メーカー段階における機械等の安全衛生の確保について |
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機械等の安全衛生の確保については、昭和48年2月15日付け基発第65号をもって指示したところである
が、同通達に基づき、本省においては、昭和48年3月22日に別記中央メーカー団体の会長を招集して標記
に関する打合会を開催し、別紙のとおり要望したので、了知の上、関係メーカーに対する監督指導の実施
にあたっては、本要望の趣旨が徹底するよう十分配意されたい。
別 記
日本工作機械工業会
日本小型工作機械協会
日本鍛圧機械工業会
(社)仮設工業会
研削砥石工業会
(社)全国土木機械工業会
(社)日本電気工業会
(社)日本産業機械工業会
(社)日本繊維機械協会
(社)日本クレーン協会
(社)日本ボイラ協会
(社)ボイラ、クレーン安全協会
日本産業車両協会
全日本印刷製本機械工業会
(社)日本建設機械化協会
日本食糧機械工業会
日本鋳造機械工業会
日本放射線機器工業会
別紙
メーカー段階等における機械等の安全衛生の確保について
昭48.3.10 基発第118号
最近10年間における機械等による労働災害の発生状況の推移を見ると、
(1) 死亡災害は、逐年増加の傾向にあり、10年前に比し約2割5分増加し、とくに機械等の大型化、高
速化等により一般動力機械災害が増加していること。
(2) 負傷災害は、負傷総件数中に占める比率が10年前の約2割から約3割に増加し、とくに作業の機械
化に伴いクレーン災害や運搬機械災害が増加していること等の問題点が指摘されます。
これらの災害の中には、ユーザーにおける機械等の使用方法の不良や作業者の不安全行動に基づくも
のもありますが、機械等の構造上の欠陥に基づく災害が少なくないことは、遺憾に堪えないところであ
ります。
労働省におきましては、昭和45年9月に労働安全衛生規則を一部改正して機械関係の規定を整備す
るとともに、機械等の安全化、欠陥機械の排除等を安全衛生行政の重点の一つに取り上げてこれを推進
してきたところであり、とくに昨年10月から施行された労働安全衛生法に基づき、製造の許可、譲渡
等の制限、検定等について、機械に関する製造、流通上の規則を強化拡充したところであります。
ついては、この際、機械等の使用による労働災害の発生を防止するため、下記の事項について検討さ
れ、必要な改善措置をとられるよう貴会傘下の会員事業場に徹底されるとともに、所要の指導援助措置
をとられるよう要望します。
記
1 動力により駆動される機械等については、作動部分上の突起物、動力伝導部分または調速部分を完全
に防護したものでなければ、販売し、または展示してはならないこと。(労働安全衛生法第43条、安衛
則第25条)
2 規格または安全装置の具備が定められている機械等については、規格に適合したものまたは安全装置
を具備したものでなければ販売してはならないこと(労働安全衛生法第42条、同法施行令第13条)。
このため、規格の規制内容を検討し、必要な場合は設計変更、部品の取り替え等の措置を講ずること。
3 ユーザーが機械等の設置の際に設けなければならない次の安全装置等については、製造段階において
設けるようにされたいこと。
(1) 機械等の動力しゃ断装置(安衛則第103条)
(2) 工作機械の切削屑処理装置、覆い等(安衛則第106条)
(3) 紙、布、ワイヤーロープ等の巻取りロール等の覆い等(安衛則第109条)
(4) 金属加工用等の帯のこ盤の歯およびのこ車の覆い等(安衛則第114条)
(5) 金属加工用等の丸のこ盤の歯の接触予防装置(安衛則第115条)
(6) バフ盤の覆い(安衛則第121条)
(7) 木材加工用帯のこ盤のスパイクつき送りローラ等の接触予防装置、覆いまたは急停止装置(安衛
則第125条)
(8) 面取り盤の刃の接触予防装置(安衛則第127条)
(9) 遠心機械のふた(安衛則第138条)
(10) 粉砕機および混合機のふた等(安衛則第142条)
(11) 紙、布等を通すロール機の囲い等(安衛則第144条)
(12) 織機のシャットルガード(安衛則第145条)
(13) 伸せん機の引抜きブロックおよびより線機のゲージの覆い(安衛則第146条)
(14) 射出成形機、鋳型造形機、型打ち機等加圧機械の安全装置(安衛則第147条)
(15) 車両系建設機械のヘッドガード(安衛則第153条)
(16) 車両系建設機械の安全ブロック等(安衛則第166条)
(17) くい打機およびくい抜機のウインチのブレーキ等(安衛則第178条)
(18) 動力車のブレーキ、設備および運転車席(安衛則第208条〜第210条)
(19) 人車の設備(安衛則第211条)
(20) 貨物自動車の昇降設備(安衛則第417条)
(21) ダンプトラックの安全ブロック等(安衛則第424条)
(22) フォークリフトのヘッドガード(安衛則第437条)
(23) 油圧式伐倒機のヘッドガード(安衛則第478条)
(24) 集材機および運材機(安衛則第499条、第504条)
(25) エックス線装置の照射筒およびろ過板(電離則第10条、第11条)
4 機械等の使用による労働災害の発生を防止するため、機械等の設計、製造または販売の段階において、
安全衛生について十分配慮すること。(労働安全衛生法第3条第2項)
(1) 設計段階における安全衛生上の配慮
イ 設計について十分な経験を有し、かつ、安全衛生について認識の深い者を設計責任者とすること。
ロ 設計を安全面からチェックする体制を整備すること。
ハ 機械等の構造については、危険部分が露出しないよう完全に防護することはもとより、人間工学
的見地から、操作しやすく、かつ、安全衛生的なものとすること。
また、材料の送給または製品の取出しの自動化を図ること。(安衛則第123条、第127条、第131
条、第139条、第143条関連)
ニ 保守点検が容易なものとすること。
ホ 修理または廃棄基準を明らかにすること。
(2) 製造段階における安全衛生の配慮
イ 工作について十分な経験を有し、かつ、安全について認識の深い者を工作責任者とすること。
ロ 製造設備を完備すること。
ハ 社内規格を整備すること。
ニ 材料の配合を誤るなど生産管理に欠陥のないようにすること。
ホ 検査または試験については、次により適切に行なうこと。
(イ) 専門の検査または試験の機構を設けること。
(ロ) 検査または試験の設備を完備し、とくに検査または試験の精度に留意すること。
(ハ) 検査または試験の基準を整備すること。
(ニ) 検査または試験を行う際の危険の防止を図ること。(安衛則第149条〜第151条)
(3) 販売段階における安全衛生上の配慮
イ ディーラーに対しメーカーが行うべき事項
(イ) 取扱説明書等により機械の正しい使用方法および安全装置の正しい取付け方法その他禁止事
項等を教育(なるべく実地教育)すること。
(ロ) 修理または廃棄の基準および修理技術を教育し、修理体制を整備すること。
(ハ) 関係法令を周知し、違法を招くような受注または発注を行わせないようにすること。
ロ ユーザーに対しメーカーが行うべき事項
(イ) カタログ等を安全衛生の見地から再検討し、関係法令に違反する事項を改めることはもとよ
り、安全装置その他安全衛生に関する必要事項はもれなく織り込むことにより、ユーザーが機
械等の安全衛生について正しく理解できるようにすること。この際とくに安全装置については、
その有効範囲、正しい取付け方法等を明らかにすること。
(ロ) 機械等のすえ付けの際に、取扱説明書等により機械または安全装置の正しい使用方法、保守
点検の方法その他安全衛生上の留意事項等を教育すること。また、すえつけ後においても適時
必要な追加指導ができる体制を整備すること。
(ハ) 関係法令を周知し、違法を招くような発注を行なわせないようにすること。
5 機械等による労働災害を完全に防止するためには、その本質的安全化を図ることがきわめて肝要であ
るので、その開発に努めること。
6 労働省においては、流通段階における機械等の安全衛生上の確保を図るため、次の基準に該当する欠
陥機械について「欠陥機械等通報制度」を昭和46年度より実施しているので、この制度により欠陥機
械の回収または補修を命ぜられることのないように十分配慮すること。
(1) 労働安全衛生法施行令第12条および第13条に掲げる機械等で、労働災害の発生に直接関連する
欠陥(メーカーに責任があるものに限る。)があるもの。
(2) 動力により駆動される機械等で、作動部分上の突起物または動力伝導部分もしくは調速部分に防
護措置が施されていないもの。
(3) その他の機械等で、メーカーに責任がある欠陥により労働災害を発生させたもの。