師の診察又は処置を受けさせること。
さらに、上記の区域が生じたとき、及び上記の診察等の結果、放射線による障害が生じており、若し
くはその疑いがあり、又はその生じるおそれがある者が認められたときは、速やかにその旨を所轄労働
基準監督署長に報告すること。
6 緊急時の連絡体制の周知徹底
事故・トラブルが発生したときの連絡体制を整備し、関係者に周知徹底すること。