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改正履歴
建設業における労働者の安全衛生の確保については、労働安全衛生法に基づいて重点的に監督指導を実
施する等その政策の充実に努めてきたところである。しかしながら、建設業における雇用形態は、季節移
動労働者又は日雇労働者が少なくない等他の産業に比して著しい特殊性があることから、これらの労働者
に対する安全衛生教育、健康診断等の実施についてはその徹底を欠く面も見受けられる。
このため、当局においては、建設労働者に対する安全衛生教育及び健康診断の徹底等を図るとともに雇
用関係の明確化等に資するため、かねてより職業安定局とも連携の上、建設労働手帳制度の導入について
検討を進めてきたところであり、その一環として昭和54年度から建設業労働災害防止協会に対し、建設労
働手帳制度の試行を含む建設労働手帳制度のあり方に関する調査研究を依頼したところである。
当局としては、このような状況をふまえ、建設業労働災害防止協会において、昭和54年から3ヵ年にわ
たって実施した試行の結果等に基づき、当面、同協会に対して本年度から、「山岳トンネル建設工事に従
事する坑内及び坑外の作業者」を対象として、同協会を主体とし「建設労働手帳取扱要領」(別紙1)に
より建設労働手帳制度を本格的に実施させることとした。
ついては、本制度が有効かつ円滑に実施させるように下記事項に留意し、関係事業者等に対する適切な
指導に努められたい。
なお、本制度の実施に関しては職業安定局とも協議済であるので念のため申し添える。
記
1 建設労働手帳制度の実施方法
建設労働手帳制度の実施方法は(1)、(2)及び(3)によるものとすること。
(1) 実施機関 建設業労働災害防止協会
(2) 実施年度及び実施対象者 昭和57年度以降 山岳トンネル建設工事に従事する坑内及び坑外の作
業者
(3) 実施方法
建設業労働災害防止協会で定めた「建設労働手帳取扱要領」(別紙1)に基づき別添様式の「建
設労働手帳」(トンネル建設作業開始)を関係労働者に交付する。
2 建設労働手帳制度の運用に当たっての周知、指導の実施等
建設労働手帳制度が有効かつ円滑に運用されるためには、山岳トンネル建設工事に従事する坑内及び
坑外の作業者はすべてが建設労働手帳を所持する必要がある。このため、現在、山岳トンネル建設工事
を行っている事業者及び関係請負人はもとより、建設事業者全体に対して本制度の周知に努めるととも
に、その運用に協力するように適切な指導に努めること。
また、山岳トンネル建設工事について監督指導を実施する場合には、関係労働者の建設労働手帳の所
持状況についても確認を行うこと。
なお、建設労働手帳を所持していない労働者を確認した場合には、その労働者及び関係事業者に対し
て本制度の趣旨及び申請手続を説明する等指導助言に努めるよう配意すること。
建設労働手帳制度の試行段階において、山岳トンネル建設工事関係で建設労働手帳を既に所持してい
る労働者は約12,700名(別紙2 建設労働手帳発給累計数参照)に達しているが、今なお、多数の建設
労働手帳交付対象労働者が見込まれている状況にある。
3 建設労働手帳の労働安全衛生法上の取扱い
労働安全衛生法に基づいて都道府県労働基準局長が交付した免許証及び指定教習機関が交付した技能
講習修了証(以下「免許証等」という。)については、建設業労働災害防止協会において、当該免許証
等を照合し、照合済の印を押した上で交付した建設労働手帳(試行段階のものを含む。)を労働者が提
携している場合には労働安全衛生法第61条第3項に規定する書面(免許証等の書面)を携帯しているも
のとして取り扱って差し支えないこと。
4 建設労働手帳の記載事項等の指導
山岳トンネル建設工事作業従事者の中で、粉じん作業、振動工具を取扱う作業、高圧室内作業等有害
業務に従事する者については、当該業務の経歴について、建設労働手帳の様式中「10 主な職歴」欄の
「記事欄」に建設労働手帳所持者自らが必ず記載するよう関係事業者等に対する指導に努めること。
また、建設労働手帳を所持する労働者を直接雇用する事業者及び関係元請事業者に対しては、建設労
働手帳を所持する労働者の氏名等を記載した台帳を整備し、各労働者の建設労働手帳の所持状況を十分
把握するよう適切な指導に努めること。
5 建設業労働災害防止協会等との連携
本制度の実施主体である建設業労働災害防止協会及び同協会都道府県支部は、労働安全衛生法に基づ
く技能講習修了証を交付する関係指定教習機関等に対し本制度の周知、協力要請を行うこととしている
ところであるが、本制度の有効かつ円滑な実施が図れるよう行政の立場からもこれらの機関に対して本
制度の周知に努めること。
6 その他
本省においては、建設労働手帳制度の運用上、本制度自体の改善を要する事項、今後検討すべき課題
等もあるところから、職業安定局とも連携の上、引き続き所要の検討を進めることとしていること。
別紙1
建設労働手帳取扱要領
1 目 的
この要領は、労働省の指導により建設労働者の安全衛生教育及び健康診断の徹底並びに雇用関係の明
確化をはかることを目的として制度化する建設労働手帳(以下「手帳」という。)に関して、建設業労
働災害防止協会(以下「建災防」という。)の取扱要領について定めるものである。
2 手帳の発給機関
手帳の発給は、建災防本部が行う。
3 手帳発給対象者
手帳発給対象者は、山岳トンネル建設工事に従事する坑内及び坑外作業者とする。
4 手帳の発給手続き等
(1) 発給申請
手帳の発給対象者を雇用する事業主(以下「雇用主」という。)は、作業者の雇入れの際に手帳
所持の有無を確認し、手帳不所持者については、様式1の手帳発給申請書(台帳兼用)に所要事項
を記載(記載要領様式1裏面参照)し、建災防本部に手帳発給の申請をする。
この場合、元請事業者又は建災防支部を経由して申請することができる。
(2) 手帳の発給等
建災防本部は、上記(1)により手帳発給の申請があった場合、申請内容に基づき次の事項につい
て記載した手帳を申請した雇用主(又は申請を経由した元請事業者又は建災防支部)に発給する。
イ 手帳番号及び発給年月日
ロ 氏名、生年月日、雇用保険被保険者番号及び血液型
ハ 写真の貼布及び刻印
ニ 労働安全に基づく免許取得に関する事項
ホ 労働安全衛生法に基づく技能講習修了資格取得に関する事項
ヘ 建災労が行った安全衛生教育の受講に関する事項
(3) 建災防本部から手帳の発給を受けた雇用主は、手帳の記載事項を確認のうえ、手帳に次の事項を
記載し、証明印又は確認印を押印して対象作業者に手帳を交付する。
イ 労働安全衛生法以外の法令に基づく免許・資格等の取得に関する事項
ロ 特別教育に関する事項
ハ 雇入れ又は作業内容変更時の教育に関する事項
ニ その他の講習、教育、訓練等に関する事項
ホ 健康診断に関する事項
ヘ 就労経歴に関する事項等
(4) 手帳の交付を受けた作業者は、手帳の記載事項を確認するとともに、現住所、連絡先、主な職歴
等を手帳の該当欄に記載する。
5 手帳発給後の記載事項の追加、変更手続き等
(1) 免許・資格等の追加記載証明
手帳の発給を受けた作業者が、労働安全衛生法に基づく免許及び技能講習修了資格を取得した場
合は、様式2の手帳記載事項追加・変更申請書に手帳を添えて雇用主を経由して(又は作業者本人
が直接に)次により手帳へ追加記載証明を申請する。
イ 建災防支部が実施した技能講習修了の資格については、当該技能講習を実施した建災防支部に追
加記載証明の申請をする。
ロ 労働安全衛生法に基づく免許及び建災防支部以外の機関で実施した技能講習修了の資格について
は、免許証等の原本等を添えて建災防本部に追加記載証明の申請をすることができる。
(2) 建災防支部における追加記載証明等の取扱い
イ 建災防支部は前記(1)イの手帳への追加記載証明の申請があった場合、当該技能講習の修了証又
は台帳により確認して手帳に記載証明(照合印は所定のものを使用)を行う。
ロ 手帳に記載証明した結果は申請書(様式2)に「手帳に記載証明済」と朱書(又は押印)して申
請書を速やかに本部に送付する。
ハ 追加記載証明の手数料は1件200円とする。
(3) 雇用主等における記載・変更の取扱い
労働安全衛生法に基づく免許及び技能講習修了の資格以外の手帳への追加記載変更については、
雇用主が行う。ただし、氏名、現住所、連絡先等の変更は手帳所持者本人が行うことができる。
なお、氏名の変更については、速やかに様式2により建災防本部に通知する。
(4) 建災防が行う安全衛生教育等における追加記載証明の取扱い
建災防が実施する安全衛生教育、講習、研修等に手帳所持者が受講した場合は、その結果を当該
実施した建災防本・支部が手帳に記載証明する。
6 手帳の再発行等
イ 発給した手帳を紛失した場合には、様式2の申請書を用いて雇用主を経由して再発行の申請する。
ロ 発給した手帳の記載欄に余白が無くなり、追加記載ができなくなった場合は、その旨の書面に当該
手帳を添えて建災防本部に申出る。この場合建防災本部は試行段階における旧手帳等の記載事項を確
認のうえ新しい手帳を発給する。
7 手帳の提示等
イ 山岳トンネル建設工事に入職する場合には、手帳を雇用主及び元請責任者に提示し、手帳の記載事
項の確認を受ける。
ロ 雇用主は、手帳不所持者を山岳トンネル建設工事に入職させた場合には、4により手帳の発給申請
書の手続きを行う。
8 台帳の保管
台帳は建災防本部において保管する。
9 そ の 他
この要領は、昭和56年9月1日から適用する。
図1
図2
別紙2