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ごみ焼却施設におけるダイオキシン類の対策について

改正履歴


                                                                            基安発第18号
                                                                         平成10年7月21日

  ごみ焼却施設から排出される灰等の中からダイオキシン類が検出されたとの報道を契機として、ごみ焼
却施設におけるダイオキシン類への対応が社会的関心を集めている。ごみ焼却施設を含む清掃業における
安全衛生対策については、平成5年3月2日付け基発第123号「清掃業における安全衛生管理要綱」に基づき、
各種の指導を実施しているところであるが、今般、ごみ焼却施設等におけるダイオキシン類による労働者
への健康影響に関し、中央労働災害防止協会に「廃棄物処理業務等における化学物質による健康障害防止
に関する調査委員会」を設け、ごみ焼却施設等における作業環境の実態調査とその対策について検討を行
ってきたところである。その結果、ダイオキシン類の空気中の濃度が一般環境のものよりも高い箇所があ
る等の調査結果が報告され、その予防対策の必要性が指摘されたところである。
  本件については、関係省庁においても調査研究が進められており、労働省としても更に調査研究を進め
ているところであるが、当面の労働衛生対策として、下記の事項に留意の上、関係事業場の指導等、適切
な対応に努められたい。
  なお、別添の「焼却炉周辺の作業場の空気環境の測定方法及び評価方法」は、本通達と一体のものとし
て取り扱われたい。

記

1  焼却炉周辺の作業場の環境評価
    空気中のダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾジオキシン及びポリ塩化ジベンゾフランをいう。)につ
  いての作業環境の測定及び当該作業場の作業環境の評価を行うこと。なお、当該測定及び評価に関して
  は、別添の「焼却炉周辺の作業場の空気環境の測定方法及び評価方法」によること。
2  作業場における灰等の発散の抑制措置
    上記1の作業環境評価の結果、管理区分2又は3の作業場で作業を行わせる場合には、作業環境にお
  ける粉じん対策と同様の手順で各焼却炉における粉じんの発生や飛散を次に掲げる方法により職場の環
  境改善を実施すること。
  (1) 焼却工程、作業工程の改善
  (2) 発散源の密閉化
  (3) 作業の自動化や遠隔操作方式の導入
  (4) 局所排気装置及び除じん装置の設置
  (5) 作業場の湿潤化
  (6) 作業場の全体換気
3  呼吸用保護具の使用
    上記2の抑制措置を講ずることが困難な場合、又は当該抑制措置を講じてもなお管理区分2又は3で
  ある作業場で作業を行わせる場合には、有効な呼吸用保護具を着用させること。
4  清潔の保持等
    作業中は労働者に粉じんの付着しにくい作業衣、作業手袋等を着用させること。また、ダイオキシン
  類の吸着した粉じんで汚染された作業衣等は、二次発じんの原因となることから、当該作業衣等はそれ
  以外の衣類等から隔離して保管させ、かつ、作業衣等に付着した粉じんが発散しないように洗濯すると
  ともに、当該事業場からの持出しは行わせないこと。
    なお、洗濯の排水については、用後処理施設へ排出させること。
5  焼却炉の内部の作業等
    集じん装置の内部の作業、焼却炉の内部の作業等では、エアラインマスク、ホースマスク又はこれら
  に準ずる呼吸用保護具を着用させること。


別添  

焼却炉周辺の作業場の空気環境の測定方法及び評価方法 

1  作業環境の測定方法
    作業環境の測定は、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)第2条第1項第2号の2の規定
  (B測定)に準じた次の方法により行うこと。
  (1) 測定の場所
      通常の業務において作業者が立ち入る場所で行うこと。
  (2) 測定の位置
      労働者の作業中の行動範囲の区域の中で、最も粉じんの濃度が高くなると予測される位置において、
    床上50cm以上150cm以下の高さにおいて行うこと。
  (3) 測定の時間帯
      作業が定常的に行われている時間に行うこと。なお、屋外の作業場にあっては雨天、強風等の悪天
    候時は避けること。
  (4) 測定の頻度
    イ  上記(1)の場所について6月以内ごとに1回の測定を実施すること。
    ロ  施設、設備、作業方法等について大幅な変更を行った場合は、改めて測定を行うこと。
  (5) 試料採取方法等
      焼却炉の周辺においてダイオキシン類を測定した結果、95%以上のダイオキシン類は粒子として存
    在していることが確認されたことから、作業環境中の粉じんを捕集し、次の方法により測定等を行う
    こと。
    イ  空気中のダイオキシン類の濃度の測定
        ろ過捕集方法及びガスクロマトグラフ質量分析方法又はこれらと同等以上の性能を有する分析方
      法によること。
        また、試料の採取方法はハイボリュームエアサンプラーを用いて、原則として毎分500リットル
      で180m3以上の吸引量とすること。ただし、空気中の総粉じん濃度が著しく高いと予想されると
      きは45m3以上の吸引量とすることができること。
    ロ  空気中の粉じん濃度の測定
        下記2の(1)のロの方法により作業環境中の総粉じん濃度を用いて作業環境の評価を行う場合には、
      作業環境中の総粉じん濃度の測定は、ろ過捕集方法及び重量分析方法によること。
        また、試料の採取方法はハイボリュームエアサンプラー又はローボリュームエアサンプラーで行
      うこと。
2  作業環境の評価
    作業環境の評価は、作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号)に準じた次の方法により行う
  こと。
  (1) 管理すべき濃度
    イ  ダイオキシン類の管理すべき濃度(以下「D管理濃度」という。)は、2.5 pgTEQ/m3とする。
    ロ  次式を用いて求めたD管理濃度に相当する総粉じん濃度(以下「T管理濃度」という。)を用いて
      も差し支えない。

      T管理濃度=D係数×2.5(pgTEQ/m3
      D係数=

        空気中の総粉じん濃度(mg/m3)      


空気中のダイオキシン濃度(pgTEQ/m3

        D係数は、事業場において使用する焼却炉の種類等により異なるものであるため、事業場におい
      て焼却炉の周辺、灰だし作業及び集塵機の周辺等において測定を実施し各々のD係数を求め、上記
      の式で求めたT管理濃度を用いて作業の評価をすること。
        なお、焼却炉の周辺、灰だし作業及び集塵機の周辺で求めたD係数のうち最も小さい数値により
      求めたT管理濃度を用いて当該事業場における全ての作業環境の評価をしても差し支えないこと。
        おって、施設、設備、作業方法等について大幅な変更を行った場合は、改めてD係数を求めるこ
      と。
  (2) 管理区分の決定方法
      次の方法により管理区分を決定すること。
    イ  第1管理区分
      (イ)  ダイオキシン類の作業環境中の測定値(以下「D測定値」という。)がD管理濃度未満の場
          合をいうこと。

      D測定値(pgTEQ/m3) < 2.5

      (ロ)  ダイオキシン類の作業環境中の濃度を総粉じん濃度に換算して評価を行う場合の総粉じん濃
          度の測定値(以下「T測定値」という。)がT管理濃度未満の場合をいうこと。

      T測定値 < D係数×2.5

    ロ  第2管理区分
      (イ)  D測定値がD管理濃度以上で、かつ、D管理濃度の1.5倍以下である場合をいうこと。

      2.5 ≦ D測定値(pgTEQ/m3 ) ≦ 3.7

      (ロ)  T測定値がT管理濃度以上で、かつ、T管理濃度の1.5倍以下である場合をいうこと。

      D係数×2.5 ≦ T測定値(mg/m3 ) ≦ D係数×3.7

    ハ  第3管理区分
      (イ)  D測定値がD管理濃度の1.5倍を超える場合をいうこと。

      D測定値(pgTEQ/m3 ) > 3.7

      (ロ)  T測定値がT管理濃度の1.5倍を超える場合をいうこと。

      T測定値(mg/m3 ) > D係数×3.7

3  記録の保存
    作業環境の測定結果等の記録は、30年間以上保管すること。