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中小企業集団における自主的安全衛生活動の推進について

改正履歴


  労働災害の発生状況を全体的にみると、事業規模別では中小規模事業場において多く発生しており、発
生率も大規模事業場に比して高く、その格差は拡大の傾向にある。今後、労働災害の絶滅へ向けて、その
減少を着実なものとするためには、中小規模事業場における労働災害防止対策を一層強化することが肝要
である。
  これまで中小規模事業場における労働災害防止対策としては、災害多発事業場等を中心に個別的な指導
を行うとともに、鉄鋼業、造船業、化学工業のように構内で混在して作業を行う多数の下請事業場、ある
いは、自動車製造業、電気機械器具製造業等のように構外に系列化された協力事業場を集団としてとらえ、
親企業の高い安全衛生水準及び指導力を活用して中小規模事業場の安全衛生水準の向上を図ってきた。
  しかしながら、我が国においては労働者数が100人未満の事業場の数は、全事業場の98%を占め、し
かもこれらは前記集団に属さないものも多く、また、集団としてとらえられるものにあっても、自主的安
全衛生活動の積極性に欠けるところも少なからずあり、これまでの対策のみでは、効果的な労働災害防止
対策の浸透を図るうえで必ずしも十分とはいいがたい面があった。
  そこで、今後においては、従前から推進してきた親企業を中心とした対策と併せて、一定地域に形成さ
れている工場団地あるいは事業協同組合等地域的又は業種的にまとまりのある事業場群を集団としてとら
え、共同で行う安全衛生対策の実施等集団での自主的安全衛生活動の促進を通じ、集団の構成員である事
業場(以下「構成員企業」という。)の安全衛生水準の向上を図るため、下記の施策を積極的に推進する
こととしたので、その効果的な運用を図られたい。

記
1.  対象とする集団
  (1)  対象は、原則として、昭和58年度を初年度とする労働災害防止計画の別紙に掲げる業種(清掃業
      及びビル管理業を除く。)の集団とするが、必ずしも同一の業種で構成されるものでなくても差し
      支えないこと。
  (2)  対象は、必ずしも新たに結成する必要はなく、中小企業共同作業管理事業を行う団体、中小企業
      労働者健康管理事業を行う団体等既に一定の活動を行っている集団を活用することも差し支えない
      こと。この場合には、当該集団の活動分野の拡充を本通達の趣旨に沿って図らせること。
  (3)  昭和54年7月28日付け基発第384号通達「構外下請事業場における自主的安全衛生活動の推進につ
      いて」に基づき、自主的安全衛生活動を行わせることが効果的と考えられる集団については、対象
      外として差し支えないこと。
2.自主的安全衛生活動の推進体制の整備
    集団における自主的安全衛生活動を促進するため、経営首脳者で構成する「安全衛生に関する連絡協
  議組織」(以下「安全衛生協議会」という。)を設置させ、集団としての活動の基本計画を策定させる
  とともに、構成員企業の安全衛生に関し指導を担当する者を選任させること。その際、安全衛生協議会
  に所属する者又は構成員企業に所属する者のうちから産業安全及び労働衛生の実務に精通した者を当て
  ることが望ましいが、適任者が直ちに充足されない場合又は外部の専門家を利用することが効果的であ
  る場合には、労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント又は安全管理士・衛生管理士等の活用
  を図るものとすること。
    さらに、対象集団における事務処理体制の整備を図らせるとともに、労働災害防止団体支部等との連
  携を図らせること。
3.対象集団における安全衛生活動の内容
    対象集団においては、主に次の事項について自主的安全衛生活動を行わせるものとする。
  (1)  集団としての安全衛生活動基本計画を策定するとともに、これに基づく具体的活動計画を樹立す
      ること。
  (2)  構成員企業における安全衛生管理体制について相互に検討を行うこと。
  (3)  「安全衛生協議会」の定期的な開催、共同でのパトロールの実施等を通じて構成員企業の経営首
      脳者等に対する啓発を行うこと。
  (4)  共同で相互安全衛生診断を実施すること。
  (5)  構成員企業における機械設備の安全化、適切な安全装置の採用等について共同で検討すること。
  (6)  共通する作業に関し、安全作業手順の作成を行うこと。
  (7)  各種機械設備等の点検・検査について、実施要領の作成、点検・検査に必要な機械等の共同購入・
      利用、点検・検査担当者の養成等を行うこと。
  (8)  雇入れ時の教育、危険有害な業務に従事する者に対する教育等安全衛生教育を共同で実施するこ
      と。また、教育施設の共同利用、教材の共同購入等を行う。
  (9)  構成員企業における作業環境測定の計画的な実施等により環境管理を推進するとともに、環境改
      善事例の収集、周知を図ること。
  (10)  構成員企業における健康診断の実施を推進すること。
  (11)  発生した労働災害の原因等について共同で調査分析し、再発防止対策の検討を行うとともに、労
      働災害に関する情報、改善事例等の収集及び意見交換を行うこと。
  (12)  安全衛生活動を評価するための各種統計の作成を行うこと。
  (13)  上記のほか労働災害防止に有効な事項について実施すること。
4.対象集団に対する指導援助等
  (1)  対象集団における安全衛生活動の円滑化を図るため、局署は次の指導援助等を行うこと。
    [1]  安全衛生活動の推進体制の確立、年間活動計画の策定、安全衛生教育の実施等についての指導
        援助
    [2]  労働災害防止に関する情報、資料の提供
    [3]  労働安全衛生融資の活用・促進についての指導援助
    [4]  労働安全コンサルタント・労働衛生コンサルタント、安全管理士・衛生管理士等の活用に関す
        る指導援助
  (2)  当面モデル集団の育成を図ることとし、各局は、毎年2集団程度を選定し、局署幹部が率先して、
      構成員企業の幹部等に対する必要な指導等を行うこと。