化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドラインの策定について (平成20年2月28日基発第0228001号により廃止) |
改正履歴
基発第364号
平成8年6月10日
化学設備に係る災害は、当該設備の保全的作業、トラブル対処作業等のいわゆる非定常作業において多
数発生しており、非定常作業における災害の発生率は、定常作業に比較して、相当程度高い状況にある。
これは、非定常作業については日常的に反復・継続して行われることが少なく、かつ、十分な時間的余
裕なく行われる場合が多いため、設備及び管理面の事前の検討が十分行われないこと、作業者が習熟する
機会が少ないこと、また、作業が複数の部門にわたること等により災害につながる場合が多いことによる
ものと考えられる。
このため、今般、化学設備の非定常作業における安全衛生対策について、別添のとおり「化学設備の非
定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」を策定したところである。
ついては、関係事業者に対し、本ガイドラインの周知徹底を図り、化学設備の非定常作業における労働
災害防止対策の推進に努められたい。
なお、関係団体に対し、別紙のとおり要請を行ったので了知されたい。
別紙
基発第364号の2
平成8年6月10日
社団法人日本化学工業協会会長
石油連盟会長
石油化学工業協会会長
中央労働災害防止協会会長 殿
労働省労働基準局長
化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドラインの策定について
労働基準行政の推進につきましては、日頃より格別の御配慮を賜り厚くお礼申し上げます。
さて、化学設備に係る災害は、当該設備の保全的作業、トラブル対処作業等のいわゆる非定常作業にお
いて多数発生しており、非定常作業における災害の発生率は、定常作業に比較して、相当程度高い状況に
あります。
これは、非定常作業については日常的に反復・継続して行われることが少なく、かつ、十分な時間的余
裕なく行われる場合が多いため、設備及び管理面の事前の検討が十分行われないこと、作業者が習熟する
機会が少ないこと、また、作業が複数の部門にわたること等により災害につながる場合が多いことによる
ものと考えられます。
このため、今般、化学設備の非定常作業における安全衛生対策について、別添のとおり「化学設備の非
定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」を策定したところであります。
つきましては、本ガイドラインの趣旨を御理解の上、貴会会員事業場に対し、本ガイドラインの周知徹
底を図られたくお願い申し上げます。
化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン
1 目的
本ガイドラインは、労働安全衛生関係法令と相まって、化学設備(労働安全衛生法施行令第15条第1
項第4号に規定する化学設備、同項第9号に規定する特定化学設備のほか、化学物資を製造し、又は取
り扱う設備全般をいう。以下同じ。)の非定常作業(日常的に反復・継続して行われることが少ない作
業をいう。)における安全衛生対策として必要な措置を講ずることにより、化学設備の非定常作業にお
ける労働災害の防止を図ることを目的とする。
2 対象とする非定常作業
本ガイドラインの対象とする非定常作業は、次の作業とする。
(1) 保全的作業
不定期に又は長い周期で定期的に行われる改造、修理、清掃、検査等の作業
(2) トラブル対処作業
異常、不調、故障等の運転上のトラブルに対処する作業
(3) 移行作業
原料、製品等の変更作業又はスタートアップ、シャットダウン等の移行作業
(4) 試行作業
試運転、試作等結果の予測しにくい作業
3 事業者等の責務
化学設備の非定常作業を行う事業者、元方事業者、作業の発注者等は、それぞれ本ガイドラインに基
づき適切な措置を講ずることにより、化学設備の非定常作業における労働災害の防止に努めるものとす
る。
4 災害要因及び対応措置の事前評価
非定常作業に係る化学設備において取り扱う物質の危険有害性を化学物質等安全データシート等によ
り把握し、当該化学設備の内容、製造工程の特性を十分に検討するとともに、類似の製造工程又は作業
で発生した事故事例について情報を収集し、次に定める災害要因とこれに対応する措置について、法定
事項の履行確保を含め、事前評価すること。
(1) 爆発、火災及び破裂
イ 引火性液体又は可燃性ガスの除去、漏えい防止、遮断及び換気措置
ロ 引火性液体又は可燃性ガスの漏えい時の検知及び対応措置
ハ 電気機械器具、工具等の防爆構造化、溶接、溶断等による火花の飛散防止措置及び静電気の除
去措置
ニ 異種の物が接触することにより発火等のおそれのある物の接触防止措置
ホ 設備の内部圧力又は温度の異常上昇防止措置
(2) 高温物等との接触
イ 高温物等の除去、漏えい防止及び遮断措置
ロ マンホール、バルブ、フランジ等を開放した際の内容物の流出防止措置
ハ 高温部分への接触防止措置
ニ 液状物質の凝固による配管、ノズル等の内部の閉そく防止措置
ホ 保護具の適切な使用
(3) 有害物等との接触
イ 有害物等の除去、漏えい防止、遮断及び換気措置
ロ 酸素及び硫化水素その他予測される有害ガスの濃度の測定
ハ 溶断、研磨等により発生する有害物のばく露防止措置
ニ 有害物等の漏えい等の異常時における対応措置
ホ 送気マスクへの空気供給源の誤操作による酸素欠乏症又はガス中毒の防止措置
ヘ 保護具の適切な使用
(4) はさまれ、巻き込まれ
イ 回転機器等の電源の施錠等による誤作動の防止措置
ロ 可動部分への手指等の接触防止措置
ハ 回転機器等に対する緊急停止スイッチの設置
ニ 組立、解体作業の安全を確保するための固定治具、吊り具等の使用
(5) 墜落、転落
イ 昇降設備、作業床、手すり等の設置
ロ 不安定な作業姿勢を避ける措置
ハ 移動足場、架台等の安定性を確保するための措置
ニ 危険箇所への立入禁止措置
ホ 親綱又は墜落防止ネットの取付け設備の設置
ヘ 安全帯の着用及び適切な使用
5 安全衛生管理体制の確立
非定常作業の実施に当たっては、労働安全衛生関係法令に定めるほか、非定常作業の種類、危険度等
に応じ、あらかじめ作業の総括責任者、部門責任者、作業指揮者、立会者等を定め、その責任範囲及び
業務分担を明確にするとともに、作業が複数の部門にわたる場合には、連絡会議を設置する等連絡調整
の徹底を図ること。
また、定期修理等の作業を発注する場合には、発注者と元方事業者との連絡調整の徹底を図ること。
(1) 総括責任者
作業全般を統括するとともに、連絡会議を開催し、作業方法、工程等を決定する。
(2) 部門責任者
部門の責任者として当該部門の作業を統括する。
(3) 作業指揮者
部門責任者の指示に従い、作業を指揮するとともに、毎日、作業の開始前及び終了時に作業の実
施計画及び実施結果の報告を行う。
(4) 立会者
火気作業、入槽作業、高所作業等の危険有害性の高い作業について作業の開始時及び終了時に立
ち会い、必要な指示及び確認を行う。
(5) 連絡会議
総括責任者、部門責任者、作業指揮者等が参加し、作業計画の検討立案、作業進捗状況等の連絡
及び調整を行う。
6 作業計画書の作成
非定常作業の実施に当たっては、災害要因及び対応措置の事前評価の結果等を踏まえ、次の事項等を
記載した作業計画書を作成し、総括責任者の承認を得ること。
また、作業計画の変更の必要が生じた場合には、その都度改めて承認を得ること。
なお、作業計画書は、予期されない作業を除き、あらかじめ作成しておくとともに、必要に応じ見直
しを行うこと。
(1) 作業日程
(2) 指揮・命令系統
(3) 作業目的及び作業手順
(4) 各部門の業務分担及び責任範囲
(5) 災害要因及び対応措置の内容
(6) 保護具の種類
(7) 作業許可を要する事項
(8) 注意事項及び禁止事項
7 作業の実施
非定常作業は、次の事項に留意して実施すること。
(1) 実施に当たっての基本方針
イ 指揮・命令系統の明確化
ロ 作業手順の明確化
ハ 業務分担及び責任範囲の明確化
ニ 連絡及び合図の方法の周知徹底
ホ 注意事項及び禁止事項の周知徹底
(2) 一般的留意事項
イ 作業内容を作業前のツールボックスミーティング、危険予知等により、作業に関わる者全員に
周知徹底するとともに、あらかじめ作業の段取りを整える等、できるだけ事前準備を周到にして
おくこと。
ロ 作業の実施は、あらかじめ当該作業に係る必要な教育を受けた者が行うこと。
ハ 電源等の動力源を確実に遮断するとともに、施錠、札掛け等誤操作を防止する措置を講ずるこ
と。
ニ 作業の種類に応じ、呼吸用保護具、保護手袋、保護衣、保護めがね等の保護具を準備すること。
ホ 単独で実施することができる作業を限定するとともに、各個人の判断による単独作業を実施さ
せないこと。
ヘ 単独作業を実施させる場合は、必要に応じ、作業者との間で随時連絡がとれるように通信機器
等を携帯させること。
(3) 火気使用作業に関する留意事項
イ 作業開始時及び当該作業中、随時、作業箇所の可燃性ガスの濃度を測定すること。
ロ 作業場所へは、あらかじめ許可されたもの以外の火気又は点火源となるおそれのある機械等を
一切持ち込まないこと。
ハ 作業場所には、消火器等を配置するとともに、避難方法をあらかじめ定め、かつ、これを関係
労働者に周知すること。
ニ 作業場所においては、必要に応じて不燃性シート等を用いて養生を行うこと。
(4) 入槽作業に関する留意事項
イ 作業を行う設備から危険物、有害物等を確実に排出し、かつ、作業箇所に危険物、有害物等が
漏えいしないように、バルブ、コックを二重に閉止し、又はバルブ、コックを閉止するとともに
閉止板等を施すこと。また、バルブ、コック、閉止板等は施錠し、又は開放してはならない旨を
表示すること。
ロ 設備内部の残圧の確認は、圧力計によるほか、ベント、ドレン等の開放口を徐々に開けて行う
こと。
ハ 設備内に入る直前に、可燃性ガス、酸素及び硫化水素その他予測される有害ガスの濃度の測定
を行い、安全を確認した後に入槽すること。
測定は、作業中断後、再入槽時も同様に行うこと。
ニ 酸素及び硫化水素の濃度の測定は、それぞれ必要な資格を有する酸素欠乏危険作業主任者が行
うこと。
また、測定は原則として水平、垂直方向にそれぞれ3点以上行うこと。
ホ 槽内は、可燃性ガス濃度は、爆発下限界の1/5以下、酸素濃度は18%以上、硫化水素濃度は10
ppm以下、その他予測される有害ガスの濃度は、健康障害を受けるおそれのない濃度以下になる
ように常時換気すること。
ヘ 監視人を置き、入槽作業者との連絡が途絶えることのないようにすること。
ト 作業開始前及び作業終了後に人員の確認を行うこと。
チ 適切な性能を有する保護具、救急用具を使用できる状態にしておくこと。
(5) 高所作業に関する留意事項
イ 昇降設備、作業床の設置、安全帯の使用等必要な墜落防止措置を講ずるとともに、必要に応じ
監視人を置くこと。
ロ 強風、大雨、大雪等悪天候のため危険が予想される場合は、作業を中止すること。
ハ 上下での同時作業は、行わないこと。やむを得ず行う場合は、相互に密接な連絡を行うこと。
ニ 高所作業中である旨を作業場所の下部に掲示すること。
ホ 工具類は、落下しないよう必要な措置を講ずること。
(6) 作業許可
火気使用作業、入槽作業及び高所作業等の災害発生の危険性の高い作業は、あらかじめ部門責任
者の書面による許可を得ること。
イ 作業許可書には、次の事項等について記載すること。
(イ) 部門責任者(許可責任者)、作業指揮者、立会者、監視人、作業者
(ロ) 作業内容
(ハ) 作業に係る注意事項及び禁止事項
(ニ) 作業年月日、作業開始時刻、終了予定時刻
ロ 作業内容の変更が必要な場合は、新たに作業許可を受けること。また、予定時間内に作業が終
了しなかった場合は、改めて許可を受けること。
ハ 作業許可書は、作業場所に掲示すること。
8 緊急事態への対応
非定常作業実施中に爆発、火災、危険物・有害物等の漏えい、労働災害の発生等の緊急事態が生じた
場合に対応するため、次の措置を講ずること
(1) 次の事項について、緊急事態対応マニュアルを定めること。
イ 緊急事態発生時の連絡方法
ロ 爆発、火災、危険物・有害物等の漏えい等に対する対応措置及び指揮・命令系統
(2) 消火栓、消火器、洗眼器、シャワー等を設置すること。
(3) 爆発、火災、危険物・有害物等の漏えい等の想定訓練、負傷者に対する救急措置訓練を実施する
こと。
(4) 取り扱う有害物の情報を産業医、救急措置を依頼する医療機関等にあらかじめ連絡しておくこと。
9 安全衛生教育の実施
非定常作業に従事する作業者等の関係者に対し、あらかじめ次の事項等について必要な安全衛生教育
を実施すること。
(1) 取り扱う物質の性状及び取扱い上の注意事項
(2) 製造工程及び化学設備の概要
(3) 作業計画書及び緊急事態対応マニュアル
(4) 作業許可を必要とする作業の種類、注意事項及び禁止事項
(5) 保護具の種類及び使用方法
(6) 類似作業の災害事例
(7) 事業場の安全衛生基準及び関連法規