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改正履歴
公害防止対策の推進については、先に昭和45年8月6日付け基発第571号(略)をもって通達したと
ころであるが、ボイラ関係の公害防止について今般別紙の「ボイラの発生するばい煙の防止に関する対策」
をまとめたので、下記の事項に留意のうえ、本対策により関係事業場の指導にあたられたい。なお、本対
策中法規制をすることが適当な事項については、後日、ボイラ及び圧力容器安全規則又はボイラ構造規格
の改正により措置する予定であるので申し添える。
記
1 「1 総則」関係
ボイラによる公害としては、煙突から排出される有害物質による大気汚染のほか、騒音(バーナの燃
焼音、安全弁の吹出し音)及び水質汚染があげられるが、今回の対策は、大気汚染の防止を目的とした
ものであること。
2 「2、1 ボイラ」関係
(1) 2、1、1における最大蒸発量又は最大熱出力の測定法については、別途指示するが、当面は各
メーカーが、それぞれ所定の方式で測定すること。
なお、現に設置されているボイラについては、メーカーに照会して最大蒸発量又は最大熱出力を
標示させるよう勧奨すること。
(2) 2、1、2における、すすその他の粉じん量の測定は、JISZ8808−1963(煙道排ガス中のばいじ
ん量の測定方法)に定める方法によるものとするが、他の簡易な測定法によってもさしつかえない
こと。
なお、3、3の(1)のただし書によって、リンゲルマン濃度表を用いることのできる場合は、こ
れによることができること。
(3) 2、1、2におけるいおう酸化物の測定は、JISK0103−1963(燃焼排ガス中の全いおう酸化物分
析方法)に定める方法よって測定したいおう酸化物の濃度及びJISB8222−1964(陸用蒸気ボイラ
の熱勘定方式)に定める方法によって計算した総排出物により算出すること。
なお、3、4の(2)のただし書によって炭化水素油を燃料とする場合には、燃料中のいおう分の
測定をもって、これにかえることができること。
(4) 2、1、2における粉じん量及びいおう酸化物の量については、大気汚染防止法の改正に伴って
その基準が地域によっては変更されることがありうること。
3 「2、2 燃焼室及び燃焼装置」関係
(1) 2、2、5におけるガス採取穴は、3、4の(1)又は(2)により簡易な測定が認められる場合にお
いては必要としないこと。
(2) 2、2、8における監視装置には、反射鏡の組合せによる装置等が含まれるものであること。
4 「3、2 低いおう燃料の選定」関係
排ガス中のいおう酸化物の除去は、中小ボイラにおいては、適当な装置が開発されていないので、と
りあげず、低いおう燃料の選定をあげるにとどめたものであること。
5 「3、4 ばい煙量等の測定」関係
(1) 3、4(1)における排ガス量が4万Nm3/h未満のボイラとは、発熱量6,000Kcal/kgの石炭を使
用するものにあっては、おおむね燃料消費量2,500kg/h未満のものをいうこと。
(2) ばい煙濃度とばい煙量との関係は、煙突の径によって異るが、煙突の直径が200mm位の場合は、次
の図を適用して差しつかえない。
(図)
6 「3、6 燃焼装置関係の点検」関係
3、6、1による点検は、点検表(ボイラ運転日誌)等により実施させ、点検もれのないように指導
すること。
別紙
ボイラの発生するばい煙の防止に関する対策
(昭和45年12月労働省労働基準局)
ボイラの発生するばい煙の防止に関する対策
1 総則
ボイラの煙突から排出されるすす、いおう酸化物等のばい煙は、大気汚染の大きな原因となるもので
あるから、ボイラ設備の設置及び使用にあたっては、ボイラ及び圧力容器安全規則、大気汚染防止法、
その他の法令によるほか、この基準により煙突からの排出物の減少に努めなければならない。
2 設備
2、1 ボイラ
2、1、1 ボイラには、最大蒸発量(温水ボイラにあっては、最大熱出力とする。)を標示しなけ
ればならない。
ここにいう最大蒸発量とは蒸発圧力、過熱蒸発温度、給水温度、使用燃料等の所定条件の下にボ
イラの安全運転が確保され、かつ、公害規制の限度をこえない状態で発生できる最大連続蒸発量を
もって表わすものとする。上記の定義は、温水ボイラにおいても準用するものとするが、この場合
において、「最大蒸発量」「蒸発圧力」「過熱蒸気温度」及び「最大連続蒸発量」をそれぞれ「最
大熱出力」「水頭圧」「温水温度」及び「最大連続熱出力」と読み替えるものとする。
2、1、2 ボイラは、当該ボイラの煙突から大気に排出されるすすその他の粉じんの量及びいおう
酸化物の量が次の各号に適合するものでなければならない。ただし、伝熱面積が10m2未満のボイラ、
電気又は廃熱のみを使用するボイラ及びいおう化合物含有量が体積比で0.5%以下のガスを専焼さ
せるボイラはこの限りでない。
1 すすその他の粉じんは、温度0度であって、圧力が1気圧における状態に換算した気体1m3
(以下「Nm3」という。)について、1.2g(地方条例に定めのあるときは、その値)以下であ
ること。
ただし、燃料の点火、灰の除去のための火層整理若しくはすすの掃除を行なうばい煙又はその
他やむを得ない場合は、この限りでない。
2 いおう酸化物は、次の算式により算出した量以下であること。
2、2 燃焼室及び燃焼装置
2、2、1 燃焼室は、ボイラの最大蒸発量において燃料が燃焼室出口に達する前に安全燃焼するに
十分の大きさ、形、構造のものでなければならない。
2、2、2 バーナの選定にあたっては、次の各号によらなければならない。
1 容量は、取り付けるボイラの型式に応じた負荷範囲内のものとすること。なお、着火直後のよ
うに火炉内壁面特にバーナタイル附近が冷えている際には、すすの発生を起さない許容最大負荷
は極めて低くなることに留意すること。
2 燃焼室内に平均に火炎が分布し、冷壁への接触をさけるようにするため、炉巾の大きな炉には、
広角バーナを、反対に狭いものには狭角のバーナを選定すること。
3 バーナの構造は、バーナタイル又は噴出口近くの伝熱面に油滴が衝突しないものとすること。
4 使用する燃料の種類に適したバーナを選定すること。特に小さな炉で火炉負荷が高く設計され
ているときは、軽質燃料の燃焼に適したバーナとするものとする。
2、2、3 1つの火炉に2以上のバーナを設置して併列に運転する場合には、バーナの特性を調整
し、相互に燃焼をさまたげないように取り付けなければならない。
2、2、4 煙突には、掃除穴を設けなければならない。
2、2、5 煙突には、排ガス分析のために煙道ダンパからボイラ寄りに1mぐらいの箇所でできる
だけ真直な部分に、直径10cm以上のガス採取穴を設けなければならない。
2、2、6 燃焼室、煙道、煙突等は気密とし、地下水の侵入を防ぐ構造としなければならない。
2、2、7 2以上のボイラが、煙道を共有するときは通風に不均衡を生ずることのないように煙道
断面の大きさ、合流箇所の形状に注意しなければならない。
2、2、8 ボイラ室には、のぞき窓の設置等ボイラ取扱中煙突から出る排ガスの状況を監視できる
ような措置を講じなければならない。
3 管理
3、1 蒸気又は温水の消費量の調整
使用者は、当該ボイラの最大蒸発量以上の負荷がかからないように蒸気又は温水の消費量を調整し
なければならない。
なお、必要ある場合は、蒸気アキュムレータを設けるものとする。
3、2 低いおう燃料の選定
燃料は、いおう分その他の有害成分が少ないものを使用するものとする。
3、3 ボイラの管理
使用者は、ボイラ取扱主任者に、2、1、2に掲げるばい煙の量をこえないようボイラを管理させ
なければならない。
3、4 ばい煙量等の測定
3、3の事項を行なうためボイラ取扱主任者は、ボイラから排出されるばい煙量を次により測定し、
その結果を記録しなければならない。
(1) すすその他のばい煙量は、ばいじん測定器を用い3ヵ月以内の作業期間ごとに1回以上測定す
ること。ただし、炭化水素油若しくはガス専焼若しくは混焼するもの又は排ガス量が4万N/h
未満のものでは、リンゲルマン濃度表を用い、7日以内の作業期間ごとに1回以上測定すること。
この場合においては、ばい煙濃度をばい煙量に換算したうえ、2、1、2を適用するものとする。
(2) いおう酸化物は、排出されるばい煙量が10N/h以上のボイラについて、いおう酸化物測定器
を用い、3ヵ月以内の作業期間ごとに1回以上測定すること。ただし、炭化水素油にあっては、
燃料中のいおう分の測定をもってこれにかえることができる。
3、5 バーナの取扱い
3、5、1 不安定燃焼は、ばい煙発生の原因となるものであるから、不安定燃焼を生じた場合に
はそれぞれの場合に応じ、当該各号に掲げる措置を講じなければならない。
1 火が消えた場合
直ちに油の供給を止め、次の事項について点検し必要な是正措置を講ずること。
イ バーナの噴油口がつまっていないか。
ロ 油濾過器がつまっていないか。
ハ 油弁を絞りすぎていないか又は噴油量に比し燃焼用空気量が多過ぎないか。
ニ 油に水分、空気又はガスが多く含まれていないか。
ホ 蒸気噴射式の場合には、吹込蒸気に水分が含まれていないか。
ヘ 噴射蒸気又は噴射空気の圧力が強過ぎないか。
ト 油の温度が低過ぎないか。
チ 停電していないか。
2 逆火が起きた場合
次の事項について検討し、必要な是正措置を講ずること。
イ 通風が悪くないか。
ロ 油の温度が高過ぎないか。
ハ 油の温度が低過ぎないか。
ニ 油に水分、空気又はガスが多く含まれていないか。
ホ 無理だきしていないか。
ヘ バーナが汚損していないか。
なお、火炎が振動し、安定しない場合には、バーナ及びその位置、煙道の構造等の欠陥によるこ
とも多いから、これらについてもよく調査して、その原因を取り除くことが必要である。
3、5、2 油の燃焼量を急激に増減することは避けなければならない。
3、5、3 空気噴射から蒸気噴射に切りかえる場合及び着火時に軽質油から重質油に切りかえる場
合には、空気を徐々に減ずるとともに蒸気を徐々に増しつつ行なわなければならない。
3、6 燃焼装置関係の点検
3、6、1 燃焼装置の性能が適正でないと、燃焼生成物中に含まれるばい煙等の濃度が高くなるお
それがあるから燃焼装置の各部分については、別表に定める期間ごとに点検を行なわなければなら
ない。
3、6、2 燃焼装置の点検は、次の部分に応じ、それぞれ当該各号に掲げるところによるものとす
る。
(1) 燃料タンク
燃料タンクの油は、ストレーナまでの移送に支障のない程度の温度に加熱されていることを
確認すること。
(2) ストレーナ
(イ) ストレーナ前後の圧力計は、所定差圧を維持していることを確かめること。
(ロ) 圧力計の指針の振れが異常でないことを確めること。
(3) 油加熱器
(イ) 適正加熱温度になっていることを温度計により確めること。
(ロ) 蒸気圧力計の狂いについて、温度調節装置に関連して作動する状態、閉止した状態の零
点指示を調べること。
(4) 油流量計
流量計の精度について、定期的に試験を行うこと。
(5) バーナ
噴油孔周辺に汚れ、変形等がないことを確認すること。
(6) バーナタイル
(イ) バーナタイルの焼損の状態を調べること。
(ロ) バーナタイルに対するカーボンの付着状況を調べること。
(7) 炉と炉材
(イ) 炉内耐火材の焼損状態について点検し、かつ、耐火材が脱落していないかどうか調べる
こと。
(ロ) 火炎の流れの状態、排ガス温度の異常上昇の有無及びバッフルの脱落による短絡状態に
ついて点検すること。
(8) 通風装置
(イ) 送風機の羽根に腐食がないことを確認すること。
(ロ) ガス及び空気の温度と圧力が所定の値を保っていることを確認すること。
3、7 燃焼装置の掃除
3、7、1 次に掲げる部分は、適時、分解して掃除を行なわなければならない。
(1) ストレーナ(油流量計用のストレーナを含む。)
(2) バーナ
3、7、2 バーナチップは、洗油等に浸し、付着カーボンをやわらかくしたうえ、木片等で削るも
のとする。
3、7、3 バーナチップの噴油孔の掃除は、銅線できずをつけないように行なうものとする。
3、8 その他
3、8、1 運転開始時は、燃焼状態を見ながら燃焼量を徐々に増し、ばい煙の発生防止に努めなけ
ればならない。この場合、たき始めに軽油その他の燃焼の容易なものを使用するか、又は、ボイラ
停止後なるべく炉を冷却しないようにすることが有効である。
3、8、2 硫酸ミスト及び硫酸ミストを吸収したぼたん雪状のすすの発生を防ぐため、過剰空気は
すすの発生しない限度において極力少くなるようにしなければならない。