|
|
改正履歴
労働災害の発生状況は、長期的には減少をみているものの、最近においてはこの減少傾向にもかげりが
みられ、しかも今なお110万を超える多数の死傷者を数えている。
そうしたなかで、昭和54年の休業4日以上死傷者数及び死亡者数ともその前年に比較して減少したとこ
ろであるが、昭和55年においては、現在までのところ、前年同期比でみて逆に全体として若干の増加、業
種によってはかなりの増加を示している。また、本年は冷夏に伴う冷害によって出稼労働者が例年以上に
増加することも考えられる。
労働災害の防止対策については、本年度行政運営方針に基づき最重点施策として推進しているところで
あり、すでに年度後半に入ったわけであるが、労働災害の発生状況が上記のとおり前年対比で再び増加の
様相を示していることは、誠に憂慮すべき事態といわなければならない。こうした事態を打破し、労働災
害の絶滅を期するためには、緊急に、かつ、最大限の努力を傾注する必要がある。
このような観点から、この際労働災害防止対策の一層の強化を図ることとしたので、各局においては、
下記事項に留意のうえ、従前の対策の見直しを行い、管内の実情に応じた実効性のある対策の樹立とその
効果的な推進に万全を期されたい。
なお、本省においては、労働災害防止団体等に対し別添のとおり要請を行ったので申し添える。
記
1 去る9月26日に行われた昭和55年産業殉職者合祀慰霊式においては、内閣総理大臣、衆参両院議長を
はじめ各界の代表者が参列し、労働災害の防止に対する決意を新たにしたところであるが、労働災害に
ついては、従来、ともすればある程度起きてもやむを得ないという意識で関係当事者が対応してきたき
らいがなかったとはいえないので、本来、労働災害は起こしてはならないものであるという認識を普及
徹底し、これが日常化するよう強力な指導に努めること。
2 労働災害は、例年、年末(特に死亡災害)及び年度末にかけて増加がみられるが、年末までを第1期、
その後年度末までを第2期として、各期ごとに緊急労働災害防止実施計画を定めること。
3 労働災害の発生状況は、業種、規模等により異なるなどの実態があるところから、労働災害が比較的
多い業種、本年に労働災害が増加している業種、労働災害の発生要因・内容等別に管内の状況を十分に
考慮した実効性のある対策を講じるよう努めること。
なお、出稼労働者の安全衛生確保対策については、昭和55年10月17日基発第575号・職発第476
号通達、酸素欠乏症等の防止対策の徹底については、昭和55年10月24日基発第589号通達によるこ
と。
4 各労働災害防止協会は、自主的労働災害防止活動の中核をなすべきものであり、今回各協会本部にお
いても、労働災害防止対策の強化のための実施計画を作成し、各協会支部はこれにそって活動を強化す
ることとしているので、各局においては、これらの支部の実施事項が円滑に行われるよう指導するとと
もに、それらとの連携を強化することにより、効率的な労働災害防止対策を推進すること。
5 労働災害が比較的多い業種、本年に労働災害が増加している業種等の業界団体に対して、本省におい
ては労働災害の防止について要請を行ったところであるが、各局においても関係業界団体などに対し必
要な要請を行い、自主的労働災害防止活動の推進を図ること。
6 建設業においては、依然として労働災害が多発している状況にかんがみ、本省においては発注者に対
しても協力要請を行ったところであるが、各局においても発注者連絡会議等により建設工事の主な発注
者に対し労働災害防止について協力を要請し、連携の強化を図ること。
7 労働災害の発生状況等からみて、問題の多い業種、事業場を中心に監督指導を強化すること。
監督指導の結果、法違反が認められた場合には、機械設備の使用停止、作業停止等のほか、法処分な
どの措置を厳正かつ確実に講ずることとし、送検事案についてはこれを積極的に公表することとする。
事業場等に対する要請・指導を行うに当たっては、局署幹部自らが直接経営首脳又は企業の都道府県レ
ベルのトップに対してこれを行うこととし、その際に、今後の監督・指導においてこの趣旨が末端に徹
底せず、安全衛生管理等が適切になされていない場合には、上位使用者の責任をも含め上記方針に基づ
き厳しい措置をとる旨警告すること。
8 労働災害の現状、労働災害防止対策等について新聞発表を行う等広報活動を積極的に行い、労働災害
防止について広く関係者の理解を得るよう努めること。