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トンネル工事等における坑内火災の防止について

改正履歴


  標記について、昭和52年7月25日付け基発第418号をもって関係団体に対して別添のとおり要請したの
で了知されたい。
  なお、今後におけるトンネル工事等を実施する事業者の監督指導にあたっては、この趣旨が徹底される
よう特に留意のうえ同種災害の再発防止に万全を期されたい。

(別添)

トンネル工事等における坑内火災の防止について

  トンネル工事の施工に伴う労働災害の発生状況につきましては、関係者のご努力により死亡者数が大幅
に減少するなど年々改善をみているところでありますが、去る7月15日上越新幹線のトンネル工事現場に
おいて、別添のとおり坑内火災により多数の労働者が長時間坑内に閉じ込められるという事故が発生し、
社会的にも大きな問題となったことは、まことに遺憾にたえないところであります。
  今回の事故では、労働者の被害は数名が軽度の一酸化炭素中毒にり患したにとどまりましたが、この種
の災害は、多数の労働者が生命を失うおそれが大きいことは明らかであります。
  つきましては、トンネル、地下発電所、地下貯蔵所などの地下の建設物の建設工事における同種災害の
絶滅をはかるため、法令に定めるところによるほか、下記の事項の実施について、会員事業場に徹底して
いただくよう所要の措置を講ぜられたく要請いたします。
記
1.易燃生の材料等を使用しない工法の採用
    トンネル、地下発電所、地下貯蔵所等の建設工事を施工する場合には、可能な限り坑内において紙、
  油、塩化ビニール等の易燃性を有しあるいは燃焼の際に有害性のガス又は多量の煙を発生する原料料等
  を使用しない工法の採用を検討すること。
2.溶接作業等を行う場合の措置
    坑内で、溶接作業等火気を使用する作業を行う場合には、次の措置を講じること。
  (1)  看視人を配置すること。
  (2)  附近にある可燃物を除去し、又は可燃物に不燃性の覆いをかけること。
3.休憩所等
    坑内には休憩所又は喫煙所を設け、当該場所以外の場所では喫煙、衣服の乾燥等の火気を使用する行
  為を行わないようにすること。
4.送気設備
    さく岩機、づり積機等の動力として使用する圧縮空気の送気管は、非常の際にも送気ができるよう不
  燃性の材料とするとともに、その配管にあたっては、火災等の際に高温となるおそれがある箇所を避け
  る等の配慮をすること。
5.連絡設備
    坑内の作業箇所には、坑外との連絡を行うために電話等の連絡設備を設けること。
6.避難用具等
    呼吸用保護具その他非常の場合に労働者を避難させ、又は救出するため必要な用具を備えること。
7.避難訓練等
    非常の場合の救出体制を整備するとともに、避難訓練を実施すること。
8.入坑人員の確認
    入坑者の氏名、人員については、坑外において常に確認することができる措置を講じること。
9.整理整とん
    作業場内外の整理整とんを徹底すること。

上越新幹線湯沢トンネル工事現場における坑内火災の概要

1.発生日時  昭和52年7月15日(金)午前9時20分頃
2.発生場所  新潟県南魚沼郡塩沢町
              上越新幹線湯沢トンネル北工区工事現場
3.事業場名  (元請)(株)青木建設新幹線湯沢作業所
              (下請)(株)浜田組
4.工事の状況
  (1)  発注者  日本鉄道建設公団新潟新幹線建設局
  (2)  工事名  上越新幹線湯沢ずい道(北)その他工事
  (3)  請負金額  約77億円
  (4)  工期  昭和47年9月30日〜昭和54年12月31日
  (5)  工事の概要  大宮起点152km地点の湯沢トンネル(延長4,490m)のうち北工区2,840mを掘削する
      工事(掘削方式はサイロット工法)である。
        なお、災害発生当時は先進導坑2,418m、全断面2,170mまで掘削が進行していた。
5.被災状況
    37名の労働者が坑内に閉じ込められたが、約7時間後に全員が救出され、近くの病院に収容された。
  うち4名は3〜10日程度の入院を必要としたが、他の者は当日又は翌日帰宅した。
6.災害の状況
    上記トンネル工事現場において、坑口から1,938m附近でセントルの補強作業をガス溶接で行ってい
  た際、溶接の火花が附近の可燃物に燃えうつり火災となった。当時坑内では側壁導坑、大背掘削、コン
  クリート打設等の作業のため74名の労働者が働いていたが、うち37名が自力で脱出し、37名が坑内に閉
  じ込められた。閉じ込められた労働者は、火災箇所から470mの側壁導坑切羽附近に避難し、鎮火後全
  員救出された。
    避難箇所には動力用の圧縮空気が毎分20m3ほど坑外から送られていた。
    なお、火災は、午前11時30分頃鎮火したが、坑内には大量の煙が充満し、全員が救出されたのは、午
  後4時すぎであった。
7.災害の原因等
    災害の原因については、調査中であるが、溶接作業を行っていたセントル附近には直径1mの塩化ビ
  ニル製風管、足場板、はくり剤(ノックスクリート)等の可燃物があり、また溶接作業に使用するアセ
  チレンボンベ3本、酸素ボンベ2本が下方の床上に置かれていた。このためこれらの可燃物に溶接の火
  花が燃えうつって火災となったものと推定されている。
    なお、溶接の作業は2名の労働者が行っていたが、気がついたときには火勢が強く、消火が不可能な
  状態になっていた。

(図)