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エポキシ樹脂の硬化剤による健康障害の防止について

改正履歴


  エポキシ樹脂の硬化剤(以下「硬化剤」という。)を製造し、又は取り扱う作業(エポキシ樹脂と硬化
剤との混合物(硬化したものを除く)を取り扱う作業を含む。以下「関係作業」という。)に従事する労
働者の間に硬化剤に接触又はこれらの蒸気を吸入することによる汎発性強皮症と思われる健康障害及び接
触性の皮ふ炎の発生が目立ってきている。さらに、近年、エポキシ樹脂は広く使用され、かつ、その生産
量の増加が大幅に伸びているので、今後、硬化剤による健康障害の多発が危惧されるところである。
  このような状況にかんがみ、硬化剤を製造し、又は取り扱う事業場を可及的速かには握することとし、
既に指示した特別監督指導計画の対象事業場中に該当事業場がある場合には、優先して早急に監督指導を
実施し、本通達に基づく監督指導とあわせて実施されたい。また、上記計画の対象となっていない該当事
業場についてもできる限り早急に実施することとされたい。
  ついては、上記の監督指導に際しては、下記事項に留意の上、所要の措置を講じ、これらの物による健
康障害の防止に万全を期されたい。

記
1.有害性の低い硬化剤への代替
    硬化剤として用いられる脂肪族ポリアミン及び芳香族ポリアミンは、有害性が高いので、できる限り
  酸無水物、変性脂肪族ポリアミン等で比較的有害性の低いものに代替させること(労働安全衛生規則
  (以下「安衛則」という。)第576条)。
2.作業環境の改善
  (1)  関係作業を行う作業場所(以下「作業場所」という。)は、これ以外の作業の場所と区画させる
      こと。
  (2)  関係作業は、できる限り自動化させること。なお、混合工程、加熱工程等関係設備の密閉化が可
      能なものについては、密閉構造のものとさせること。
  (3)  混合工程、注入工程、塗布工程、接着工程、加熱工程等における硬化剤の蒸気の発散源には、制
      御風速0.5m/秒以上の局所排気装置を設け、関係作業中は有効に稼働させること(安衛則第577
      条)。
        なお、加熱工程の蒸気の発散源には、ブース式フード又は囲い式フードによる局所排気装置を設
      けさせること。
3.作業方法の改善
    硬化剤又はエポキシ樹脂と硬化剤との混合物(以下「硬化剤等」という。)を直接手で取り扱うよう
  な作業方法は、避けさせること。
4.保護具の装着等
    関係作業に従事する労働者(以下「関係労働者」という。)については、次により保護具等を使用さ
  せること。
  (1)  ゴム製等不浸透性の手袋、前掛等を使用すること。なお、手袋の着用に当たっては、手の皮ふか
      らの発汗により皮ふ組織が膨張するため、極く微量の硬化剤等が手袋の中に入った場合でも皮ふ障
      害を起こすおそれがあるので、あらかじめ手袋の下に木綿の薄い手袋を着用すること。また、硬化
      剤等によって汚染された手袋で顔、首等に触わらないようにすること。
  (2)  手、腕等硬化剤等及び蒸気に接触するおそれのある身体の部分には、保護クリームを塗布するこ
      とが望ましいこと。
5.作業場所の清掃等
  (1)  硬化剤を取り扱う作業台には、紙製等のテーブルカバーを敷き、硬化剤等で汚染された場合には
      新しいものと取り替えさせること。
  (2)  作業場所については、作業終了後清掃を行い、当該清掃に用いたぼろ布等は廃棄させること。な
      お、作業場所等に付着した硬化剤等を除去する場合には、できる限り有機溶剤を使用させないこと。
      おって、清掃を行う場合には、前記4の措置を講じさせること。
  (3)  上記(1)及び(2)に用いたテーブルカバー、ぼろ布等は、不浸透性の袋の中に入れ、かつ、関係
      作業中はふたのある容器に保管しておき、作業終了後に当該袋を焼却させること。
6.清潔の保持
  (1)  作業衣が硬化剤等で汚染された場合には、速やかに汚染を除去し、かつ、関係作業の終了後十分
      に洗わせること。なお、作業衣は、硬化剤等で汚染された箇所がわかるよう明るい色のものを使用
      させること。
  (2)  保護具は、常に清潔なものを使用させること。なお、手袋は、作業終了後に着用したままで石け
      ん及び温水を用いて洗わせること。
  (3)  作業中に硬化剤等で皮ふが汚染された場合には、中性石けんを用いて洗わせること、なお、作業
      を中断する際及び作業終了後も同様とすること。
7.教  育
    新たに関係作業につかせるとき、又は使用する硬化剤の成分を変更するときはあらかじめ次の事項に
  ついて関係労働者に対して教育を行わせること。なお、次の事項以外の事項についても、安衛則第35条
  の規定により、遅滞なく必要な事項について教育を行わなければならないことに留意すること。
  (1)  硬化剤の有害性
  (2)  適切な作業方法及び作業手順
  (3)  保護具の装着方法、作業場所の清掃及び清潔の保持
8.取扱い責任者の選任
    関係作業を行わせる場合には、硬化剤等の有害性及び安全な作業方法について十分な知識を有する者
  を取扱い責任者に選任し、その者に次の事項を行わせること。
  (1)  関係作業中、1日1回以上、作業場所を巡回して作業の実施方法、作業場所の汚染の状態及び保
      護具の使用状況を監視し、適切な指示を行うこと。
  (2)  前記2の(3)の局所排気装置の点検を行うこと。
9.皮ふ障害等の有無の調査
    作業を開始するとき及び作業終了後に関係労働者の皮ふ障害の有無及び関節痛等の自覚症状の有無を
  調査させること。
10.表示等
    硬化剤を製造する者又は輸入する者に対しては、含有する主な成分(例として脂肪族ポリアミン、変
  性脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、変性芳香族ポリアミン、脂環式ポリアミン、変性脂環式ポリ
  アミン、酸無水物等の区分)及び取扱い上の注意事項を容器等に表示させるとともに、その有害性及び
  詳細な取扱い上の注意事項に関する資料を作成配布の上関係ユーザー等に対して適切な指導を行わせる
  こと。
11.削除