原子力発電所における放射線業務に係る労働衛生教育の推進要領について
(平成11年12月28日基発第744号により廃止) |
改正履歴
電離放射線障害防止については、昭48年3月12日付け基発第121号「電離放射線による障害の防止対策
の徹底について」により強化徹底を図ってきたところである。
原子力発電所において、放射線業務に従事する労働者の被ばく線量をできるだけ少なくする等の被ばく
管理対策の実効をあげるためには、事業者が各般にわたって行う労働衛生管理の中で、個々の労働者に対
する放射線業務に係る必要な知識、技能を習得させるための労働衛生教育を積極的に推進することが重要
である。
一方、労働衛生教育については、昭和59年2月16日付け基発第76号「安全衛生教育の推進について」及
び昭和59年3月26日付け基発第148 号「安全衛生教育の推進に当たって留意すべき事項について」により、
その推進を図ることとしたところである。
これらの趣旨を踏まえて、今般、特別教育に準じた教育のうち、新たに「原子力発電所における放射線
業務に係る労働衛生教育推進要領」を別添1のとおり定めたので、関係事業者に対し、指導援助を行うと
ともに、本教育が効果的に推進されるよう遺憾なきを期されたい。
なお、電気事業連合会会長及び日本電気工業会会長に対しては、本職より別添2の通り要請を行ったの
で了知されたい。
(別添1)
原子力発電所における放射線業務に係る労働衛生教育推進要領
1 目 的
原子力発電所における放射線業務に係る労働衛生教育(以下「教育」という。)を体系的かつ計画的
に推進することにより、放射線業務に従事する労働者に対して放射線業務に係る必要な知識及び技能を
付与し、もって当該労働者の被ばく低減化に資することを目的とする。
2 実施主体
実施主体は、原子力発電所において放射線業務を行う事業の事業者とする。
なお、複数の事業者が共同して教育の全部又は一部を行うことができるものとする。
3 原子炉設置者、元方事業者等の行う指導・援助
原子炉設置者、元方事業者等は、次に掲げる事項に関し、教育を行う事業者に対して必要な指導・援
助を行うものとする。
(1) 安全衛生協議組織の活用等による実施体制の確立
(2) 実施計画の策定
(3) 教育施設の設置又は提供
(4) 講師の養成及び派遣
(5) 教材の開発及び整備
(6) 実施結果等の記録の保存
(7) その他必要な事項
4 教育対象者
教育対象者は、原子力発電所において管理区域に業務上立ち入る労働者とする。
なお、放射線業務に関して、十分な知識及び経験を有する作業指揮者の適切な管理下で、一時的に立
ち入る労働者は除くことができるものとする。
5 入所時教育及び入所後教育
入所時教育とは、労働者が当該原子力発電所に業務上初めて立ち入る(以下「入所」という。)まで
に事業者が当該労働者に対して行う教育をいう。
入所後教育とは、入所した労働者に対して事業者が行う教育をいう。
6 教育の方法
教育の方法は、入所時教育のうち、放射線防護に関する基礎的知識については学科教育により、放射
線防護に関する実務的知識については学科教育及び実技教育により、また、入所後教育については実技教
育により行うものとする。
7 教育カリキュラム
前記の学科教育及び実技教育は、次の表の左欄に掲げる科目に応じ、それぞれ、同表の中欄に掲げる範
囲について、同表の右欄に掲げる時間以上行うものとする。
なお、同表の「総合的実地教育」は、作業の内容、対象設備、放射線防護計画等を勘案の上、予め策定
した教育内容、教育方法及び教育時間等に係る計画に従って、現場での作業を実践しつつ、9の(3)に述
べる講師の要件を満たす作業管理者のもとで作業者に対し実施することとし、危険性の伴う部分について
は、実物大模型(モックアップ)等を使用するなどできるだけ実際の作業に即した教育が行えるよう努め
るものとする。
入所時教育(学科) (表)
入所時教育(実技) (表)
入所後教育(実技) (表)
8 実施時期
実施の時期は、原子力発電所に入所するまでに「入所時教育」を行い、管理区域に初めて入退する時
期までに「入所後教育」のうち「入退域の実務」を行うものとする。
なお、「総合的実地教育」については作業開始後速やかに行うものとする。
9 実施方法
(1) 実施計画
事業者は、次に掲げる事項について実施計画を策定することとする。
イ 実施時期
ロ 実施場所
ハ 講 師
ニ 受講者数
ホ 教育カリキュラム
ヘ 教 材
ト その他必要な事項
(2) 教育施設
教育施設は、実施計画からみて適切な施設を確保するものとする。なお、原子力発電所等に視聴
覚教材等を常備した専用の教育施設がある場合には、その活用に努めるものとする。
(3) 講 師
講師は、次に掲げる要件を満たす者とする。
イ 放射線防護に関する専門的知識を有していること。
ロ 現場の状況を熟知していること。
ハ 教育方法に習熟していること。
(4) 教材等
教材等については、次に掲げる事項について、整備に努めるとともに、その有効な活用を図るも
のとする。
イ 教育テキスト
ロ 視聴覚教材
ハ 放射線測定器
ニ 保護具
ホ 実物大模型(モックアップ)
ヘ その他、必要な教材
(5) 実施結果の評価と記録の保存
実施結果については、実施計画と合わせて3年間保存するものとし、実施結果の記録の項目につ
いては、(1)の実施計画の項目と同じものとする。なお、実施結果について適宜評価し、実施計画
の各項目について検討を行い、教育内容の充実に努めることとする。
(別添2)
基発第328 号の2
昭和59年6月26日
(社)日本電気工業会会長
電気事業連合会会長 殿
労働省労働基準局長
原子力発電所における放射線業務に係る労働衛生教育の推進要領について
労働災害の防止につきましては、日頃から格別の御配慮を頂き、感謝申し上げます。
労働省におきまして、かねてから原子力発電所における放射線被ばく管理の徹底につきまして、行政の
重点施策の一つとして積極的に取り組んで参ったところであります。
放射線の被ばく管理は、単に被ばく線量を一定限度以下に管理することのみならず、放射線業務に従事
する労働者の被ばく線量をできるだけ少なくすることが必要であり、このために、労働衛生管理体制の確
立、外部被ばく・内部被ばくの防護の強化、被ばく線量管理の徹底、健康管理の充実等と諸対策とあいま
って、放射線業務に係る知識及び技能の付与等、労働衛生教育の積極的な推進を図ることが必要でありま
す。
労働省としましては、このたび、原子力発電所における体系的な労働衛生教育を推進する目的で、別添
のとおり、「原子力発電所における放射線業務に係る労働衛生教育推進要領」を策定いたしました。
つきましては、貴会の会員の方々に対し、本要領について周知されますとともに、その趣旨が十分理解
され、本教育が積極的に実施されるよう、指導方につきましてお願い申し上げます。
(図)