石油化学コンビナート等の災害防止対策協議会の運営指導について |
改正履歴
石油化学コンビナート等の化学企業集団における災害防止対策協議会の運営指導については、昭和40年
3月18日付け基発第217号通達「化学工業等に対する労働災害防止対策について」により指示し、相当の
効果をあげてきたところであるが、近時、生産技術の進歩に伴って、新しい生産工程が導入され、反応条
件も高温、高圧化の傾向をたどるとともに、設備の新増設によって企業の密集度は高まり、一たび災害が
発生すれば、きわめて大型のものになる可能性をもつに至っている。
このような状況にかんがみ、石油化学コンビナート等の化学企業集団における労働災害防止活動を一段
と推進することとし、災害防止対策協議会の運営に当たっての協議事項その他留意すべき事項について、
別添のとおり「石油化学コンビナート等の災害防止対策協議会運営要綱」を定めたので、同要綱の2に掲
げる災害防止対策協議会を所轄する局署においては、同要綱に基づき同協議会の育成および指導に当たら
れたい。
また、本要綱の5の(3)の「排気、排液の処理に関すること」については、現在労働安全衛生規則の改
正作業を進めており、これと相まって監督指導上の留意事項等を示す予定であるが、公害面で特に問題と
なっている物質またはそのおそれがあるものの実態を十分には握し、その排出処理設備の完備、測定等に
ついて自主基準を確立させるよう指導をされたい。
なお、前掲通達の記I(「地域集団の総合的災害防止活動の推進」)は、廃止する。
おって、別添要綱の4(4)に掲げる事項であって行政上注目すべきものについては、本省に報告された
い。
別 添
石油化学コンビナート等の災害防止対策協議会運営要綱
1 趣旨
近時、石油化学工業等の化学企業においては、生産技術の進展に伴う新しい生産工程の導入および設
備の新増設が著しく、一たび災害が発生すれば、その被害はきわめて広範囲におよぶ可能性をもつに至
っている。
これらのことにかんがみ、石油化学コンビナート等の化学企業集団においては、本要綱に定めるとこ
ろにより、爆発、火災、中毒等の災害の防止対策について、協議検討を行ない、企業内における災害発
生の防止および企業相互間の災害波及の防止について、その徹底をはかるものとする。
2 対象
本要綱は、次の化学企業集団の災害防止対策協議会(以下「協議会」という。)を対象とすること。
(1) 石油化学コンビナート
鹿島地区、玉井地区、市原地区、姉ヶ崎、袖ヶ浦地区、川崎浮島地区、川崎扇島地区、川崎千鳥
地区、四日市地区、泉北・堺地区、水島地区、岩国・大竹地区、徳山・南陽地区、新居浜地区、大
分地区
(2) 石油精製業その他化学企業の地域的集団
室蘭地区、秋田地区、新潟地区、横浜地区、富山地区、清水地区、和歌山地区、姫路地区、宇部
地区、松山地区、黒崎・八幡地区、大牟田地区、その他これらの地区に準ずるもの
3 構成
協議会の構成員は、次のとおりとすること。
(1) 労働基準局署
(2) 事業場
(3) その他、必要がある場合には、下請事業場、学識経験者、地方通産局関係または消防関係の職員
等の参加を考慮すること。
4 開催
協議会の開催に際しては、次の事項に留意すること。
(1) 年度当初に年間の協議予定を作成するとともに、開催時ごとに、5に掲げる事項について具体的
に検討項目を定めて協議を行なうこと。
(2) 出席者は、労働基準局署にあっては、局安全衛生課長、労働基準監督署長、産業安全専門官、労
働衛生専門官等、事業場にあっては安全衛生管理者、技術責任者とし、協議事項が常に安全衛生確
保のための技術的立場から検討されるよう配慮すること。
(3) 爆発、火災、中毒等の防止のために必要な設備基準、作業指針、緊急時対策等の検討・作成を行
う専門部会、研究班等の設置についても配意すること。
(4) 協議会の構成事業場および下請事業場の災害統計、災害事故例等ならびに協議会で得られた基準、
指針その他安全衛生上の問題点等について、各協議会相互に情報の交換をはかること。
5 協議事項
協議会は、次の事項について協議するものとすること。
(1) 安全衛生基準の整備、改善に関すること。
イ 共有設備等の安全衛生の確保
(イ) 共有施設、共有ユーティリティ等の共有設備および事業場間原料受給設備の設置基準ならび
に運転基準の確立
[1] 緩衝設備、遮断弁、排出装置、インターロック、安全弁、予備電源装置等の設置基準の
確立
[2] 事業場間を連絡する導管の敷設基準および導管の付属設備の設置基準の確立
[3] 平常運転時の操作基準および異常時の措置基準の検討
[4] その他
(ロ) 共有設備等の保守点検制度の確立
[1] 共有設備(事業場間を連絡する導管およびその付属設備を含む。以下同じ。)の保守点検
のためのメインテナンス要員の確保
[2] 共有設備の点検箇所、点検回数、点検方法等の点検基準の確立
[3] 共有設備の定期補修の時期、方法等の補修基準の確立
[4] 事業場間送給受入原料、共有ユーティリティ等原料または、材料の圧力、温度及び流量の
調節、漏えい検査等の基準の確立
[5] その他
ロ 事業場の安全衛生の確保
(イ) 危険場所の指定等
[1] 工程別、危険物・有害物の取扱場所別等による爆発、火災、中毒等の災害の発生するおそ
れのある危険場所の指定
[2] 上記危険場所において使用する電気機械器具その他の機械器具の使用基準の設定
[3] 上記危険場所における作業基準の設定
(ロ) 運転操作基準および点検基準の設定
[1] 労働安全衛生規則第137条の6、第137条の8および第137条の9の規定による具体的措置
の検討
[2] 化学設備、配管等の保守点検のためのメインテナンス要員の確保
[3] 平常運転時における配管およびその付属設備から危険物・有害物等の漏えいについての
点検箇所、点検回数、点検方法等の点検基準および異常時の措置基準の設定
[4] 配管の腐しょく、損傷等に関する点検基準および配管の交換基準の設定
[5] その他
(ハ) 補修作業時、設備増設工事時等の作業基準の確立
[1] 爆発、火災、中毒等の災害の発生するおそれのある危険作業の指定
[2] 作業着手前における危険物・有害物の排除または漏えいの防止、ガス検知、設備相互間
または作業相互間の連絡等の基準の確立
[3] 作業中における作業指揮者の職務、ガス検知、消火設備、防火設備、除害設備、安全衛
生保護具、危険標識等の設置等の基準の確率
[4] 火気使用の手続、火気使用中のガス漏えい防止等の火気使用基準の確立
[5] 作業終了時における残留異物除去、運転開始時の事前点検、設備相互間の連絡等の基準
の確立
[6] その他
(2) 事業場相互間の連絡調整に関すること。
イ 隣接事業場の境界線附近にある化学設備等の新設時、補修時、異常運転時、緊急時等における連
絡設備、連絡の方法および措置の基準の確立
ロ 原料受給工場間の送給設備または受入設備の送給開始時、シャット時、異常運転時、緊急時等に
おける連絡設備、連絡の方法および措置の基準の確立
ハ 共有設備の運転開始時、運転停止時、異常時等における連絡設備、連絡の方法および措置の基準
の確立
ニ 共有設備の使用時期、使用範囲、使用内容等に関する連絡の基準の確立
ホ その他
(3) 排気、排液の処理に関すること。
イ 近接事業場の安全衛生の確保のための危険有毒性のガス、液体等の排出方法および排出濃度の基
準の確立
ロ 近接事業場の安全衛生の確保のための危険有毒性のガス、液体等の排出設備(安全弁、排気・排
液処理装置等)の設置および保守管理基準の確立
ハ その他
(4) 構内下請事業場等に対する安全衛生管理の改善指導に関すること
イ 構内下請事業場が行う補修作業、運搬作業等の総合安全衛生管理体制の確立
(イ) 親企業における総合管理を担当する者の選任
(ロ) 協議組織の設置および運営
(ハ) 作業間の連絡および調整
(ニ) 作業箇所の巡視
(ホ) 合図、標識、警報等の統一
(ヘ) 消火設備、除害設備の設置および点検、ガス検知器の設置および点検等に関する責任権限の
明確化
(ト) (1)のロの(イ)の措置および(ハ)の基準の徹底
(チ) 安全衛生保護具の備付け、使用責任の明確化等
(リ) その他
ロ 危険場所に接近して行われる設備増設工事における総合安全衛生管理体制の確立
(イ) 親企業における総合管理を担当する者の選任
(ロ) 元方工事業者における統轄管理者の選任
(ハ) (4)の件の(ロ)から(チ)に掲げる事項についての親企業としての援助方法
(ニ) その他
ハ 補修作業時、設備増設工事時等の作業基準の確立(1)のロの(ハ)に掲げる事項に同じ。
ニ 安全衛生教育(消防および救護の訓練を含む。)の計画の策定
(イ) 実施の時期(補修作業時、設備の新設・改造時等)
(ロ) 対象者(未熟練労働者、危険作業従事者等)
(ハ) 内容(取扱化学物質の危険有害性と取扱方法、設備の修理、清掃等の方法、火災時における
消火方法、安全衛生保護具の使用方法、事故時における救護および除害の方法等)
(ニ) その他
(5) 緊急時における措置(夜間時を含む。)に関すること
イ 危険有害性のガス、液体等の漏えいまたは流出時(共有設備からの漏えいまたは流出時を含む。)
の措置基準の確立
(イ) 応急体制および応急処置の基準の確立
(ロ) 火災、爆発、中毒等の被害波及防止の基準の確立
(ハ) 警報措置の基準の確立
(ニ) その他
ロ 出火時等の措置基準の確立
(イ) 初期の消火、除害等の基準の確立
(ロ) 延焼および誘爆の防止の措置基準の確立
(ハ) 避難措置および救護措置の基準の確立
(ニ) その他
(6) 災害事例の分析および検討に関すること
協議会の構成事業場における災害事故の事例について、発生状況、発生原因等を分析検討し、基
準または指針となるべきものの検討、作成の参考とすること。