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雪崩災害の防止について

改正履歴

  雪崩災害の防止については、かねて特段の努力をされているところであるが、昨年暮から本年春にかけ
て、北海道、東北、北陸等の地方において雪崩災害が頻発し、一時に3人以上の死傷者を伴った災害のみ
をみても同期間中に15件の多きに及び死亡者70名、負傷者65名の犠牲者を出したことはまことに遺憾に堪
えない。
  おもうに雪崩の発生は、積雪地における地形と天候、積雪、気温、その他の気象条件とが主な因子とな
って発する自然現象であるが、雪崩の来襲に伴う建設物の倒壊、作業者の埋没等による死傷災害は決して
避けることのできない災害ではなく事前に周到な計画のもとに調査を行い、かつ、対策を講ずることによ
ってその大半は未然に防止し得るものである。
  近年、電源開発工事、林業等の作業場が次第に奥地に移行し、かつ降雪期においても作業を継続する傾
向にあるため、これら事業場における雪崩による災害の危険性も増大することが予測されるので、貴局に
おかれましては左記によりこの種災害の防止に万全を期せられたい。なお安全資料D−3「雪崩災害の防
止」(昭和32年版)を別途送付するから監督指導の参考にされたい。

記
一  雪崩発生のおそれのある地域内にある事業場又は寄宿舎において冬期作業を行い又は冬営を行うもの
  を調査、は握し、努めて現地に臨みこれに対し監督指導を行うこと。
二  事業附属寄宿舎規程第7条又は第38条による監督を行うこととともに左にかかげる事項について指導
  を行うこと。
  (1)  事務所、食堂、診療所その他の施設は雪崩のおそれのある場所に設けないこと。
  (2)  雪崩のおそれのある場所にある見張小屋、詰所、コンプレッサー小屋等の作業用施設は、冬期
      間坑内に移すか、山腹にはめこむ等の措置を講ずること。
  (3)  (1)及び(2)にかかげる諸施設の建築物は、強度について十分な配慮をすること。
  (4)  労働者が常時作業する坑口、ずり捨場等の作業場並びに常時使用する道路又は通路であって、
      雪崩の来襲が予測される箇所に雪崩防止の柵、スノーセットその他雪崩災害を防止するために有効
      な設備を設けること。
  (5)  各事業場(但し同一地域内に数個の事業場がある場合にはそのうちの一事業場)に降雪量、積
      雪量、降雨量、最高及び最低気温及び風向を毎日観測し記録させること。
  (6)  雪崩の発生が予測される場合は当該箇所における作業及び輸送並びに通行を禁止するとともに
      その旨を速やかに関係労働者に周知させる方法を定めておくこと。
  (7)  作業場内に雪崩が発生したときは、これを直ちに事業場内及び事業場相互間に連絡する方法を
      定めておくこと。
三  現地において監督指導ができない事業場については当該事業場附近の地形、施設、事業の概要、過去
  における雪崩の発生状況並びに当該地域における降雪量の資料により、前記二の監督指導を行うこと。
四  雪崩発生の危険性の有無については、三の事項に基き判断すること。
  (1)  当該事業場の附近の地形を示す図面と現地の地形とを照合し、検討すること。
  (2)  過去において、当該地域で雪崩が発生した事実の有無並びに概ね過去3年間の当該地域におけ
      る降雪量、積雪量、気温及び風向について情報を蒐集し、検討すること。なお、安全資料D−3雪
      崩災害の防止(昭和32年版)によって過去における雪崩災害の例を参考にすること。
五  雪崩発生のおそれのある地域において事業場又は事業附属の寄宿舎を設置し、移転し又は変更する場
  合は労働安全衛生規則第56条(現行=85条)による届書に雪崩災害を防止するための対策についての
  図面又は書類を添付させるよう指導すること。
六  雪崩発生のおそれのある地域内における事業場の使用者、安全担当者等を対象とする雪崩災害防止に
  関する懇談会、講習会等を適時開催し、適切なる指導を行うこと。