安全衛生情報センター
特定化学物質等障害予防規則(昭和四十六年労働省令第十一号)は、昭和四十六年四月二十八日公布され、 同年五月一日(一部の規定は、同年八月一日、十一月一日または昭和四十七年五月一日)から施行されるこ ととなつた。 この省令は、最近における化学物質等による中毒その他の障害の発生状況等にかんがみ、一定の化学物 質等による障害および環境汚染を予防するため、必要な規制について定めたものである。 この省令の要点は、次のとおりである。 1 一定の化学物質等について、労働環境内における発散抑制措置等に関する規定を定めたこと(第一条 〜第七条)。 2 一定の化学物質等を含有する排気、排液等の処理に関する規定を定めたこと(第八条〜第十二条)。 3 一定の化学物質の漏えい事故による急性中毒等の予防措置に関する規定を定めたこと(第十三条〜第 二十条)。 4 一定の化学物質の製造等の作業に従事する者に対する必要な健康診断等に関する規定を定めたこと (第三十五条および第三十六条)。 5 上記1〜3に関連し、作業管理、表示、環境測定、労働衛生保護具、休憩室、洗じよう設備その他必要 な措置に関する規定を定めたこと(その他の条項)。 ついては、この省令が労働者の健康の確保はもとより、これによつていわゆる公害の防止にも寄与しう ることとなるので、その趣旨を十分に理解し、労使その他関係者に周知徹底させるとともに、とくに下記 事項に留意して運用に遺憾のないようにされたい。 なお、この省令の施行に伴う従来の関係通達の改廃については、おつて示す予定である。 おつて、この省令の施行にともない産業安全衛生施設等特別融資制度の貸付対象として、近く、除じん 装置(第八条)、排ガス処理装置(第九条)、排液処理装置(第十条)、避難用器具(第十九条)および警報設備 (第二十条)が追加される予定であるので申し添える。
T 労働安全衛生規則との関係 本規則は、一定の化学物質等による中毒等の障害の予防に必要な事項のうち、現行労働安全衛生規則 に規定されていない事項および規定されてはいるが、さらに具体的に規定する必要がある事項について 規定したものであり、両規則の規定が競合する部分については、本規則の規定が優先するものであるこ と。なお、本規則に規定されていない事項については、当然労働安全衛生規則が適用されるものである こと。 U 第一章関係 一 第一条関係 (1) 本条は、新技術の導入、新原材料の採用等により、化学物質等による障害が種類の態様、原因 のもとに発生しているので、これを予防するために第二条以下に規定するところにより、具体的に 規制を行なう一方一般的に化学物質等を取り扱う際には、常に実情に即した適切な対策を講ずるこ とによつて労働者が有害な化学物質等にばく露され障害をうけることをできるだけ少なくするため、 毒性の確認、作業方法の確立その他の基本的な問題の解決および労働環境の整備、健康管理の徹底 等の予防対策を積極的に講ずべきことを規定したものであること。 (2) 本条の「その他必要な措置」には、製造方法の適正化、有害性の少ない代替物質の採用等があ ること。 二 第二条関係 (1) 本条の「第一類物質」、「第二類物質」および「第三類物質」には、これらの物質の混合物お よびこれらの物質とこれらの物質以外の物質との混合物が含まれること。ただし、これらの物質と これらの物質以外の物質との混合物であつて、次のものは、除外して取り扱つてさしつかえないこ と。 イ 硫酸を混合する物であつて、硫酸を一〇%以下含有するもの ロ 硝酸を混合する物であつて、硝酸を一〇%以下含有するもの ハ 塩酸を混合する物であつて、塩化水素を一〇%以下含有するもの ニ アンモニアを混合する物であつて、アンモニアを一〇%以下含有するもの (2) 第一号の「第一類物質」は、主として尿路系器官にがんなどの腫瘍を発生させ、またはそのお それが大きいとされている物質を掲げたものであること。ただし、β−ナフチルアミンについては、 現在製造が行なわれていないこともあつて、第三十五条に係る部分を除き、本規則の対象から除外 したこと。 なお、α−ナフチルアミンについても、その物質中におけるβ−ナフチルアミンの含有率が一% 以上のものは昭和四十五年春以降は製造が行なわれていないことに留意すること。 (3) 第二号の「第二類物質」のうち、化合物については、次のとおりであること。 イ アルキル水銀化合物は、アルキル基がメチル基(CH3)またはエチル基(C2H5)であるものに限ら れており、主なものとしては、ジメチル水銀およびジエチル水銀があること。 ロ カドミウムの主なものとしては、酸化カドミウム、炭酸カドミウム、硫化カドミウム、硫酸カ ドミウムおよび硝酸カドミウムがあること。 ハ クロム酸には、無水クロム酸を含み、クロム酸塩の主なものとしては、クロム酸亜鉛およびク ロム酸銅があること。 ニ 水銀無機化合物の主なものとしては、塩化水銀、酸化水銀および硝酸水銀があること。 ホ ベリリウム化合物の主なものとしては、硫酸ベリリウム、水酸化ベリリウム、酸化ベリリウム、 ハロゲン化ベリリウム、炭酸ベリリウムおよびけい酸ベリリウム亜鉛があること。 ヘ 「塩基性酸化マンガンを除く。」とは、酸化マンガン(MnO)および三二酸化マンガン(Mn2O3)を 除く趣旨であること。 ト マンガン化合物の主なものとしては、二酸化マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、マンガ ン塩および過マンガン酸塩があること。 V 第二章関係 一 本章の趣旨等 本章は、第一類物質または第二類物質の製造および取扱いの作業に労働者を従事させる場合におけ るそれらの物質のガス、蒸気または粉じんによる作業場内の空気の汚染と障害を防止するため、第一 類物質または第二類物質の区分に応じた主として施設上の措置について規定するとともに、これらの 施設上の措置についての適用除外の特例を規定したものであること。 二 第三条関係 (1) 本条第一項は、がん原性物質を製造するための装置(原料を投入し、生成した第一類物質を装置 から取り出すまでの一連の装置をいう。)について、その密閉化を規定したものであり、その装置 が設置されている場所が屋内、屋外をとわないものであること。 (2) 第一項の「密閉式の構造」とは、第一類物質を製造するための装置について、原料を投入し、 および製品を取り出す箇所(分析のため製品試料を取り出す箇所を含む。)以外の箇所から、原料お よび第一類物質の蒸気または粉じんが装置外に発散しないようにした構造をいうこと。 (3) 第二項の「取り扱わせる」とは、製造装置から取り出した第一類物質のかん詰め、袋詰め、計 量等の作業を行なうことをいうこと。 (4) 第二項の「当該物質を湿潤な状態のものとし」とは、製造装置から取り出された第一類物質に ついて、かん詰め、袋詰め、計量等の作業中に発じんしないように水、その他の液体で湿らせた状 態にすることをいうこと。なお、この場合、できる限り、常時、重量比でおおむね二〇%以上の水 その他の液体を含む状態のものとするよう指導すること。 (5) 第二項の「隔離室での遠隔操作」とは、製造する第一類物質を取り扱う場所から隔離された計 器室(コントロールルーム)等から装置を運転操作することをいうこと。 三 第四条関係 (1) 本条第一項の本文は、屋内作業場の一定した箇所から、第二類物質のガス、蒸気または粉じん が発散する場合に、これらのガス、蒸気または粉じんによる作業場内の空気の汚染と障害を防止す るため、その発散源に局所排気装置を設置すべきことを規定したものであり、本条第二項は第一項 ただし書きに相当する場合における全体換気装置の設置その他必要な措置を規定したものであるこ と。 (2) 第一項の「設置が著しく困難な場合」には、種々の場所に短期間ずつ出張して行なう作業の場 合または発散源が一定していないために技術的に設置が困難な場合があること。 (3) 第一項の「臨時の作業を行なう場合」とは、その事業において通常行なつている作業のほかに 一時的必要に応じて行なう第二類物質に係る作業を行なう場合をいうこと。 したがつて、一般的には、作業時間が短時間の場合が少なくないが、必ずしもそのような場合の みに限られる趣旨ではないこと。 (4) 本規則において、「屋内作業場」には、作業場の建家の側面の半分以上にわたつて壁、羽目板、 その他のしや蔽物が設けられておらず、かつガス、蒸気または粉じんがその内部に滞留するおそれ がない作業場は含まれないこと。 (5) 第二項の「湿潤な状態にする等」の「等」には、短期間出張して行なう作業または臨時の作業 を行なう場合における適切な労働衛生保護具の使用が含まれること。 四 第五条関係 (1) 本条は、第二類物質の製造または取扱いに関して、その取扱い量、生産工程、作業方法、作業 場内におけるこれらの物質の気中濃度等からみて、常態として衛生上有害な状態になるおそれがな いことを所轄労働基準監督署長が認定した場合における第四条の規定による措置についての適用除 外を規定したものであること。 なお、本条の規定により、第四条の適用が除外される場合は、労働安全衛生規則第百七十三条の 規定は、適用される余地がないこと。 (2) 本条の適用除外について、所轄労働基準監督署長の認定によることとした趣旨は、一般的にみ て、対象物質が多様であり、かつ製造又は取扱いを行なう事業の種類、生産工程、技術水準等も多 様であること、対象物質によつては少量であつても障害発生のおそれがあること等の実情からして、 所轄労働基準監督署長に個別の実情を確認させることにより、本規則の適正な運用を期するためで あること。 なお、その認定のための具体的な調査の方法、基準等については、おつて示す予定であること。 五 第六条関係 (1) 本条は、第四条第一項の規定により設ける局所排気装置に関し、有効な稼働効果を確保するた めの構造上の要件及び能力について規定したものであること。 (2) 第一項第一号は、局所排気装置のフードが適切な位置に設けられていないためにその効果がし ばしば減殺されることがあるので、その効果を期するために必要なフードの設置位置について規定 したものであること。 (3) 第一項第一号の「発散源にできるだけ近い位置に設ける」とは、局所排気装置の吸引効果は、 フード開口面と発散源との間の距離の二乗に比例して低下することから、フードが十分に機能する ようフード開口面を発散源に近づけることをいうこと。 (4) 第一項第一号の「外付け式フード」とは、左図に例示するように、フード開口部が発散源から 離れている方式のフードをいうこと。
(5) 第一項第一号の「レシーバ式フード」とは、次の図に例示するように外付け式フードと類似し ているが、発散源からの熱上昇気流等による一定方向への気流に対して開口部がその気流を受ける 方向にあるものをいうこと。
(6) 第一項第二号は、局所排気装置のダクトの配置が不良のために、ダクトが長くなりすぎたり、 ベンドが多くなつたりして圧力損失(抵抗)が増大し、その結果、より大きな能力のフアンが必要と なること、または、稼働中に粉じんが堆積して著しく局所排気装置の能力が低下することがしばし ばあるので、装置の効果を期するために必要なダクトの構造について規定したものであること。 (7) 第一項第二号の「適当な箇所」としては、ベンドの部分または粉じんが堆積しやすい箇所があ ること。 (8) 第一項第二号の「そうじ口が設けられている等」の「等」には、ダクトを差込み式にして容易 に取りはずしすることができる構造にすることが含まれること。 (9) 第一項第三号は、フードから吸引した第二類物質のガス、蒸気または粉じんを含んだ空気がフ アンの羽根車を直接通過すると、これらが羽根車に付着し、排気効果の低下または羽根車の摩耗に よる破損が生ずるので、これを防止するために規定したものであること。 (10) 第一項第四号は、局所排気装置からの汚染空気が作業場内に排出されることを防ぐために規定 したものであること。 (11) 第一項第四号の「排出口」には、第八条、第九条等により除じん又は排ガス処理した後の排気 を排出する排出口が含まれること。 (12) 第二項は、局所排気装置の具備すべき能力について定めたものであるが、第二類物質の種類お よびそのガス、蒸気または粉じんの発散状態が多様であり、一律に制御風速等をもつて能力を示す 方式がとれないため、局所排気装置が、そのフードの周囲の所定位置において第二類物質のガス、 蒸気または粉じんの濃度を一作業直の時間中に平均して、常態として、それぞれ労働大臣が定める 値(「抑制濃度」という。)をこえないようにすることのできる能力のものであるべきことを規定し たものであること。 なお、この労働大臣が定める値は、昭和四十六年労働省告示第二十七号で示されたこと。 (13) 第二項の局所排気装置の能力の具体的判定方法等については、おつて示す予定であること。 六 第七条関係 (1) 第一項は、第四条第一項により設置した局所排気装置について、第二類物質の製造または取扱 いの作業に労働者が従事している間稼働させるべきことを規定したものであること。 また、第二項は、局所排気装置の構造および能力が適切であつても、例えば窓を開放したり、換 気扇を近接させたりすることによる気流の乱れによりフードの吸い込みを悪くし、その結果、装置 の効果を低下させることがあるので、このような周囲の環境変化による悪影響を防止するための必 要な措置を規定したものであること。 (2) 第二項の「バツフル」とは、邪魔板ともいい、発散源附近の吸込み気流を外部の気流等からの 影響からしや断するため設ける衝立等をいうこと。 (3) 第二項の「換気を妨害する気流を排除する等」の「等」には、風向板を設けて気流の方向を変 えること、開放された窓を閉じることが含まれること。 (4) 第二項の「有効に稼働させる」とは、労働省告示第二十七号に示す値を一作業直の時間中に平 均して、常態としてこえないように稼働させることをいうこと。 W 第三章関係 一 本章の趣旨等 (1) 本章は、第一類物質、第二類物質その他とくに問題がある物質について、これらの物質のガス、 蒸気または粉じんが局所排気装置、生産設備等から排出された場合の附近一帯の汚染または作業場 の再汚染、およびこれらの物質を含有する排液による有害なガス等の発生または地下水等の汚染等 による、労働者の障害を防止し、あわせて附近住民の障害の防止にも資するようそれぞれ有効な処 理装置等を附設すべきこと等を規定したものであり、その遵守によつて公害の防止にも寄与するこ とができるものであること。 (2) 本章第八条〜第十条は、排出される物質の性状に応じて、それぞれの処理装置の主処理方式等 を列挙し、その設置を規定したものであること。したがつて、今後の処理技術の進歩によりこれら の主処理方式以外の処理方式が確立された場合には、それがこれらの主処理方式と同等以上の性能 を有する限り、それによつてもさしつかえないものであること。 (3) 本章第八条〜第十条に規定する処理装置については、それぞれの排出される物質の形状、性質、 濃度又は量等を勘案して障害予防のために有効な性能をもつものであることが必要であるとともに、 公害防止の関係法令(条例を含む。)による排出基準が適用されるものにあつては、これらの基準に 合致する性能のものとすること。 (4) 本章でいう「処理装置」とは、排出される第一類物質、第二類物質等のガス、蒸気または粉じ んを除去し、もしくは無害化し、またはその他の有害性の少ない物質に変化させることができるも のをいい、単に稀釈のみを行なうようなものは、該当しないこと。 (5) 排ガス処理、排液処理および廃棄物処理については、当面、第二類物質およびその他の物質の うち、とくに労働衛生上問題があり、かつ技術的に有効な処理技術が開発されているものに限り規 制の対象としたものであり、今後処理技術の進歩等により順次規制の対象を追加するよう検討する 方針であること。 二 第八条関係 (1) 本条は化学物質等の含じん気体をそのまま大気中に放出すると、労働環境を汚染して労働者に 中毒、障害をおよぼすおそれがあるのみならず、ひいては公害をもたらすことになるので、その放 出源である局所排気装置のダクトまたは生産設備等の排気用スタツクについて有効な除じん方式の 除じん装置を設けること、およびそれを有効に維持稼働させることを規定したものであること。 (2) 本条の「粉じん」には、第一類物質の粉じんならびに第二類物質中の石綿、0−フタロジニトリ ル、カドミウム及びその化合物、クロム酸及びその塩、三酸化砒素、シアン化カリウム、シアン化 ナトリウム、水銀及びその無機化合物、ベリリウム及びその化合物、ペンタクロルフエノル及びそ のナトリウム塩、マンガン及びその化合物が該当すること。 (3) 第一項にいう除じん方式は、全体の除じん過程における主たる除じんの方式をいうものであり、 除じん方式の選択は、次の例のように行なうものであること。 イ 約五〇ミクロン以下の対象粉じんにつき、粒径分布(重量法による頻度分布)の図を作成する。 ロ イにより作成した粒径分布の曲線においてピークを示す点が横軸において、五ミクロン未満、 五ミクロン以上二〇ミクロン未満または二〇ミクロン以上のどこに位置するかをみて、該当する 粒径に対応する除じん方式を本項の表から求めるものとする。例えば、粒径分布が下図のとおり であつたとすれば、そのピークは五ミクロンと二〇ミクロンの間にあるからスクラバによる除じ ん方式、ろ過除じん方式または電気除じん方式のいずれかを選択すべきものである。
(4) 第一項の「ろ過除じん方式」とは、ろ層に含じん気体を通して、粉じんをろ過捕集する原理に よるものをいい、バグフイルタ(ろ布の袋)によるものとスクーリンフイルタ(ろ布の幕)によるもの とがあること。 (5) 第一項の「電気除じん方式」とは、高電圧の直流のコロナ放電を利用して、粉じんを荷電し、 電気的引力により捕集する原理によるものをいうこと。 (6) 第一項の「スクラバによる除じん方式」とは、水等の液体を噴射または起泡し、含じん気体中 の粉じんを加湿凝集させて捕集する原理によるものをいい、一般に湿式または洗浄式除じん方式と いわれているものであること。 (7) 第一項の「マルチサイクロンによる除じん方式」とは、二個以上のサイクロン(含じん気体を円 筒内で旋回させ、その遠心力で外方に分離される粉じんを落下させるもの)を並列に接続したもの であり、サイクロン系としては高性能を有するものであること。 サイクロンを二個または四個接続したものは、通常それぞれダブルサイクロン、テトラサイクロ ンといわれ、これらはマルチサイクロン方式のものに含まれるが、単体サイクロンは、これに含ま れないものであること。 (8) 第二項は、含じん濃度が高い場合または粒径の大きい粉じんが多い場合において、第一項の除 じん装置の効果を期待するためには、事前に含じん気体中の粉じんを一部除去しておく必要がある ため規定されたものであること。 (9) 第二項の「前置き除じん装置」には、重力沈降室、ルーバ等の慣性除じん装置、サイクロン等 があること。 (10) 第三項は、除じん装置について、捕集粉じんの取除き(ダスト抜き)、破損の修理、除じん効果 の確認等をしばしば行なう等によつて所定の性能を維持しながら稼働させることを規定したもので あること。 三 第九条関係 (1) 本条は、第二類物質のうちの弗化水素、硫化水素および硫酸ジメチルならびにアクロレインの ガス又は蒸気を含む排気について、それぞれ一定の主処理方式またはこれと同等以上の性能を有す る方式の処理装置を設置して処理すべきことを規定したものであること。 なお、一層有効な処理を期するためには、これらの方式の併用が望ましい場合があること。 (2) 第一項の「その他の設備」には、製造装置に併設してあるガスまたは蒸気の排気用のスタツク が含まれるものであること。 なお、アクロレインについては、当面アクロレインの製造またはこれを原・材料として使用する 化学設備の排気用スタツクの部分を対象とすること。 (3) 第一項の「吸収方式」とは、充填塔、段塔等を用い、吸収液によつてガスまたは蒸気を吸収処 理する方式をいうこと。 (4) 第一項の「直接燃焼方式」とは、高濃度の可燃性のガスの場合は、そのまま完全燃焼させ、低 濃度の可燃性のガスの場合は、燃料を加えまたは燃焼器の火炎をあてて完全燃焼させる方式をいう こと。 (5) 第一項の「酸化・還元方式」とは、必要な酸化剤または還元剤を用いて排ガス中の対象物質を 反応分離する方式をいうこと。 四 第十条関係 (1) 本条は製造工程または取扱い工程から排出される排液のうち、有害性の大きいものおよび排水 の流出経路において、他の物質と反応することにより有害なガス等を発生するおそれがあるものに ついて、それぞれ一定の主処理方式またはこれと同等以上の性能を有する方式の処理装置を設置し て処理すべきことを規定したものであること。したがつて、これらの排出口にできるだけ近い位置 において処理する必要があること。 (2) 第一項の「酸化・還元方式」とは、必要な酸化剤または還元剤を用いて排液中の対象物質を反 応分離する方式をいうこと。 (3) 第一項の「中和方式」とは、排液中の対象物質に適応した中和剤を用いて、排液を中和処理す る方式をいうこと。 (4) 第一項の「活性汚泥方式」とは、排液中の非沈殿性浮遊物及び溶解性物質を微生物のはたらき によつて、吸着、凝集および酸化を行なわせ、ガスおよび沈殿しやすい汚泥に変えてこの汚泥を分 離する方式をいうこと。 (5) 第一項の「凝集沈でん方式」とは、排液中の対象物質に適応した界面活性剤その他の凝集剤を 用いて、排液中の対象物質を凝集させて沈殿させ除去する方式をいうこと。 五 第十一条関係 (1) 本条は、アルキル水銀化合物の製造装置、収納容器等の清掃、用後処理等に際し、アルキル水 銀化合物を含有する残さいスラツジを廃棄する場合には、分解その他の処理により除毒した後でな ければ、廃棄してはならないことを規定したものであること。 (2) 本条の「除毒」の方法には、加熱、酸化等により分解する方法があること。 六 第十二条関係 (1) 本条は、除じん装置、排ガス処理装置および排液処理装置について、新設時、変更時および定 期に、その方式が処理対象物質の除去に適していること、処理対象物質を十分処理するに必要な量 の処理剤等が確保されていること、これらの装置の材料が腐蝕しにくいものであり、かつ腐蝕によ る異常がないこと等処理効果を確保するため必要な事項の検査をし、あわせてその結果を記録すべ きことを規定したものであること。 (2) 本条の検査の結果、除じん装置等に異常を認めた場合は、補修、用後処理の代替措置等を講じ ない限り、第八条、第九条および第十条の規定により除じん装置等の附設を必要とする装置につい ては、稼働させてはならないものであること。 (3) 第一項の「検査」には、外観検査、試運転のほか、内部についての清掃、点検、修理または廃 棄物の取出し、処理剤の取替え等の措置が含まれること。 (4) 第一項の「異常を認めた場合」とは、物理的異常が認められる場合のほか、性能の低下等の異 常が認められる場合が含まれること。 (5) 第一項の「有効に稼働させるため必要な事項について検査する」には、除じん効果を確保する ための粉じんの測定および排液処理効果を確保するための排液中の対象物質の含有濃度の測定が必 要であること。 (6) 第一項の「その他必要な措置」とは、粉じん装置等の性能が低下した場合における排気または 排液の量の調整、代替装置の使用等をいうこと。 (7) 第二項の「記録」とは、少なくとも次の事項について記録することをいい、その記録は、労働 基準法第百九条の規定により三年以上保存することが必要であるが、その後もできるだけ長期間保 存するよう指導すること。 イ 検査年月日 ロ 検査担当者氏名 ハ 検査の結果、異常があつた部分およびその程度 ニ 補修を行なつた場合の性能等の状況 ホ 使用開始直後に実施した排出処理後のガス、蒸気または粉じんの濃度 ヘ その他とくに必要な事項 X 第四章関係 一 本章の趣旨等 本章は、第三類物質の製造及び取扱いに係る設備、作業場の床面等についての構造その他施設上の 措置、維持管理上の措置および取扱い上の措置に伴う漏えい事故による急性中毒等の障害の予防、並 びに第一類物質、第二類物質および第三類物質に係る設備の修理作業の方法、これらの物質に係る容 器および包装の管理について定めたものであること。 なお、本章の規定中特定化学設備に関するものは、労働安全衛生規則第二編第九章「爆発、火災等 の防止」中の相当する規定とほぼ同様の趣旨であること。 二 第十三条関係 (1) 「特定化学設備」とは、反応器、蒸留塔、吸収塔、抽出器、混合器、沈でん分離器、熱交換器、 計量タンク、貯蔵タンク等の容器本体ならびにこれらの容器本体に附属するバルブおよびコツク、 これらの容器本体の内部に設けられた管、たな、ジヤケツト等の部分をいうこと。 (2) 「移動式のもの」の主なものとしては、タンク自動車、タンク車、ボンベ、ドラムかんおよび ガロンかんがあること。 (3) 本条の「不浸透性の材料」には、コンクリート、陶製タイル、合成樹脂の床材、鉄板等がある こと。 三 第十四条関係 (1) 本条の「特定化学設備又はその配管のうち第三類物質が接触する部分」とは、特定化学設備ま たはその配管の構成部分であつて、通常の使用に伴つて第三類物質が気体、液体または個体の状態 で接触する部分をいうこと。 (2) 本条の「その配管」には、特定化学設備と特定化学設備その他の設備との間を連絡するための 管または特定化学設備に接続している排出用の管をいい、ホースはこれに含まれないこと。 (3) 本条の「著しい腐食による当該物質の漏えい」とは、第三類物質が及ぼす腐食による損傷によ つて、損傷部分から第三類物質が漏えいすること、または、その損傷部分から空気、水等が侵入し 内部で異常反応等が発生し、これによる損壊等によつて第三類物質が大気中に漏えいすることをい うこと。 (4) 本条の「濃度等」の「等」には、圧力および流速が含まれること。 (5) 本条の「内張りを施す」とは、不銹鋼、チタン、ガラス、陶磁器、ゴム、合成樹脂等腐食しに くい材料を用いてライニングすることをいうこと。 (6) 本条の「内張りを施す等」の「等」には、防食塗料の塗布、酸化皮膜による処理、電気防食に よる処理等のほか、構成部分の耐用期間を適切に定め、その期間ごとにその部分を確実に取り替え ることが含まれること。 四 第十五条関係 (1) 本条の「コツク等」の「等」には、管、栓、点検孔およびそうじ孔が含まれること。 (2) 本条の「接合部」とは、つき合わせ、重ね合わせ、かん合等の方法により接合されている部分 をいい、溶接により接合されている部分は、これに含まれないこと。 (3) 本条の「パツキンを使用し」とは、接合部の形状に応じた適切な形状および寸法で、かつ、使 用される第三類物質の種類および状態に応じて必要な化学的又は物理的性質(耐水性、耐熱性、耐 酸性、耐アルカリ性、耐圧性等)を有する材料のパツキンを使用することをいうこと。 (4) 本条の「接合面を相互に密接させる」とは、接合面の形状、寸法、仕上げの程度等を適切にす ることにより、第三類物質が漏えいしないよう接合させることをいうこと。 (5) 本条の「接合面を相互に密接させる等」の「等」には、液体シーリングまたは漏れ止め用充て ん物の使用が含まれること。 五 第十六条関係 (1) 本条の「手動式のもの」とは、作業者が直接人力によつてハンドル、レバー等を操作し開閉を 行なうものをいい、自動制御、押ボタン等の方式のものは、これに含まれないこと。 (2) 本条の「誤操作」とは、開閉操作の際にその操作方向を誤り、原料または材料の送給の過剰、 不足等により異常な反応、突沸等の漏えい事故の原因を生ずることをいう。 (3) 本条の「開閉の方向を表示し」とは、「開」および「閉」について矢印、文字等で表示するこ とで足り、開閉の度合についての表示をする必要はないこと。 なお、二箇以上のバルブまたはコツクを同一の操作場所で操作する場合には、誤操作による漏え い事故の防止が可能な範囲ごとに、操作者が見やすい位置にその「開閉の方向」を一括して掲示し てもさしつかえないこと。 六 第十七条関係 (1) 本条の「緊急の用に供するもの」には、原料、材料等の緊急放出または緊急しや断を行なうた めのバルブまたはコツクのほか、非常用の不活性ガス、冷却水、除毒用剤等を送給するためのバル ブまたはコツクが含まれること。 (2) 本条の「円滑に作動できる状態に保持する」とは、緊急の際に、容易に、かつ、確実に開閉の 操作ができるよう、バルブまたはコツクについて破損、変形、さびつき等がないようにしておくこ とをいうこと。 七 第十八条関係 (1) 本条の「原料」には、第三類物質を製造するための原料として用いられる物質のほか、製造さ れた第三類物質を原料として用いる場合の第三類物質が含まれること。 (2) 本条の「材料」とは、反応の促進、加熱、冷却、不活性化等のために用いられる触媒、空気、 水蒸気、水、ガス等をいうこと。 (3) 本条の「労働者が見やすい位置」とは、原料または材料の送給操作に際して労働者が容易に確 認できる箇所をいい、具体的にはバルブ、コツク、スイツチ等の操作部分またはその周辺の配管、 壁、柱等の箇所がこれに含まれること。 (4) 本条の「その他必要な事項」とは、その操作順序、開閉の度合等を誤ることにより漏えい事故 を生ずるバルブ、コツク等についての操作順序開閉の度合等をいうこと。 (5) 本条の「表示」については、略称、記号または色彩により表示してさしつかえないこと。 八 第十九条関係 (1) 本条は、特定化学設備を設置する屋内作業場およびその作業場がある建築物について、第三類 物質の漏えい事故に備え、必要な避難用の出入口、直通階段等を備えつけるべきことを規定したも のであること。 (2) 第三項ただし書き中の「避難用タラツプ等」の「等」には、避難橋、救助袋等が含まれるもの であること。 九 第二十条関係 (1) 本条は、特定化学設備を設置する作業場のほか、第三類物質を一定量以上取り扱う作業場につ いて、漏えい事故の発生に備えて必要な警報用の器具等および必要な除害用の薬剤等の設置を規定 したものであること。 (2) 本条の「特定化学設備を設置する作業場以外の作業場」には、タンク自動車、タンク車、ボン ベ、ドラムかん、ガロンかん等の移動式容器に第三類物質を移注する作業、第三類物質の入つたこ れらの移動式容器の運搬、積みおろし、貯蔵等を行なう作業、第三類物質の入つたこれらの移動式 容器を置いて第三類物質を使用する作業等を行なう場所があること。 (3) 本条の「合計百リツトル(気体である第三類物質にあつては、その容積一立方メートルを二リツ トルとみなす。)以上」とは、その作業場における第三類物質の最大停滞量が、十五℃、一気圧に おいて、液状のものでは一〇〇リツトル以上であり、気体状のものでは五〇立方メートル以上であ ることの意であること。 なお、これらのうち、液化状態にあるアンモニア、塩素およびホスゲンについては、次により換 算して気体としての量を算定すること。 V=C・G この場合 V:一五℃、一気圧におけるガスの量(単位kg) C:換算係数で、アンモニアでは一・八五、塩素およびホスゲンでは〇・八五とする。 G:液化状態における質量(単位kg) したがつて、液化状態のアンモニアでは二七・五kg、塩素およびホスゲンでは五八・八kgが気体 としての五〇m3に相当すること。 (4) 第一項の「気体である第三類物質」とは、アンモニア、塩素、ホスゲン、一酸化炭素、シアン 化水素、二酸化いおう、弗化水素および硫化水素をいうこと。 (5) 本条の「警報用の器具その他の設備」とは、自動警報装置、非常ベル装置、拡声装置、モータ サイレン、ハンドサイレン、警鐘、振鈴等をいうこと。 (6) 本条の「除害に必要な薬剤又は器具その他の設備」とは、それぞれの第三類物質の種類、性状、 量等に応じて、稀釈、反応、洗じよう、消火等によりその害作用を除去することができる薬液、圧 力水、消火剤等およびこれらを収める器具または設備をいうこと。 十 第二十一条関係 (1) 本条の「附属設備」とは、特定化学設備以外の設備であつて、特定化学設備に附設されたもの をいい、その主なものとしては、動力装置、圧縮装置、給水装置、計測装置、安全装置、除害のた めの装置等があること。 (2) 本条の「要領」については、もつぱら障害予防上必要な事項の要領であり、口頭により指示す れば足りる事項については、必らずしも要領に関する書面を作成する必要がないこと。 (3) 第一号の「バルブ、コツク等」の「等」には、ダンパが含まれること。 (4) 第一号の「製品等」の「等」には、残渣、廃棄物等が含まれること。 (5) 第一号については、おおむね、運転開始の場合、運転停止の場合その他運転中のとくに必要な 場合におけるバルブ、コツク等の操作に関し、開閉の時期、順序および度合ならびに送給時間を定 めること。 (6) 第二号の「冷却装置」には、凝縮器(コンデンサ)が含まれること。 (7) 第二号については、おおむね、運転開始の場合、運転停止の場合その他運転中の特に必要な場 合におけるそれぞれの装置の操作に関し、操作時期、順序および運転状態(撹拌装置の撹拌軸、撹 拌翼等の作動状態等、冷却装置の冷媒の温度、量等の状態および圧縮装置の吸入圧力、吐出温度等 の状態)の適正保持に必要な要領を定めること。 (8) 第三号の「その他の計測装置」には、流量計、液面計、容量計のほか温度、圧力、流量、液面、 容量、成分等を自動的に記録する装置が含まれること。 (9) 第三号については、おおむね、監視の時期および回数ならびに監視に伴う記録の要領を定める こと。 (10) 第四号の「これに代わる安全装置」とは、破裂板、緊急しや断装置、緊急放出装置、リリーフ バルブ、リリーフハツチ等であつて、特定化学設備またはその附属設備の内部を適切な状態に保つ ための装置をいうこと。 (11) 第四号については、おおむね、運転開始時および運転中の必要な場合における安全装置の調整 に関し、調整の時期および回数ならびに作動テスト等の要領を定めること。 (12) 第五号については、おおむね、点検を行なう箇所、時期および回数ならびに点検に伴う記録の 要領を定めること。 (13) 第六号の「試料の採取」とは、分析、試験等のために内容物を取り出すいわゆるサンプリング をいうこと。 (14) 第六号については、おおむね、試料の採取についての時期および作業方法を定めること。 (15) 第七号の「異常な事態」とは、第三類物質の漏えい、電気冷却水、原料、燃料、圧縮ガス等の 供給設備の故障、温度、圧力等の異常な変動等により漏えい事故を生ずるおそれがある状態をいう こと。 (16) 第七号については、おおむね、緊急調整または緊急停止を必要とする場合における原料、材料、 不活性ガス等の供給装置、電源装置、動力装置等の運転操作の時期および順序、関連部署への緊急 連絡ならびに漏えい事故防止のための要員の配置の要領を定めること。 (17) 第八号については、運転開始の場合および運転停止の場合における関係設備相互間の連絡およ び調整の要領等を定めること。 十一 第二十二条関係 (1) 本条は、第一類物質、第二類物質および第三類物質の製造または取扱いに係る設備についての 内部修理等の作業における障害を予防するため、作業の現場指揮、作業開始前および作業中におけ る換気、測定、保護具、器具の備付け等必要な装置について規定したものであること。 (2) 本条の「清掃等」の「等」には、塗装、解体および内部検査が含まれること。 (3) 第二号は、第一類物質等を送給するための配管についての措置を規定したものであるが、第一 類物質等以外の中毒性または腐食性の物、引火性の油類、高温の水蒸気、熱水等のための配管につ いても、これに準じて流入の防止措置を講ずることが望ましいこと。 (4) 第三号については、施錠、表示または監視人の配置のいずれかの措置を講ずれば足りること。 (5) 第四号の「開口部」には、入口、検査孔、製品取出し口、ダンパ等があること。 (6) 第五号の「十分に換気する」とは、タンクの内等作業を行なう設備の内部の容積の三倍以上の 量の新鮮な空気を送気し、かつ、その作業中も継続して行なうべきものであること。 (7) 第六号の「測定」とは、検知管、粉じん計など簡易に気中濃度を測ることができる器具を用い て濃度を測定することをいうこと。 (8) 第六号の「その他の方法」には、臭気、色、石けんの泡の利用または附着状態により判別する 方法があること。 (9) 第六号の「第一類物質等による障害を受けるおそれがないこと」とは、第一類物質については、 それが気中に発散していないこと、第二類物質および第三類物質については、その気中濃度が労働 省告示第二十七号に定めのある物質についてはその値、同告示に定めのないものについては、日本 産業衛生協会で定める「許容濃度」の値(フエノールについては、五ppmまたは一九mg/m3)をそれぞ れこえていないことをいうこと。 (10) 第七号の「器具その他の設備」とは、命綱、巻上げ可能な吊り足場、はしご等をいうこと。 十二 第二十三条関係 (1) 第一項の「はじめて使用する場合」とは、設備を新設して最初に使用する場合、および既存の 設備を特定化学設備またはその附属設備に用途変更して最初に使用する場合をいうこと。 (2) 本条の「二年をこえない一定の期間ごと」の検査については、本条の施行の日(昭和四十六年五 月一日)において二年以上使用されており、過去二年間に本条第一項各号に列記する事項の検査が されていないものについては可及的速やかに、その他のものについては同日前の検査(同上)以降の 使用期間が二年に達する日までに、それぞれ行なうよう指導すること。 (3) 第一号の「設備の損壊の原因となるおそれがある物」とは、特定化学設備またはその附属設備 の使用中に、異常な反応、へいそく等により設備が損壊し、漏えい事故の原因となる油類、水、金 属片、さび、ぼろ等の異物をいうこと。 (4) 第三号の「コツク等」とは、第十五条の「コツク等」と同意であること。 (5) 第三号の「状態」には、接合部についてのすり合わせ不良、摩耗、変形、ゆるみ、パツキンの 脱落、締付けボルトの欠損等の有無の状態のほか、バルブおよびコツクについては、その作動の良 否の状態が含まれること。 (6) 第六号の「これに代わる装置」とは、電動式以外の動力発生装置をいい、その主なものとして は、スチームタービンおよび内燃機関があること。 (7) 第六号の「機能」とは、出力、切替時限等についての必要な定格をいい、検査については、無 負荷の状態で行なつてさしつかえないこと。 (8) 第七号については、緊急調整または緊急停止を必要とする場合における原料、材料、不活性ガ ス等の供給装置、逆流等の防止装置、緊急警報装置およびパイロツトランプ等の運転指示装置の状 態を検査すること。 (9) 第二項の「用途の変更」とは、特定化学設備を他の目的で使用する特定化学設備に変更して使 用すること(転用)をいい、特定化学設備またはその附属設備以外の用途に変更する場合は、これに 含まれないこと。 十三 第二十四条関係 (1) 本条は特定化学設備その他の設備からの第三類物質の漏えい事故が発生した場合において、労 働者を危険区域から退避させるとともに危険な状態がなくなるまでの間関係者以外の者をその区域 に立ち入らせないよう措置し、その旨の表示を行なうべきことを規定したものであること。 (2) 本条の「作業場等」の「等」とは、作業場以外の区域であつて、第三類物質が漏えいした場合 にこれにばく露されるおれそがある区域をいうこと。 (3) 第二項の「関係者」とは、被害者の救出、緊急時の物品等の持ち出し汚染除去または修理等の 作業のため、やむをえず事故現場内などに立ち入る者をいうこと。 十四 第二十五条関係 (1) 本条は、第一類物質または第二類物質の製造または取扱いを行なう作業場、特定化学設備を設 置する作業場または一定量以上第三類物質を移動容器等で取り扱う作業場について、関係者以外の 者がみだりに立ち入らないよう措置し、その旨を表示すべきことを規定したものであること。 (2) 第二号の「第三類物質を合計一〇〇リツトル以上」とは、第二十条関係のそれと同意であるこ と。 十五 第二十六条関係 (1) 本条は、第一類物質、第二類物質または第三類物質の運搬または貯蔵の場合における堅固な容 器または確実な包装の使用およびこれらの容器、包装への必要な表示、ならびにこれらの物質また はその空容器についての保管上の措置等について規定したものであること。 (2) 第一項の「こぼれる等」の「等」には、しみ出すことおよび発じんすることがあること。 (3) 第一項の措置は、マンガン原鉱石、カドミウムを含む原鉱石、ベリリウムを含む原鉱石、素材 としての石綿等のように塊状であつて、そのままの状態では発じんのおそれがないものについては、 適用されない趣旨であること。 (4) 第二項の「名称」については、化学名等これらを取り扱う関係労働者が容易に判るものであれ ば、略称、場合によつては記号でもさしつかえないこと。 (5) 第二項の「取扱い上の注意事項」については、例えば、その物質を口にしないこと、その物質 に触れないこと、保護具を着用すべきこと、みだりに他のものと混合しないこと、みだりに加湿、 加水しないこと、みだりに火気に接近しないこと等、それぞれの物質の取扱いに際し障害を予防す るため、とくに留意すべき事項を具体的に表示する必要があること。 十六 第二十七条関係 (1) 本条は、特定化学設備を設置する作業場について、第三類物質の漏えい事故の発生時に備え、 被災者の救護に必要な組織を設け、その組織に関して、定期またはずい時の訓練、必要な装備、機 器等の整備等に努めるべきことを規定したものであること。 (2) 本条の「訓練等」の「等」には、所要の装備、機器の整備、緊急時の要員の招集方法の確立、 医療機関および関係行政機関への連絡その他救護組織の活動に必要な自主規程の作成等があること。 Y 第五章関係 一 本章の趣旨等 本章は、第一類物質または第二類物質の製造事業において、製造作業工程について一定の資格を有 する者を作業主任者として選任し、その者にこれらの物質による障害を予防するために必要な職務を 遂行させること、ならびにこれらの物質の製造および取扱いを行なう作業場について定期的な環境測 定とその記録、附属の休憩室および洗じよう設備の設置について規定したものであること。 二 第二十八条関係 (1) 本条は、第一類物質または第二類物質の製造作業場について、衛生管理者の免許を有する者ま たは特定化学物質等作業主任者講習の修了者を作業主任者として選任し、その者に障害予防をはか るための現場作業指揮、関係装置の月例点検および保護具の使用状況の監視を行なわせることを規 定したものであること。 (2) 本条は、第一類物質または第二類物質を製造する作業場について適用されるものであり、これ らの物質を消費し、貯蔵し、積みおろしする等の作業のみが行なわれる作業場については、適用さ れないこと。 (3) 第一項の「作業場ごとに特定化学物質等作業主任者を選任し」については、必ずしも単位作業 室ごとに選任を要するものでなく、同項の各号に掲げる事項の遂行が可能な範囲ごとに選任し配置 すれば足りること。 (4) 第一号の「作業の方法」については、もつぱら障害予防に必要な事項に限るものであり、例え ば、関係装置の起動、停止、監視、調整等の要領、対象物質の送給、取出し、サンプリング等の方 法、対象物質についての洗じよう、そうじ等の汚染除去および廃棄処理の方法、その他相互間の連 絡、合図の方法等があること。 (5) 第二号の「その他労働者が障害を受けることを予防するための装置」には、全体換気装置、密 閉式の構造の製造装置、安全弁またはこれに代わる装置等があること。 (6) 第二号の「点検する」とは、関係装置について、第三条、第四条および第六条から第一〇条ま でに規定する障害予防の措置に係る事項を中心に点検することをいい、その主な内容としては、装 置の主要部分の損傷、脱落、腐食、異常音等の異常の有無、対象物質の漏えいの有無、排液処理用 の調整剤の異常の有無、局所排気装置その他の排出処理のための装置等の効果の確認等があること。 (7) 第二項の「選任」にあたつては、その者が本条第一項各号に掲げる事項を常時遂行することが できる立場にある者を選任することが必要であること。 三 第二十九条関係 (1) 本条は、第一類物質または第二類物質の製造または取扱いが常時行なわれる屋内作業場につい て、その労働環境内のこれらの物質のガス、蒸気または粉じんの気中濃度を定期的に測定すること、 およびその測定結果についての記録とその保存について規定したものであること。 なお、本条の測定は、労働環境内におけるこれらのガス、蒸気または粉じんの発散を抑制するた めの施設面の改善措置等を進める上でも極めて重要な意義をもつものであること。 (2) 本条の「測定」の具体的実施方法等については、おつて示す予定の「労働環境測定指針(仮称)」 に掲げる方法またはより精密な方法によること。 (3) 第四号の「測定条件」とは、使用した測定器具の種類、測定時の気温、湿度、風速および風向、 局所排気装置等の稼働状況、製造装置の稼働状況、作業の実施状況等測定結果に影響を与える諸条 件をいうこと。 四 第三十条関係 (1) 本条は、第一類物質または第二類物質の製造または取扱いを常時行なう場合に、その作業場所 以外の場所に休憩室を設け、その休憩室についてこれらの物質の粉じんによる汚染を予防するため の措置を講ずべきことを規定したものであること。 (2) 第一項の「作業場所以外の場所」には、作業場所のある建家の内部の場所であつて作業場所と 確実に区画されている場所を含むこと。 (3) 第二項の「粉状である場合」とは、第一類物質の場合および第二類物質のうち、石綿、〇−フ タロジニトリル、カドミウムおよびその化合物、クロム酸およびその塩、三酸化砒素、シアン化カ リウム、シアン化ナトリウム、水銀の無機化合物、ベリリウムおよびその化合物、ペンタクロルフ エノールおよびそのナトリウム塩、マンガンおよびその化合物であつて粉状のものの場合をいうこ と。 (4) 第二項第三号の「容易にそうじできる構造」とは水が流れやすいよう傾斜をつけ、溝を設け、 かつ平滑にした不浸透性の構造等をいうこと。 (5) 第三項の「作業衣等」の「等」には、作業手袋、作業帽、作業靴があること。 五 第三十一条関係 (1) 本条は、第一類物質または第二類物質の製造または取扱いの作業を労働者に行なわせる場合に は、洗眼、洗身その他必要な洗じよう設備等を設けるべきことを規定したものであること。 (2) 本条の「洗身の設備」とは、シヤワー、入浴設備等の体の汚染した部分を洗うための設備をい うこと。 (3) 本条の「更衣設備」とは、更衣用のロツカまたは更衣室をいい、汚染を拡げないため作業用の 衣服等と通勤用の衣服等とを区別しておくことができるものであること。 Z 第六章関係 一 本章の趣旨等 (1) 本章は、本規則において第一類物質、第二類物質および第三類物質のガス、蒸気または粉じん による障害の防止については、まず施設上の措置によることとしているが、作業の実態によりかか る措置のみではなお不十分な場合、臨時の作業の場合、異常事態発生の場合等もあるので、これら の場合に対処するために呼吸用保護具、保護衣等の備え付けを規定したものであること。 (2) 本章の規定により備え付けるべき保護具等の種類は、それぞれの対象物質の種類および業務の 態様に応じたものであること。 二 第三十二条関係 (1) 本条は、第一類物質等の製造または取扱いを行なう作業場における呼吸用保護具の備え付けに ついて規定したものであること。 (2) 本条の「呼吸用保護具」とは、送気マスク等給気式呼吸用保護具(簡易救命器及び酸素発生式自 己救命器を除く。)、防毒マスク、防じんマスク並びに面体形及びルーズフィット形の電動ファン 付き呼吸用保護具をいい、これらのうち、防じんマスク及び防毒マスクであって、ハロゲンガス用、 有機ガス用、一酸化炭素用、アンモニア用、亜硫酸ガス用及び亜硫酸・いおう用のもの並びに電動 ファン付き呼吸用保護具については、国家検定に合格したものであること。 三 第三十三条関係 (1) 本条は、第一類物質等のうち、皮膚障害または経皮侵入による障害をおこすものの取扱い等の 場合における保護衣等の備え付けについて規定したものであること。 (2) 本条の「皮膚に障害を与え」とは、硝酸、硫酸、エチレンイミン、フエノール、ペンタクロル フエノールのようなものにより、皮膚に腐食性の障害を受けることをいうこと。 (3) 本条の「皮膚から吸収されることにより障害をおこす」とは、ベンジン、P−ニトロクロルベン ゼン、アルキル水銀、エチレンイミン、塩素化ビフエニール、シアン化水素、水銀、フエノール、 ペンタクロルフエノール、硫酸ジメチルのようなものが皮膚から体内に吸収されることにより中毒 等の障害を受けることをいうこと。 (4) 本条の「これらの周辺で行なわれる作業」とは、第一類物質等を直接取扱つてはいないが、こ れらの物質の飛散等により汚染されるおそれがある場所における作業をいうこと。 (5) 本条の「不浸透性の保護衣、保護手袋及び保護長靴」については、保護衣についての日本工業 規格(JISS九〇〇一)、保護手袋についての日本工業規格(JISS九〇〇二)および保護長靴について の日本工業規格(JISS九〇〇三)があることに留意すること。 (6) 本条の「塗布剤」とは、それぞれの物質に応じて効果のある保護クリームをいうこと。 四 第三十四条関係 (1) 本条は、前二条により備え付ける保護具等の数並びにその効力及び清潔の保持について規定し たものであること。 (2) 本条の「有効」とは、各部の破損、脱落、弛み、腐食、湿気の付着、吸収かんの破過限度の超 過その他耐用年数の超過等保護具の性能に支障をきたしている状態がないことをいうこと。 [ 第七章関係 一 本章の趣旨等 本章は、第一類物質または第二類物質の製造または取扱いの作業に常時従事する労働者に対し、雇 入れ時、配置換えして就業させる直前およびその後の定期において、一定項目の検査または検診によ る健康診断を行なうこと、過去においてその事業場で、β−ナフチルアミンその他第一類物質中の一 定の物質の取扱い作業に従事した在職労働者に対し定期に一定項目の検査または検診による健康診断 を行なうこと、およびこれらの健康診断に伴う必要な手続きに関すること、ならびに第三類物質の漏 えい事故による被災者に対し緊急の診断を受けさせることについて規定したものであること。 二 第三十五条関係 (1) 第一項前段の「第一類物質又は第二類物質(石綿を除く。)を製造し、又は取り扱う作業」の主 なものとしては、昭和三十一年五月二十八日付け基発第三〇八号「特殊健康診断指導指針について」 ほか、関係通達で現在までに示した作業またはこれに類似する作業であつて、これらの物質に係る ものが含まれること。なお、これについては整理の上、おつて示す予定であること。 (2) 第一項の「石綿を除く。」は、石綿は、じん肺法の適用があるために除外したものであること。 (3) 第一項の「オーラミン又はマゼンタを製造する事業場以外の事業場においてこれらの物質を取 り扱う作業を除く。」とは、オーラミンまたはマゼンタを製造する事業場以外の事業場(例えば、 オーラミンまたはマゼンタに関し消費、運搬、倉庫保管等のみを業とする事業場)におけるオーラ ミンまたはマゼンタの取扱い作業は含まれないことをいうこと。 (4) 第一項の「当該作業に配置替えする際」とは、その事業場において、他の作業から本条に規定 する受診対象作業に配置転換する直前においての意であること。 (5) 第一項後段の「労働大臣が指定する物」は、昭和四十六年労働省告示第二十八号で示されたこ と。 (6) 第一項後段の「常時使用させたことのある労働者で現に使用しているもの」とは、その事業場 において過去に常時従事させた労働者であつてその事業場に在職している者をいい、退職者までを 含む趣旨ではないこと。 (7) 第二項に関しては、近く告示される予定であること。 (8) 第三項の「健康診断個人票(様式第二号)」の裏面の「業務の経歴」欄には、第一類物質および 第二類物質に係る経歴のほか、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、電離放射線障害防止規則 および四アルキル鉛中毒予防規則のそれぞれに掲げる業務に係る経歴についても該当があれば明記 すること。 (9) 第三項の「保存」については、労働基準法第百九条の規定により三年間保存しなければならな いが、本条の対象物質中には、例えば第一類物質にみられるように障害が長期にわたる期間後に発 現する傾向の物があるので、その後もできる限り長期間にわたつて保存するよう指導すること。 (10) 第三項の「健康診断個人票」については、様式第二号に掲げる項目が充足されていれば、これ と異式のものであつてもさしつかえないこと。 (11) 第四項の「健康診断結果報告書」は、本条により定期的に行なつた健康診断の結果について、 所轄労働基準監督署長に遅滞なく(健康診断完了後おおむね一カ月以内に)提出するものとすること。 なお、その報告書は、労働者数のいかんをとわず本条第一項により健康診断を行なつたすべての 事業が提出する必要があること。 (12) 第一項の健康診断の結果、障害または異常が認められる労働者については、労働基準法第五十 二条第四項に基づき、その労働者の健康の保持に必要な措置を講ずべきことはいうまでもないこと。 三 第三十六条関係 本条については、それぞれの対象物質の種類、性状、汚染または吸入の程度等に応じ、急性中毒、 皮膚障害等について診断を行なうこと。 なお、救援活動その他により関係労働者以外の者が受ける障害も予想されるので、第二十七条の救 護組織の活動の一環としても、これらの者に対する緊急診断を行なうよう指導すること。 \ 第八章および附則関係 1 第八章は、第二十八条に係る特定化学物質等作業主任者の講習についての内容および諸手続きを規 定したものである。なお、本章第四十二条の規定に基づき、昭和四十六年労働省告示第二十九号(特 定化学物質等作業主任者講習規程)が告示されたが、その運用上留意すべき事項は、おつて示すもの とすること。 2 本規則の施行は、次のとおりであること。 (1) 第三条(密閉式の構造等)、第四条(局所排気装置の設置等)、第五条(適用除外)、第六条(局所排 気装置の要件)、第七条(局所排気装置の稼働)、第八条(除じん)、第九条(排ガス処理)、第十条(排 液処理)、第十二条(除じん装置等の検査)、第十九条(出入口)および第二十八条(特定化学物質等作 業主任者の選任)については、昭和四十七年五月一日 (2) 第十一条(残さい物処理)、第二十九条(環境測定)、第三十条(休憩室)および第三十五条(健康診 断)については、昭和四十六年十一月一日 (3) 第十三条(床)および第二十一条(特定化学設備等の作業要領)については、昭和四十六年八月一 日 (4) その他の規定については、昭和四十六年五月一日