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再圧室の適正な管理等について

改正履歴
		
  高気圧業務を行う事業において、高気圧業務作業者の救急処置を行う場合に用いる再圧室の管理、救急
処置の方法等が適切に実施されていない例がみられ、減圧症予防の観点から早急に改善を図ることが必要
である。
  ついては、再圧室の管理等の適正を期するため、高気圧障害防止規則中の関係規定の遵守を図るほか、
下記の事項について高気圧業務を行う事業場に対し周知徹底を図られたい。

記
1  再圧室の設置
    再圧室は、建屋内に設置し、かつ、建屋の入口附近の見やすい場所に再圧室が設置されている旨を掲
  示すること。
2  再圧室の能力等
  (1)  再圧室の耐圧能力及びこれに送気する空気圧縮機の能力は、原則として、5キログラム毎平方セ
      ンチメートルまで加圧できるものであること。
  (2)  副室を有する再圧室にあっては、主室の内部に介護者等が入り得る大きさのものであること。
3    再圧室の使用等
  (1)  可搬型の再圧室で副室を有しないものについては、
    イ  これに収容した減圧症患者の介護等が必要になった場合等には、再圧室を開放しなければならず、
      継続して加圧できないことになり、減圧症を悪化させるおそれがあること。
    ロ  居住性が悪いため、長時間の加圧を必要とする減圧症患者に対する十分な処置ができないこと。
    等の欠点があるので、これを用いる救急処置は、関節痛等軽度の減圧症の患者若しくは専門の医療機
    関に収容するまでの間加圧下で移送することが必要な患者又は高気圧障害防止規則第32条第1項によ
    る浮上を行った者に限って行うこと。
  (2)  次のイからホまでのいずれかに該当する減圧症の患者については、できるだけ早く、十分な処置
      の受けられる医療施設へ収容すること。この場合、当該医療施設へ収容するまでの間における再圧
      室の使用の是非等については、専門の医師の判断によること。
    イ  意識不明に陥った者又は何らかの意識障害のある者
    ロ  顔面そう白、脈はく異常、呼吸困難、胸苦しさ等のショック症状のある者
    ハ  言語障害、めまい、はきけ、知覚障害、運動麻ひ等の中枢神経障害のある者
    ニ  重症の外傷のある者
    ホ  その他高圧下の作業時間、加圧の程度、減圧又は浮上の方法からみて前記イからハまでの症状を
      起こすおそれのある者
  (3)  救急再圧の方法については、別添の「標準再圧法」を参照すること。
4  再圧室の管理
    再圧室の設置している事業場ごとに再圧室の構造規格の保持及び機能の維持管理に当たらせるための
  再圧室管理者を選任し、この者の氏名を再圧室が設置されている建屋の入口附近の見やすい場所に掲示
  すること。
5    その他
  (1)  救急再圧を必要とする患者が発生した場合の措置をあらかじめ定め、これを労働者に周知するこ
      と。また、上記4の再圧室管理責任者、産業医、再圧室を操作する業務についての特別教育を修了
      した者等の氏名並びにこれらの者への連絡方法について、事業場内の見やすい場所にこれらを掲示
      する等により労働者に周知すること。
  (2)  救急再圧に関する医学上の適正な管理を行うため、産業医の活用はもとより専門の医師と十分の
      連絡を保つこと。なお、この趣旨よりして産業医の選任を要しない事業場にあっても嘱託医をおく
      ことが望ましいこと。
  (3)  上記(2)の趣旨から、産業医等に当該作業計画その他減圧症の予防、処置等に関する資料を随時
      提供すること。
    (イ)  再圧治療使用上の注意
        [1]  治療表に正確に従い、異常な事態の場合を除き、原則として表の時間の短縮または、変更
            をしないこと。
        [2]  加圧は毎分0.8kg/cm2とし、緊急を要する重症状の場合にはこれより早い加圧でもよい。
            もし加圧に疼痛等が起ったり増加したりしたときには、加圧を一時中止し、患者の耐えうる
            割合で再び加圧を始めること。
        [3]  治療圧は可能な限り表に示された最大圧にまでもっていくこと。ただし、5kg/cm2以上に
            はしないこと。
        [4]  患者の診察は次の要領にて行なうこと。
            a  診察はすみやかに行ない、再圧治療の時期を失しないこと。
            b  呼吸、循環系及び中枢神経系等に重症状が認められれば、それがいかなるものであって
              も、即刻再圧し診察は後にすること。
            c  疼痛のみ訴える患者が2.0kg/cm2以内の再圧でそれが消失したと答えたときは、減圧法
              を第1または第1A欄と決定する前に十分症状の消失を確かめること。
            d  治療の最大圧に達したとき、次の点に注意して診察すること。
                (a)  最大圧に達したときないしは暫くの後に症状が完全に消失したか否か。
                (b)  何か見逃されている症状はないか。
                      (手足を動かせたり、軽症なら立たせて見るとよくわかる)
            e  最大圧に滞在後、減圧を始める前に症状を再点検すること。
            f  各圧停止の前後、また長い停止時間中、定期的に、患者が如何なる状態であるか問診す
              るか必要に応じて他の診察を行なうこと。
            g  圧変化の間、または、圧停止間でも1時間以上患者を眠らせないこと。(睡眠中、症状
              の増悪や再発のおこることがありうる)
            h  最終の圧停止(0.3kg/cm2)を終る前に患者を再点検すること。
    (ロ)  症状が増悪している場合
        [1]  症状が悪化しつつあるときは減圧しないこと。
        [2]  治療中の再発として処置すること。
        [3]  もし可能ならば呼吸ガスとしてヘリウム、酸素の使用を考慮すること。
          ※  第3・第4欄にて症状の消失しないときには、0.9kg/cm2の圧停止の症状の消失するまで
             持続すること(Overnight Soak)。以後第4欄に従って減圧すること。
    (ハ)  症状が再発した場合
        [1]  再圧治療中に再発したときには、その症状が消失する圧まで再び加圧し、第4欄に従って
            減圧すること。この際0.9kg/cm2より低かったり、また5.0kg/cm2より高くしてはなら
            ない。また、再発のとき、以前に見られなかった重症状が出現したときには、5.0kg/cm2
            まで加圧する。
        [2]  再圧治療後の再発
            a  症状の消失する圧まで再加圧する。
            b  症状の消失する圧が0.9kg/cm2未満のときは、0.9kg/cm2まで再圧し、第3欄に従
              って減圧する。
            c  症状の消失する圧が0.9kg/cm2以上のときは、症状の消失した圧に30分滞在させた
              後、第3欄に従って、減圧する。但し、最初の再圧治療が第3欄によったものであれば、
              第4欄を使用する。
            d  最初、第1または第2欄による軽症の再圧治療後重症状の出現が見られたときは、5.0
              kg/cm2まで再加圧し、第3欄または第4欄に従って減圧する。
              備考  治療後少なくとも6時間は患者を再圧室附近におき万一再発した場合、直ちに再圧
                  治療の行なえるようにしておくこと。
    (ニ)  再圧治療における酸素の使用
          再圧治療時の酸素吸入は血液その他体液中に溶解する酸素分圧が高まるので低酸素血症におち
        いっている組織をすくい、また窒素ガス気泡の吸収排出を促進させ、症状の消退を早め、一方組
        織に溶け込んでいる窒素ガスを洗い出し、減圧時間を短縮させる効果がある。
          ただし、高気圧下の酸素吸入は酸素中毒の危険があるので、その使用は1.8kg/cm2以下に限
        られ、使用中は常に患者の状態に注意しなければならない。また、過膨張による肺の破裂の再圧
        治療時には酸素を使用してはならないことは前記の通りである。
          なお、酸素は物の燃焼速度を早め、火災の危険を増大するので、わずかの火災でも危険である
        から、再圧室内への火気の携行ならびにその使用を厳重に禁止する必要がある。(酸素を使用し
        ない場合でも高い空気圧下では酸素分圧が高まるので同様な注意が必要である。この注意を怠っ
        て、再圧室内の火災で死亡した例が過去に若干数あった。)再圧室内の酸素の拡散と分圧の上昇
        防止のため定期的な換気および自動的な呼気の排泄装置が使用される。酸素の使用には以下の事
        項が考慮される。
        [1]  患者が予め耐酸素テストを受けていないとき、または酸素の耐性が不十分と知られている
            ときを除き、再圧治療表にきめられた圧で行なうこと。
        [2]  酸素吸入用マスクが顔にぴったり合っていることを確かめること。
        [3]  でき得れば適当な湿りを与えること。
        [4]  火災の危険に対する注意の換起
        [5]  次のような、酸素中毒症状に対し、注意を払い警戒すること
            a  口唇部の痙攣
            b  眩暈
            c  悪心
            d  視力鈍麻
        [6]  中毒症状が発現したならば直ちにマスクを外すこと。
        [7]  痙攣発作に対して、口かませ等を使用すること。
        [8]  前項その他の理由で酸素吸入が中断されなければならない場合には以後の再圧治療は
            a  第1欄のときには第1A欄に従うこと。
            b  第2欄のときには第2A欄に従うこと。
            c  第3欄のときには、そのまま空気使用に切替えること。
        [9]  中毒症状の消失が見られたときには、1.2kg/cm2より、再び酸素吸入を始めてもよい。その
            際は、以下の要領により行なわれる。
            a  第1A欄により再び続けるときには、1.2kg/cm2で30分、0.9kg/cm2で1時間酸素
              吸入を行ない、その後酸素吸入を行いながら5分間で大気圧まで減圧すること。
            b  第2A欄により再び続けるときには、1.2kg/cm2で30分、0.9kg/cm2で2時間酸素
              吸入を行ない、その後酸素吸入を行ないながら5分間で大気圧まで減圧すること。
            c  第3欄によるときは、1.2kg/cm2で30分、0.9kg/cm2で最初の1時間酸素吸入を行
              ない、その後は空気のみで減圧を終了すること。
    (ホ)  再圧治療における、ヘリウム−酸素の使用
          ヘリウム−酸素混合気体(混合比約80:20)はすべての症状の治療でどのような圧力において
        も空気の代りに使用することができる。ヘリウム−酸素は次のような場合に特に望ましい。
        [1]  5.0kg/cm2の短時間の再圧で回復しないような重症状
        [2]  治療時の再発または増悪
        [3]  呼吸困難を伴うとき
    (ヘ)  付添看護の方法
        [1]  次の場合、医師その他の者の再圧室内での付添看護が必要である。
            a  患者が何等かの重症状を有するとき。
            b  患者が酸素吸入をしているとき。
            c  その他特別の看護を必要とするとき。
        [2]  看護者は、患者の状態の変化、特に酸素吸入中は注意しなければならない。
        [3]  看護者が、第1欄または第2欄に従う再圧治療中、患者と共にいるときには次の要領で酸
            素吸入をしなければならない。
              第1欄の場合:1.2kg/cm2で30分間
              第2欄の場合:0.9kg/cm2で1時間
        [4]  看護者が第1欄または第2欄の酸素吸入時のみ患者に付添うときには、最後の圧停止の最
            終の30分間酸素吸入をすればより安全であるが、絶対必要ではない。
        [5]  再圧治療中に再圧室に入り、また治療の途中にそこを出る場合には標準の減圧法に従うこ
            と。(高気圧障害防止規則参照のこと)
        [6]  外部の操作者は再圧室に出入りする人員について、加圧、減圧を規定の方法で行ない、ま
            た室内の看護者(医師を含む)によりなされた診療を記録しておくこと。
    (ト)  換気の方法
          再圧室の換気は、室内の快適さを保つばかりでなく、呼吸によって消費される酸素と発生する
        炭酸ガスを安全レベル内に保つために必要である。さらに酸素吸入時には、必要以上に室内の酸
        素分圧を、高めないためにも換気を適当に行なうことが望ましい。換気は次の要領で行なうこと。
        [1]  必要空気量の決定(表)
        [2]  換気の最大時間間隔
              a  酸素を使用していないときは
間隔(分)=
室(または気間)容積(立米)
基本的必要量(立米/分)
              b  酸素吸入中は
間隔(分)=
室(または気間)容積(立米
酸素吸入人員数×0.33
        [3]  換気のタイミング
            a  [2]方式の最大より短い都合のよい間隔を使うこと。
            b  連続的な一様な割合の換気でも十分である。
        [4]  各換気で使われる空気容量
              前回の換気の開始から時間(分)を1分間の必要空気量にかけること。
        [5]  必要な換気容量を得るために予め、排気パルプの位置をきめておくこと。
        [6]  これら適正換気を行うため、換気パイプに流量計を設けること。