硫酸製造工程等の設備改修作業における亜硫酸ガス中毒等の防止対策の徹底について |
改正履歴
基発第525号
平成5年8月26日
建設業労働災害防止協会 会長 殿
石油連盟 会長 殿
社団法人セメント協会 会長 殿
電気事業連合会 会長 殿
社団法人日本化学工業協会 会長 殿
社団法人日本ガス協会 会長 殿
日本鉱業協会 会長 殿
社団法人日本鐵鋼連盟 会長 殿
硫酸協会 会長 殿
労働災害の防止につきましては、平素から格段の御協力をいただき厚く御礼申し上げます。
さて、今般、別紙のとおり秋田県秋田市及び福島県いわき市の亜鉛鉱製錬所において、硫酸製造工程の
熱交換器改修作業中、亜硫酸ガス等とみられる有害物質により、それぞれ21名及び27名が中毒にかかり、
このうち3名は死亡するという重大災害が相次いで発生したところです。これらの災害においてこのよう
に多数の被災者が発生した原因の一つには、中毒の初期症状が発熱、頭痛、せき等の風邪の症状に似てい
るため、中毒災害であると認識するのが遅れ、迅速かつ適切な措置が講じられなかったことがあります。
なお、亜硫酸ガスは装置内の付着物中の硫黄化合物から発生したと考えられていますが、付着物には、
このほかにも水銀等の有害物質が含まれていることから、これらも中毒の原因となった可能性があります。
ところで、硫酸製造工程における亜硫酸ガス中毒災害は過去にも発生していること、当該工程以外にも
脱硫装置等改修作業において亜硫酸ガス中毒が発生するおそれのある設備が多く存在することから、今後
も同種の災害が再発することが危惧(ぐ)されます。
つきましては、災害の発生を未然に防止するため、非鉄金属精練設備及びこれに付属する硫酸製造設備
等の硫黄化合物、水銀等が付着する設備又は燃焼ガスの処理・石油精製に使用する脱硫装置等の硫黄化合
物が付着する設備の改修作業を行う場合には、労働安全衛生法に基づく所要の措置を講ずることはもちろ
ん、特に下記の事項に留意した適切な管理が行われるよう、貴団体会員各位に対するこれらの内容の周知
徹底等適切な指導をお願いします。
記
1 発注者は、作業の発注に当たって、あらかじめ設備内の付着物の分析を行うこと等により労働者が暴
露するおそれのあるすべての有害物(直接取り扱うもの及び加熱等により発生するもの。)について、
その有害性の把握に努め、その結果を確実に施工者に通知するよう努めること。
また、記の2以下の事項についても、施工者に対し指導・援助に努めること。
2 施工者は、発注者からの通知をもとに、以下のような措置を講ずること。
(1) 暴露するおそれのある有害物による労働者の健康障害の予防について、必要な知識を有する者の
うちから作業指揮者を選任し、その者に当該作業を指揮させるなど、安全衛生管理体制を確立する
こと。
(2) 適切な作業方法を決定し、あらかじめ、作業に従事する労働者に対して周知徹底すること。
(3) 作業に従事する労働者に対して、暴露するおそれのある有害物、その有害性、暴露防止対策及び
暴露した場合の症状等について、教育を実施すること。
(4) 作業を行う箇所の状況及び作業方法に応じ適切に換気すること。
(5) 発生するおそれのある有害物の種類、濃度及び作業時間等を考慮し、作業に従事する労働者に適
切な保護具を確実に使用させること。特に、呼吸用保護具については、一つの吸収缶で除去できな
い複数の有害物が混在する可能性がある場合には、送気マスクを使用させること。
(6) 作業を行う箇所について、発生するおそれのある有害物の濃度の測定を行い、その結果に基づい
て換気方法の変更等の必要な措置を講ずること。
3 施工者は、一部の作業を請負人に行わせる場合には、関係請負人に対して記の2に準じた必要な措置
を講じさせるとともに、関係請負人が行う教育に対する指導及び援助を行うこと。
4 施工者は、発生するおそれのある有害物による中毒が疑われる症状を有する者が発見された場合には、
直ちに作業を中止するとともに、作業に従事した者すべてに、適切な健康診断を受診させること。
別紙
硫酸製造工程等の設備改修作業における亜硫酸ガス等による中毒災害の概要について
1 発生場所及び発生日時
秋田県秋田市飯島字古道下川端217−9
秋田製錬株式会社飯島製錬所
平成5年7月13日〜22日の作業において中毒発生
福島県いわき市小名浜字芳浜10番地
東邦亜鉛株式会社小名浜製錬所
平成5年7月19日〜27日の作業において中毒発生
2 被災状況
秋田製錬株式会社 中毒21名
東邦亜鉛株式会社 死亡3名、中毒24名
3 災害発生状況
災害は、秋田県及び福島県の2か所の亜鉛鉱製錬所において別個に発生したものであるが、双方の事
業場ともに、硫酸製造工程の熱交換器改修工事において鋼鉄製のパイプを溶断、交換するという同種の
作業において発生したものである。このパイプ溶断作業において、パイプに付着したスケールの加熱に
より発生した亜硫酸ガス等の有害物を吸入したことにより被災したものと考えられる。
中毒症状が風邪の症状と似ていたため、最初の中毒者が出た後も中毒とは考えずに作業を続行し、多
くの中毒者が出る結果となった。
4 参考
パイプに付着したスケールには、水銀等の有害物質が含まれており、これらによる影響も考えられる。
主な亜硫酸ガス中毒災害について
(1) 硫酸製造工程の設備改修工事関係 (表)
(2) 硫酸製造設備以外の設備改修工事関係 (表)
(3) その他 (表)